妖魔使い・月光花 リメイク   作:赤月暁人

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第72話 決勝ライブ

 花柳夫妻に無事子どもが生まれ、男の子の名前は大和に決まる。

 

 同時に月光花はアイドルオリンピックで決勝ライブに進んだことを報告し、月ノ姫の活動再開を花柳は喜ぶ。

 

 そしてついに決勝ライブの組み合わせが決まる。

 

 1.チアボールズ アメリカ

 

 2.オトメ少女 韓国

 

 3.メタルアンセム イギリス・スコットランド

 

 4.シンデレラロード 日本

 

 5.スマイリング娘。 日本

 

 6.月光花 日本

 

 7.SBY48 日本

 

 8.アルコバレーノ 日本

 

 ――の順番だ。

 

「うわー、私たちは結構跡の方かー」

 

「ゆかりさんのいるアルコバレーノが最後ですね」

 

「あの王者のスマイリング娘。とSBY48の間というのも厳しくなりそうだ」

 

「でも私たちはあのレジェンドの月ノ姫に勝ったのだから自信にはなったんじゃないかしら?」

 

「そうだね、美月先輩も認めてくださったから大丈夫……だよね」

 

「はな君、まだ心配かい?」

 

「少しだけ……世界中から予選を勝ち抜いたグループしかいないから」

 

「無理もない、皆それぞれレジェンドたちばかりだからな」

 

「不安になるなというのは無理でございますね」

 

「みんな……ありがとう」

 

「みんなお疲れ様、寸評が発表されたからみんなも読んでみて」

 

 アイドルオリンピックの寸評が書かれた記事をひめぎくが持ってきて、はなたちはそれを読むことにする。

 

 すると月光花には『京都に現れた謎の巨大な化け物を退治し、月ノ姫の美月輝夜が認めた史上最高の和物アイドル。アイドルワールドカップを制した実力もあり、世界中で期待がされている』と書かれていた。

 

 それぞれのアイドルの寸評は――

 

『春日はな。今も緊張しやすく心配性なところは変わらないが、土壇場での集中力と神社の子特有の幸運でグループを引っ張る』

 

『紅葉もみじ。アルコバレーノの紫吹ゆかりとは家系でライバル関係。小柄ながらアクロバットな動きが可能でニンニンニンジャ体操からブレイク』

 

『藤野すみれ。よく響くハスキーな低音ボイスが特徴。サッカーで鍛えた体力と殺陣で培った立ち回りが得意で、女性ファンも多数』

 

『冬野つばき。中学なぎなた全国準優勝の経歴あり。こちらも低音が特徴でハモリが得意。姉が声優の冬野つつじで、クイズ番組ではわざと間違えるなどお茶目な一面も』

 

『常盤わかば。月光花のリーダーでスケジュール管理は彼女がしている。高学力で計算されたフォーメーションを考案するのも彼女。ダンスは得意ではないがボーカルが得意』

 

『紺野るり。清楚で大和撫子な雰囲気を持つ美人。ございますをつける語尾が特徴。日本舞踊で培ったダンスが得意で見る者を魅了する』

 

 と書いてあったが、ひまわりだけはあまり詳しく書かれていなかった。

 

「ひまわりちゃんのは……あった!」

 

『日向ひまわり。アイドル力は他メンバーと比べて平凡だが持ち前の頭脳でバラエティではアドリブでトラブルを乗り切る才能がある。キレのあるダンスも注目』

 

「よかったー……私がアイドルとして平凡だから忘れられたかと思ったー……」

 

「自覚はあったんだ」

 

「ひめぎく、しーっ!」

 

「よいではございませんか。わたくしたちがトラブルでパニックになったところを助けられたのでございますから」

 

「日向のアドリブ力には何度も救われた。並のアイドルでパニックになってただろう」

 

「えへへ~、そうかなあ?」

 

「トラブルへの対処は戦闘の時は本当に助かったわ。ひまわりがいなかったらアイドルワールドカップでも勝てたかどうかわからなかったもの」

 

「そう言われると照れるなあ~。でもアイドルオリンピックの決勝ライブは今まで通りじゃ勝てないかもしれない。思いきって私たちらしい曲で勝負しようよ!」

 

「異論はないよ」

 

「私も異論はありません」

 

「全員気持ちは同じでございます」

 

「では私たちらしく文学を取り入れ、文学の世界観を表現しようじゃないか」

 

「こうなると新曲で一発勝負だね。作詞作曲は全部私が担当するね」

 

「ひめぎくちゃん、お願い」

 

 作詞作曲はひめぎくが担当することになり、新しい曲で勝負に出る。

 

 既存曲と比べてまた一から作ることを考えるとリスクが高いが、審査員の意表を突くには新曲で勝負する判断を月光花は下した。

 

 こうしてひめぎくは四季を表現したオムニバス形式の新曲に決定し、それをサビがない4分程度にまとめた曲へと仕上げる。

 

 普通の曲と構成が違うのでファンや審査員にとっては初見かつセオリーから外れているので、意外性を突くにはいいが理解が追い付かないリスクを背負う。

 

 それを承知で勝負に出る強気な姿勢には理由があった。

 

「みんなに聞こうと思ったんだけど、どうして新曲で勝負しようと思ったのかな? 既存の曲の方がクオリティも高いし、新曲だと一から作るから大変だと思うし、審査員の人たちも初見になるから難しいと思うけど」

 

「私たちは花柳先生夫妻にずっと依存していて、いつまでも先生から自立しないと月光花は前に進めないと思ったんだ。月ノ姫に勝ったことが関係ないわけじゃないけど、私たちには日本の四季や情緒を伝えられる表現力があると思う。アイドルワールドカップでもそうやって制してきたからその自信が私たちを後押ししているんだ」

 

「そっか、絶対的自身ってわけじゃないけど、積み上げたものがしっかりしているからあえて新曲で勝負に出たいということだね」

 

「そうだ。それに人生というのはいつだって賭け事なんだ。安定ばかり狙ったら失敗による経験も、成功もあり得ない。現に成功者はリスクを承知で計算しながら経験を積み、失敗した後に学習して成功している。怖気づいていたら成功するものも成功しないのだ」

 

「そういうこと。人生なんて博打みたいなものだしね! ビビったら世界なんて獲れないもん! 武士は負けることを恐れないって授業でもやったからね!」

 

「そうだったね、侍は死ぬことも負けることも一切考えないで、ただ名誉のために全力を尽くすんだった。私ってば、どうしてビビってたんだろ? 私も全力で作り上げるから一緒に頑張ろう」

 

 ひめぎくは勝つために安定を選んだが、月光花は勝つだけでなく全力を尽くすことにシフトし、新曲というリスクを承知で勝負に出る。

 

 実際武士は名誉のために全力を尽くし、死ぬことも失敗することも恐れないため世界からも尊敬され恐れられていたのだ。

 

 その心を月光花はしっかり受け継ぎ、アイドルオリンピック決勝ライブに向けて曲作りに励み、レッスンに挑んだ。

 

 つづく!

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