すみれは父である
見学していると監督のご厚意ですみれも出演することになり、弥助の最後の弟子役を演じる事になった。
弥助の最後の弟子である
「カット! すみれちゃん、やっぱりデビューしたてだから緊張しているかな?」
「すみません。もう一度お願いします」
「気持ちはわかるけど、あんまり追い込みすぎるとケガするし、少しだけ休憩しよう! さぁ、水分補給をして! 最近京都は暑いからね!」
「「「はい!」」」
「ふぅ……」
「すみれ、アイドルデビューしてから調子はどうだ?」
「父さん、実はまだ実感が湧かなくてね。私みたいな男性に間違われる人がまさかアイドルをやるなんて思わなかったよ」
「確かに女学校でも女子生徒しかいないのにファンクラブまで出来ていたね。すみれのファンクラブの子が『すみれをよろしく』っていうファンレターが数多く来たんだよ」
「ふふふ、そんな事があったんだね。私もあの子たちの期待に応えないといけないね」
「すみれはいつも周りの期待に応えてきたからできると思う。でもだからって肩に力が入っていると、殺陣が決まっても見栄えがよくないからね。父さんに相談があったらいつでも相談していいんだよ」
「ありがとう、父さん」
「休憩終わりです! そろそろ準備してください!」
「おっと、もう終わりか! それじゃあすみれ、行こう!」
「はい」
すみれは見た目が男性に間違われるほどの美形で、困っている人を見ると放っておけない性格、さらに声も低めで落ち着いたトーンなので学校の女子たちによってファンクラブが結成されるほどだ。
バレンタインでも男性にはもらったことがないし渡したこともないが、同じ女子からはたくさんもらっていた。
ファンクラブの女子たちはすみれのデビューを喜び、すみれがアイドルとして活躍するよう応援とサポートをしてくれている。
そんなファンクラブの子たちの期待に応えたいとすみれは焦り、その気持ちがいつしか焦りへと変わっていた。
すみれは焦ったらダメだと気持ちを落ち着かせ、深呼吸をしてリハーサルに臨む。
「師匠、魚屋を閉店させるって本当ですか?」
「おうよ、この日本中にオイラが必要としている町が必ずあるんだ。だからこそ魚屋・弥助は全国を旅して、新鮮な魚を日本中に食べさせたいんだ。どうだ? お前も来るか? お前ほどの魚捌きの腕なら、オイラの後を継ぐのも近いかもしれねえからよ」
「師匠にここまで認めてくださるなんて……わかりました。私も師匠について行きます!」
「はいオーケーです! すみれちゃん、やれば出来るじゃないか! やっぱりカッコいいねぇ、源次さんの娘さんは!」
「ありがとうございます。自慢の娘ですよ。しかしここだけの話だけど、妻が男の子が欲しいってずっと言ってて、妻の育て方がすみれを男の子っぽくさせたのではないかって思ってね。だから時代劇俳優ではなく、私がアイドルとして応募させたんだ」
「ではお父さんとしては女の子らしくしてほしかった感じかな?」
「そうですね。ただすみれ自身が生き方を決めないと、親としては見守りたいがあまり縛ってもいい道を歩む事はできない。だからここからはすみれの人生です、悪ささえしなければ自由に道を進んでもらいたいですね」
「深い考えだねぇ、源次さんは。さぁ、そろそろ撤収の時間だ。源次さんは車なんだろう? すみれちゃんを送ってあげなさい」
「お疲れ様でした。すみれ、父さんと一緒に帰ろう」
「うん、父さんと共演出来て貴重な体験だった。監督も私を出演させてくれてありがとうございます」
「いいのよ、アイドル頑張ってね!」
撮影が終わりすみれは父の車に乗せてもらい、帰宅前に寄り道で京都パープルサンバとヴェルディ調布の試合を観に行く。
すみれは小さい頃に京都パープルサンバの栄光を目にしていて、ずっと京都パープルサンバを応援し続けている。
去年にセカンドリーグ落ちたが、もう一度ファーストリーグへ上がる事を期待している。
車の中で早速パープルサンバのレプリカへと着替え、スタジアムに入る準備を進めた。
ここは京都駅周辺、たくさんの観光客でにぎわっていた。
「ちっ……。肩に当たったんだけど……」
「私観光客なのにみんな冷たい……」
「何とも
青白い肌をしたメガネをかけた七三分けの男性が罪魔を呼び出し、京都駅を荒そうとした。
京都駅は罪魔が現れたことでパニックになり、人々はぶつかった人を振り払うほどになっていた。
ここは京都サッカースタジアム、すみれは京都駅から違和感を感じ、胸騒ぎがしてスタジアムを出ようとした。
「何だ……? この邪悪な気配は……!?」
「わからない…とりあえず観戦は中止だ! 家に帰ろう!」
突然空が真っ暗になり、黒い霧に覆われて視界が見えなくなる。
何が起こったのかすみれにはわからなかったが、はなの神社が襲われたことをはなから聞いていて、それと深い関係があることを感じた。
スタジアムから出ると、はなとひまわり、もみじが慌てて走っていくのをすみれは見た。
すみれは仲間が何か危険な行動をしているのではないかと察し、助けなきゃと思ってはなたちの方へ向かう。
「待つんだすみれ! 今この状況は――」
「父さん! すまないが友達があっちへ向かったんだ! 私が止めに入るから先に帰っててほしい!」
「友達が……? わかった! でも無茶はしないでな!」
すみれははなたちの危険を案じ、父にはなたちを助けると説明して向かって行った、
すみれは運動神経もよく、体力もあるので追いつくどころか追い抜く勢いだったため、見つからないようにするのに少し苦労をする。
ペース配分を考えながらついて行くと、そこには緑色の肌をした鬼の姿があった。
すみれはビルの陰に隠れ、はなたちの様子を見る。
罪魔は金棒を持って暴れまわり、逃げ惑う人々を襲って叫んだ。
「きゃーっ!」
「助けてくれーっ!」
「あれが罪魔というものですね!」
「すごく大きな態度……! まるで自分が一番偉いと思い込んでいるような……!」
「はな、これ以上この罪魔を放っておくと危険だよ! 二人とも、いくよ!」
「うん(はい)!」
「「「
はなたち三人は懐から笛を取り出し、呪文を唱えて変身した。
その光景をすみれは見てしまい、すみれははなたちがどうしてコソコソ話をしているのかが分かった。
はなは元々神話の使命があったことは実家の都合で知っていたし、ひまわりは幼い頃からはなの神社の訓練を受けていた上に頭の回転がいいことも知っていた。
それと同時に
「あなたのその傲慢な態度、改めさせたうえで謙虚になって――」
「――っ!」
「きゃあっ!」
「黙れ! 女子供の癖に指図するな!」
「なんてプライドの高さ……!」
「このままでは街が破壊されちゃう……」
「春日さん……日向さん……。私は……」
すみれははなたちの勇気に驚き、同時に罪魔による圧倒的なパワーに押され、生まれて初めて恐怖を感じた。
そのためすみれは足がすくみ、逃げようにも逃げられなかった。
「俺は地獄界から這い上がったんだ! もてなしてくれないとムカつくんだよ!」
「きゃっ!」
「はなーーーっ!」
罪魔は地獄界から人間界に戻り、自分が偉いと生前思い込んでいたからか傲慢になっていて人々に暴力を振るっていた。
もてなすどころか封印しようとしたはなに怒りを覚え、金棒ではなの頭上から振り下ろした。
「助けなきゃ……! クラスは違えど、同じ学校に通う友達を助けなきゃ……! 待つんだ!」
「藤野さん!?」
すみれは怖がりながらもはなのピンチに勇気を出して飛び出し、罪魔の動きを止める。
罪魔はすみれに気付くと、すみれの方を睨む。
すみれは優しく罪魔に問いかけ、自分なりの考えで説得する。
「君は自分が偉いとか思っているけど、生前に何かすごいことをしたのかな? したのだとしたら君は素晴らしい人だったと思うが、それでも傲慢になれば誰も慕ってくれないし、誰もついていこうと思わないはずだ」
「何を知ったような口を! お前も俺に逆らうなら殺してやろうか?」
「殺すなら殺せばいいさ。でも私を殺すことはできない。君はその傲慢さで人々を不幸にし、自分だけ満たされた結果、地獄界に堕ちてしまったのだろう。あなたには……傲慢な態度を改め、小さなことへの感謝を思い出してもらい、地獄界で反省してもらうよ!」
すみれは傲慢な心を抑えるために、人や物への感謝をすることを説くと、すみれから黒い霧が現れた。
すみれの胸から笛が現れ、はなたちはすみれが妖魔使いに選ばれたことを喜んだ。
「藤野さん……まさか……!」
「藤野先輩も選ばれたのですね……!」
「藤野さん! もし見てたのなら、私たちみたいにその笛を吹いて変身して!」
「君たちがやっていたことをすればいいんだね! わかった! 妖魔変化!」
すみれはひまわりの言う通りに笛を吹き、妖魔使いとして変身する。
すると雷がすみれを包み込み、胸にさらしが巻かれ、藤色と
木製の
「雷の妖魔使い、藤野すみれ! 傲慢な態度に悩む君に、感謝の心を思い出させよう」
すみれは雷属性の妖魔使いとなり、まるで雷神のようにドッシリと構えていた。
杖からは雷が走り、スピードとパワーを兼ね備えた体術で罪魔に挑む。
すみれは杖を握りしめ、罪魔と戦う。
つづく!