─sideスバル─
「イテテ…リュウセイ大丈夫?」
突然の衝撃に少し体が吹き飛ばされたみたいだ。体を打ってしまったのか、少しだけ痛む。
「うぅ……」
「リュウセイ?…リュウセイ!?」
「なんだ気を失っちまったのか。」
「そうみたいだね……ってうわぁぁぁ!?お、オバケ!?」
聞こえた別の声に自然に返したけど、そこに居たのはなんだかよく分からない獣のオバケみたいなやつだった。
「ていうかなにこれ!?空に道が…天の川じゃない、よね!?」
「オタオタすんじゃねぇ!…なるほどなそのメガネのおかげで電波世界が見えるようになってるわけか。お前が見えてる空に浮かぶ道は『ウェーブロード』電波世界の通り道さ。」
「確かに、ビジライザーを外すと見えなくなる…それよりも電波世界だって?君は一体…」
「俺の名はウォーロック、ロックと呼んでくれ。俺はFMプラネットから来たFM星人で、お前らで言うところの宇宙人だな。」
「う、宇宙人だって!?」
3年前に存在が確認されたが、とうとう交信をすることの出来なかった存在が目の前にいる。とてもじゃないけど現実とは思えない状況だった。
「まぁ俺からすればお前らも宇宙人だけどな。ちなみに、俺たちの体は電波でできてるから普通の人間には見えねぇ。多少は理解できたか、星河スバル。」
「なんで宇宙人が僕の名前を!?」
「宇宙で出会った地球人に聞いたからな。」
宇宙で出会って僕の名前を教えることができる人…そんなの一人しかいない!
「宇宙で出会ったって…それってもしかして父さんの事こと!?父さんは今どこにいるの!」
「それはだな───」
その時突然大きな音が鳴り響いた。音のした方向では、展望台の中腹に展示されているはずの機関車が動き出しているところだった。
「チッ、もう来やがったか!」
「来たって一体何が!?」
「俺を追いかけてきた厄介な連中さ。大方あの機関車に電波ウイルスを送り込んで街にぶち込むつもりなんだろうよ。」
「そ、そんな!?」
あんな大きな物が街で暴走なんかしたらただじゃ済まない。それにそんなことになれば家にいる母さんやリュウセイの家やソウイチさんだって…
「何とか出来ないのロック!?」
「あれを止めるための方法はひとつ、機関車の中に入り込んだウイルスをデリートするしかない。」
「そんなのどうやって…」
「まずは空のカードフォース*1を用意しな。」
「これでどうするの?」
「こうするんだよ!」
するとロックの姿が小さな球体に変化し、そのまま僕のトランサーへと吸い込まれてしまった。さっきまでデータがからだったはずのカードフォースも青いカードに変化している。
「何をしたの?」
「俺の電波をカード浴びせて特殊な力を持たせた。あの機関車を止めたかったら今から俺の言う通りにしろ。」
「ちょっと待ってよ!急にそんなこと言われても…それにリュウセイはどうするのさ!」
「そいつは気絶してるだけだから安心しろ、モタモタしてるとそいつもお前の母親も無事じゃ済まねぇぞ。」
「っ!?……わ、わかったよ。どうすればいいの?」
「いいかまずは────」
*
「うぅ……」
「──セイ」
あれ今何してるんだっけ…
「──ウセイ」
確か委員長たちと別れて、展望台でスバルと話して、学校に誘ってそれから…
「リュウセイ!」
「ハッ!」
「よかった、目が覚めたんだね。」
「スバルか…一体何が起こったんだ?」
「もう、リュウセイってば突然眠っちゃうんだもんびっくりしちゃったよ。」
「俺が突然眠ってた?」
あんなタイミングで寝落ちするほど眠気があった訳じゃ──いやちょっと待てこいつ!
「おいスバル」ガシッ
「ど、どうしたのさ急に肩掴んで…」
「お前何隠してる?絶対になんか話してないことあるよな!」
(ギクッ!)
(勘のいいやつだな、どうすんだよスバル?)
(どうするって…ロックと合体してウイルスと戦ってましたなんて言えるわけないだろ!?)
「……」
「えーと、そのー…」
「はぁ…まぁいいや、今はとりあえず聞かないでおく。今日はもう遅いしな。」
(ほっ…)
「けど今度は絶対聞かせろよ、いいな!」
「はっ、ハイ!」
スバルから言質を取ってその日は家に帰ることにした。
*
翌朝、いつものようにスバルの家へ迎えに来る。ただ、その日からはいつもと違いひとつの変化があった。
「おはよう、リュウセイくん。」
「委員長本当に迎えに来たんだな。」
「あれだけ大見得切っておいて来ないわけないじゃない。ほら!ゴン太にキザマロも、シャキッとしなさい!」
「うー…でもよ委員長…」
「僕らこのためにいつもより早起きで眠くて…スヤァ…」
「立ったままねーなーいーの!とにかくスバルくんを呼び出すわよ!」
「そうだな、まずは外に出てくるぐらいから始めた方がいい。おーいスバルー!迎えに来たぞー!」
「私たちもいるわよ!顔ぐらい見せなさいよー!」
*
「あら?今朝はリュウセイくんだけじゃないのね。」
部屋の中でいつも通りリュウセイの元気な声を聞いたあかねだが、今日は声の主が多いことに気がついた。
「スバル、リュウセイくん来てるわよ。今日は他の友だちも来てるみたいだし、顔だけでも見せてあげたら?」
「……友だちなんがじゃない。来なくていいって行ったのに勝手に来てるだけだよ。」
「スバル…」
母親だからこそ、この子が一歩を踏み出したくても踏み出せないのはわかっている。こういう時に本当は自分が背を押してあげるべきなのだろうが…自分もまた前に進むことを恐れているのをわかっているため、中々そうできないでいる。
「やっぱり出てこないわね」
「仕方ねぇ、こうなったら最終手段だ。」
本当に情けない…こんな時でもリュウセイのような小さい子供に頼るしか出来ない自分が嫌になる。
せめてお礼だけは伝えようと玄関に向かおうとして──
「おーいスバルー!出てこないならお前が昔やらかした恥ずかしい話を委員長たちにバラすぞ!」
「はぁっ!?!?」
「10秒以内に出て来い!10ー!9ー!」
「なっ、えっ!?ちょっ、ちょっと待ってよ!!」
バタバタと寝間着のまま玄関へ走っていくスバル。その顔は困り顔だったけど、ここ最近見た顔の中では何よりも感情が溢れていて…
…ああ本当にリュウセイくんには感謝してもしきれない。あの子がスバルのそばに居てくれるなら、また歩き出せるようになる日も近いのかもしれない。
そう思いながら誰もいなくなった部屋で、あかねは静かに嬉し涙を流すのだった。
*
「3ー!2ー!いーち!」
「や、やめてよリュウセイ!」
「あ、スバルが出てきたぞ!」
「さすがスバルくんの唯一の友だちですねリュウセイくん。」
「やっぱりあなたに協力して貰って正解だったわね!」
「この手のネタはいくらでもあるからな、任せとけ。」
「も、もしかしてこれからも家から出てこなかったら同じことを…」
「さぁどうだろうな、それはこれからのお前次第だスバルよ。」
ニヤニヤと笑いながらそう告げるリュウセイ。スバルはこの瞬間にこれからもし家から出てこなかったら本気でバラす気なのだと確信した。
「昨日も言ったけど、すぐに学校に来ようとしなくていいんだよ。毎朝顔を見せて、少し話をすることから始めようぜ。」
「それが良さそうね。そ・れ・に!毎日お昼前まで寝てるような生活だと、学校に戻る時に辛くなるわ。そういうのを改善してあげるのも委員長である私の仕事だものね。」
「いいよ…そんなの。まだ学校には行く気ないし。」
「…ん?」
「ほう?」
「へぇ…」
「な、何さその反応。」
「気づいてないみたいだな。まぁ今日はこの辺にしとこうぜ委員長、スバルは
「………あっ」
「ええそうね、
「ち、違うよ!まだってそういう意味じゃ…」
「そんじゃまたなースバル。」
「またね、スバルくん。」
そう言って嵐のように4人は去っていった。
『賑やかな奴らだな。お前は学校ってやつに行かなくていいのか?』
「ロック…学校には行かないよ。行ったら友だちが出来るかもしれないだろ…。」
『ん?今のヤツらがお前の友だちじゃなかったのか?』
「……友だちなんかじゃないよ。僕はもうそんなもの作りたくない…。」
『友だちを作りたくないから学校に行かないのか?地球人ってのは友だちとかブラザーバンド*2っていうのを大事にする人種だって俺は聞いたぜ?』
「…ロックは大切な人を失う辛さを知らないから、そんなことが言えるんだよ。」
『…本当にそう思うのか?』
「え?」
『ヘッ、まぁいい地球人にはお前みたいな変わったやつもいるんだな。俄然興味が湧いてきたぜ。なぁスバル、街を案内してくれよ。』
「い、嫌だよ。なんで僕がそんなこと…それに人と話すのとか苦手だし。」
『この星にどんな人間がいるのか見てみたいんだ。ごちゃごちゃ言ってねぇで案内しやがれ!』
「わ、わかったよ…」
*
同時刻コダマ小学校
「それにしても、スバルがほんのちょっとでも学校に行く気を見せたのはよかったよな。」
「そうね。この調子ならあの不登校児を引っ張り出せる日も近いかしら。」
リュウセイたち4人は授業が始まるまでの間教室で先程のことを話していた。
「ボクはまだまだ時間がかかると思いますね。そんなにすぐ出てこられるなら3年も不登校になってないでしょうし。」
「なぁ委員長、本当にスバルのやつが学校に行きたくなるまで続けるのか?あんなやつ委員長が面倒見てやることねぇと思うぞ。」
「あら、ゴン太だって乱暴者だって避けられてたところを私が声をかけてあげたんじゃない。」
「それはそうだけどよ…」
「キザマロだって身長が低いなんてどうしようもない理由でいじめられてた。私は目の前でそんなことが起こってるのが気に食わなかったからあなたたちに声をかけたの。今回のスバルくんのことだって同じよ。」
「強い女だなぁ委員長は。」
「なんという懐の深さ、さすがは委員長です!」
「だからって…なんであんなモヤシヤロウのためにここまでしなくちゃ…」
「もう…そんなに嫌ならあなたはスバルくんの迎えに来なくていいわよ。」
「え…」
「これは私のワガママだもの、あなたが無理に付き合う必要は無いわ。朝起きるのが辛いなら、学校で合流しましょ。」
キーンコーンカーンコーン
「お、チャイム鳴ったな。」
「席に戻りましょ、授業が始まるわ。」
チャイムを合図にクラス全員が慌ただしく席に着いていく。
「……」
その中にゴン太の様子が変わったことに気がついた者はいなかった。
*
─sideゴン太─
「じゃあ私今日は用事があるから、先に帰るわね。」
「僕も塾があるので、また明日ですゴン太くん。」
「あぁ…またな。」
今日は2人が用事で先に帰るから、久しぶりに一人の帰り道だ。
委員長は最近、スバルのヤロウをものすごく気にかけてる。委員長は優しいから俺やキザマロの時みたいに塞ぎ込んでるあいつに手を差し伸べてやってるんだろう。
でも…今委員長の興味はスバルにばっかり向いてる。俺はそれが気に食わなくて、委員長に嫌な態度をとってしまった。
…そのせいで『嫌なら無理して朝は着いてこなくてもいい』って言われちまった。
俺に気を使って言ってくれてるのはわかってる。でも、どうしても考えちまったんだ。
このまま委員長の興味が俺からなくなって、スバルに居場所を奪われて、またみんなに嫌われてた 一人ぼっちだった頃に戻っちまうんじゃないかって。
優しい委員長がそんなことするわけがないってわかってる。
でも、それでも──
「あんな孤独な思いは……もう嫌だな……」
───ブルルッ 感じるぜ、孤独の周波数
「っ!?だ、だれだ!」
突然何もいないところから声が聞こえ、突然自分の後ろに何かが現れた。
赤色の幽霊みたいなそいつは頭に角のようなものがあって、ときどき炎みたいなものを鼻息と共に吐いていた。
「ヒッ!!バッ、バケモノ!?…もしかして昨日食べたトンカツの幽霊か!?」
「俺様は幽霊じゃねぇ!!あとトンカツはブタだろうが!俺はウシだよ!ウシ!」
「お、オレに何の用だよ!」
「ブルルッ、まぁ落ち着いて話を聞け牛島ゴン太。俺様はオックス!FMプラネットからやってきたFM星人、分かりやすく言えば宇宙人って訳だ。」
「宇宙人だって!?」
「ブルルッ、ああそうだ。俺はお前の孤独の周波数に引き寄せられてやってきた。…なぁゴン太、お前は今、委員長に必要とされなくなって一人ぼっちなることを恐れているな。」
「な、なんでそれを…」
「なぁゴン太、お前には素質がある。お前の心の隙間に俺を受け入れれば、力を与えてやろう。その力を委員長のために使ってやれば、お前が居場所を失うことも無くなるはずだ。」
「委員長のために力を使うって、いったいどうすれば…」
「ブルルッ、安心しろゴン太。お前は俺様に全てを委ねればいい。…それともまたひとりぼっちの孤独な生活に戻りたいのか?」
「い、嫌だ。またあんな思いをするのは…孤独は嫌だ。」
「ハハハ!いいぞゴン太!ならお前に俺の力を与えてやろう。さぁ、俺様を受け入れろ!」
「う、ウワー!?」
これを書くためにと久しぶりにやりたくなったのでDSと流星シリーズを全部ポチりました。実は自分は流星2からプレイしてたので初代流星は初見なんですよね。そこら辺も楽しみながらこの作品を続けていきます。