ガールズ&パンツァー 転生した独裁者の陸戦道戦記 作:くろがね四駆
――大洗女子学園の校舎を歩き、一通り場所を覚えたひとみは教室に戻った。
それからしばらく、時刻は16時、生徒達は帰宅するか部活をしているかに別れていた。
ひとみも戦車道に入ったが明日からなので、そろそろ帰宅しようかと考えていた。
……その時であった。
「君、少しいい?」
一人の生徒がひとみに声をかけた。
ひとみは振り向く、その生徒の髪はセミロングで茶色い瞳、そしてひとみぐらいの身長の高さであった。
なぜ自分に声をかけたのだろうか、帰っていないから不思議だったのだろうか、ひとみはそう思った。
しかし不思議と、ひとみは懐かしい感覚に包まれていた。
「確か転校生の独逸さんだったね、戦車道の家系の」
「なんだ、知っていたのか?」
「そりゃ有名だしね、まあ私は前々から知ってるけど」
自信満々に生徒は言う、前々という単語が気になりながらもひとみは会話を続ける。
「戦車道は私よりも妹の方が有名じゃあないか?」
「いや、私としては君の方をよく知っているさ」
「……一体どういう意味だ?」
ひとみが言うと生徒は苦笑いしながら答える。
「なんだまだ理解できてないのか? 私だよアドルフ! お前の友人のクビツェクだよ!」
「え、クビツェク? そうかクビツェクか……、お前クビツェクか!?」
「遅いわ! やっと気づいたかアドルフ!!」
ひとみは目の前にいる生徒が生前の友人クビツェクだと気づく。
「いや、無理があるだろ。今は互いに女なんだし」
「私はテレビでお前を見た時、すぐにわかったぞ! 目元が女版アドルフって感じだ!」
「それだけで理解したの凄くないか?」
普通に会話をしている両者だが、内心は互いに再会を喜んでいる。
もう会えないと思っていた二人が、普通の人間として会えたのだ。
「アドルフ……おっと、ひとみだったな?」
「そういうお前はなんて名前に?」
「
「なんだ、お前もだったのか」
再び共に過ごせることを、ひとみは嬉しい気持ちで溢れていた。
「……皆、そろそろ出てきたらどう?」
「え?」
栗子は教室の扉に声をかける、そこからみほ、優花里、沙織、華、麻子が一人ずつ入ってくる。
「あはは……やっぱりバレてたね」
「お前達……、まさか今の話を聞いていたのか?」
五人はこくりと頷く。
ひとみは取り返しのつかない事だと思ったが、返ってきたのは意外な言葉だった。
「その、勝手に聞いちゃってごめんなさい!」
「へ? いや、私の正体を知ったんだろ? だったら幻滅くらいするんじゃ……」
「本来そうかもしれませんが、みほさんと幼馴染なのですから幻滅するつもりもありません」
「右に同意」
戸惑うひとみに華と麻子はそう返した。
「私も噂が本当だと知って驚愕しましたが、西住殿はそれを知ってて信頼しています、それに……」
優花里はひとみの顔を見て、一言だけ返す。
「今も独裁者だったら、そんな顔で泣きません」
「――え?」
ひとみは優花里に言われるまで、自分が泣いているのに気がついていなかった。
そう、これは嬉しくて泣いていた。
正体を知っても、ごく普通に接してくれているこの5人に、感謝しているのだ。
そんな時、今まで静観していた栗子がひとみの肩をポンっと叩いた。
「もう私達が戦い続けて人が沢山死んでいく、そんな悲しい時代は終わったんだよ、ひとみ」
「――――」
そんな事は理解している、そうひとみは思っていた。
しかし本当は理解を出来ていなかった。
未だにひとみは、過去の感覚に囚われていたのだ。
もうこの世界で最恐の独裁者は過去に消えた、今ここに居るのは一人の人間である独逸ひとみなのだ。
そう理解した途端、ひとみから大量の涙がさらに溢れ出した。
「ありがとう……! ありがとう……!」
この言葉を目の前の
みほと栗子は優しい表情でひとみに近づく、みほは口を開いた。
「ひとみさん、これからも私達は友達だよ?」
「みほさんの言う通りだ、戦後もどれだけお前のために行動したと思ってる?」
――ひとみは泣き止む事なくその日を終わらせた。
新しく友人となった沙織、華、優花里、麻子に感謝の言葉を告げながら学寮に帰っていく。
ひとみの帰る背中を見ながら、沙織は安心した様子で言う。
「どうなるかと思ったけど、思ってるよりも全然優しい人じゃない」
「これもみほさん達のおかげなのでしょうか?」
「……いえ違います、おそらく独逸殿はずっと前から優しかったんです。時代がアドルフ・ヒトラーを独裁者に変貌させてしまったんです」
それを話している優花里の顔は――。
「西住殿が、優しかった頃の性格に戻してくれたんですよ、きっと……」
嬉しそうな顔で、みほとひとみの背中を見つめていた――。