ガールズ&パンツァー 転生した独裁者の陸戦道戦記 作:くろがね四駆
──私は愚かであったのだろう。
国民を導き、誘導し、純血なるゲルマン民族だけの国家を目指そうとした。
しかし現実は悲しき結末を辿った。
続いて
しばらくしてバルバロッサ作戦が始まった。
多くの兵士が死んだ、多くのドイツ人が死んだ、無数のユダヤ・スラヴ人が死んだ。
どれくらいの敗北があっただろう、どれほど優秀な将軍を罵倒しただろう。
──私はどれほどの罪を重ねたのだろう。
今でも聞こえてくる、恐ろしく広がる無数の恨みの声が。
『どうしてお前なんかが』『息子の命を返せ』
『死んでしまえ』『みっともなく生き続けるな』
やめろ。
『お前なんか信じなければよかった』『お前がいなければよかった』
やめてくれ。
『人殺し!』『大量殺人者!』
頼むから……!
『──お前なんかこの世に生まれなければよかったんだ!!』
──そんな言葉で私の夢の世界は終わった。
目が覚めたのだ午前6時30分、外からは小鳥が楽しく鳴いている。
まただ、またあの夢を見たんだ。
しっかりと記憶に残る夢の内容、それは今の私にとって悪夢でしかなかった。
だが私はそれを受け入れなければならない。
私にとってこれは神々から与えられた罰のようなものなのだろう。
生きたまま地獄のような悪夢を味わい続ける、これほどの罰は中々ないと私は思っている。
……十六年。 生まれてから一度もあの悪夢から逃げられたことはない。
「もう慣れている。 その筈なのにどうして……」
──どうして、私は今涙を流しているのだろうか?
後悔故か、責任故か、それとも……
──大洗学園艦 大洗女子学園 戦車道ガレージにて。
いつもの通り、いつもの立ち振る舞いで私は今日を始める。
これが私にとっての日常なのだ。
私が戦車道を始めてから早三日だ。 いくら声をかけてもあれほど生徒達は戦車道で賑わっていた事が嘘のように、殆どの生徒が戦車道への関心が薄れてしまっていた。
人間とは基本的にその程度の関心しか持ち合わせていない。
関心が一層強い人間は基本的に熱心なオタクばかりであって、趣味も違う且つそもそも趣味すらない人間には戦車道など理解が遠いのだろう。
「おはよう、独逸ちゃん」
ガレージに着いたら最初に出会ったのは生徒会長であった。
私は「おはようございます」と挨拶を返した。
「実はさー、独逸ちゃんと芥川ちゃんが懸命に募集活動をしてる事に感動した生徒がいてさー」
「もしかして……」
「そのまさかで、戦車道に入ってくれたってわけ」
おおっ。 と思わず声が出てしまった私だが、努力が実って遂に戦車道への参加者が出てきたことに感動を覚えていた。
「というわけで鍵山ちゃん、ちょっと来てくれるー?」
「はーい! ちょっとお待ちください!」
──慌ただしい声が聞こえてくる。
そしてガレージの中から急いで走って近づいくる生徒がいた。
「はーっ、はーっ……お待たせしました!」
息を切らしながら私に顔を合わせる。
金髪の長いツインテールに綺麗な青い瞳、程よい身長で活発な仕草をしている。
「この子が転校生の鍵山グラーフちゃん、ドイツ人と日本人のハーフなんだってさ」
生徒会長が説明すると、元気に右手を上げて敬礼をする。
見た感じ元気っ子だな、この転校生は。
「初めまして! 私は一年生の鍵山グラーフです! よろしくお願いします!」
大きな声で挨拶をするグラーフを見て、私は若干押されていたがニコリと笑い口を開く。
「よろしく、私は独逸ひとみだ」
おおっ! とグラーフは驚いた。
そして目を輝かせると、急に私の手を掴む。
「貴方が独逸流の独逸ひとみさんですか! うれしー! 私実は独逸流のファンなんです!」
「そ、そうだったのか。 喜んでもらえてるならよかったよ」
手を離してもグラーフはウキウキと小刻みにジャンプしている。
そんな光景を楽しそうに生徒会長は見ている。
「とりあえず、鍵山ちゃんにはⅣ号駆逐戦車の三人目のメンバーになってもらうから、役割はメンバー同士で考えてねー」
じゃあね、と言って生徒会長は持ち場は戻っていく。
その後栗子に事情を説明したら、嬉しそうにグラーフと握手をしていたり戦車内での役割を考えたりと、様々な事をしていた。
「グラーフ、装填は得意か?」
「はい! 中学の時に戦車道で装填手をしていたので得意です!」
「それは頼もしいな。 じゃあグラーフは装填手に決定だな」
順調に事が進んでいく。
残るメンバーは一人、しかし他に戦車道志願者はいるのだろうか?
するとグラーフは予想外の情報を私達に教えてくれた。
「あ、そういえば……」
「誰か入れそうな生徒がいるのか?」
「はい。 同じ一年の子が戦車道に入ったらしいんですけども、まだ来てないみたいで」
「会長は教えてくれなかったぞ?」
「まあ会長の事だし、サプライズドッキリ的なやつにしたかったんじゃないかな?」
――その時であった。
まあまあ遠くから大きな声が聞こえてくる、声的に生徒だろう。
声はガレージに向かってきている、つまり先程言っていた戦車道に入る生徒かもしれん。
「遅刻だぁぁーー!!」
「まだ遅刻じゃないぞ、むしろ早いくらいだ」
私がそう言った途端にガレージまで全速力で走ってきた生徒は足を急ブレーキする。
「……し、失礼しました。 こちらが戦車道のガレージで間違いないでありますか!」
「そうだが、君が新しく戦車道に入る子かな?」
「はっ! 私は一年の"大村 楓"と申します! この度、貴方がたの戦車道勧誘に感激して入った所存であります!」
ビシッと敬礼をする、みほの友達みたいで中々癖のある生徒だな。
「あ、やっぱり! 戦車道に入ったのって楓ちゃんだったんだねー!」
「おー! グラーフ殿もでありましたか!」
楽しく話す二人、もしかして友達だったのか?
「失礼、二人は友達なのか?」
「はい! 幼馴染なんです!」
「それは頼もしい、車内の連携も上がるだろうね」
頼もしそうに栗子は言う。
遂にⅣ号駆逐戦車の人数が揃ったということは、戦車道の訓練も開始できるという事だ。
「私が車長の独逸ひとみだ、これからよろしく頼む」
「はい! 未熟者ではありますが、よろしくお願いします!」
──とまあ、そんな経緯で遂に戦車に乗っての訓練が始まった。
車長は私、砲手は栗子、操縦手は楓、装填手兼通信手はグラーフに決定した。
最初は中々ぎこちない練度であったが、二週間が経過した時にはある程度ましになっていたのであった。