ガールズ&パンツァー 転生した独裁者の陸戦道戦記   作:くろがね四駆

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※今作品に登場する歩兵道は非常に危険な競技です。
悩んだのですが、ガルパン世界の競技ということで自分が書きたい歩兵道にしてみました。


第七話「陸戦道の初訓練 歩兵道模擬戦前編」

 陸地での訓練の場所、そこは平原であった。

 まず最初は基本からやっていこうと言うわけで、バスに乗ってやってきたのだ。

 大洗は戦車の整備を、水戸は装備の点検と確認を行う。 

 水戸の歩兵道で主な装備、それは三十年式歩兵銃であった。

「三十年式歩兵銃……!生で見るのは初めてです!」

 

 優花里が大興奮で点検している水戸の生徒の銃を見つめている。

 見られている生徒はニコリと笑う。

「そういえば君は熱烈なミリタリーオタクだったな。 どれ、持つくらいなら良いぞ」

「良いんですか!? では、失礼します!」

「俺の粘着弾も見てみるか? コイツよりもピッカピカだぜ!」

「いやいや、この俺の小銃は銃床も磨いているから輝いてるぞぉ!」

 

 楽しそうにしている優花里と水戸の生徒達、そんな光景を微笑ましく見ている慶喜がいた。

 そこへひとみが声をかける。

「良い奴らだな、水戸の生徒というのは」

「ん、そうだな。 我が校はこういった優しさ、そして規律を大事にしてるからな」

「皆、軍服は明治の物なんだな」

「私はこっちの方が好きなんだ、かっこいいしな」

 

 

 ──各自準備を終えて、遂に本格的な訓練が始まる。

 最初に行うのは、水戸の歩兵達を二つのチームに分けて歩兵道の模擬戦であった。

 まず大洗の戦車道メンバーに、歩兵道の戦闘を確認させるためである。

 実際に歩兵道の試合を見たことがあるのはみほと優花里、エルヴィンくらいであった。

 大洗のメンバーは事前に用意してあるモニターから模擬試合を観戦する。

 

 一方、試合の場では片方の指揮官を慶喜、相手チームの指揮官を「ジュール」というフランス人留学生が担当している。

 司令部の中で、慶喜は通信兵の報告を受ける。

「ジュール指揮官からの報告! 準備は完了、いつでも始められるとの事です!」

「そうか」

 

 慶喜は椅子から立ち上がり、隣にいる参謀長の大村雅郎(おおむら ますろう)に言う。

「試合開始の合図をせよ」

「はっ!」

 

 大村はマイクを手に持ち、大きな声で叫ぶ。

「試合、開始っ!!」

 

 

 参謀長の合図を聞き、連隊長の川上躁八(かわかみ そうはち)がサーベルを抜き叫ぶ。

「連隊前進! 我に続けぇ!!」

『川上連隊長に続けぇ! 遅れるなぁ!!』

 

 勢いよく川上歩兵連隊は前進していく、その姿を双眼鏡で見ていたジュール陣営の連隊長である土方十蔵(ひじかた じゅうぞう)は白い鉢巻を頭に巻いて叫んだ。

「我ら連隊も前進!! お前ら、粘着弾は忘れるなぁ!!」

『応っ!!』

 

 土方連隊も相手に劣らず、恐ろしいほどの闘志を見せている。

 ──読んでいる方はお気付きだろうが、大村、川上、土方、ジュールは皆転生者である。

 大村は長州藩の軍師「大村益次郎」

 川上は日清戦争の参謀総長「川上操六」

 土方は新撰組副長「土方歳三」

 そしてジュールは旧幕府側で戦っていたフランス軍人「ジュール・ブリュネ」

 

 昨年度まで弱小高であった水戸男子高等学校の歩兵道は、慶喜が指揮官になった際に密かに改革されて、強大な歩兵部隊へ変貌させていたのだ。

 しかもこの事は他の学校には知られていない、もし知っている学校があるならば、それは聖グロリアーナ女学院のみであろう。

 

 

 ──試合開始の光景を、モニター越しに見ていた大洗戦車道メンバー達は盛り上がっていた。

「す、凄い迫力」

「前の水戸の歩兵部隊は士気と練度だけが高いという感じでしたが、今の水戸は良い意味で全然違いますね……」

「ひとみさん、慶喜さんってもしかして……」

 

 みほが視線をひとみに移して言う、ひとみはモニターを見ながら言った。

「察しの通り、アイツは本物の徳川慶喜だ」

「やっぱり……」

 

 ひとみは慶喜から事前に、協力者には事実を言える許可をもらっていた。

「やはりか」

「エルヴィン達、聞いてたのか」

「すまない、まさかと思ってこっそりと聞いてしまった」

 

 エルヴィンが謝っている最中、おりょうが目を輝かせてモニターを見ていた。

「本物の徳川慶喜ぜよ……!」

「おりょうの奴、めちゃくちゃ目が輝いてるが」

「ああ、おりょうは幕末史が好きなんだ」

 

 カエサルがやれやれと肩をすくめながら言う。

 するとひとみは、何か思い出したように口を開いた。

「慶喜が言ってたな、参謀長は大村益次郎だって」

『ええ!?』

 

 ひとみの言葉に、みほ達は驚愕する。

 無理もないだろう、相手が日本史の有名人なのだ。

「大村益次郎!? あの長州藩の軍師の!?」

「凄いです! 後でサインもらいましょう!」

 

 優花里は興奮してサイン色紙を取り出す。

 おりょうはもはや放心状態、左衛門佐は動揺を隠せずにいた。

 いくら世界史の方が好きとはいえ、エルヴィンもカエサルも汗を垂らす。

「独逸から転生者が多いと聞いていても・・・・・・、これは多すぎる気もするな」

 

 エルヴィンが苦笑いをする。

 確かになと、ひとみはハハハと笑う。

「私達は改革された水戸歩兵道を最初に見れるんだ。 ワクワクするなぁ」

 

 

 ──場面は変わり、此処はモニターに映っていた平原。

 両部隊、この広々とした平原で相対する。

 塹壕を掘り、敵に小銃を構える。

「敵は見えたぞ! 各自撃ち方、始めっ!!」

 

 川上連隊長が叫ぶ、各部隊は一斉に発砲を開始した。

 使われるのは歩兵道専用の粘着弾。 これが頭や胸部にヒットすると、行動不能判定となる仕組みだ。

 逆にそれ以外にヒットの場合、一度だけならセーフだが二度目のヒットは行動不能判定となるのだ。

 

 戦車道ではフラッグ戦というのが存在するが、歩兵道では占領戦というルールが存在する。

 どちらかの司令部が敵に占領されたら敗北というルールだ。

 殲滅戦は文字通り、どちらかが全滅した場合なので説明は省かせていただこう。

 

 そして今回のルールは占領戦、戦術が試される。

「チッ、悔しいが薩長の奴らは中々気合が入ってやがる」

「土方連隊長、射撃の許可を!」

「そのつもりだ、俺達も負けんな! 射撃開始っ!!」

 

 土方連隊長、以下歩兵部隊も負けじと射撃を開始。

 壮絶な射撃戦が始まった。

 両者一歩も譲らずであったが──。

「ぐわっ!?」

『川上連隊、一名行動不能!』

 

 遂に川上連隊から一名脱落、頭に粘着弾がヒットしたのだ。

 ヒットさせたのは先程武器を小銃に切り替えた土方連隊長。

「土方連隊長が敵を一人倒したぞ!」

「流石我らの連隊長だぜ!」

「俺達もやるぞー! 土方連隊長においしいところ全部取られちまう!!」

 

 兵達は賑わう、遅れをとるなと撃ち続ける。

 しかし川上連隊も負けてはいない。

「うわぁ!?」

「ぎゃっ!?」

「小山! 浜田! うがっ!?」

 

 土方連隊、同時に三名脱落。

 川上連隊はこれを機に攻勢に入ろうとしていた。

 しかし──。

「川上連隊長! 第三歩兵大隊が撃破されました!」

「なに!? 相手の機関銃か!?」

「いえ、騎兵中隊の突撃だそうであります!」

「土方の奴、もう騎兵を使用したのか!?」

 

 ──川上連隊長が焦る中、司令部では既に報告を受けており作戦を練っていた。

「ジュールが騎兵の許可を下ろしたか……」

「ならば機関銃分隊を二つ配置いたしましょう、僕の予想では後三分で騎兵部隊は川上連隊と衝突します、急ぎましょうか!」

 

 

 その頃、川上連隊長は慶喜の命令を伝えられていた。

「──よしわかった! 機関銃分隊、あと二分程度で敵騎兵部隊がやってくるぞ! 各分隊は迎撃用意!」

「了解!!」

 

 大野分隊長、川城分隊長率いる機関銃分隊二個は兵士の配置を完了させた。

「いつでも迎撃可能であります!!」

「来たぞ、騎兵部隊だ!!」

 

 

 土方連隊の騎兵部隊は、新たに発足される陸戦道用に育成していた軍馬に跨り大地を駆ける。

 騎兵部隊を指揮するのは、秋山大古(あきやま だいこ)騎兵隊長である。

「それいけぇ! 突撃せよぉ!」

「秋山隊長! 敵機関銃が前方におります!」

「狼狽えるな! 江野、後藤! 粘着手榴弾の用意!」

「はっ!!」

 

 後藤騎兵と江野騎兵は粘着手榴弾を用意する。

「まだだぞ! まだだ!」

 

 十分に機関銃分隊に接近させる騎兵部隊、そして秋山隊長は叫ぶ。

「手榴弾、投げろぉ!!」

「そりゃっ!!」

 

 江野と後藤から二つの手榴弾が投げられた。

 そのまま機関銃分隊に直撃、手榴弾から粘着物が無数に飛び散る。

「しまった!?」

 

 飛び散った粘着物は機関銃分隊の半数に付着、行動不能となる。

 これによってその場にいた機関銃分隊は四割ほどの戦力となってしまった。

 

 

 

 ――この戦況を観戦していた大洗の戦車道メンバー達は、思わず声を出さないほど集中していた。

 まさか歩兵道がここまで凄いとは、それが各自の気持ちであった。

 此処でエルヴィンが口を開く。

「なあ独逸、こっそりとあの中に誰がいるのか教えてくれる事は可能か?」

 

 ひとみは考えたが、バレているのだから隠す必要はないと思い教えることにした。

「慶喜側の連隊長、川上操六参謀総長だ」

「なんと……、あの日清戦争の川上参謀総長も水戸にいたとは」

「そして敵側の指揮官はジュール・ブリュネ、そして連隊長は土方歳三……さらに騎兵隊長は秋山好古だ」

 

 先程汗を流したばかりなのに、再び汗を流して苦笑いを再開する。

「お、おりょうが聞いたら壊れるだろうな……」

「だろうな……しかし我々にとっては好都合だ」

「ああ、こんなにも心強い部隊が味方にいるのなら、大会も百人力だな」

 

 実は今日の訓練を終えた後、優花里とおりょうが速攻でサインを貰いに行ったのは内緒である。

 

 

 

 ……戦いは続いて、騎兵部隊が機関銃分隊を崩して突撃を敢行している。

 しかし慶喜側も負けてはいられない、こちらも騎兵部隊を導入してきたのだ。

「――むっ!?」

「やあやあ我こそは!! 本多忠義(ほんだ ただよし)、騎兵隊長也ッ!!」

「来たかッ!! 相手にとって不足無しッ!!」

 

 秋山隊長の前に現れたのは大柄の騎兵隊長、慶喜の信頼が最も厚き男である。

 本多忠義、名前こそ似ているのだが現代を生きるごく一般的な学生。

 しかし闘志は強く義理堅い、まるで武士の如く立ち振る舞い。

 転生後の慶喜の幼馴染であり、慶喜や屋敷の重鎮からも見込みありと言われ、今や慶喜随一の忠臣である。

「我、秋山大古ッ! 同じ騎兵隊長としてお相手致すッ! いざぁ!!」

 

 秋山は粘着物が付着しているサーベルを、本多は先端に粘着物が付着している長槍を構える。

 両騎兵達が争う中、二人の軍馬は止まっていた。

 その中だけ静かになったような感覚が互いに存在している。

 

 互いに睨み合う、戦いの合図となったのは一人の騎兵の戦闘中の発砲音であった。

「参るッ!!」

「ゆくぞぉ!!」

 

 

 ――蹄の駆ける音、サーベルと長槍が強くぶつかった。

 戦車道であれば怪我人が出てしまえば多少問題になるのだが、歩兵道では大分違う。

 実は歩兵道で怪我人は常に存在しており、骨折なども時々起きるという正に戦場であった。

 歩兵道希望者は家族と話し合い、それを承知の上でこの危険な競技に参加するのだ。

 ※歩兵道連盟は競技の内容が内容なので、危険性を説明した後に参加者を勧誘するように各校に伝えている。

 

 現に騎兵部隊の中には落馬した者が既に運ばれている。

 幸いにも軽症、歩兵道の生徒達は基本的に身体を頑丈に鍛えているのだ。

「また防がれたか、流石は本多殿だ!」

「秋山殿こそお見事ッ!! しかし次の攻撃、防げますかなッ!?」

「!!」

 

 本多隊長は長槍を片手で回し始める、それはまるで旋風が如き凄まじさ。

「(……長槍の速度が速すぎて動きがまるで読めん、ならば!)」

「はあッ!!」

 

 長槍を回転させながら、本多隊長は攻撃を行う。

 しかし秋山隊長は背中にあった小銃を持ち、縦に向きを固定する。

 すると本多隊長の回転していた長槍は小銃によって動きを防がれた。

「おおッ!? 見事也!!」

「ふぅー危ない危ない、失敗していたら小銃が折れてたな。 しかしだ本多殿……」

「む、いかがなされた……?」

 

 秋山隊長はニヤリと笑い、いつの間にか拳銃を構えていた。

「――油断しておりましたな、本多殿?」

「なッ!? しまった、秋山殿には拳銃があ――」

 

 パアンッ、と拳銃から発砲音が聞こえた。

 本多隊長の胸部には一発の粘着弾が付着しており、敗北は決定であった。

『本多隊長、行動不能!』

 

 スピーカー越しに脱落の報が聞こえてくる。

 本多隊長は軍馬を降りる、そして悔しいと言わんばかりの顔をする。

「不覚……まさか拳銃の事を忘れているとは」

「本多殿……物忘れが多いのは理解できますが、流石に相手の装備品を忘れてはなりませんぞ」

「うぬぬ、なんともあっけない戦いをしてしまいました」

 

 その言葉を聞いて、秋山隊長は場を後にした。

 他の騎兵も秋山隊長の後を追うように軍馬で駆けていく。

「お見事でした隊長!」

「ありがとう、もうすぐ敵の司令部だな。 いいか? 我らの速度が大事だぞ!!」

 

 秋山隊長以下騎兵部隊は、士気高く声を上げる。

 ……しかしそこへ、思いもよらない報告が入った。

「秋山隊長ッ! 一大事であります!」

「どうした藤野、そんなに慌てて?」

 

 

 

「──ジュール指揮官の司令部付近に、敵歩兵部隊が接近中とのことです!!」

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

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