Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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お絵描きに疲れた時は小説!


第3章 暗雲覆う横浜
第10話 模擬戦闘


 1999/7/16 横浜基地

 

 前回の作戦から一か月が経った。この間、関係各所に謝罪参りや、ちょっとした休暇をもらっていた。それまでの間、理由こそ不明ではあったもののBETAの出現が見られなかった。最前線であった新潟でもだ。恐らくBETAは大規模侵攻に備えているのだろう。そして、今日は個人的にとても楽しみにしていた日だった。

 

 12:10 第4戦術機格納庫

 

「整備班長、例のブツ出来てるかい?」

「お、大尉じゃないか!ちょうど今最終チェックを終わらせたところだ。…にしても、こいつはヤバいスペックの機体だぞ。」

 

 二人の目の前には新型の戦術機が直立していた。その名は、試99式戦術歩行戦闘機『村雨』。本機は、大破したトンカッチの試97式戦術歩行偵察機(彩雲)をベースとし、94式戦術歩行戦闘機block17(不知火乙型)89式戦術歩行戦闘機(陽炎)のデータと部品をフィードバックされた機体となっている。

 

「…かなり、見た目変わったわね。」

 

 みちるが少し遅れて格納庫に入ってきた。

 

「確か、みちるの機体も搬入されるって話だったな。」

「ええ、そうよ。私の機体は兄弟機に属するって話ね。まだ、見てすらいないから楽しみだわ!」

 

 横浜基地には直属の上司に当たる香月副指令がいる。そのため、彼女の気分次第でA-01部隊は振り回されることもあった。今回はどうやらトンカッチのことを気に入った副指令が、『ちょうどカップリングが出来上がった記念』として新機体を送り付けてきた。そして、トレーラーがやってきた。その姿は、村雨と酷似していた。整備班長がデータベースを見せてくる。

 

「どれどれ?…試99式戦術歩行戦闘機『時雨』か。」

「ふむふむ。見た目はほとんど同じだが、お互いの操縦特性に合わせているようだな。」

 

 トンカッチは空力特性を生かしながらの一撃離脱戦法を得意としていた。要するに、一人で戦う前提の戦闘スタイルであった。一方のみちるは、日本機特有の空力特性を利用してのドッグファイトとチームリーダーとしての集団戦闘のどちらにも対応した戦闘スタイルだった。そのため、村雨には補助噴射ユニットを増設しており、時雨には戦闘用フラップのついた小型姿勢制御翼が追加されていた。他の特徴としては、村雨は兵装担架を4つ持っているので最大6門斉射が可能で、時雨は多目的兵装担架装置(マルチハードポイント)を有していることだった。これもまた、二人の特性に合わせられた結果だった。

 

 そして、二人はあることを思いつく。『せっかく搬入されたことだし、模擬戦闘をしてみなければならない。』と。整備班長が言うには、燃料はすぐにでも入れられるが戦闘できる場所がない、ということだった。トンカッチは副指令に演習場の使用許可を求めて電話をした。

 

「香月副指令、トンカッチ大尉であります。ちょうど新型が搬入されたので、模擬戦闘をしたいのですが。」

「だから、演習場を使わせろってこと?」

「はい、ダメでしょうか?」

「ちょっと待ってなさい。…………いいわ、5番演習場で暴れてきなさい。ちょうど今、他の部隊が演習をしているからアグレッサーとして戦うのよ。それができるなら、いいわ。」

「ありがとうございます、副指令!」

「…大尉、どうやら燃料を入れたほうがいいらしいですな!?」

「班長、お願いするよ。」

「おい、お前ら!今すぐに最終整備済ませて発信させるぞ!」

 

 そう言うと、整備班は速やかに準備をし始めた。トンカッチたちも強化装備を着るために更衣室に向かっていった。

 

 

 13:00 5番演習場

 

 5番演習場では合計8機の戦術機が対戦術機戦闘訓練をしていた。6機の不知火を相手に、アグレッサーとして招かれていた富士教導団の撃震が圧勝していた。

 

「ほらほらルーキーども、俺たちはまだ一発も被弾してねえぞ!」

「畜生、全く当たんねえ!あっちは撃震(第1世代)で、こっちは不知火(第3世代)だってのに!どうなっているんだ!」

「場数が違うんだよ!これで、ラストぉ!」

 

 最後の1機を撃震がロックオンし、発砲しようとしたその瞬間、別の方向からロックオンされた。さらに、レーダーに新たな機影が2つ接近していた。

 

「ちっ、なんだこれは!?」

「俺も聞いてねえよ!…おいおいおいおい、撃ってきたぞ!」

 

 その2機はアグレッサーを射撃していたが、不知火にも攻撃を仕掛けた。

 

「マジかよ、無差別攻撃かよ!」

「おい、ルーキー!ここは休戦と行こうじゃねえか。協力して、侵入者をブチかましてやろうぜ!」

「了解!」

 

 

 同時刻 5番演習場直前

 

 トンカッチとみちるは、ちょうど狙いやすそうな位置にいた撃震をロックオンした。しかし、その瞬間すぐに回避機動を取られてしまった。そのままターゲットを変更し不知火にも狙いを定めたが、狙いが甘かったのか外れた。しばらくして、トンカッチたちが5番演習場に入った瞬間、そこにいた戦術機のデータが一斉に上書きされた。そこには、8機もの敵が表示されていた。

 

「機数は、8か。不知火が6つで、撃震が2つ。相手にとって不足はないんじゃないか、みちる?」

「そうね、富士の部隊がどう動くかにかかっているわ。どうやって対処する?」

「俺が陽動を受け持つ。そこを一気に叩いてくれ。こいつの6門斉射は伊達じゃないってことを見せてやる!」

「了解、頑張ってね!」

 

 そして、2機は二手に分かれた。村雨が前方に急速接近、時雨は後方に位置していた。

 

「さて、あんなふうに言ってみたものの陽動役が務まるかねぇ。」

 

 そう言いながら、突撃砲を6門構え始めた。全員をロックできる距離よりも先に発砲した。牽制もあるが、相手の動きのパターンを読みたいのもあった。しかし、動きがなかった。どうやら、牽制かつ陽動役ということがばれているらしい。そのまま数の暴力ですりつぶす気のようだ。

 

「上等上等!いくらでも束になってかかって来い!」

 

 お互いにロックオンすると同時に、突撃砲を浴びせあった。敵側は先の戦闘からの連戦ということもあり、弾薬の消費が激しいようだった。しかし、戦場ではそのようなことは通用しない。あまり突撃砲を撃ってこない敵は無視をして、積極的に撃っている敵から攻撃をした。

 

「6門斉射は伊達じゃあない!36㎜、いっぱい食ってけよ!」

 

 早速、ゼロ距離射撃で1機を撃破する。彼は目がよさそうではあったが、それが命取りになった。一瞬だけわざとそらした主碗の突撃砲に気を取られ、背中に気づけなかった。

 

「あと、7機!みちる、ポイントは!」

「その場所から200m後退して、左折。100m進んだ交差点を右折した先の角に私は待機している!」

「了解、誘導する!」

 

 トンカッチは、弾幕を張りながら指定ポイントまで後退をした。余りにも機体の速度差が出ていたため、わざとスピードを落とすほどだった。

 

「さて、どれだけ引っかかるかね?」

 

 後ろを見ると、綺麗に不知火だけは付いてきていた。撃震は追跡をあきらめたようだ。連携が全く取れていないのを見て、思わず笑ってしまった。

 

「じゃあ、みちる、仕掛けるぞ!」

「了解!」

 

 一気に機体を加速させながら目標の交差点を確認する。左折しようと思った瞬間、黒い影が一瞬目に映った。先行して撃震が待ち伏せていたのだった。

 

「新型ぁ、その首置いてけや!」

 

 撃震が長刀を振り下ろしてくる。脊髄反射的に腕の収納式短刀が展開され、受け流す格好で回避した。

 

「ちっ、待ち伏せか!みちる、ポイントを移動しろ。恐らく包囲されている!」

「了解!」

 

 姿勢をうまく戻しながら、再びポイントを設定しようとした。しかし、それを許さないほどの弾幕を浴びせながら、時折伏兵が切り付けてくる。なかなか厄介な戦法だった。時間がかかりながらようやく、良好なポイントを見つけた。そこは、高台となっており一方的に撃ちおろすことが可能となっていた。恐らく伏兵がいるだろうが、気にしている余裕はなかった。反対方向にあったので、すれ違うように進んだ。その際に、2機の不知火を撃墜していった。しかし、弾幕の張り過ぎか突撃砲の残弾が心もとなくなってしまった。残弾調整ミスだった。そのため、デッドウェイトと判断し全ての突撃砲をパージし、道端にあった長刀を拾う。どうやら1機目の機体の物らしい。長刀を1本のみ携えたまま高台にジャンプする。もちろんそこには、不知火が1機先行して待っていた。なので、急速下降をしたように見せかけて、裏を取るように上昇をした。そして、屋上に上がるとともに、不知火を切り伏せた。

 

「あと4機!」

 

 まだまだ、村雨も時雨も本領を発揮していなかった。この機体の恐ろしいのはここからであった。

 




機体の設定は次回に回します
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