Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ! 作:tonkacchi
………………話し声が聞こえる。…そうだな、女性が二人くらいか。そろそろ起きなきゃな、起床時刻に間に合わなくなる。
そうして、俺は深い眠りからようやく目を覚ました。
あたり一面白い壁で囲まれている。腕には点滴、口には酸素吸引チューブが取り付けられていた。
…だんだん視界がはっきりしてきた。今、自分がどうなってるか知らなければならない。
「おい、そこの女。ここはどこだ。」
とりあえず、目の前の女性に話しかける。どうやら日本人らしい。明るい茶色の髪をしていて、国連軍の軍装をしている。
「…ん、なんだようやくお目覚めか?」
「ここは、どこだと聞いている。」
「貴様、上官に向かってその口の利き方なのか。帝国軍も地に落ちたものだな。」
よく見ると、階級章がついており、それは大尉を表していた。
「…申し訳ありません、大尉殿。それで、ここはどこでありますか!」
早く教えてほしさに苛立ちが加えられた言い方になってしまった。
「ここは、国連軍横浜基地だ。厳密には、その中の病院だがな。」
「横浜だと!?俺はさっきまで佐渡島ハイヴにいたんだぞ!」
思わず取り乱してしまった。さらに若干、記憶も混濁している。まるで、自分が自分でないような気分だ。しかし、大尉は少し語気を強めて話す。
「落ち着け、馬鹿者!…貴様は佐渡島ハイヴの強行偵察をしていた、そうだな!?」
少し叱られて、落ち着いた。自分も続ける。
「そうだ。俺は偵察任務をしていた。偵察完了と同時に敵に襲われた。…そこから先は覚えていない。」
今度は優しく問いかけられた。
「よし、その調子だ。自分の名前と所属は言えるか?」
一瞬、出てこなかったが机に置いてあった自分のネームプレートのようなものを見て、はっきり思い出した。
「俺の名前はトンカッチ。年齢は25歳で、アメリカ出身だ。日系アメリカ人で、所属は帝国軍だ。…階級は中尉。」
「具体的な部隊名は?」
「…第78特殊戦術機中隊」
その言葉を発した時、彼女の目の色が変わった。
「特戦隊だと!?…それは、さぞ大変だったろうに。」
特戦隊(特殊戦術機部隊)は帝国軍の中でも限られたエリートしかなれない部隊である。用意される物資も豪華で潤沢ではあるが、性質上秘匿されたり、過酷なものが多い。中には、訓練で死亡する者もいるほどだ。そのようなクレイジーな奴の一人が目の前にいるのだ。
また、78中隊はその中でも群を抜いていると言われていた。隊員の情報や、活動拠点、任務内容などほとんどの情報が秘匿されていた。それでも漏れてしまった情報の中には、数々の過酷な任務内容、常軌を逸した訓練などが出ていた。彼女が驚くのも無理はない。
「自分は名乗りましたよ、大尉殿?どうやら、聞くだけ聞いて終わるのが国連のマナーらしい。」
少し意地悪く言ってみた。
「むぅ、すまない。私の名前は、伊隅みちる。階級は大尉で国連軍所属だ。部隊名は、そうだな、もうすぐでわかる。」
「もうすぐだと?」
大尉が何を言っているかわからなかった。なぜ、国連の部隊名を秘匿する必要があるのだろうか。しかし、彼女の言っている意味がすぐに分かった。
「大尉、彼が補充要員ですか?」
また、新しい女性が入ってきた。髪色は青系統だった。首下げ式ネームプレートには『速瀬水月』と書かれていた。その女性は服を持ってきていた。それは、国連軍のC型軍装だった。
「大尉、まさかだが俺にこれを着ろと?」
そう聞くと、二人はにやりと笑いながら言った。
「「ようこそ、A-01部隊へ!」」
この日から俺の新しい日々が始まった。
彩雲がどうなったのかについては次回あたりで説明します。