Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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頻度上げれたら上げたい


第20話 暴走、その果てに

 2000/1/5 10:00 ハイヴ前補給地点

 

 伊隅たちA-01部隊はタイマーを見守り続けていた。既に13分経っているのにもかかわらず、通信は一向に来なかった。あの二人に限って戦死するようなことはないはずだ。だが、一回も来ないのは少し心配になる。タイマーがどんどん進んでいく。部隊にも、そういった雰囲気が流れ始めた。

 

「トンカッチも心配だけどよぉ、如月もちょっとまずいかもな。」

「アイツらなら大丈夫だ。心配するなよ、もち。」

「分かったよ、ヱルム。おじさんもどう思う?」

「おじさんじゃなくて、ビルストな!…突入から13分強、並の奴なら死んでるはずだ。ただ、彼らなら生きてるはずだ。心配するなら自分の命にしておけ。」

「了解。こちら、ジェームズ。idoitsαチームは1㎞周辺警戒に当たれ。」

「もち、了解…っていつの間に名前変わったんだよ!」

「こっちのほうが楽だろ!?いちいち長々と喋りたくないんだよ!」

 

 さすがに、これにはidiotsαチームの他の面々も呆れた。

 

「こちら、伊隅だ。idiotsαチームは周辺警戒はしなくていい。次の任務にあたる準備だ。」

「どういうことだ、伊隅大尉。周辺警戒は、戦闘における重要行動だが?」

「……………………時間になった。残念だが、非常時作戦を開始する必要が出た。」

 

 実際には、タイマーは16分を指していた。これは、みちるなりの配慮だった。

 

「こちら、A-01部隊の伊隅みちる大尉だ。HQ応答せよ。」

「こちら、HQ。伊隅大尉、どうされました?」

「至急、香月副司令に通信をつないでくれ。話がしたい。」

「了解しました。」

 

 少し待ったのち、香月が通信に出た。

 

「何?今忙しいんだけど?」

「副司令、最悪の事態になりました。軌道降下兵団は全滅。突入部隊と通信が途絶し、多数のBETAが地上に向かって進軍中。さらに、連絡を試みるために内部に侵入したトンカッチ大尉、並びに如月中尉とも通信途絶しました。」

「…それで?」

「現状を判断し、作戦を中止し、緊急時作戦を開始する必要があります。」

「そうね。…………わかったわ。残念だけど、やるしかないわね。」

 

 本来ならトンカッチが指揮をする予定ではあったが、残念ながら通信途絶にあった。そのため、香月が、みちるに代理指揮権を譲渡した。送られてきたデータには、特殊大型地雷の埋め込まれている場所が書かれてあった。

 

「…………了解しました。速やかに行動に移します!」

「えぇ。…頼むわよ、伊隅。臨機応変に動きなさい。……最悪、爆破処理しなくてもいいわ。」

「了解!」

 

 すぐに、マップを全員に共有した。場所は、すぐ近くに2つ、3km離れたところに3つあった。しかし、そのどれもが破壊済みとなっていた。

 

「香月副司令!地雷が破壊されています!」

「なんですって!?…………わかったわ。機体から位置情報が出ているから、それをもとにして追加爆薬を輸送させるわ。幸いにも予備はあるのよ。あと、位置の変更もしておいたから。…よろしくね。」

「了解しました。速やかに陣地移動します!」

 

 すぐに全員に回線をつなぎ、指示をした。

 

「idiotsαチームは3km先の地点(ポイントA)まで前進。ビルストと私、それから宗像、風間は変更された5km先の地点(ポイントB)まで移動。残りは速瀬が指揮をして、ここから1km先の地点(ポイントC)へ移動しろ!」

『了解!』

 

 全機がすぐに装備を確認し、ものの一分で完了した。彼女たちには常に速度が求められていた。そのため、戦場ではもちろんのこと、私生活でも出来る限り速度を求められていた。そうすることが、彼らの生存につながるからだ。これは、ある人から学んだ。

 

「よし、準備完了だな!行くぞ伊隅戦乙女隊(ヴァルキリーズ)!」

『了解!』

 

 

 10:05 ハイヴ内

 

 トンカッチと如月は、タイマーが切れても戦い続けていた。いや、戦わされ続けていた。

 

「大尉!やっぱり、俺の機体も大尉の機体に同調しやがりました!」

「畜生!やっぱり、クソOSじゃねえか!香月の馬鹿野郎!FU○K YOU!」

 

 トンカッチはXM1の暴走により、機体を制御できないままだった。しかし、それに同調するかのように、如月の機体に積んであるXM1Jも暴走し始めたのだ。戦闘機動は、普段の自分たちの動きをトレースしているようだった。そして、すぐにそれを改善したような動きを見せた。

 

「こいつ、学習しているのか。戦いの中で!?」

「どうしたんです、大尉!?それより、何とかして地上に出なきゃ!タイマーは、もうとっくに過ぎてるんですよ!?」

「馬鹿野郎!そんなことは分かってる!…わかってても何もできんだろ!」

 

 着実にBETAの数は減っていた。しかし、それを埋めるように彼らは増えていった。僅かに聞こえたが、その横でBETAが大規模移動をしている音がした。一応、ビルストから対応策として、主電源を落とすといった方法があるようだ。しかし、この機体にはそんなレバーやボタンはなかった。せいぜい、押せそうなのは自爆スイッチくらいだった。もう外では、緊急時作戦が発令されているころだろう。

 たぶん、KIA扱いだろうな。そう半ばあきらめていた時だった。

 

「…………BETAの動きが変わったのか?」

 

 ただでさえトンカッチと如月に引き付けられていたのにも関わらず、その場の全てのBETAが攻撃目標を変更し、二人に襲い掛かった。これは、突入部隊にとっては、脱出する好機となった。

 

「…最悪ではあるが、最高の展開だろうな。おい、突入部隊の奴ら。俺たちが引き付けてるうちに脱出しろ!」

「何だと!?じゃあ貴様らはどうする!」

「大尉がこう言ってるんだ!早く撤退しろよ!…いいから、行けよ!」

「…くそっ!幸運を祈る他無しか…。帰ってきてくれよ!」

「もちろんそのつもりだ!」

 

 突入部隊は、元来た道をたどるように撤退した。主広間に残されたのは二人だけだった。そして、糸が切れたように、機体も機能を停止してしまった。主碗はだらりと垂れ下がり、主脚も膝から崩れ落ちるように倒れこんだ。

 

 画面には、『XM1:機能停止 トンカッチに対し謝罪する』と表示されていた。

 

 

「…………全く、暴れるだけ暴れて最後はこれかよ。」

「本当ですよ、呆れてしまいます。まあ、自爆はできるっぽいですよ?」

「…やるしかないか。」

「…………そうみたいですね。」

「タイミング、合わせろよ如月ぃ。一人で先に行くのはナシだ。」

「そっちこそ、頼みますぜ!?」

 

 どんどん、BETAが機能を停止した2機に向かってくる。

 

 食べ盛りなのか、戦車級から接近してきた。(かじ)り食うらしい。トンカッチはそれを見て思いに(ふけ)っていた。

 

 

 もう駄目だな。

 今まで、良く生き残ってきたもんだ。

 

 

 ………親父、母さん。悪いけど、そろそろ向かうかもしれないわ。

 駒木中尉、ごめん。如月は守れなかった。許さなくてもいいさ。

 三馬鹿とその嫁さんたち、こんな俺の隊に来てくれてありがとう。先任と仲良くやってくれ。

 ビルストは……自爆抑えれば皆と仲良くやれるさ。

 初期A-01部隊の皆も、数が増えたけど、仲良くやってくれ。あと、俺を受け入れてくれてありがとう。

 

 最後にみちる。思えば狂った出会いだったし、付き合い始めたのも急だったし、何もかもが、急だった。だけど、最高だった。今までにない刺激だった。お前は、俺に新しい世界を見せてくれた。恐らく、届かないだろうけど、これだけは言わせてくれ。

 

 

 

 

 ありがとう、そして……愛してる。

 

 

 

 

 ついに、BETAが目と鼻の先まで迫ったのが伝わった。死ぬ時が来たのだ。本来なら、俺はもっと前にこの地で死ぬべきだった。しかし、それをみちるが救った。今度はせめてもの抵抗で、それに報わねばならない。如月も覚悟を決めたようだった。

 

 

「…………あと、10秒後に押すぞ。」

「了解です。…どうぞ!」

 

 カウントをトンカッチは始めた。

 

「10、9、8、7、6、5、4、3、2、い」

「馬鹿野郎、早まるな!」

 

 最後のカウントを言い終える前に、けたたましい警告音と音声通信が流れた。この音と声は、友軍からの緊急通信だった。

 

「おい、アンタたち大丈夫か!?」

 

 音声のみの通信ではあったが、何かしらが来たらしい。外の様子を見ようにも、機能停止状態にあるので見ることができなくなっていた。一応質問してみる。

 

「アンタは誰だ?何でこんなところに来たんだ?」

「俺か?まあ、名乗るほどのものではないさ。それより、そいつを再起動させるぞ。絶対に外に出るなよ!」

 

 そう言うと、機体に軽い衝撃が加わった。10秒ほど経つと、村雨は、その雄姿を見せつけるがごとく、再び立ち上がった。機体制御も、全てトンカッチに戻っていた。

 

「…こいつ、動く!おい、動かせるぞ!」

 

 復旧したカメラから外の画像が見えるようになる。周りには大量のBETAの死骸があった。そこに、返り血を浴びた、黒色の機体が立っていた。恐らく、不知火のカラーバリエーションだろう。それにしては、少しばかり威厳を感じた。その機体から、再び音声通信が入る。

 

「もう片方の奴も、動き始めたぞ。今から脱出行動に移る。いいな!」

「お、おう。アンタについてくことにさせてもらうぜ。」

 

 せっかく死を覚悟したというのに。もし、音声ログに残っていたら、恥ずかしいどころの話ではない。しかし、それを言えるのも生きているからこそだ。彼には感謝しなければ。

 

「…大尉。なんか俺たち、生きてますね。」

「……ああ、生きてるな。」

 

 彼ら3人は、全速力で地上へと向かった。

 

 

 10:10 地上ポイントB

 

 みちるたちは作業を始めていた。地雷輸送部隊も順調に向かっていた。今のところ、これといった障害はなかった。しかし、良いことばかりではなかった。A-01部隊の機体から、大規模移動音を感知し始めたのだ。つまり、そろそろ接敵するということだ。輸送部隊には護衛がついているので安心できるが、作業中の無防備な状態が心配だった。まあ、まだ出てきていない。早く、設営準備だけはしておかなければならない。

 地雷を敷設するための平たい場所。瓦礫の除去。地点の完全制圧。やることは、正直かなりあった。

 

「宗像、いい場所は見つけれたか?」

「ええ、大尉。こことかどうでしょう?」

「…少し周りに瓦礫があるな。どかせばいいな。…よし、ここにするぞ!風間、瓦礫をどかしてやってくれ!」

「了解です、大尉!」

「ビルストは私と、宗像と風間の直掩よ。いいな!」

「了解っす!」

 

 直掩戦闘をしようとした矢先、レーダーに補給部隊が表示された。予定より、2分短縮されていた。

 

「こちら、臨時補給部隊。物資を送りに来たぞ!」

 

 そして、コンテナを置いて彼らは戻っていった。どうやら、中身は見ないようにしているらしい。宗像がコンテナを解放した。そこには、正方形の地雷とは言えないような形のものだった。とりあえず、それについての線策を宗像はやめた。考え始めたら戻ってこれない、そんな気がしてきたからだ。なので、何も考えず、冷静に、慎重に敷設した。

 

「………よし!敷設完了!」

「そうか、よくやった宗像!これより、Bポイントは防衛戦闘に移行する!他のポイントはどうなっている!?」

 

 すぐに、ポイントAから連絡が入る。

 

「こちら、ポイントAのヱルムだ!付近のBETAを滅殺完了!地雷も敷設できたぜ!」

「こちら、もち。補足説明として、防衛戦闘はこっちでは必要がなさそうだ。BETAが来ねえ。」

「了解した。……とりあえず、現状を維持しろ。動く必要があれば、こちらから指示する。いいな?」

「了解した。全員に伝えておく。」

 

 ポイントAは順調そのものだったので、みちるの懸念は一つ減った。しかし、最大の懸念はポイントCだった。

 

「ポイントCはどうなっている?」

 

 しばらく、通信が入らなかった。

 

「…………速瀬?どうした?応答しろ、速瀬!」

 

 そして、ノイズ交じりで通信がつながる。

 

「こ…ら、速瀬。大尉、結構こっちはやばそ…で…。できれ…増…をく……い!こ…のままじゃ、食われる!」

 

 最後の部分を聞いて、みちるは青ざめた。

 

「速瀬!何がそっちで起きてる!?誰が食われそうなんだ!?」

「田島が、田島が柏木をかばって!」

 

 どうやら、戦局は最悪の事態に傾き始めているらしい。




今回は実は新規友情出演組がいますが、ちょっとわかりづらいのでX(Twitter)のほうで、ネタバラシしておきます。
オリキャラ田島君、生き残れるのかなあ?(他人事)

今回の友情出演組です。(敬称略)

ヱルム・ビャーチェノワ(@ElM_Su37UB)
もち(@mochi02913)
ジェームズ・スミス(Lt_smithFFR41mr)
ビルストと戦術機好きの男(@Yuki90300757993)
如月中尉(@KSRG_TSF94)
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