Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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少し頻度上げたよ()
ちなみにこの並行世界にも、あの「世界を変える男」が来る予定ではあります。
(盛大なネタバレ)

また、今回は少し短めです。


第21話 必要な犠牲

 2000/1/5 10:07 地上ポイントC

 

 

 速瀬たちは、ポイントCでの作業を継続していた。BETAは数こそ多かったが、小型種が大半を占めていた。そのため、すぐに作業に取り掛かった。爆弾設置を柏木が担当していた。速瀬はその進捗を確かめるべく、柏木に連絡をした。

 

「柏木、作業進捗はどう?」

「そうですね……後5分、いや、3分ください!」

「分かったわ。焦らず、正確に、早くね!」

「そんな無茶ぶりしないでくださいよぉ、中尉。」

 

 柏木は装置を起動した。その瞬間、1体の戦車級が攻撃を、柏木に対して仕掛けてきた。それに、遅れて柏木のみ気づいた。

 

「…!しまった!」

 

 まるで忍者のように、奴は潜り込んできた。それはあまりにも、静かだった。そして、それを回避しようとした際に機体のバランスを欠いてしまった。もちろん、それにより倒れこんでしまう。運の悪いことに、システムが衝撃で一時停止してしまった。それを、速瀬が一番最初に気づいた。

 

「…柏木!すぐに除去するから、全機援護して!」

 

 隊員が周りを囲い込んだ。さらに、速瀬が短刀を引き抜き、戦車級を排除した。しかし、襲撃により柏木は跳躍ユニットを破損してしまい、機体を飛ばすことが困難な状況になった。柏木は、機体を何とか立ち上がらせ、装置を起動させて始めた。

 

「危なかった~。柏木晴子、戦線復帰します!」

「まったく、次からは気をつけなさいよ!」

「すみません、中尉。気を付けます。……それより、BETAが囲み始めましたね。」

「そうだな。それを心配する暇があったら、早く爆弾のセットしなさいよ!いいわね!」

「了解で~す。」

 

 進捗度は、80%くらいだった。もう少しで作業が完了する。その時、警告音が鳴り響く。村上がそれを報告する。

 

「中尉、突撃級が付近の地上に出現!こっちに来ます!」

 

 言われなくても、見えていた。すぐに排除しなければならない。

 

「全機攻撃開始!柏木を全力で守りなさい!」

 

 少しだけ高度を取り、突撃級の背後に回るように機体を動かす。そして、ありったけの36㎜を撃ち込む。突撃級の背後はものすごく柔らかい。諸刃の剣そのものだった。

 

「よし、これなら……!柏木、後ろ!」

 

 柏木の背後には、突如として現れた要撃級が、前腕部を振りかぶっていた。そして、その腕は振り下ろされ、柏木の不知火の右腕を破壊した。

 

「がっ!……くっそぉ!」

 

 すぐに、背部の兵装担架を起動させて、背面射撃を試みた。しかし、それも破壊されてしまう。さらに、燕返しのような動きで、左腕までも破壊した。柏木は一瞬にして無防備となった。

 

「柏木ぃ!すぐ行くから、早く逃げろ!」

 

 速瀬は全力噴射をしようとしたが、その間に割り込むように、戦車級と突撃級が壁を形成した。もちろん、その間にも柏木は攻撃されていた。

 

「くそっ!誰か、誰か柏木を!」

「中尉、俺が行きます!」

 

 そう言ったのは、田島だった。

 

「どけどけどけどけぇ!この田島様が通るってんだよ!」

 

 田島の不知火の跳躍ユニットからは、煙が出ていた。しかし、その速さは凄まじいものだった。とにかく、柏木を助けることで必死だった。あまりの速さに、BETAもついていくことができなかった。田島は運がよく、ちょうど柏木との間にBETAが展開していないことも作用した。

 

「柏木ぃ!今助ける!」

 

 田島は、120mmを斉射し、柏木を襲う不届きものを撃破した。しかし、動けない柏木をカモと認識したのか、どんどんBETAが群がってくる。

 

「…田島、早く逃げて。もう、あたしのことは置いといてよ。どうせ、何もできない状態になってるからさ。ね?」

「馬鹿野郎!それじゃあここまで来た甲斐がなくなるだろ!?早く、離脱しろ!ちょうど俺の通った道が今なら開いてる。ここを使えば、速瀬中尉たちと合流できるはずだ!」

「でも、それじゃあ誰がここを!?」

「……俺がやるから!早く行けよ!」

「…………ごめん。」

 

 柏木は泣きそうになるのを必死に抑えながら、ボロボロになった不知火で離脱していった。爆破地点に残されたのは、田島ただ一人だった。しかし、それを黙ってみているだけではなかった。そこに、村上も来た。

 

「お前だけにいい格好はさせねえよ!…俺たち、親友だろ?」

「そうだったな……、ああ、そうだな!じゃあ、地獄までついて来いよ!?」

「任せろよ!案内はしてやるからよ!」

 

 村上は急いで作業に取り掛かった。戦闘面では、田島のほうが上だったからだ。対する村上は、作業系のほうが得意だった。二人は訓練校からの同期だった。そのため、2人連携(エレメント)での戦闘はお得意だった。それが、片方が作業に付きかかりの状況下でもだ。

 

「あと少し、あと少しだ!耐えてくれ、田島!」

「…………ああ。」

 

 回線の影響か、田島の声が小さくなっていた。しかし、それを気にしている余裕はなかった。そして、進捗が100%に達した。

 

「……よし、オールクリア!ポイントCでの作業完了をここに宣言します!田島、終わったぞ!……田島?」

 

 田島との通信が、なぜか途絶していた。

 

「……中尉、速瀬中尉!」

「どうしたの?柏木なら私の機体に乗ってるけど?」

「違うんです!田島が……田島が通信途絶になってるんです!」

「なんですって!?全機、速やかに田島機のマーカまで進軍!」

 

 村上は嫌な予感がぬぐい切れなかった。やはり、俺をかばって死んじまったのか?そうとしか、もはや考えれなくなってしまった。もう、BETAはこっち(爆破地点)には近づいてきていなかった。しかし、田島のマーカーに集中していた。追いついた速瀬とともに、村上はマーカーまで迫った。

 うっそうとしたBETAの林を抜けた。その先にいたのは右足一本で立ち、左手に長刀、頭部などのそのほかの部位は戦車級にかじられ始めていた。辛うじて立っているに過ぎない。

 

「どういうことだよ……どういうことなんだよこれは!?」

「うるさい!叫ぶ暇あったら、救出戦闘をしなさいよ!」

 

 しかし、村上の前進から魂が抜け落ちるような感覚がした。あの田島が、目の前で蹂躙されていたのだった。その間に、速瀬は真っ先にとりついている戦車級を排除した。他の隊員も、すぐにBETAを殲滅し始めた。しかし、いかんせん数が多かった。正直、持ちこたえることはできなかった。速瀬は急いで伊隅に連絡を取った。もはや本能的行動だった。

 

「こちら、速瀬。大尉、結構こっちはやばそうです。できれば増援をください!このままじゃ、食われる!」

 

 ノイズ交じりではあったが、返答が来た。

 

「速…!何…そっち…起きてる!?誰が食…れそ…な…だ!?」

 

 それに、説明を加えた。それは、最悪の説明だった。

 

「田島が、田島が柏木をかばって!」

 

 運のいいことに、通信がはっきりとつながった。伊隅が驚きながら返事をした。

 

「なんだと!?一体そっちで何が起きてる!」

「いや、詳しくは後でいいでしょ!?早く来てください!このままじゃ田島が死んでしまいます!」

「り、了解した!すぐに向かう!」

 

 若干、言葉足らずではあったが、緊急説明としてはよく伝わったほうだったと、速瀬は思った。そう思っている間に、ついに田島機の右足が破壊された。両足を無くし、戦闘はもうできなかった。せいぜい、残った左手が動く程度だった。早く助けない限り、田島は死ぬ。そんな中、田島がようやく通信を開いた。

 

「…………速瀬中尉。救援は無用です。」

「馬鹿!なぜ今まで黙り込んでた!」

「…死ぬ時くらい、カッコつけさせてくださいよ。もう、俺は助かりません。ここで、余計な戦力を割くわけには…ゴハッ!」

 

 どうやら、田島は吐血をしたようだ。正直持ちそうにはないが、それでも助かる見込みは少しでもあった。そのわずかな可能性を捨ててはいけない。ようやく、村上に鉛のように重くのしかかっていたものが外れた。

 

「田島ぁ!今助けてやる!助けるんだよぉ俺が!」

 

 不知火に全力噴射をさせ、一気に距離を詰めた。そして、唯一残っていた右腕をつかもうとした。それは、最後のチャンスだった。正直、死ぬ可能性もある。周りにはBETAがまだ大量に囲んでいた。それでも助けなければ、そうでなければ親友ではない。そう思い、必死に不知火に手を伸ばさせた。そこに、ボソッと田島が話しかける。

 

 

 

「…………お前は生きろ。」

 

 

 

 そう言い、田島は手を敢えて伸ばすことなく、逆に払いのけた。さらに、最後の力を振り絞って、残った左手で村上機を元居た方向まで投げ飛ばした。このとき、なぜ投げ飛ばせたのかは、田島にもわからなかった。ただ、自分の思いに不知火が応えてくれたことがうれしかった。そして、警報装置を起動する。それは、S-11起動の警告音だった。

 

「馬鹿野郎!何やってるんだ田島ぁ!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 再び戻ろうとする村上を、速瀬が必死に止めた。

 

「…………アイツはもう、ダメよ。せめて、ああするしか…!」

「ふざけるなぁ!まだ、まだ間に合うんだよ!どけよ!」

 

 そんな村上をさらに、他の機体が抑え込み、可能な限り田島機から離れていった。みちるには速瀬が報告をし、増援をキャンセルした。

 

 田島は、だんだんかじられ始めた機体の中で、いろんなことを考え始めた。

 それは、走馬灯のようではあったが、少し違った。

 いろいろ考えては消えていった。

 最後に出てきたのは、柏木と村上の顔だった。

 

 周りを見る限り、十分引き付けたようだ。

 このボタンを押せばこの世とおさらばだ。

 

 田島は、思い切り腕を振り下ろし、S-11を起動させた。

 爆発の炎が機体を包む。

 そして、つながらないと思いつつもぼやいた。

 

 

 

「村上、じゃあな。…あと柏木、お前のこと好きだったぜ。」

 

 

 

 そうして、田島の不知火は周りのBETAを巻き込み、爆発した。

 

 

 彼の最後の通信は、村上と柏木のみが聞こえていた。




今回は友情出演組なしです。なので、久々にクレジット表記なしです。
……すっきりしてるなあ()

まあ、田島。お前はいいやつだったよ/)`;ω;´)
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