Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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色々な人を活躍させたい一方で、バフを盛り過ぎたと反省している
わ・た・し♪


第22話 死人

 2000/1/5 10:15 ハイヴ内部

 

 トンカッチと如月、そして謎の男はハイヴ内を彷徨っていた。本来ならば来た道を戻るだけなのだが、ことごとくそれらが破壊されていた。そのため、最短ルートを通ることができず、遅れていた。トンカッチと如月はいらだっていた。その怒りを、謎の男にぶつけた。

 

「…………おい、アンタ何者だ。さっきから迷子になったように見えるが?」

「助けてもらっておいていうのはよくないとは思う。だが、アンタ……どっかのスパイの手先なんじゃないか!?」

 

 本来ならこのような侮蔑的発言をすることはないのだが、あまりの焦りに言葉を選んでいられなかった。その謎の男から通信が入る。

 

「今から話すことは、なるべく話してほしくないな。…俺は帝国軍戦技教導団所属の神楽彰人だ。」

 

 帝国軍戦技教導団とは、帝国の中でもトップクラスの腕を持っている。あの帝都第1守備連隊と唯一、まともに戦闘の相手ができると言われているほどだった。基本的にはアグレッサーとしての役割を持っており、それを元にして戦術機の戦闘マニュアルなどを作成している部隊でもある。

 さらに、神楽彰人にはとある異名がついていた。東洋の渡烏(イースタン・レイヴン)。その名は、数多くの衛士に知られていた。さすがに、トンカッチも如月もその名は知っていた。

 

「…マジかよ。あの東洋の渡烏だって?何でこんなところに…。」

「まあ、訳アリだ。」

 

 それ以上は、彰人は話してくれなかった。しかし、その名を聞いたことにより、2人は安心してついていくことができた。数多くの横坑を回避し、上へ上へと向かった。もちろん、道中にはBETAが多数存在していた。それを難なく彰人は殺していった。その姿は渡烏ではなく、黒鳥(クロウ)のようだった。

 そして、ついに地上へと脱出することに成功した。もちろん、物資の置いてある本来の出入り口ではなかった。だが、3人がでたところも激戦区だったようだ。無数の戦術機とBETAが死骸となって積み重なっていた。

 

「ここも激戦区だったようだな。」

「そうですね大尉。もしかしたら…。」

「2人とも、それ以上考えるな。死人は死人だ。それ以上でもそれ以外でもない。俺たちは死人に対し、敬意を表し、戦い続けるしかない。悲しむのはそれからだ。……戦い続けるしか!」

 

 彰人は怒りをこらえるように話した。しかし、彼の言うとおりだった。俺たちは戦い続けるしかない。

 

「…………そうだな。じゃあ、そろそろ行くか。」

 

 撃墜された戦術機から、突撃砲などの装備を頂戴した。剥ぎ取りと言われても仕方のない行為ではあるが、これも生き残るためだ。

 

「よし、あんたら2人はさっさと原隊復帰しな。俺はちょっと野暮用がある。」

 

 そう言って、彰人は離脱していった。

 

「……じゃあ、俺たちも戻らなきゃな!」

「はい!」

 

 すぐに、通信をつなごうとする。内部がダメでも、地上なら通信はつながる。

 

「こちら、A-01部隊のトンカッチ大尉だ!A-01、応答しろ!A-01!」

「…………こちらはA-01部隊、伊隅大尉だ!トンカッチ、生きていたのか!?」

「ああ、何とかな。如月も生きてる。」

「そうか……。残念ながら作戦は緊急時作戦に移行している。現在は爆弾の敷設作業中だ。」

「敷設作業だと?埋設されていたんじゃないのか!?」

「………それが、破壊されていたんだ。全部破壊されていたんだ!」

「…………わかった。すぐに援護に行く。どこのエリアがいい?」

「そうだな。とりあえず、ポイントCの速瀬たちの援護に回ってほしい。後、一つ話さなければならないことがある。」

 

 そのみちるの声は、酷く暗かった。さらに、柏木から通信が入る。柏木はひどく泣きながら話した。

 

「大尉…………。田島が、田島が戦死しました。…私のせいで!」

 

 トンカッチは速瀬たちのもとへ向かう速度を上昇させた。その道中で、彼らに何が起こったかを正確に知ることができた。

 

「……そうか、田島が。だが、俺たちはアイツの死を乗り越えなければならん。冷たい言い方にはなる。柏木、さっさと田島のことは忘れろ。」

「忘れろって、なんてことを言うんですか大尉!」

「死人を思い続けては、死人に引っ張られる!……次に死ぬのが柏木、貴様だけなら別に構わん。だが!……それにより他の奴が死んだらどうだ!?」

「それは……。……嫌です、しかし!」

「しかしもクソもあるか!何回でも言ってやる!さっさと忘れろと言ってやる!いいか!忘れろと言っている!…………生き残り戦うのが、俺たち生き残った者たちの運命(さだめ)だ。」

「…………了解。」

 

 もちろん、トンカッチとて悲しくないわけがなかった。しかし、そうしなければ、より被害は拡大してしまう。悲しむのは、全てが終わってからだ。

 

「…みちる、爆破準備は完了してるか?」

「ええ、ポイントAからCまで全て完了よ。今は退避ルートの策定中!」

「なら、俺のデータを使え。少し昔ではあるが、以前この地点から退避したデータが残ってる。」

 

 そのデータは、トンカッチが初陣のときに入手したデータだった。そのデータは拙いものであったが、この状況では最高の地図となった。

 

「みちる、爆破までのタイムリミットは!?」

「ここからじゃないと起動できない。だから今から、起動する!…………タイマー起動!設定時間は20分!現時刻は10:20だから、10:40までに洋上まで退避する!」

『了解!』

 

 爆弾はタイマーによって設定されていた。その瞬間、爆弾の辺り一帯にいたBETAが反応を消失させた。さらに、爆弾を中心とした半径100mにBETAが近寄れなくなっていた。これの原理がよくわからなかったが、どうやら爆弾の心配はないらしい。

 

「さあて、さっさと帰還するぞ!」

「警報!経路上に要塞級複数出現!」

 

 誰かが、陽動または排除をしなければならなかった。その時、前方から複数の戦術機の反応があった。その識別信号は、斯衛軍を表していた。

 

「そちらはA-01部隊だな?我々は第16斯衛大隊の斑鳩崇継である。我々が殿(しんがり)を務める!故に速やかに洋上へ退避せよ!」

 

 第16斯衛大隊は、崇継の機体以外は全機が82式戦術歩行戦闘機(瑞鶴)だった。しかし、崇継の機体は見たことのない新型機だった。斯衛の活躍ぶりはすさまじいものだったが、特に崇継の機体は目覚ましい働きをしていた。彼の機体色は青色であったが、それが真っ赤に染まっていった。

 彼ら第16斯衛大隊は、A-01部隊の後方約300mに展開し、BETAを食い止めていた。さらに、追加増援として、第1守備連隊が要塞級を牽制してくれていた。

 

「我ら帝国の礎となることを本懐とする。然らば、死ぬること恐れず!第1連隊、状況開始!」

『応!』

 

 第1守備連隊もまた、斯衛に劣らぬ活躍だった。要塞級を相手に圧倒していた。その勢いは牽制どころにとどまらず、撃破さえしていた。しかし、その穴を埋めるように再びBETAは出現する。既に第1連隊に、損害が出始めていた。要塞級の触手の攻撃は、いくら精鋭とはいえ回避できるものでもなかった。

 

「畜生!松本少尉が触手で切られた!ギャアアアア!」

「山本ぉ!」

「何をしている!周りをよく見るんだ!」

「沙霧大尉!このままでは戦線は持ちません!」

「狼狽えるな!我々の任務はA-01部隊の離脱だ。目的をはき違えてはならん!」

『了解!』

 

 第16斯衛大隊もかなり厳しい状況下に立たされていた。

 

「少佐ぁ!機体に戦車級が!」

「何をしておるか!?早く排除せよ!」

「キャアアア!!!腕が、腕がぁ!」

「排除急げ!」

「ダメです、間に合いません!」

「…全機離れてください!自爆させます!」

 

 戦闘不能となった瑞鶴が自爆した。しかし、それでもBETAの数は減っていなかった。むしろ増していた。だが、A-01部隊があと少しで洋上に退避することができそうだった。要塞級も数をどんどん減らしており、そこには道ができていた。

 

「こちら沙霧大尉。A-01部隊、道が切り開けた。繰り返す、道が切り開けた!」

「後ろの敵も我ら斯衛が抑える!早く行け!」

「こちらA-01の伊隅大尉です!援護に感謝します!A-01、退避急げ!」

『了解!』

 

 ふと、トンカッチは戦術マップを見た。敵は相変わらず侵攻できていないようだった。しかし、タイマーを見た時に驚愕の事実が判明した。

 

「これは…!みちる、タイマーを見てほしい!」

「何だと…これは、タイマーが機能していない!?」

 

 ポイントBの爆弾のタイマーが、3:07で止まってしまっていた。この爆弾の厄介なシステムは、一個でもタイマーが動かない場合には起動しないといったものだ。これは、一種の安全装置となっている。そもそも、爆弾自体が敵を通さない構造になっている前提での装置となっている。

 

「何が原因なんだ!?」

「…システムに異常が発生しているのか?…………そうなると誰かが、誰かが直接起爆をさせるしかない。」

 

 そんな会話をしながら、A-01は海岸に出た。

 

「みちる、俺に行かせろ!」

「ダメだ!確実に死ぬんだぞ!」

「そんなことは承知の上だ!本来なら、俺は半年前に死んでいるはずだったんだ!それが、まだ生きている。その命を使う時は……まさに今ではないか!?」

 

 さすがに、みちるも反論することができなかった。結局誰かが行かねばならない。ならば、最適ともいえる人選ではある。それに、ある男が異を唱えた。

 

「…トンカッチ大尉、その役は俺にやらせてください。」

 

 それは、村上だった。

 

「村上、お前自分が何言ってるかは分かってるんだよな?」

「ええ、分かったうえで言ってます!俺に行かせてください!」

「…………正直、貴様の腕前では到達すらできん!だから、俺が行くんだ!」

「ただ、一直線に飛ぶだけなんですよ!?なら、俺にだってできます!田島の仇を討つんですよ!」

「だから死人に引っ張られるなと何度言えば分かる!」

「違うんです大尉!……恥ずかしながら、田島みたいに格好つけたくなっただけですよ!」

「馬鹿野郎、戻れ!戻るんだ!これは命令だ!戻れぇ!」

「それじゃあ、お先に失礼します!大隅改からしっかり見ててくださいよ!」

 

 そう言うと村上は機体を反転させ、ポイントBに進路を変更した。

 

「……へへっ、一度やってみたかったんだよなあこれ。全制限解除、全力噴射開始!一気に飛ばすぜぇ!」

 

 村上の不知火から激しく黒煙が噴き出た。さらに、スパークもかなり激しいものとなっていた。オーバーロードしているのだ。しかし、何とかそれを制御しているようにも見えた。機体の速度限界も超えていた。徐々に、ではあったが、フレームに歪みなどが生じ始めていた。装甲のつなぎ目からは、悲鳴を上げるかのような音がし始めた。

 それでも、その速さは村雨でも危険域で追いつけるかどうかの速度だった。もはや、追いつくことはかなわなかった。彼らにできることは、村上が無事に爆破させれるかどうかを、見届けることだけだった。

 

「………すまん、村上!」

 

 村上がポイントBに戻る際に、第1連隊と第16斯衛大隊は退避しつつあった。そして、すれ違いざまに村上機を確認した。

 

「沙霧大尉、あれは確かA-01の!?」

「…何を奴はする気かしれん。だが、我々にできることはもうない。帰投する、これ以上でもこれ以外でもない。」

「少佐、もしかして爆破がうまくいかなかったということでしょうか?」

「恐らくそうであろう。だが、我々の知るところではない。…早く帰投するぞ!」

『了解!』

 

 何かが起きたことは察することができたものの、それを止める術は彼らには残されていなかった。

 

 

 10:39

 

 村上は海岸線まで迫った。しかし、予想通りBETAが多数展開していた。

 

「さすがに、この数は厳しいかもな。でも、やるしかねえよな!」

 

 そう覚悟を決めた時、目の前で多数の爆発が発生した。

 

「こちら、帝国海軍連合艦隊第2戦隊!義によって貴官を援護する!速度を緩めず前進せよ!」

 

 少し離れた海上には、艦隊がボロボロになりながらも展開していた。彼らは、みちるからの援護要請を受けて現場に急行していた。さらに都合のいいことに、光線級は大型の目標である、第2戦隊を攻撃し始めた。

 

「加賀大破、海岸線に着底する模様!沿岸防壁になるつもりです!」

「美濃も速力が5ノットまで低下!艦傾斜角35度!海岸線に接触!航行ならびに戦闘不能により、退艦命令が発令されました!」

「本艦の状況は!彼を援護することは可能か!?」

「ええ、もちろんです!機関損傷のため、移動は不可能ですが浮き砲台にはなります!」

「了解した!主砲、交互撃ち方始め!対空砲塔も、曲射により地上へ攻撃を開始!全火力をもってして援護せよ!」

『了解!』

 

 

 甲21号作戦は終局を迎えようとしていた。




頑張れ、村上ぃ!



今回の友情出演組です。(敬称略)


如月中尉(@KSRG_TSF94)

New!(ネタばらし)
篁亞魏斗(@Raven00F)

ここで、疑問が生じましたよね?なんで篁亞魏斗なのに、神楽彰人なのか。
これは、亞魏斗さんからの情報提供にあった設定です。
ただ、ある時期からは篁亞魏斗に変わります。多分、きっと、maybe。
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