Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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もう30話まで来たのか
なんか感慨深いものがありますね(⌒∇⌒)
ふっと消えないようには頑張りますw


第30話 さらば日常、ようこそ地獄

 1988/11/10

 

 教官が自爆したと同時にアラームが鳴った。それは8分を計測していたタイマーの音だった。しかし、101Aはそれにしばらく気づかなかった。目の前で教官が死んだという事実に呆然としかできなかった。しかし、ずっとその余韻に浸っている暇はなかった。すぐにトンカッチは目の前の状況を整理する。教官は戦死し、他部隊も後退を開始、最前線になっているのは101Aのみだった。

 

「島本、山本、生きてるか!?」

「あ、ああ。なんとか。それより俺たちはどうする?前線はすでに瓦解している。もう俺たちが踏ん張る必要はないはずだ!」

「そうだ!せっかく教官が作った退路だろ?それを生かさないで何とする!」

「……そうだな、ああそうだ。よし、101Aは友軍と合流して戦線再構築に努めるぞ。全機移動開始!」

 

 すぐにでもBETAは集まってくる。今すぐにでも移動をしなければ。教官の自爆によって退路が作られていた。これを逃せば死。全力で機体を飛ばす。跳躍ユニットから悲鳴が上がりそうなほどに全力で飛ばした。遠くまで、全速力で。しばらくして、何とか友軍との合流に成功した。だが最初にいた機体のうち、8割は撃墜されたという報告が上がっていた。それでもこの戦線は突破させてはならない。だから戦闘に再び加わろうとした。しかし、それを最初に声をかけてきたF-4の衛士が無線で話しかけてきた。

 

「101Aだったか?お前らには帰投命令が出ている。…後は俺たち大人の熟練(ベテラン)衛士に任せろってことだ。」

「しかし、現在の戦況は芳しくありません!俺たちも戦闘を継続させてください!」

「………これは司令部命令だ。命令には逆らうな、最初に教えられることだろ!」

「しかし!」

「貴様らは何もわかってないな!?いいか?貴様らガキどもを一人前に仕立て上げるまでにどれだけの費用がかかっていると思う?それはどこから出ると思う?…分かったか?」

 

 衛士を育てるには多額の費用が必要だった。ましてやエリート中のエリート専門訓練校だった。想像するのは容易かった。

 

「…………了解しました。101A、RTB。」

「…それでいい。後は任せろ」

 

 そう言い残し、101Aは基地へと帰還した。基地へ帰投した直後の記憶は定かではなかったが、凄まじい疲労に襲われて担架で運ばれたのは唯一覚えていた。

 

 そして初陣から2日後、山本と島本は晴れて第43特殊戦術機小隊への編入が決定された。トンカッチだけは帝国陸軍第17戦術機大隊への配属となった。拠点は新発田基地だった。なぜこうなったかというと、トンカッチが日系アメリカ人だったからだ。そのため、戦闘評価は『後方支援の際にBETAと少々交戦した』という馬鹿げたものだった。しかし、トンカッチは軍人だった。上層部の命令は絶対なのだ。17大隊に入ってからは怒涛の日々だった。毎日地獄のようなトレーニングや実機でのトレーニングだけでなく、イジメのようなものも発生していた。特にトンカッチに対しては酷かった。まず、日系アメリカ人ということで差別をされた。次に、宍粟訓練校上がりにもかかわらず一般部隊編入。最後に、何かにつけてトンカッチが階級が上である大尉の大隊長に対して、反抗的な態度をとっていたことがあった。毎日のように嫌がらせを受け、1日のうち1食も取れないことも多かった。しかし、ずっとトンカッチは耐え続けた。それが先に特戦隊になった2人へ追いつく最善の道と信じて。そして、報われるべき瞬間がやってきた。

 

 

 1991/12/17

 

 この日、帝国陸軍のとある部隊から将校クラスがやってきた。明らかに背格好がよく、例えるならゴリラだった。だが顔は優しそうだった。少佐の階級章を付けた彼は出迎えに上がった基地職員や大隊長を相手にせず、一直線にトンカッチのもとに近づいていった。

 

「…おい、こいつの名前は何という?」

 

 その問いに大隊長がこびへつらいながらしゃべった。

 

「はい、こいつはトンカッチと言います。階級は少尉で、実戦で特に戦果も挙げれていないクズ同然ですよ。相手にするだけ無駄ですよ、へへっ」

「なるほどな…。おい、あれを準備しろ」

 

 少佐は後ろにいた部下に命令した。その直後、大型トレーラーが基地に侵入してきた。それは戦術機運搬用トレーラーだった。

 

「トンカッチ、だったか?あとは大隊長、それからそこの三下5人もついてこい」

 

 そう言い残して少佐は新発田基地の格納庫に向かった。それを7人は追っていった。

 

「なるほどな、撃震がほとんどか?」

「ええ、まだ陽炎などの最新鋭機はこのような僻地には少ししか送られてきていません。もちろん乗っているのは私です。だって大隊長ですからね」

「まあ、そうなるわな。…………よし、トンカッチに陽炎は乗ってもらう。行けるか?」

 

 トンカッチはあまりにも急すぎる話に困惑した。唐突に基地に来て、一目しか見ていないのに気に入られたのだ。ましてや当時最新鋭機だった陽炎だった。操作系統は一応知っているものの、初めて動かすことになるだろう。だが、これはチャンスだった。上手くやればこんなとこにいる必要もない。

 

「……やれます。陽炎に乗らせてください!」

 

 そう言うと少佐はニヤッと笑った。それは悪魔の微笑みにも近かった。

 

「それでこそだ、トンカッチ。貴様は将来有望な少年に違いないなぁ!?それでは選ばれし7人の諸君、戦術機に搭乗しろ!今から中国の重慶へと向かうぅ!」

 

 全員が呆気にとられていた。てっきり戦闘訓練でもするものだと思っていたからだ。それが最前線の重慶だった。重慶は地獄である、そういった内容の本が多数出版されるほどに最悪だった。大隊長がすかさず文句を言う。

 

「少佐殿ぉ?少々気がお早いのでは……」

 

 大隊長は後方勤務で安寧の日々を過ごしていたかったのだ。それがいきなり死を覚悟しなければならなくなった。それは三下たちも同じだった。口々に彼らが抗議する中、トンカッチは早々に陽炎に乗り込んだ。

 

「少佐、準備完了しました。いつでも行けます」

「素晴らしい!素晴らしいよ、トンカッチ君!……失礼、では早速ここから12㎞先にある港に戦術機母艦を停泊させている。それに乗り込みたまえ。ああ、ゆっくりで構わない。機体の慣熟も兼ねているからねぇ」

「了解!」

 

 トンカッチは初めて乗る陽炎に興奮しながら、港へとゆっくり向かった。最初こそなれなかったものの、陽炎は自分の動きに正確に追いついてきた。まさに最高の一品だった。楽しんでいる間に港に到着した。すぐに乗り込んだ後に出港した。船に揺らされること1日。艦内にベルが鳴った。どうやら到着前らしい。

 

「さて、17大隊の諸君。楽しい実戦の時間だよ!?」

 

 少佐は明らかに戦争を楽しんでいた。危険な人物だとトンカッチは直感した。しかしながら今の最高階級は少佐だった。その少佐はデータを全員に回してきた。

 

「我々の部隊、この際だから名を明かしておくが第78特殊戦術機中隊とともに後退中の味方を支援する。君たち17大隊のメンバーはその支援をしろ。いいかね?」

 

 拒否権はなかった。しかし、実戦であるなら戦果を挙げてより良い部隊に配属されることも夢じゃない。トンカッチはそればかりを期待してニヤついていた。陽炎に突撃砲と長刀を持たせる。装備構成は突撃砲が2門と長刀が2本の装備構成だった。母艦から出撃の合図が出たのですぐに出撃した。重慶に向かって飛行していると、HQからの通信が入った。

 

「こちら重慶HQ、現在接近中の機体に告げる。貴隊の所属を明らかにせよ。こちらは撤退作戦を敢行中だ」

「こちらは第78特殊戦術機中隊の権田少佐だ。撤退支援に来た。事前報告より数が多いのは許せ」

「了解した。支援に感謝する。以降はこちらの指示に従え」

「はいはい、分かりましたよ」

 

 トンカッチはそこで初めて少佐の名が権田ということを知った。権田は全員に向かって通信を入れた。

 

「作戦内容は先ほど伝えたとおりだが、トンカッチには別命を与える」

「了解です、少佐」

「うん、物わかりのいいやつは最高に好きだ!…トンカッチは俺たち78中隊とともに戦闘参加しろ。貴様の実力、俺に見せてみな!」

「…はい!」

 

 やはりこの急行軍は評価試験だった。もう前の俺とは違う。あの時みたいに誰かを死なせたりなんかするものか。そう決意した。そして警報音が鳴り始めた。

 

「やはり光線級もいるな。回避機動を取れ!」

「回避!?こんな遮蔽の無いところでどうやって!?」

「口を動かす暇があれば避けれるだろ?」

 

 そう少佐が言った直後に、三下の一人が光線に焼かれた。あっけない最後だった。17大隊のメンバーは乱数回避をしているのにもかかわらず、78中隊は低空を這って進んでいた。そして光線級を狙撃していった。トンカッチもそれを真似するようにしていった。その後は、友軍とすれ違いながらBETAと交戦をした。残弾が少なくなった時には、撤退中の機体から譲り受けていった。時計を見ると、もう4時間経っていた。その時すでに17大隊のメンバーは全員戦死していた。

 

「さて、トンカッチ君。17大隊のメンバーは残すところ君のみだ。どうするかね?」

 

 恐らく少佐はこれを狙っていたのだろう。是が非でもトンカッチを手に入れるために、戦死という形で勧誘するつもりだ。そう会話をしているときに目の前の崖から要塞級が3体、突如として現れた。

 

「少佐、さすがに手練れの我々でも厳しいですよ!…ガアッ!」

 

 早速78中隊の一人が撃墜された。要塞級の衝角が管制ユニットを貫いたのだ。残弾も心もとなくなっていたが、撤退ができるほどの余裕もなかった。そこでトンカッチは考えたのだ。

 

「…少佐、俺が要塞級を相手にします」

「ほう?実戦経験がほぼない君がかね?」

「要塞級のパターンは何度もイメージしてきました。今ならやれる、そんな気がするんです!仮に失敗しても時間稼ぎくらいにはなります。…やらせてください!」

 

 少佐はしばらく考えたのち、了承した。トンカッチは残弾がほぼなくなっていた突撃砲を投棄、長刀に持ち替えた。要塞級には近接攻撃が有効だった。一気に距離を縮めて関節部に長刀を振り下ろす。解体ショーの始まりだった。周りの小型種は78中隊が牽制してくれていた。気づけば要塞級は全滅していた。周りのBETAも大多数が殲滅されていた。少佐がトンカッチに通信を入れた。

 

「…これは、私の思っているより素晴らしいものを持っているのかもしれないな、トンカッチ君!」

 

 この功績を認められ、帰還後にトンカッチは第17戦術機大隊から第78特殊戦術機中隊へと転属された。その際に国籍がアメリカから帝国へと変わった。

 78中隊での生活は更に厳しさを増した。改善されると思ったイジメの問題は続いていた。もちろん抗議はしなかった。正直以前より生ぬるかった。というより何者かに命令されてやっている節があった。恐らく闘争本能を鍛えさせられているのだろう。実戦の参加も回数を増していった。戦闘は主に中華戦線だったが、まれに暗殺任務も受け取ることがあった。その際は誰にもばれないように殺しをした。その中には山本と島本もいた。彼らは国家転覆を画策していた。機体は撃震と陽炎、彩雲や不知火など様々な機体に乗っていた。在籍中に権田の謀反があったものの、その時は別任務で大陸にいたので詳しい事情は知らなかった。帰ってきたころには死亡が確認されていた。その後は甲21号ハイヴの偵察任務にあたり、A-01部隊に編入された。

 

 

 そして時は今に戻る。

 

 

「ここまでが俺の過去の話だが、どうだったかな?」

「何というか…壮絶な過去だったなと思いまして」

「まあ誰もがそう言うだろうな。事実俺自身もそう思っている。だが、あんまり自分が日系アメリカ人であることを卑下するなよ?それを続けていると精神が持たなくなる」

「…はい。」

「さて、他に聞きたいこととかあるかい?」

「いえ、結構です!貴重なお話をありがとうございました!」

「そうだな…………今日は暇なんだよな?」

「はい、暇です。何か?」

「今から拳で語り合おうぜ!?拳でよぉ!」

 

 トンカッチは戻の外にあったF-15Eを指差した。

 

「模擬戦ですか?………いいですよ、米軍衛士の力ってやつを見せつけてやりますよ!」

「負けた方がバニーな?」

「…その賭け、後悔しないでくださいよ!?」

 

 こうしてトンカッチはアメリカでの余暇を大いに楽しんだ。




権田はまたどこかで出てきます。ええ、多分出ます
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