Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ! 作:tonkacchi
2000/12/31 横浜基地
年を越す前にみちるは精密検査を受け、正式に異常なしと判断された。また、全身骨折も思ったより治りが早く、歩き回れるくらいには回復した。
寝たきり状態での異常な速度の治りのため医者が困惑したが、体に異常が見られないため仕方なく問題なしと判断し、リハビリに移行していた。そのリハビリですらもうそろそろで終わりそうではあったが。
そのため、年越しの時にみんなの前に姿を現した。それまでいなかったことを説明するときには、任務とその帰りにもらった風邪の検査だと言ってごまかしていた。
だが、いつまでも騙しとおせるとは思えなかったので、任務で死にかけたからだと説明した。嘘は言っていない。
「みんな元気にしてたか?私は元気にしてたぞ、夢の中で」
みちるが最初にかなり攻めたジョークを披露した。もちろん笑えるわけがない。誰もが苦笑どまりだった。予告なしの非在籍期間が1か月近くあったのだ。誰でも心配するだろう。クリスマスの時だってはぐらかしていたとはいえ、薄々何かを感じ取っていた。
その最たる例が恭子だろう。まあ、こうやって冗談でも言える状態にあるのなら元気ではあるのだろうと、全員納得するように努めた。
そしてこの日は大晦日。つまり、年越しだ。日本では年末に近づくにつれてイベントが大量発生する。クリスマス、大掃除、大晦日。年を越せば正月に三が日に、もう縁はないが成人式も控えている。
大掃除は既に済ませていたので、後はゆっくりと年越しをするだけだった。大晦日はA-01のメンバー全員でのんびりと迎える予定だ。大晦日と言えば、もちろん年越しそばだった。作るのは、もちだった。蕎麦は得意料理らしい。地域によってパターンは大きく異なるが、もちが選んだのは一番ベーシックな蕎麦と出汁を使ったシンプルなものだった。
ここでもちは謎のこだわりにより、完全に沈黙してしまった。それは、具材だった。
ここにいるメンバーは住む地域もエリアも完全に違う。近場は横浜、遠くいけばソ連。好みの味付けも何もかもが違っている。いくら日本に慣れているとはいえ、そのまま日本式で出すのもいかかがものかと悩みに悩んでいた。見かねたトンカッチは、もちに提案する。
「もち、具材は良い案がある。上手くいくかどうかは知らんがな」
「な、何だって!?」
そうして、トンカッチともちはヒソヒソ話を始めた。その間に、他のメンバーは新年を迎えるための準備をしていた。
と言っても、ミーティングルームを和室に変えようとしていたのだ。畳を部屋一面に敷き、何個かこたつを用意した。こたつの上にはしっかりとみかんを用意している。わざわざ晩酌用の酒もちゃっかり用意されていた。日本酒からウォッカ、ビールとそれなりの数が用意されていた。完全に酔いつぶれる予定なのだろう。
この光景だけ見れば、まさに平和な日常というのがふさわしいだろう。だが、実際にはBETAの脅威と常に隣り合わせの世界だった。
正直、精鋭部隊が酒を飲んでいて、急に戦闘となったら大丈夫なのかという心配があった。だが、こうでもしてガス抜きをしなければ疲労ばかりたまっていく。ましてやA-01は重要な部隊だ。潰すわけにはいかない。そのような思惑もあって、冬休みになっている。
そうして、準備が終わり夜になった。蕎麦だけではもったいないと鍋まで用意していた。鍋はもつ鍋にした。食材は合成食材ではなく、全て天然の物だった。そのため、味は保証されるだろう。そして、蕎麦の具材もようやく決まった。
「トンカッチ、言ってたやつは持ってきたぞ!」
「おお、よくやった!」
具材に選ばれたのは、鴨肉だった。出汁はあらかじめ用意してあった鰹節を使ったものにした。鴨肉には少し火を通しておいたが、同時にネギを焼き始めた。焼きネギと鴨肉は相性が最高だ。焼き終わった後、全ての器に蕎麦を盛りつけ、汁をその上からかける。最後に焼いた鴨肉とネギをのせて完成だ。
鴨肉は癖がなく、食べやすい。その割にはあまり食べることのないものだ。ならば、この機会に一度食べてみるのはどうだろうと思ったのだ。
配り終わるころには鍋も完成しており、酒も注がれ始めた。全員がこたつに入り待機していた。そしてみちるが乾杯の音頭をとる。
「私の復帰祝いと無事年末を迎えたことを祝して………そして戦いの中で散っていった仲間たちのために、乾杯!」
『乾杯!』
こうして年越しが始まった。もつ鍋は良い出来で、醤油ベースの出汁は寒さに震えるこの時期の体を芯から温める。さらに鴨蕎麦の方は、薄めの出汁になっておりあっさりと食べれるようになっていた。濃い目のもつ鍋、あっさりの鴨蕎麦による悪魔的コンボは食欲を加速させた。食事開始から僅か30分ほどで全て無くなってしまった。
食事を片付けてから宴会場に早変わりした。こたつを少しだけ下げて、ステージを形成した。全員酒が回ってきたのか、クオリティが最低だった。だが、バカ騒ぎという面では最高だった。
特に男性陣はそのほとんどが真っ裸になっていた。
「うっひょうおおおおお!ルンルンみちるんんんん!」
「恭子おおおお!」
「クリスカぁぁぁぁぁぁぁ!」
「水月ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「咲代子ぉぉぉぉぉ!」
全員が裸で嫁の名を叫びまわっていた。しまいには走り出す始末だった。
「おい、トンカッチ!さすがに酒が入り過ぎだぞ!?」
みちるはこの異様さが気になり、度数を確認した。そこに書かれていたのは60度だった。気になったみちると恭子、咲代子は机に置いてあった飲みかけを少し飲んでみた。
「これ原液よ!原液!」
「すごい原液よ!」
「原液ですね、これ!」
その酒をずっと飲んでいる男どもは、それは大層出来上がった状態だった。トンカッチは普段なら酒に強いほうだったが、最近の疲れからか一気に酔いが入ってしまっていた。急に机に飛び乗る。
「それでは一曲行ってみよう!せーのっ、おーれの嫁ちゃん、めちゃカワイイ!HEY!」
『おーれの嫁ちゃんめちゃカワイイ!』
「スタイル、性格、マジ最高!」
『スタイル、性格、マジ最高!』
「おっ○い!」
『おっ〇い!』
この始末だった。このまま行くと下ネタばかりの下品な歌に成り代わる、そう嫁たちは感づいた。
「おい、貴様らそろそろいい加減にしないか!限度というものもあるぞ!?」
みちるは制止しようとこたつから出たが、ふらついてしまった。若干体温が上昇している感じもあった。
「ほ、ほへぇ!?足が、ふらついている?」
久しぶりの酒だったので、こちらも大分酷くなってしまっていた。完治していない体も相まって、思わず尻もちをついてしまった。
「あいたたた…………。酒なんて飲むんじゃなかった!」
もう一度何とかして止めようとした。しかし、23時を回っていたので宴会も終わるだろうと諦めモードに入った。そして、覚悟を決めた。
「はあ………馬鹿どもを止める術は無し、か」
そう言い、まだ残っていた一升瓶をラッパ飲みした。一気に飲んだために、視界が歪んで体が一気に熱くなった。そして、ふらふらと歩いていった。
「お~い、トンカッチぃ?酒、それともわたしぃ!?」
「んぁ?あああ、じゃあみちるん!」
「りょーかい!」
そうしてみちるはトンカッチに思いっきり抱き着いた。酔っていてもトンカッチはみちるへの配慮を欠かさなかった。優しく抱きしめ返す。そしてキスをし始めた。
それに同調するように、他のカップルもイチャイチャし始めた。さすがに今までがうるさすぎたからか、通報を受けて香月が入ってきた。
「あのねえ、アンタたちちょっとうるさいって言われてるんだけ………ホヴォ!?」
しかし、黙らせるかのようにもちが香月に酒を飲ませる。というか流し込ませた。これで追加の参加者が出来上がった。
そうして24時を直前に迎えた。整備班長をわざわざ格納庫から呼び出して、カメラを持ってこさせた。記念写真を撮ろうというのだ。べろんべろんになりながらも頑張って全員がカメラ前に並ぶ。
「おっ、後10秒で年越しですよ!」
「りょーかいりょーかい!んじゃあせーのっ!」
『ハッピーニューイヤー!』
こうして、彼らは2001年を迎えた。その時に撮られた写真は、全員が服がはだけて無茶苦茶な状態だった。だが、みんな楽しそうだった。
そうして月日は流れていった。2月には新潟にBETAが上陸、8月にはカムチャツカ半島東岸部へのBETA侵攻、9月には国連軍ユーコン基地にて大規模テロも発生していた。戦争だけでなく内部争いも激しくなってきていた。そして少し肌寒くなってきた10月、ある男が目覚めた。
「…………また戻ってきちまったのか」
日常回はしばらく(おそらくこれ以上)無し
ここからは戦争です
書いている本人もよくわからない回です。正直いらない回です。ただこうでもしないと私の精神が不安定になります。
そして次回からは本編メンバーもまあ時期的に出てきますわな。
そりゃあもう2001年の10月ですからねえ。アイツ(ら)が出てきますわなぁ!?
楽しみにしててね
今回の友情出演組です。(敬称略)
ヱルム・ビャーチェノワ(@ElM_Su37UB)
もち(@mochi02913)
ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)
如月中尉(@KSRG_TSF94)