Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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実は書き忘れたことがありまして、クリスカは2001年時点ではもうA-01から離れて、TEのルート通りイーダル試験小隊にサンダーク中尉と戻っています。
ヱルムについては今回説明します。

今回、かなり長いです


第39話 新潟防衛線

 2001/11/9 滑走路

 

 この日、ついにヱルムがクリスカとの合流を図るため、A-01から離脱することとなった。盛大に祝えるほど状況は芳しくはなかったため、トンカッチともち、ジェームズが見送りに来た。

 

「俺たち、三馬鹿は離れても三馬鹿だからな?」

「たまには帰って来いよ!?」

「ははっ、もちろんだよ!……トンカッチ大尉も、今まで世話になりました!」

「今さら固く喋んなくてもいいんだぜ?……俺もお前のことは絶対に忘れないからな」

「ありがとう………みんな、ありがとう!」

 

 そう言ってヱルムは輸送機に乗り込んでいった。輸送機ということもあり荷物は大量に積んでいたが、軽快に飛び去って行った。クリスカとサンダークも今年の3月にはアラスカへと飛び立っていった。戦術機開発計画に携わっているようだ。

 

 どのような戦術機が開発されているかどうかは分からなかったが、隊のメンバーが携わっているということもあり少し誇らしかった。

 

「…………さて、俺たちも準備に取り掛かるか!」

『おう!』

 

 実はA-01には戦線移動命令が出ていた。つい最近、朝鮮半島は戦線が崩壊し陥落した。日米韓中並びに国連が総動員したが戦況は覆ることなく、朝鮮半島はBETAの完全支配地域となった。そのため、新潟などの北陸方面からの上陸が激しくなっていた。その戦力補充とのことだった。

 

 さらに、近々新潟に大規模上陸の可能性があるとの謎の情報があった。出所不明というのが若干怪しかったものの、国連軍認可の情報だったので信頼性はあった。今回はその対策でもある。

 

 A-01は国連軍横浜第1戦闘中隊として新潟に参戦することになった。戦力はA、Bともに参戦する。機体は全員不知火に置き換えられており、村雨や秋月、専用機などは温存することになった。前線では専用機の補充パーツ供給が追い付かないからだ。不知火ならまだ間に合っている。

 

 そして、A-01は新潟へと向かうことになった。

 

 

 2001/11/10 20:00 帝国軍新発田基地

 

 現在の新発田基地は国連・帝国の両軍共同基地になっていた。警報の一つでもあればここから出撃することになる。夜はさすがにBETAも侵攻をやめている。だから静かな夜だった。トンカッチはコーヒーを片手に戦術機から日本海の方向を眺めていた。暗くて何も見えなかったが、朝になれば恐らく奴らは来るだろう。だから今は何もないこの海を眺めていたい。

 

 ボーっとしていると、下からビルストが話しかけてきた。

 

「大尉、ご一緒にどうです?」

 

 手には夜食を持っていた。時計を見ると、かなり時間がたっていた。下に降りて夜食を食べることにした。ビルストは飯を食いながら少し恥ずかしそうにトンカッチに話し始めた。

 

「………実は大尉、俺最近彼女ができたんですよ。で、この作戦が終わったら結婚しようかなって思ってて」

 

 思わずトンカッチは飯を吹き出してしまった。

 

「おまっ!…そういうのは死亡フラグっていうんだよ!?絶対にやめとけ!いや、やるにしても口に出すんじゃない!」

「でも凄くその子かわいくってヤバいんですよ。ほら」

 

 そういってビルストは写真を見せてきた。写真にはビルストと彼女の2ショットがあった。確かに彼女はかわいかった。それこそ、美女グランプリとかあれば優勝候補だったくらいだった。だが、先ほど言ったように、戦場で彼女関連のことを話すのは死亡フラグになる。

 

 これは一種のジンクスのようなものだ。誰も逃れることができない。トンカッチはそれだけは回避したかったのでビルストに、「嘘でもいいから作戦中は結婚したくないと言い続けてくれ」と懇願した。一度立ったフラグを戻すのはかなり大変だが、やらないよりはましだ。だが頑なにビルストはそれを拒んだ。そしてボソッと言った。

 

「…大尉は何のために戦っているんです?」

 

 あまりにも小さい声だったためトンカッチは聞き取れなかった。もう一度聞き返したがそれを無視するようにビルストは話を変えた。どうやら彼女は第1軌道降下旅団の衛士の一人だったそうだ。しかし気がかりだったのは、話しているときのビルストの顔はどうにも暗かった。顔は笑っているが、声が明らかに沈んでいたのだ。

 

 そこからしばらくビルストは彼女の良さを語り始めた。それに負けじとトンカッチもみちるの良さを語り始めた。その談義は夜遅くになるまで続いた。ずっと話していたのを見つけたみちるは、また二人で馬鹿をやっているんだろうと無視をしようとしたが、気になったので近づいてみた。

 

 聞き耳を立ててみれば、トンカッチがずっとみちるの良さを語り続けているので、思わず恥ずかしくなって急いでその場を離れていった。

 

 

 11/11 5:00

 

 新発田基地にけたたましい警報が鳴り響いた。警報音はBETA接近の警報音だった。すぐに強化装備を着替え、戦術機の準備をする。どうやら大陸側からの入水報告が遅れて通達されたそうだ。進軍方向はこの新潟だった。

 

「畜生、何でこんなに報告が遅れている!」

 

 基地司令が悪態をついていた。司令部内でも慌ただしく戦闘に備えていた。遅れた原因は、観測装置の配置数不足だった。食い破られた地点の補填が間に合っていないのだ。だが、事前情報のおかげで帝国海軍が早急に漸減作戦を開始していた。海中を進軍するBETAに対し、必死に爆雷や魚雷、対潜ミサイル(ASROC)などで抵抗する。しかし、そのすべてが徒労に終わった。侵攻中のBETAの1割も削ることができなかったのだ。

 

 近海の機雷群まで起動し始めた。第1波と第2波は駆逐に成功したが、第3波は半数も減らすこともできなかった。

 

「BETAが海岸に上陸!」

「地上部隊、迎撃開始!」

 

 海岸沿いに並べられた戦車やロケット砲が一斉に火を噴いた。戦術機よりも単純火力がある通常兵器はその火力をもって上陸したBETAを粉々にしていく。第3波は上陸から15分足らずで全滅した。この時点でどの部隊にも被害は無かった。珍しく戦術機の出番もなかった。というのも光線級が1匹もいなかったということだった。

 

 A-01は最前線にいたものの、何もせずに待機していた。みちるが全員に確認を取る。

 

「いいか貴様ら、地上戦力が全て薙ぎ払ったからといって気を抜くなよ?まだまだ奴らは上陸をしてくるからな!」

『了解!』

 

 一応整備画面を開き、各部の機体ステータスを確認した。戦闘をしていなかったので全く異常は見られなかった。久しぶりの不知火なので若干不安だった。機動性はいつものに比べれば劣っている。OSは全機XM2Jに更新されている。まだその点で一般衛士よりはマシだった。

 

 しばらく休憩していると、警報が鳴った。方向は海上だった。

 

 

 6:00 新潟近海

 

 洋上迎撃部隊の第34、55、56機動艦隊は海中に潜むBETAに対して再び攻撃を仕掛けようとしていた。艦隊旗艦は第34機動艦隊のミサイル駆逐艦『天霧』だった。艦隊のほとんどが残弾が心もとなくなっていた。ASROCはすでに撃ちきっており、残っているのは誘導対潜爆雷だけだった。

 

 この爆雷は有線により誘導することができる。限界距離が来ると無線誘導に切り替わる。高価ではあったが、高い性能と爆薬量を有している。最後の最後まで温存していたが、そろそろ要塞級も出てきそうなので投下することにした。

 

「艦長、全弾投下準備完了です。いつでも指示を」

「まだだ。水測員、海中はどうなっている?」

「足の遅いやつが先行している…もう少しで後方のBETAと重なります!」

「よし、その瞬間に投下しろ。タイミングは水測員の中尉に一任する!」

 

 中尉は注意深く音を聞いていた。その音は確実に海中を移動するような音だった。だが、聞きなれない音もした。スクリューの音だった。作戦海域には国連軍の通常動力型潜水艦『ニール』がいた。だが担当区域を大きく外れていた。すぐに通信員がニールに回線を開く。状況を聞くと、担当区域にBETAが来なかったため増援に来たそうだ。相変わらず国連軍は統率が取れていない。そう艦長は毒づいた。

 

 ニールに対し速やかに退けと勧告した。だが頑なに退こうとしなかった。というのも、ニールは最も効果的にBETAへの攻撃ができていた。なので、魚雷を撃ちきるまで待てと逆に通告された。BETAの種類まで観測できているそうだ。

 

 観測係としてなら有能だが、現状最大火力の誘導爆雷を放ち一気に葬りたい帝国側としては無能の極みだった。しばらく天霧はニールともめていたが、プツンとニールとの通信が途絶えた。

 

「……畜生、耳がいかれるところだったぜ!艦長、ニールが爆沈しました!」

 

 潜水艦の爆沈は乗組員が全員戦死したということにもなる。だが、原因がよくわからなかった。帝国側の散布した機雷は既にそのエリアにはなかった。つまりBETAからの攻撃としか言いようがなかった。この海の深さで考えられる攻撃は要塞級の衝角によるものしかない。ニールの爆沈地点はちょうど天霧以下艦隊の付近だった。爆発による水柱も発生した。

 

「全艦艇、急ぎ爆雷投射しろ!」

「り、了解!」

 

 すぐに爆雷が射出機から放たれた。完璧な誘導により全弾が指定地点まで降下し、滞留を始めた。爆発による影響を避けるためすぐに投下地点から離れる。退避完了を確認したのち、起爆した。

 

 ひときわ大きな水柱が立て続けに発生した。爆音が鳴りやんでから中尉は再び確認した。だが、音は最悪の状態を鳴らしていた。

 

「………要塞級の動く音が第56艦隊の場所からしています!」

「第56艦隊、急速退避!急げ!」

 

 艦長が叫ぶも、その直後に第56艦隊のミサイル駆逐艦『冬月』が船体を両断されていた。その隣にいた同型艦『照月』も艦橋を衝角により貫かれていた。すぐに全艦隊が襲撃された地点から退避行動を開始した。だが、少し遅れたフリゲート艦『稲木』が新たなる犠牲となった。

 

「……洋上艦隊はこれより海域を離脱!」

 

 天霧艦長はすぐに撤退判断を下した。沖合から見ていると何もできずに撤退していくように見えてしまっていた。実際に効果はあったものの、得られた戦果としては要塞級の存在を確認したのみに過ぎなかった。

 

 

 6:30

 

 艦隊が撤退を始めた6:30には要塞級を含めたBETA主力群が上陸を開始した。機甲部隊は第3波のときに弾薬を消耗しており、補給の必要があった。その補給の時間を作るために戦術機部隊が光線級、要塞級の排除のために戦闘参加した。

 

 要塞級はまだ光線級を排出していなかったが、それも時間の問題だった。戦車級が砂浜を埋め尽くしており、それに気を取られていると突撃級の突進にひき殺されてしまう。主目的は要塞級とはいえ、あまりにも邪魔が多かった。

 

 機甲部隊の補給までの時間稼ぎだったが、このままやっているといずれ完全に上陸されるのは目に見えていた。帝国軍の戦術機も頑張ってはいるが、いかんせん撃震が大半だったのですぐに捕まって食われていた。じりじりと戦線は後退しており、A-01の区域でさえ苦しくなっていた。

 

「伊隅大尉、このままでは包囲される可能性があります!一時撤退しましょう!」

「駄目だ、まだいける!ここで退いたら本当の地獄が始まると思え!」

『了解!』

 

 何とか保っているが、既にほとんどの機体が突撃砲を放棄して長刀に切り替えていた。司令部からの連絡も「死守せよ」の一点張りだった。補給する余裕はなかった。さすがのみちるもこのままでは危険だというのは分かっていた。だが、司令部命令の通り、死守しなければ新潟だけでなく帝国本土に再びBETAの脅威が迫る。

 

 みちるは何とかして打開策を見出そうとした。だが、全くその方法を見つけることはできなかった。全てを破壊できるような兵器、それこそ核を使うことになるだろう。だがそれではぬぐい切れない傷が残ってしまう。クーデター事件の時に使用された戦術核は半径1kmを焼き尽くす能力を有していた。しかし、それを大量に使用すれば汚染区域となるのは間違いなしだった。

 

 悩んでいたところ、ようやく司令部から追加指令が来た。

 

「機甲部隊の補給が完了した。戦術機部隊は補給のために撤退せよ」

 

 ようやく補給のめどが立ったのだ。すぐに撤退を始めたいが、他の戦術機部隊が気がかりだった。そのため、殿(しんがり)が必要だった。

 

「俺が行きます!」

 

 ここで如月が殿を務めようとした。駒木もそれに倣った。だが、二人とも損耗度が酷かった。何なら一番先に撤退させるべきだった。見たところ損耗度が低いのはトンカッチとみちるだった。

 

「みちる、俺とお前で何とか殿を務める。その間の指揮はジェームズに任せる」

 

 そう言ってトンカッチとみちるは殿として戦闘を継続した。

 

「そこの撃震、動けるならさっさと後退しろ!」

「すまない、恩に着る!」

 

 必死に残った長刀を振り回していた。助けれる限りは助けた。だが、限界が来ていた。

 

「あぁくそ!長刀が折れやがった!普段折れることないんだぜ!?」

「多分粗悪品でも掴んだんでしょ!?短刀使いなさい!」

 

 しかし、短刀では分が悪かった。小型種は殺せるものの、大型相手は無理だった。途中何回か突撃級にひき殺されそうだった。そのたびに推進剤を使うので、もう限界が来ていた。

 

「……ここまでかな。申し訳ないが、殿はここまでだ!」

 

 2人は急いで後退した。道中で補給を済ませたA-01や他の戦術機部隊とすれ違った。さらに、機甲部隊も海岸沿いに展開し砲撃を再開していた。戦線は砲撃により再び押し上げられていった。やはり、砲兵は戦場の女神というのは本当らしい。とにかく急いで補給をしなければならない。燃料を半分ほど注入した時、前線の風間から緊急連絡が入った。

 

「伊隅大尉、光線級が出現しました!ジェームズ少佐が対応に当たっていますが、数が多すぎます!」

 

 どうやら要塞級の排除に失敗したそうだ。それだけ要塞級の周りのガードが強かったということだ。すぐにでも戦場に復帰しなければならなかった。武装コンテナを見た。そこにはとある武器が置かれていた。

 

「…………これ、使えるんじゃね!?」

 

 

 6:52

 

「おい、もちこっちに来い!手が足りねえ!」

「やれやれ、今行きますよ!?…滅殺!」

 

 ヱルムが欠けたとはいえ、彼らは精強な人員だった。しかし、光線級の排除に行こうとしていたが、周りの小型種のせいでなかなか排除できなかった。他のメンバーが必死に道を作っても、その穴を埋めるようにBETAは攻めてくるのだ。

 

「すまない、遅くなった!」

 

 少したってからトンカッチたちが戻ってきた。2人の機体の背中には大きな得物が担がれていた。それはA-01の補給地点にのみ配備されていたものだった。試製99式対要塞級大型長刀、通称要塞級殺し(フォートスレイヤー)を装備していた。試製99式は大型種相手以外にも薙ぎ払うように使うことで一気に掃討できる。

 

 小型種には横に薙ぎ払うようにする。突撃級や要塞級などの大型級には叩きつけるように縦に振り下ろす。戦線は一気に人類側有利となった。扱いの難しさ、後隙の多さがあった。しかし、それを他の誰かがカバーすればいいのだ。そうやって次々にBETAを蹴散らしていく。

 

 そして、恐ろしいことに極太のレーザーが機甲部隊の一部を焼き払った。照射位置は浅瀬からだった。データ参照すると、超光線級だった。機甲部隊が狙いを超光線級に集中させる。だが、それを見透かしたかのように薙ぎ払いながらレーザーを放つ。

 

「機甲部隊の8割が蒸発しました!残っているのは後方のMLRS部隊のみです!」

 

 そのMLRS部隊も予備のロケット弾が無くなっていた。残っているのは1斉射分だった。光線級がロケットの大半を迎撃していたが、わずかばかり撃ち落されなかったロケットは一気にBETAを破壊した。そして残弾が無くなった彼らは撤退を始めた。それに準じて、別の機甲部隊も撤収を開始した。

 

「撤収を開始し始めたか…。司令部は何か言っているのか?」

「司令部が増援を要請している。後10分で来るそうだ!」

「了解した。5分だけ持ちこたえるぞ!?」

『了解!』

 

 司令部の用意した増援は所属こそ不明だが、規模としては旅団規模だそうだ。それほどの戦力があれば、きっと戦局が覆るだろう。そう信じて必死に戦い続けた。優先目標として指定されたのは光線級系統だった。

 

「ジェームズ、もち、お前ら何とかして俺とみちるの道を作ってくれ!」

「はあ!?ただでさえこっちは忙しいんだよ!光線級より先に貴様を撃ち抜いてやろうかぁ?ああん!?」

「そうだぞトンカッチぃ!道を開けるならお前が開けろってんだよ!こっちの方が近いんだぞ!?」

 

 2人はかなりキレていた。だがそれをみちるが鎮めた。

 

「すまない、私からもお願いしたい。…頼めるか?」

『了解!伊隅大尉のご命令とあらば何なりと!』

「俺の時はブチギレてたのに…………」

 

 命令を受けた2人は最期の力を振り絞って道を切り開いた。訓練で得たタフさのおかげでギリギリ戦えている。戦車級が若干機体にとりつき始めたが、気にせず戦闘を継続した。そしてついに道が切り開けた。

 

『行け、二人とも!』

 

 一気に機体を上昇させ、上段の構えを取る。狙いは超光線級とその隣の要塞級だった。

 

「みちる、3か月前にやった()()やるぞ!」

「分かったわよ!アレはできるだけやりたくないんだけどね…!」

『難度C、空中同時反転全力噴射(ブーストリバース)!』

 

 上昇後、空中にて互いの機体を蹴り、片方が急加速にて降下する。位置エネルギーにより、さらに効果的に要塞級などの硬い相手にダメージを与えることができる。だが、機体負荷は尋常じゃない。さらに、空中に残った機体は格好の的だ。だから、トンカッチは空中に残る役目を買った。

 

 思いっきりトンカッチがみちるの不知火を蹴る。

 

「やっちまえ、みちるぅ!」

 

 直後に、トンカッチが真下にいた照射準備をしていた超光線級に試製99式を投げつけて撃破した。これで無防備になる。だが、みちるは一気に加速をしたまま振りかぶった。

 

「これでおしまいだBETAどもぉ!」

 

 上空から舞い降りる戦乙女(ヴァルキリー)の刃は、地を這う悪魔(要塞級)を深く貫いた。血飛沫により、青の不知火は紅に染まっていた。

 

 もはや戦乙女というよりは、堕天使(ルシファー)の方がふさわしいのかもしれない。それを証明するかの如く、トンカッチも降下してきた。跳躍ユニットを翼のように広げ、ゆったりとだった。そして、地面に深々と突き刺さった試製99式を引き抜く。しかし、機体の限界が来ていた。もう長刀を振ることはできない。

 

 腕が壊れることを承知で二人は試製99式を横回転をかけて投げ捨てた。速瀬たちが合流して、退路を確保してくれていたので撤退することに成功した。その数秒後に司令部命令が下された。

 

「これより軌道降下部隊が投入される。指定範囲内から離脱せよ」

 

 ちょうど光線級の大半を始末できていたので、その問題も心配なかった。だが、軌道降下部隊とは一言も聞いていなかった。さらに、司令部からの音声が先程までの人とは違っていた。

 

「トンカッチ、これはもしかしたら…………」

「ああ、恐らく上層部の何かしらのシナリオなんだろうな」

 

 そのとき、ビルストが秘匿回線で話しかけてきた。

 

「大尉、申し訳ありません。実は、今回このようになることを俺は知っていたんです……」

 

 ビルストは衝撃的なことを話し始めた。どうやら日本政府は、在日米軍強硬派を抑えるために軌道降下部隊を用意していたそうだ。強硬派は核やG弾を使おうとしていたが、政府はそれを止めるべく通常戦力による戦闘の終結を図ろうとしていたのだった。だが、地上部隊では抑えきることができなかった。そのため、政府は最終手段として地上戦力を囮として利用し、降下兵の地点確保に努めさせようとしていた。

 

 もちろん、そのようなことは地上部隊には知らされていなかった。ただ一人、ビルストを除いては。ビルストもこのようになることを当初は知らなかった。だが、昨日の夕方に彼女から連絡が来ていた。どうやら彼ら降下兵たちにもギリギリまで知らされていなかったそうだ。

 

 彼女は降下地点がビルストが戦闘している地点と知ると、条件付きで許可を得て連絡をした。条件は、ビルストが降下兵が来るということを知らせてはならないということだった。ビルストは、その条件をしっかりと守り続けていた。空を見ると、何かが赤く光っていた。もう彼らは迫っていた。

 

「……ビルスト、そのことについては仕方ないさ。政府の連中も最終手段として準備していただけに過ぎないってことだ」

 

 そして、見覚えのある機体とすれ違った。ジェームズは特にそれを知っていた。

 

「あれは…………テンペストか?それに随伴機のF-5までいるじゃないか。誰が乗っている!?」

 

 機体コードは国連軍の物ではなかった。だが、所属は不明のままだった。通信を呼び掛けても何も返ってこなかった。そして彼らは降下直前までの地点確保継続のための戦闘を開始した。

 

 A-01は退避を完了していた。だが、ビルストは気が気でなかった。

 

「大尉、俺やっぱり戻りたいです。どうしても彼女が心配で…」

 

 だが、これ以上戻っても何もできないことをビルストもわかっていた。あとはテンペストと降下兵の腕に任せるしかない。しかし、テンペストから文章による応援要請が来た。マップを見ると、まだ撤退できていない部隊もいた。その回収だろう。

 

 みちるは少し思案した結果、ビルストと如月、駒木を派遣させることにした。本来なら全員で戻りたいが、かえって邪魔になるし、彼ら3人は部隊の中でも特に撤退戦においてはプロだった。そのため、戻ってこれるだろうと判断したからだ。また、ビルストをこのままここに待機させておくのも酷な話だと思ったからだ。

 

 

 6:55

 

 ビルストたちは撤退支援を開始した。残された時間は約7分。出来るだけ多くの将兵を助けながら、彼女たちの降下する地点を確保しなければならないと若干彼らは焦っていた。

 

「駒木中尉、そっちに突撃級が向かっていった!」

「了解!如月、背後は任せた!」

「任されたよ!」

 

 残弾は他のメンバーから譲り受けたので何とか保たせている。しかし、撤退支援というのはどうにもやりづらかった。彼らのほとんどが戦闘不可能で、士気も保てていなかった。だからなかなか動き出そうとしていなかった。如月が無理やり動かそうと倒れて動けない味方機を立ち上がらせようとした。そのとき後方からの警報音が鳴り響いた。

 

「如月、後方より要塞級!」

 

 後ろを見ると、要塞級が衝角を向けていた。そして、高速で射出された。機体を回転させて要塞級に前面を向けた時には、目と鼻の先まで衝角が迫っていた。この時、如月は死を覚悟していた。後ろにいた撃震の衛士も同様だった。だが、その衝角は2人を攻撃することはなかった。

 

「畜生…………これは、まずい………な」

 

 ビルストが身を挺して守っていたのだ。しかし、その代償はあまりにも重すぎた。衝角は管制ユニットを貫通していた。溶解液は排出されていなかった。だが、その先端はビルストの腹部を深々と抉っていた。ビルストは視界がぼやけていることに気づいた。腹を見れば出血が止まらなかった。シートには血がべったりとついていた。

 

 すぐに機体に刺さっていた衝角を切り離す。だが、もう動ける状態ではなかった。如月は目の前でそれを見ていた。

 

「おい、ビルスト?冗談だろおい!?死ぬんじゃねえぞ、おい!俺の代わりに死んだとか言い始めたら許さねえぞ!?」

 

 如月は倒れ掛かったビルストの機体を抱える。駒木がその間に撤退を支援していた。上手くいっているようだった。

 

 ビルストはぼやける視界の中、正面に光線属種が照射準備をしているのを見つけた。

 

「………きさ、らぎ。もう結構だ。お、おれは目の前の奴を、ゴハッ!…………排除するのみ!」

 

 そう言ってビルストは跳躍ユニットのリミッターを解除した。薄れゆく意識の中、はっきりとわかっていたことがある。このままだと、彼女はレーザーに焼かれて死ぬ。

 

「俺は、これ以上………これ以上大切なものを、何も奪わせはしないからなぁ!」

 

 鎮痛剤をありったけ投与し、不知火に長刀を握らせる。それを見た駒木は異常事態を確認した。

 

「…まさか!如月、今すぐにビルストを止めなさい!彼は死ぬ気よ!?」

「駄目だビルスト!戻れ!」

 

 制止する声を無視し、光線属種の群れへと突撃する。マップで観測していた他のA-01メンバーも制止するも全く止まらなかった。もう時間もない。だが、ビルストは止まらなかった。

 

「奪わせるものか、奪わせてたまるかぁ!」

 

 初期照射を開始した個体から排除する。だが、当然のごとく妨害が開始された。要撃級が前腕で左主脚を破砕する。それを無視してでも、光線属種を殺し続けた。しかし、とうとう限界が来た。

 

 右主脚を破壊され不知火は仰向けに倒れてしまった。それを貪り食わんと戦車級が這いずり登ってくる。

 

「あいつは………あそこか?…へへっ、絶対に守ってやるからな?」

 

 彼女の姿を確認したビルストは、S-11の起動スイッチのカバーを外した。起爆すれば光線属種はまとめて吹き飛ばせること間違いなしだった。そして、オープンチャンネルに切り替えて、最期の言葉を言った。

 

「…みんなは何で戦ってるか、その理由を見つけれたか?…………俺は、見つけれたぜ?」

 

 そう言って回線を閉じた。

 

「自爆魔の最期としては………悪くないかな」

 

 最後にそう言い放ち、サムズアップをしてからビルストはS-11を起爆した。

 

 辺り一帯をS-11は吹き飛ばした。BETAはもちろんだったが、ビルストもだった。




作者本人も忘れないようにするため、『現在の』A-01メンバーについてまとめます


伊隅みちる:大尉、A-01第1隊長、A-01A所属
伊隅トンカッチ(トンカッチ・オノシロ):大尉、A-01第2隊長、A-01A所属、同部隊部隊長

涼宮遙:中尉、A-01所属、CP将校

速瀬水月:中尉、A-01A所属
宗像美冴:中尉、A-01A所属
風間祷子:少尉、A-01A所属
柏木晴子:少尉、A-01A所属
涼宮茜:少尉、A-01A所属

ジェームズ・スミス:少佐、A-01B所属、同部隊部隊長
もち:少佐、A-01B所属
ヱルム・ビャーチェノワ:少尉、A-01B所属、現在離脱中
ビルスト:中尉、A-01B所属
如月:中尉、A-01B所属
駒木咲代子:中尉、A-01B所属
崇宰恭子:大尉、A-01B所属
クリスカ・ビャーチェノワ:少尉、A-01B所属、現在離脱中
イェージー・サンダーク:中尉、A-01B所属、現在離脱中


こんなところじゃないかなと、はい
友情出演組は他にもいますが、今回はA-01のみです
多いですね()
次からは武ちゃんとの絡みも少し増えてきます
というか原作に大分近づいてきます
以上


今回の友情出演組です。(敬称略)

ヱルム・ビャーチェノワ(@ElM_Su37UB)
もち(@mochi02913)
ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)
ビルストと戦術機好きの男(@Yuki90300757993)
如月中尉(@KSRG_TSF94)
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