Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ! 作:tonkacchi
2001/11/12 横浜基地
A-01は新潟での戦闘を終えて、11日に帰還した。軌道降下旅団による攻撃により盤面は一転して優勢に変わった。まず、降下ユニットによる質量爆弾が功を奏していた。また、政府の要望通り全機出動していた。つまり、戦術機の数がかなり多いのだ。また、光線属種がビルストの自爆により全滅されていた。そのおかげもあり、降下兵たちはBETAを掃討することに成功した。
戦闘終了後に急いでビルストが自爆した地点に集まった。もちろん、彼の機体と体は残らず灰となっていた。その時、ビルストの彼女と遭遇した。彼女には一番近くで見ていた如月が事の顛末をすべて話した。彼女は泣きそうになるのを必死にこらえてその場を去っていった。
帰っている途中、ずっと如月は泣いていた。
「俺が、俺がもっと動けていたら…………!俺があいつを殺したんだ!」
ずっとこのようなことを繰りかえし言っていた。そして、彼の叫びを止める者はいなかった。
3人目の犠牲者が出てしまった。同じ部隊のメンバーが戦死することはよくあることだが、彼の場合は数年間共に戦ってきた仲間だった。それだけに皆に植え付けられた傷は深かった。
トンカッチは、自室に戻り今回の報告書を書いていた。内容のほとんどは事務的なものではあったが、特筆事項に香月副司令との面談を希望しておいた。彼女からは色々聞いておきたいことがある。書き終わると、C型軍装に着替えて外に出て行った。向かった場所は、ビルストの部屋だった。
トンカッチはビルストの遺品を持っていった。彼の部屋に残されていたものを選んでみた。彼女とビルストのツーショット写真は、少々迷ったが入れておいた。まだ彼女は死んではいないが、1人で逝かせるのも酷な話だろう。だから形だけでも一緒に居させてあげたかったからだ。他にも、机の上に置いてあった彼自作のS-11のプラモデルを持っていくことにした。フルスクラッチではあるが、かなり精巧に作られていた。1/144スケールだった。埋めるときに全く問題ない大きさだった。
それらをもって桜の木の下に向かう。既にA-01は集まっていた。わざわざ香月が儀仗兵を呼んできてくれた。
「横浜第4保安警務中隊第2小隊、香月副司令の要請通り到着いたしました」
本来なら保安兵として活動している彼らだが、こういった式典の時には儀仗兵として行動する。思えば田島と村上の時はここまでしなかったのにもかかわらず、ビルストのときは盛大にやろうとしているのは少し疑問だった。
「任務を全うしたビルスト少佐に対し、敬礼!」
今回は公的部隊としての参加だったがためにビルストは戦死かつ二階級特進だった。もっと早くから公的部隊として動けていればあの二人も浮かばれただろう。そして彼らはビルストとの思い出を語り、少しして解散しようとした。
みちるはトンカッチと帰ろうとしていたところを、如月に引き留められた。
「伊隅大尉、少しお話が」
内容はA-01からの離脱だった。というのも、帝国軍からの帰還命令が下されたのだ。一応、任意での帰還だった。残ることも可能ではあった。だが、先の戦闘のこともあり彼は負い目を感じていた。そのため離脱を希望したのだった。
「処理はこちらの方で済ましておく。今まで作戦に従事してくれてありがとう」
解散前に再び全員を集めて、このことを伝えた。そして、今度こそ解散した。
13:00
トンカッチは昼食の後に自室に戻っていた。しばらくすると、電話がかかってきた。香月からだった。どうやら今からすぐに面談を開始しようというのだ。トンカッチはすぐに向かった。
「トンカッチ大尉です。入出許可を」
「分かってるわよ、入りなさい」
そうしてトンカッチは香月と面談を始めた。質問の内容としては、わざわざA-01を展開した理由と、軌道降下旅団の参戦についてだった。
まずA-01を展開したのは香月の独断だった。というのも、新潟に近々上陸されるのはとある人物からのリークだったというのだ。少ない戦力で効果的に殲滅するにはA-01のような精鋭が必要だった。
次の質問について、これは香月も知らされていなかった。ある人物も知らなかったそうだ。このようなことは予定になかったそうだ。ただ、別の情報提供者曰く、政府と交渉の結果だったそうだ。結局得られた情報は全部わかりきっていた情報ばかりだった。
もちろん納得いくわけがなく、しばらく問い詰めてみた。だが、香月もこれ以上は探りを入れることができなかったと言って結局情報の進展はなかった。だが、別の情報を得ることができた。
「代わりにいい情報をあなたにあげるわ。今、政府への不信度は再び高まっている。このまま行くとそうね、12/5くらいにクーデターの一つでも起きるかもしれないわ。……それに備えなさい」
それを言ったのちに新聞を見せてきた。そこには、地上部隊が降下部隊の囮として利用され、それを決断したのが帝国政府だったという文言だった。
「…………また、このパターンですか」
「そうね、このままだと5・15と同じになるわね。だから備えなさいって言ってんのよ」
そして、今回の作戦についての報告もついでに済ませてトンカッチは部屋を出て行った。自室に戻ろうとすると、訓練生の格好をした男とぶつかってしまった。
「ああ、すまない!大丈夫か?」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません大尉!………もしかして、トンカッチ大尉ですか?」
訓練生は武だった。どうやら彼はA-01が新潟に向かっていたことを知っていたようだ。しばらく雑談をしていた。すると、武は周りをきょろきょろし始めた。
「大尉、今から俺の言うことは信じてくれなくてもいいです。ですが聞いてください」
武の眼は覚悟を持っていた。つまり本気だ。
「俺は……別の時間軸から来たんです」
武はつづけた。どうやら彼はこの後起こることを知っているそうだ。だから今回の新潟も知っていた。この後12/5にクーデターが発生する可能性があることも。さらに、甲21号攻略のための大作戦が行われて、そこで柏木やみちるが死んでしまうということもだ。その後は横浜基地襲撃、それを乗り越えた先に桜花作戦という名の甲1号ハイヴ攻略作戦が行われる。ここで武の記憶は途切れているそうだ。
しかし、彼の話はいくつか矛盾点を持っていた。まず、彼の世界線の歴史よりこちらの世界線の方が数年先を行っていた。2001/12/5に発生するクーデターの主犯は沙霧大尉だった。しかし、沙霧主犯のクーデターは2000/5/15に発生していた。彼に至ってはたまに面談をしているが、明らかにそういった様子はなかった。
甲21号作戦も2000/1/5に既に行われている。これも武の世界線より2年ほど早く行われていたのだ。
彼も歴史上としてしか知らないそうだが、横浜ハイヴの攻略も3年ほど早まっていた。つまりバラバラなのだ。武もそこに違和感を覚えていたそうだ。本来なら少し前に任官している人物がかなり前に任官しているとのことだった。また、トンカッチという人間は存在していなかったそうだ。A-01Bも存在していなかった。
これらのことから、かなり違った世界線であることが証明された。しかし、武が来てからその歴史はだいぶ武のいた世界線に寄ってきた。つまりは、武の世界線を基準にしていけば人類は勝てるかもしれない。
それからしばらくトンカッチは武とその話をした。香月にもこの話は伝えられている。さらにこの話は他にはトンカッチしか知らされていなかった。こんな話をみちるにでもしたら、笑われるだろう。だから、これ以上広めないように固く約束した。
ただ、トンカッチは12/5までに何とかしておかなければと思った。そして武と別れた。
11/25 帝都某所 22:00
そこには帝国軍の軍服を着た将校が数名、そして斯衛軍もいた。さらに、斯衛の一人には青色の服、つまり五摂家の一人がいた。
「やはり政府は腐っていますね。連中、前線の将兵のことを何も考えていない」
「確かに奴らはもう駄目だ。去年のクーデターからまるで成長していない。最近では米軍ともつるんでいるそうだな。全く、前回の首謀者だって米軍だというのに何故だろうな!?」
「あいつら命を何だと思っているんだ!……国連まで囮として使うなど言語道断だ!帝国の未来を潰す気か!?」
彼らは現政権に対する不平不満を述べていた。情報に最も近しいもの同士の会談でもあった。そして五摂家の人間が口を開いた。
「まあまあ諸君、落ち着いて。ここでグダグダ喋っていても埒が明かない。だから計画について話そうじゃないか」
そう言うと、机の上に地図が開かれた。そこにチェスの駒を置く。
「まず、帝国軍の
「彼らの政府に対する復讐心は激しいものですからな。扱いやすくて逆に困ります」
チェスの駒は、帝都城に置かれた。
「それでは斑鳩殿、後は我々にお任せください」
「わざわざすまない。ぜひ頼む」
青の服の人間は、斑鳩崇継。五摂家の一人だった。
崇継は会談場所を離れる前に、服を着替えて一般のサラリーマンの格好になった。後ろにいた赤色の斯衛の男もスーツに着替えた。
「崇継様、彼らもまた操りやすかったですな」
「真壁、そう彼らを悪く言うな。悪く言うなら現政権にだな。………彼らは前線将兵を自らのアピールのために使い過ぎた」
実は彼らが獲得していた情報は、トンカッチやビルスト、降下兵たちに知らされていた情報とは別だった。そして、真実は彼らの獲得していた情報だった。
真実とはこのようなものだった。米軍の強硬派からの圧力は存在していなかったのだ。榊首相は若干険悪化していた国連との関係を改善するためにパフォーマンスを実行することにした。それは、国連軍に対して華々しい戦果を譲り、国連軍が優秀な素晴らしい兵たちであることを証明することだった。このようなことが前線兵に知らされればたまったものではない。だから、実際に戦う兵には仕方なくプランを実行したという形にしていたのだ。
そして実際にプランは実行された。結果として国連側は満足のいく結果となったため、これまで以上の支援を約束してくれた。だが、これは内通者によってリークされてしまった。さらにその情報は、反政府勢力にだけ届いてしまった。
もちろん彼らにとっては好都合な情報だった。この情報をもとにして、彼らはクーデターを企てようと画策していた。
実行犯に選んだのは、権田直樹
その後、権田は自分をここまで追い詰めた帝国に対して恨みを持っていた。しかし、実行するには戦力が足りていなかった。だから、ずっと息を殺して潜んでいた。しかし、彼は帝国の情報網を侮っていた。ついに身元がばれ、結果として斯衛軍に捕まえられた。だが、崇継にとっては良い駒だった。だから彼に戦力を与えて、都合のいい部隊として扱うことにした。
そして、この一連の計画を企てた主犯は斑鳩崇継だった。彼の思惑は単純だった。クーデターを実行してもらい、自分はそれを討伐する。これにより、自分が討伐部隊の旗頭、つまり政権に対して大きな発言力を持つことを目的としていたのだった。簡単に言えば、自作自演だ。
この思惑は決して身内の斑鳩派以外には知られてはならない。だがその点においてはあまり心配しなくてよかった。そもそも崇継自体がカリスマ性を有しており、圧倒的に信頼されているからだ。
結局、今回の会談では実際の戦闘計画を練ることにも成功した。そして、斯衛軍本部へと戻った。
戻ると、ちょうど恭子がいた。彼女もA-01からの帰還命令を受けて、一昨日に斯衛軍に戻ってきていたのだ。
「あら、随分遅かったですね。おまけにスーツなんて着て、五摂家の一人ともあろうお方がそのような格好をしてどこに向かっていたのやら」
「まあそう怒るな。私だってたまには外に出たい。君だって、君の夫に会いに行かなくていいのか?」
そう言うと、恭子は露骨に不機嫌そうな顔をした。
「召還命令を出したのはあなたでしょうに………」
そう言って恭子は執務室を出て行った。
恭子は斯衛軍本部から離れて行って、軍用固定電話に走っていった。とあるパターンを入力して秘匿回線に切り替え、電話をした。
「はい、こちらは帝国情報省外務二課です。この回線を知っているということは………」
「ええそうです。私は斯衛軍所属、崇宰恭子です。鎧衣課長に頼みたいことがあります」
そうして、恭子は鎧衣に仕事を依頼した。内容は、斑鳩崇継の身辺調査だった。
崇宰恭子は今回からは斯衛に復帰しました。つまりA-01から離脱しました。
駒木、如月も帝国軍に戻るために離脱しました。
今回かなり離脱者が多いのはご愛嬌といったところで
今回の友情出演組です。(敬称略)
ビルストと戦術機好きの男(@Yuki90300757993)
如月中尉(@KSRG_TSF94)