Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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最近めちゃくちゃ1話あたり長くてすみません。
今回も長いです。


第43話 伊豆防衛戦線

 2001/12/5 18:45

 

 伊豆では迫りくる敵機の確認を急いでいた。E1、E3のどちらが富士教導団かが分かっていなかったのだ。少したってからようやく判明する。前衛を務めているE3が陽炎7機、撃震5機だった。つまりE1が富士教導団だった。E3の予想進路先に既に第174戦術機甲大隊が待ち構えていた。

 

 交信可能距離に達した時、E3側からオープン回線で呼びかけられた。

 

「米軍機に告ぐ。戦闘行為を停止せよ、繰り返す戦闘行為を停止せよ」

 

 そう言いながらどんどん距離を詰めていく。それに米軍も答えながら突撃砲を構える。

 

Attention unidentified TSF.(所属不明機に告ぐ。) Enable instant automatic translation(即時自動翻訳を有効にせよ)or(または、)communicate in English,(国連軍事規約に従い、) the international language,(国際公用語である) in accordance with the UN Military Code.(英語にて通信せよ)

「諸君らの現状況は我が国にとっての内政干渉となる。国際問題に発展したくなければ速やかに撤収せよ」

I say again.(繰り返す。) Transmit in English the international language.(国際公用語である英語にて通信せよ。) I have no idea what you're―――(何を言っているのか全く分か―――)

「資本主義と権威主義におぼれた自称世界の警察の米帝の犬野郎どもに告ぐ。…英語などクソくらえ。繰り返す、英語などクソくらえ!」

What?(何?)

 

 全機が抜刀する。それに対して米軍も突撃砲の狙いを定めて発砲を開始した。

 

「てめえら米軍ってのはな…来なければならない時には一切来ず、来なくてもいい時だけ来る!その姿が犬みてえだってんだよ!」

Open fire!(射撃開始!) Burn those fanatics at the stake!(あの狂信者どもを火あぶりにしろ!) It's a witch hunt!(魔女狩りだ!)

 

 第1斉射をE3は華麗に回避する。数で勝る174大隊は1/3を近接戦闘に移行させ、残った2/3で支援しながら撃墜を試みる。だが、E2は突進を急に止め一歩後退した。そして、直前までいた地点にはとある物体が浮遊していた。

 

「撃て!」

 

 浮遊物体と174大隊機が重なった瞬間に、浮遊物体を射撃する。そして浮遊物体は爆発した。浮遊物体の正体は指向性爆薬だった。92式多目的追加装甲に用いられている六角形タイプのものだった。これを射撃により爆破する。爆薬はBETAを吹っ飛ばす威力なのだから、戦術機など木っ端みじんになる。

 

 1/3を撃墜された174大隊は後には引けなくなった。残った2/3を総動員する。相手にもう爆薬は残っていない。数で押し切る。横合いから回り込むように増援を回す。そこから放たれる圧倒的な突撃砲の弾幕がE3を襲う。回避しきれず、次々と撃震が撃墜されていく。

 

Keep shooting them down!(どんどん撃ち落としていけ!) They're weaker than our TSF!(奴らの戦術機は我々より劣っている!)

 

 また1機、また1機と撃墜されていく。必死の抵抗を見せ、長刀でF-15Eを一刀両断する。だが、そのあいた隙間を別のF-15Eがカバーする。隙が生まれないのだ。突破もできず野垂れ死んでいく。

 

「畜生、この防衛線を突破できねえ!数が多すぎる!」

「仕方ねえ…富士教導団の連中を前に出すぞ!」

 

 富士教導団もといE1が前進してきた。

 

「こちら富士教導団の瑛都大尉だ。前線突破は我々に任せろ。君たちは我々の後ろについてこればいい!」

『了解!』

 

 彼らの活躍ぶりは鬼神のようだった。露軍迷彩の不知火は、普通の不知火と性能が変わらないというのに見たこともないような機動をとって翻弄していた。これは独自開発されていた機体制御OSにより行われていた。古鷹も同様だった。古鷹に至っては、174大隊は傷一つつけることすら叶わなかった。

 

Shit,(クソ) what the hell is that TSF!?(何だこの戦術機は!?)

It's the Fuji guys!(富士の連中だ!) I had heard rumors (噂には聞いていたが)but they really did have a Su-47!(本当にSu-47を持っていやがった!)

「そこをどけ!どかぬというのならば…我が銃剣の錆にしてくれるわ!」

 

 どれだけ弾を撃ち込んでも、どれだけ斬りかかろうともことごとく回避されるのだ。回避機動をとらずに攻撃に専念していたF-15Eは、後ろにあっさりと回り込まれて背後から真っ二つに切り裂かれた。ここまで圧倒的だった理由は、古鷹の性能と装備にあった。

 

 古鷹はSu-47譲りの変態機動ができるほか、対戦術機用に改造されている。各所に補助スラスターを増設し急機動を取ることも可能だった。また、独自の兵装としてXA-87を装備している。XA-87は戦術機にとって全く必要の感じられないロングバレルの突撃砲だった。見た目はボルトアクションライフルのモシン・ナガンそっくりだった。だが、狙撃に特化しているわけではない。

 

 弾の口径は90mmで単発発射式だった。砲弾は散弾、高速徹甲弾のみで、榴弾系は無かった。マガジン式で弾は10発入っていた。本家と同じボルトアクションではなく半自動装填(セミ・オートマティック)だったが、連射速度は毎分60発と劣悪だった。対BETA相手には使いたくない。だが、銃の先端にはX-0と呼ばれる銃剣がついていた。実は、XA-87は銃剣での戦闘を重視したコンセプトで設計された武器だ。

 

 銃剣での戦闘を考えられているため、銃本体はかなり頑丈に作られている。着剣すると長さは14mの長さになる。圧倒的なリーチから繰り出される近接格闘力は、他の武器にはない強みだった。

 

 帝国軍はソ連からSu-47をもらう代わりに、この装備の実戦評価を求められていた。そして最も対戦術機戦闘を得意としている富士教導団に配備された。

 

 実際に古鷹とXA-87のコンビネーションは最高だった。瑛都もこの機体に乗っていた。圧倒的力を手にした瑛都は、その力に驚嘆していた。

 

「こいつは…なんてパワーをしているんだ!関節強度、反応速度、機動性能、そのすべてがまるで自分の手足のように動く!これならば、米兵だけでなく彼ら(A-01)とも渡り合える!」

 

 XA-87を合計で4本持っている古鷹は、その1本をやり投げの要領で投げつける。腕部のパワーが強く設定されているため、X-0はF-15Eの胸部を軽々貫通した。流石に槍のように使うと使い物にならなくなってしまった。

 

「瑛都大尉、ここの防衛隊は第18中隊の連中に再交代しましょう」

「う~ん、そうするかい?おっと危ない」

 

 横から忍び寄るかの如く近づいてきたF-15Eを容易く回避し、腕のモーターブレードで内部の衛士をミンチにした。

 

「ま、これくらい削っておけば大丈夫か。じゃ、A-01が来る前にさっさと殿下の足止めをしようか」

 

 予定より長く伊豆で戦闘をしてしまっていた。早く殿下の足止めを開始しなければ。しかし、そうするわけにはいかなくなってしまった。レーダーには後ろから急速接近する機影を複数感知していた。

 

「………追いついちゃったか、大尉」

 

 到着したのはA-01だった。先頭は村雨・弐型が2機、後続には秋月や不知火・乙型、テンペスト、通常の不知火もいた。どの機体もステルスコーティングを施しており、黒色であるがため時間帯的には捕捉が困難だった。だが、熱まではごまかしきれていなかった。実際A-01のほとんどの戦術機はステルス運用することはない。そのため、応急的にやったにすぎない。

 

 古鷹は対ステルス性能にも秀でている。付け焼き刃程度のコーティングくらいなら看破できる。だが、機体カラーは完璧だった。目視ではほぼ見えない。時計を見ると既に19:00だった。辺り一帯は真っ暗になってしまっていた。

 

 第108大隊には別の部隊は既にここを離脱して逃走中の殿下の護衛部隊を守備するようだ。今から急いで向かったところで、どのみちA-01と108大隊の挟み撃ちになり絶望的になるだけだ。ならばここでA-01を食い止めるほかない。

 

「殺るか殺られるか、か。…これより我々富士教導団はA-01部隊と交戦する。手加減無用、斬り捨てて蹂躙しろ!総員、刺突用意!」

『応!』

 

 前進しながらXA-87を前に構えた銃剣突撃の姿勢を取る。横一文字での隊形だ。対するA-01は楔壱型(アロー・ヘッドワン)で挑む。

 

「敵機は銃剣での戦闘を主としているが、奴らの放つ90㎜には散弾もある。十分に警戒しろ!」

『了解!』

 

 ここでトンカッチはあることを思いついた。すぐに片手に持っていた87式突撃砲を投棄する。正直片手で99式重火砲での狙撃をしていたから外していたのもある。そして腰から予備の甲型銃剣を取り出した。トンカッチの村雨も87式に甲型銃剣は取り付けられていたのだ。その甲型銃剣を99式の先端に合わせてみる。

 

「あ~、これ付けれるのか…」

 

 トンカッチが遊んでいる間にも距離はどんどん縮まっていた。だが、それでもトンカッチは諦めきれなかった。この99式に銃剣をつけるということを。そして、付ける方法に気づいた。マズルを取り外すことにより、銃身下部の謎のアダプターに取り付けることができるのだ。

 

 急いで取り付ける。だが、銃剣での使用は想定されていないはずだ。そういったプログラムなど存在しない。だが、銃剣を取り付けると武装欄に『甲型銃剣:99式』の表示が出た。

 

「へへへ、これ作った奴はどんな変態だよ!最高か!?それと………これで良し。フェイスオープン!」

 

 トンカッチも銃剣突撃の構えを取る。同時に装甲ラウンドモニターを展開し、村雨のスリットアイが赤く光った。これに他の隊員は呆れてしまった。わざわざ相手の土俵に立たずに、さっさと突撃砲などの銃火器での間合いに回ったほうが優位だというのに、この大尉は何をしているのだと。おまけに防御用の頭部装甲を解除したのだ。もはや何を考えているのか分からない。だが、よくよく考えたら単発発射とはいえ、放たれる砲弾は90mm高速徹甲弾か散弾のどちらか。どちらにしても掠めただけで致命傷だ。

 

 おまけに頭部装甲を使用している間は防御性能こそ高いが、視覚では装甲展開時より劣る。また、威圧効果があるのは装甲展開時だった。まるで悪魔がにらんでいるかのような目つきだからだ。

 

 富士教導団ほどの相手に威圧が通じるとも思えず、また銃剣でなく長刀を使えばいいのには変わりないが。だが、トンカッチは銃剣に興味があった。最近読んだ本の影響だった。読んだ本は第1次世界大戦での銃剣突撃についての本だった。装甲展開もなまじカッコイイくらいにしか思っていない。

 

「総員、着剣!」

 

 しまいにはこんなことまで言い始めた。このまま行くと突撃ラッパまで鳴らしかねない。すぐにみちるが制止する。だがトンカッチは構えを一向に変えなかった。説得は無理だと悟り、近距離戦闘の指示を発令する。その直後にXA-87から高速徹甲弾が斉射された。距離が離れていたため回避は容易だったが、陣形を乱された。

 

 すぐに戻ろうとするも、それを敵弾は妨害してくる。どうやら孤立を狙っているようだ。負けじと撃ち返す。もちろん回避される。だが、一瞬だけ富士の不知火の動きが遅れた。その隙を速瀬が見逃さなかった。一気に距離を詰めて銃剣を突き刺す。そして87式を零距離で撃ち込む。

 

 さらにテンペストの制御する不知火が肉壁同然で急速前進をする。この不知火は盾を持っているため多少の攻撃には耐える。1機が盾を構えてプッシュする。もう1機がその陰から飛び出ながら長刀で斬りかかる。ギリギリで回避されたものの、体勢は崩せた。さらに後ろからジェームズのテンペストが長刀を振りかぶる。

 

「よくやった随伴機たち!後は、俺に任せろ!」

 

 勢いよく振り下げる。だが、その刃は突如として現れた古鷹のモーターブレードによって阻まれる。さらに蹴りを入れられる。機体に鈍い衝撃が加わる。ダメージインジケーターには胸部に損傷が出ていた。もう一度食らおうものなら死は免れないだろう。

 

 続く攻撃を制御機が受け止める。今度はモーターブレードがギリギリと音を立てて、終いには不知火の管制ユニットをミンチにした。人は乗っていはいないとはいえ気分は悪い。すぐに距離を離す。だが、90mmはそれを許さない。盾を構えた不知火だったが、その盾は容易く貫通され、胸部を貫いた。

 

「畜生、もう肉壁戦法は使えねえな。トンカッチ、すまねえが随伴機は2機とも撃墜されちまった!」

「は!?お前あれ高いんだぞ!何してくれとんねんや!」

「銃剣に固執している馬鹿よりはマシだろ!てめえは目の前の敵に集中しとけやゴラァ!」

 

 トンカッチは隊長機である瑛都の機体と交戦していた。銃剣同士での対決だった。接触回線で瑛都の声は聞こえいていた。すぐに秘匿回線につなぐように指示する。これでトンカッチと瑛都にしか聞こえなくなった。

 

「まったく、なぜこのようなことをする!」

「俺からもその問いをそのままお返しさせていただく!この国の現状をもっと見るべきだ!アンタら横浜しかり国連軍には分からんだろうさ!」

 

 それは魂の叫びだった。それなりの覚悟は持っているようだ。銃の重さが影響しているからか、若干トンカッチの方が振る速度が遅い。ギリギリ鍔迫り合いに持っていくことこそできるが、どうにも決め手に欠ける。膠着状態になった一瞬、周りを確認する。

 

 随伴機がやられたとはいえ果敢に戦っていた。他の古鷹相手にはみちるともちが対応していた。数的劣勢であるというのに上手く立ち回っていた。不知火の相手は他の隊員がやってくれていた。機体性能で上回っているが、その差を技量で圧倒していた。このままだと撃墜され、各個撃破での蹂躙が待っている。

 

 さらに、若干だが各員が個人での戦いになっていた。この場合は集団で立ち回らなければならないが、目の前の相手に必死になり過ぎて周りが見えていないのだ。すぐに全員に集団で動くように指示する。このように指示できるものが強敵と接敵すると、その相手に気を取られて指示が遅れる。

 

 トンカッチもそれに気を付けながら戦闘していた。何とかして瑛都を無力化しなければ、この膠着状態は改善されないだろう。一気に勝負を仕掛けるため、トンカッチは背部の兵装担架に零距離射撃をさせる。だが、見透かされたように回避される。さらに、謎の飛翔体が村雨を襲った。ダメージこそ軽微だったが、何かが分からなかった。被弾個所を見ると、針のようなものが突き刺さっていた。

 

「トンカッチ大尉、自分だけが隠し兵器を持っているなんて思わないことですね!…だが、急造品では不発になるか」

 

 瑛都の古鷹にも隠し兵器が搭載されていた。恐らく、村雨の胸部125mm砲のようなものだろう。針の後端にはロケットモーターがついていた。だが、噴射させた様子がない。つまり不発だった。暴発する前に針を投げ捨てる。距離が離れたため、遠距離砲戦に移行する。互いに戦術機に当たれば致命傷になる砲弾の口径同士の戦いだった。だが徐々に距離が縮まる。

 

 トンカッチが99式で刺突を敢行する。だが、XA-87でいなされる。すぐに脚部のモーターブレードがギリギリと音を立てる。それを脚部に仕込んである00式短刀で受け止める。互いの脚部負荷は尋常ではなかったが、今はそのようなことに構っている暇はない。

 

 互いに少し離れた瞬間、瑛都がXA-87を投げつける。回避するが、99式に突き刺さってしまった。すぐに投棄し、その直後に爆発した。瑛都の古鷹はあと2本もあった。トンカッチは、近くに落ちていた92式追加装甲を拾い、長刀を持つ。

 

「おい瑛都。99式って結構重くて使いづらかったけどよ、俺気に入ってたんだぜ?」

「…知るかよ。あんな使い方するアンタが悪いだろ!…………畜生、やられたか!?」

 

 後方で大きな爆発が発生した。どうやらもちが古鷹を1機撃墜したようだ。立て続けに不知火も2機撃墜している。どうやら集団戦闘が功を奏している。もちにいたっては古鷹2機を一人で相手にしていたのに、そのうちの1機を撃墜していたのだ。宗像と速瀬が共同で別の不知火を追い詰めていた。完璧なチームワークによって富士教導団を着実に追い詰めていた。

 

 ここで急に瑛都が地面に散弾を発射した。地面から土煙が巻き起こり、目の前が何も見えなくなった。その土煙から古鷹が急速接近して体当たりをしてきた。不意打ちにより村雨が倒れこむ。瑛都が向かった先は速瀬だった。一瞬だけ跳躍ユニットを噴射しては地面を蹴るように全力疾走して狙いを定めづらくしていた。

 

「くそ抜けられた!速瀬、そっちに瑛都が行った!俺が行くまで何とか持ちこたえろ!」

 

 ちょうど速瀬は宗像と共に目の前の不知火を無力化寸前まで追い詰めていた。だが、後ろを見ると確かに急速接近する古鷹が接近していた。接近にいち早く気づいた柏木が突撃砲で妨害するも、奇妙な接近方法のせいで命中弾を与えられずにいた。

 

「どうにも狙いがつけられない!あんな機動見たことないって!」

 

 近接戦闘を仕掛けようとしたが、XA-87の銃口がピタリと向けられていた。散弾が放たれたが、何とか茜がガードした。だが、これにより通過を許してしまった。

 

「速瀬中尉、後ろです!」

 

 茜が警告するより前に、速瀬は応戦する構えをとっていた。

 

「分かってるっての!ピーチクパーチクうるさい!」

 

 長刀を二本携えて片方を水平にし、もう一方を突き出すように構えた。攻防一体の構えだった。相手はあの瑛都大尉、朝鮮半島で共に戦った仲間だった。だが、今は敵。そう割り切らなければ軍人などやっていられない。迫りくる彼の機体に若干恐怖しつつも、待ち構えた。だが、警報が後ろから放たれた。

 

 宗像の前に倒れていた不知火が再起動したのだ。すぐに対応するのが難しい状況にある速瀬に代わり、宗像が急いで始末しようとする。だが、奥の手の閃光弾が不知火から発射され、宗像の目を潰した。そして、宗像機に衝突しながら速瀬の機体に後ろから追突する。

 

「な、なに!?」

 

 さらに不知火が速瀬の秋月をがっちりとホールドした。このままだと串刺しになる。相手の不知火も致命傷では済まないだろう。だが、それを承知でやっているのだ。すぐに宗像が排除しようとする。しかし、機体が先ほどの衝撃で動かなくなってしまい、強制再起動を開始した。すぐに速瀬に緊急脱出通知が勧告される。だが、脱出したところで巻き込まれる可能性が高かった。何なら間に合わないことははっきりとわかっていた。

 

「速瀬、ベイルアウト!」

 

 トンカッチが叫ぶも、既に手遅れの距離まで迫っていた。彼女にできるのは、一瞬のうちに後ろの機体を排除して瑛都の攻撃を受け流すしかなかった。何とかホールドは解除できたが、既に回避不能距離まで迫っていた。誰もが間に合わないと判断した。高速の刺突が速瀬を襲おうとした。だが、切っ先は別の機体に刺さっていた。

 

「…………案外間に合うもんだな。……体中が痛いぜ畜生!」

 

 もちの不知火・乙型にX-0が刺さっていた。武装は既に使い切っており徒手空拳だったため、捨て身の防御だった。胸部に深々と刺さっており、刃は貫通して背中まで露出していた。管制ユニット内のもちも致命傷をもらっていた。全身からの多量出血、頭部挫傷、内臓破裂と助かる見込みは限りなく低かった。すぐに鎮痛剤が投与される。だが、それでも痛みは治まらなかった。

 

 目の前は不思議とぼやけてはいなかった。しかしながらここで死ぬだろうと、もちは悟った。だから最後にもうひと働きしなければならない。

 

「お…い、水月を…………俺の嫁を殺そうとした目の前のお前ぇ!その代償、死ぬだけじゃ終わらせねえ!滅っっっ殺!」

 

 機体の跳躍ユニットのリミッターを全解除し、オーバーロードを開始させた。自爆をする気だ。瑛都も相手が自爆を敢行しようとしているのを直感した。突き刺ったXA-87から散弾をありったけ胸部に撃ち込む。だが、何故か乙型は止まらなかった。ボロボロになった胸部装甲が剥がれ落ち、管制ユニット内部が露出した。

 

 そこにはもちが血まみれで座っていた。だが、その顔は気味悪く笑っていた。

 

「お前…………俺がオーバーロードで自爆すると思ったんだろぉ!?ざーんねんでしたぁ!」

 

 直後、もちのシートが射出されベイルアウトした。射出位置が悪く、地面に飛ばされてしまったが、機体から離れることには成功した。無人となった乙型がさらに速度を上げて瑛都の古鷹を押し倒す。地面にめり込む勢いで古鷹を抑え込む。そして、手に持っていたスイッチを押し込む。

 

「ビルスト仕込みの戦術、S-11型自爆滅殺だぁ!」

「この、死にぞこないがぁ!」

 

 瑛都は必死に乙型をはがしたが、完全にはがしきれなかった。そして、乙型は大爆発をする。爆炎と煙が周囲を覆った。しかし、古鷹は爆発に耐えきっていた。機体全体が若干黒く焦げており、スパークも発生させていた。XA-87も全損しており射撃武装を失っていたが、機体本体は無事だった。

 

「………おいビルスト、案外自爆ってのも難しいもんだな」

 

 大の字になって、もちは空を見上げていた。無線で誰かが何かを言っているのは聞こえたが、内容は理解できなかった。もう体中が悲鳴を上げていたのだ。血で地面が赤く染まっていく。さらに、轟音を立てて戦術機が近づいてくるのが分かった。鬼の形相で古鷹がモーターブレードを唸り挙げながら接近していたのだ。

 

 もちは自分が助からないことを理解した。せめて、愛する者の腕の中で死にたかったがそれを許してはくれないようだ。すぐに速瀬に通信する。

 

「水月、今までありがとうな。………愛してるぜ」

 

 言い終わると同時に、もちのいた場所に古鷹のモーターブレードが突き刺さる。地面に半ば突き刺さっていたため、土とそれに混じったもちの血が瑛都の機体を汚す。皮肉にも、もちの血が古鷹の頭部にかかり、血の涙を出しているようにさえ見えた。

 

 遙は指揮所から事の顛末を知り、急いでバイタルモニターを出す。もちろん、もちのバイタルモニターは全て死亡判定を出していた。

 

「もち少佐のバイタルモニターは、全てフラットになりました…。戦死です」

 

 古鷹は少し立ち止まったのち、再び速瀬の機体に体を向ける。

 

「…速瀬中尉、どうやら俺はアンタの旦那をぶち殺しちまったみたいだな?なら、どうするよ!?」

「…………私は、もう止まらない。けど、昔のような私じゃない。…ただひたすらに冷徹に、氷の刃のように、アンタを殺す!」

 

 速瀬は片方の長刀を捨て、一刀で勝負する。瑛都も、古鷹のモーターブレードを全展開し起動する。他の富士教導団は瑛都の援護に向かおうとしていた。それを妨害する形でA-01が展開した。

 

「速瀬の敵討ちを絶対に邪魔させるな!全機、富士教導団を殲滅しろ!」

 

 トンカッチは悲しさをギリギリ抑え込みながら命令した。全員復讐したい気持ちはあった。だが、それを行うのは速瀬がやらなければならない。彼女の構えは、いつものそれとは違った。長刀を右脇に取り、切先を後ろに隠すようにする下げて構える、脇構えだった。

 

 攻撃的な構えではなかったが、古鷹の変則機動にはもってこいの構えだった。

 

「なるほど、脇構えで来るか。流石だな中尉、俺相手じゃなきゃなぁ!」

 

 瑛都は先ほどから使用している変則機動に、三次元の動きも追加する。さらに、ジャミングを同時に発生させてレーダーによる捕捉を妨害する。対する速瀬は一歩も引かず、動かずその場にとどまった。速瀬はロックオン機能を全て解除した。代わりに音響センサーを頼りにする。

 

 速瀬の目の前から一瞬古鷹が消える。今までならそれを目で追ってしまっていた。だが、今は不思議と冷静に頭は働いていた。死角でとらえきれない敵機を聴覚が的確に捉える。

 

「…………そこぉ!」

 

 古鷹が自機の真後ろに回り込んだ瞬間、秋月の体の向きを反転させて下段の構えに切り替わる。同時に刃先を上に向ける。そして、長刀を斬り上げる。古鷹もモーターブレードを突き出していたが、それより先に長刀が古鷹を斬り裂いていた。

 

 力なく古鷹は倒れこみ、管制ユニットが丸見えの格好になった。内部には煙が充満しているが、中にいる瑛都の顔を拝むことはできた。彼に切先を向ける。瑛都は語り始める。

 

「まったく、さすがはA-01の中尉さんといったところかな?…はあ、俺としたことが冷静さを欠いてしまったかな」

「いや、あなたは強かった。ただ、私があなたをこうしているのは、もちのおかげよ」

 

 速瀬が瑛都を捉えることができたのは、古鷹から発生しているスパーク音だった。スパークの原因は、もちの自爆のせいだった。背後に回るときに跳躍ユニットを切って無音にしても、スパーク音は消すことはできない。速瀬はそれを捉えていたのだ。次第にスパークは大きくなっていく。火災が発生し始めた。

 

 瑛都は管制ユニット内で挟まっており出られない。このまま放置しておけば勝手に焼け死ぬ。だが、速瀬は長刀を捨て短刀に持ち替えた。

 

「あなたはここで焼け死ぬ運命にはさせない。…あの人と同じように、同じ苦しみを味わいながら死なせてあげる!」

 

 短刀を管制ユニットに差し込んで、無理やり瑛都を引きずり出す。そして、マニピュレータで掴む。トンカッチも視界の端にそれを捉えていた。

 

「速瀬、もうやめろ!決着はついただろ!?…………復讐は新たな復讐を生むだけだ!」

 

 速瀬はその制止を聞かずにマニピュレータのパワーを上げ、瑛都を握り潰した。死んでこそいなかったが、もう助からないだろう。ボロボロになった体を古鷹に戻して座らせた。

 

「瑛都大尉、最期の言葉くらいは言わせてあげる」

「…もち、だっけ?彼がろくに最期の言葉を言えずに俺は殺した。だから俺に言い残すことは何もないさ。さっさと殺してくれ。……殺せと言っている、速瀬水月!」

 

 速瀬は長刀を突き刺した。オイルと血が秋月にかかる。その姿も、先の古鷹と同じようだった。

 

「私は…………もう二度と大切な人を失わせない。これは、その戒めです」

 

 長刀を突き刺された古鷹は、さらに炎上し、しばらくしてから爆発四散した。それと同時に他の富士教導団の機体は抵抗をやめ、降伏した。

 

「全機攻撃中止、目標群E1は戦闘行動を停止し降伏信号を出している。繰り返す、全機攻撃中止だ!」

 

 みちるはすぐに戦闘停止命令を出した。伊豆市内では未だに174大隊とE3は交戦をしていたが、増援として参戦した108大隊の2個小隊の挟み撃ちにより撃退された。これにより、伊豆周辺の敵勢力は撃滅された。残りは帝都と仙台の戦術機部隊だった。殿下の現在地は冷川料金所を過ぎたところだった。

 

 既に誰も追いつけない位置にいた。しかし、唯一追いつく方法が存在していた。さらに、それは実行された。遙は伊豆で緊急通信を受けた。

 

「こちら伊豆CP、貴官の官姓名を名乗れ」

「こちらは帝都第1守備連隊第1大隊の沙霧尚哉大尉だ。伊豆防衛部隊に緊急の連絡をする!」

「了解しました、沙霧大尉。連絡ないようなどのようなものでしょう?」

「現状殿下は南下しているそうだが、クーデター部隊の一部が厚木基地の航空機を利用した戦術機による空挺作戦を敢行するという連絡を受けた。我々では間に合いそうにないため、そちらの防衛部隊に至急迎撃の要請をする!」

 

 戦術機による空挺作戦、光線級がいれば不可能に近いものだったが、ここら一帯には光線級は存在していなかった。この状況では、クーデター側にとって最強の作戦だった。遙一人で判断できるようなものではないため、すぐにみちるに連絡の内容を回した。

 

 だが、現状A-01も疲弊し損耗状況もかなりひどいものだった。正直不可能だった。だが、あくまで降下された場合の話だ。つまりは、降下される前に航空機ごと撃墜してしまえばいいのだ。みちるはすぐに遙に返答した。

 

「沙霧大尉との回線を中継してくれ」

 

 沙霧との回線が開かれた。以前は味方として助けられ、敵として殺しあった仲だが、今回は強力な味方だった。

 

「こちらはA-01の伊隅みちるだ。沙霧大尉、先ほどの要請についてだが了承した。だが、航空機の撃墜のみにとどまるが構わないか?」

「なるほど、母機もろとも撃墜してしまえばいいということか。………了解した、ぜひ頼む。殿下の無事が最優先事項だ。この際、輸送機の数機程度の損失は致し方ない」

 

 輸送機はかなり貴重な存在故、できる限りは撃墜したくなかった。だが、この際は仕方ない。すぐにA-01は狙撃の準備をし始めた。




約11000文字になってしまった…


今回の友情出演組です。(敬称略)

瑛都 [ZGK0]帝国元帥 元大佐(@ZGK088)
もち(@mochi02913)
ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)
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