Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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第46話 抵抗

 2001/12/6 5:00 帝国海軍下田軍港

 

 殿下はようやく戦艦紀伊まで到達した。この間、妨害部隊は一切おらず無事だった。しかし、殿下は強化装備を付けていなかったため、体へのダメージがかなりあったそうだ。そうなると通常の飛行では危険になる。そのため、歩行で移動していた。だからここまで遅くなってしまったのだ。

 

 A-01は役目を終えたのですぐに横浜まで帰還しようとした。だが、トラブルが発生した。相手は帝国斯衛軍第16大隊の斑鳩崇継だった。

 

「てめえらいい加減にしろよ!?何が感謝しろ、だ!お前らが来なくなってなぁ、こっちは殺せてんだよ!そもそももっと早くこれただろって!」

「トンカッチ大尉、貴官の言い分はよくわかる。だが我々も戦場到着前に交戦状態にあったのだ。それで遅くなってしまった。申し訳ない」

「何が遅くなっただこの野郎!」

 

 トンカッチは拳を握り締め、殴りかかった。それを察知したジェームズが必死に抑え込む。

 

「馬鹿野郎!相手は斯衛軍だぞ?ここで殴って国際問題に発展したらどうする!」

「放せ!お前だって悔しくねえのかよ!?もちだってこいつらが早く伊豆に来ていれば死ななくて済んだはずだ!お前、それすら見逃せってのか?」

 

 それでもジェームズはしっかりとホールドした。ジェームズも怒りは持っていた。斯衛軍は伊豆の防衛戦闘の終了から30分後に到着したのだ。もう少し早く来て入れば、数的有利で富士教導団を圧倒していただろう。そうすれば、もちも速瀬を庇うような状況にはならなかったかもしれない。だが、あくまでも『もしも』の話だった。

 

「俺だって、お前と同じ気持ちだ。だから、だからこそ抑えねばならんだろうが!」

 

 そう言われ、トンカッチは拳を降ろした。だが、ジェームズが抑えた力を抜いた後すぐに斑鳩を本気で殴った。そして馬乗りになる。

 

「お前が権田を殺したせいで、俺は一生奴の影から逃げることはできなくなった!俺が奴を殺さない限り、俺は奴に追われ続けるんだよ!」

 

 顔面の形が変わるくらい本気で殴った。鼻血が出るだけでは済まさず、口から血を吐かせるまで殴った。すぐに斯衛軍が銃を腰から取り出し、トンカッチに向けた。だが、それを斑鳩が止めさせた。トンカッチは気が済むまで殴り続けた。しばらくして、疲れてしまいトンカッチが先に気絶した。

 

 ボロボロになった斑鳩はよろめきながら立ち上がり、トンカッチを抱えてみちるに渡した。その後、彼らは帝都に戻るべく紀伊の隣に停泊している戦術機母艦に向かっていった。

 

 A-01も迎えに来ていた戦術機母艦に乗り込んだ。

 

 

 同時刻 厚木基地

 

 沙霧たち第1大隊は厚木基地で未だに戦闘をしていた。停戦命令を無視し続けるクーデター軍の鎮圧作戦だった。この際、彼らの生死は問われていなかった。圧倒的な戦力差で次々と撃墜する。夜も明けてきたころ、ようやく最後の1機が爆散すると同時に、基地に立てこもっていた歩兵が外に出てきた。

 

「ふぅ、やっと出てきたか。これで終わりっすよね、大尉?」

「そうかもしれないな…………いや、待て!全機全速後退!すぐに奴らから離れろ!」

 

 そう言った直後、歩兵が突然大爆発した。自爆テロだ。沙霧と駒木、如月たちのほとんどはすぐに反応し、後退した。しかし、わずかに後退が遅れた機体が犠牲となった。

 

「負傷者を下がらせろ!医療チームは彼らの治療に最善を尽くせ!……如月、駒木。まだ反乱分子は残っているはずだ。白兵戦、用意!」

 

 戦術機で基地施設ごと吹き飛ばしてしまえば楽ではあるが、基地の復旧に時間がかかってしまうのは大問題だ。なら歩兵を歩兵で殺す他ない。沙霧はすぐに後方で待機していた第99歩兵小隊を呼び出した。厚木基地の内部構造ははっきりと頭にある。どこに潜伏しやすく待ち伏せができるかもだ。

 

 沙霧たちは2階建ての指令所施設に向かう。ここには通信室もあり、階層の高さを捨てた代わりに、敷地面積では広大だった。ここに反乱分子は終結しているはずだった。他の歩兵部隊にも別のエリアを制圧するように指示する。

 

 正面玄関から侵入し、次々と部屋をクリアリングしていく。1階には重機関銃陣地が形成されていたが、誰もいなかった。トラップが仕掛けられていたが、どれも仕掛けられそうな場所にしか仕掛けられていなかった。分かりやすすぎて逆に怖くなってくる。2階に上がるため、ガチガチのアーマープレートを着込んだ重装甲の歩兵が先行する。だが、上がった瞬間に彼らの非装甲部位である足を狙撃された。

 

 撃たれて、彼らは痛みに悶えて倒れてしまう。すぐに後方にいた歩兵が彼らを引きずりながら階段の踊り場まで後退させる。1階には制圧維持のために10人いたが、彼らを全て呼び出す。被弾した兵士が痛みながらも報告をする。

 

「………敵はぁ、左右の廊下に陣地を形成している模様!」

 

 鎮痛剤を投与してこれだった。すぐにメディックが応急処置を開始する。どうやら2階は待ち伏せをしているようだ。発砲音からM2重機関銃だと推測される。爆発物はグレネード程度しかもっていない。一瞬見えたのは土嚢陣地だった。投げたところで、返されるか無効化されるのがオチだろう。

 

 だから沙霧は決意した。このくだらない戦いをやめる方法を実行するために。

 

「全員、この場に待機しろ。………如月、私の銃を預ける。後は頼むぞ」

 

 そう言って沙霧は立ち上がり、階段をのぼりながら叫んだ。

 

「私は帝国軍帝都第1守備連隊第1大隊大隊長、沙霧尚哉大尉である!2階にいる兵士諸君、これより私は君たちの目の前に非武装で向かう!撃ち殺しても構わん!」

「沙霧大尉!?」

「何を考えてるんです大隊長!」

「馬鹿なことは止めてください沙霧隊長!」

 

 他の隊員の制止を振り切り、沙霧は非武装で両手を上げながら2階に上がった。もはや止められないと確信した如月と駒木は、他の隊員が飛び出ないように抑え込んでいた。だが、沙霧が撃たれたら突入する準備は整えていた。正当防衛に値するからだ。

 

 しかし、立てこもった兵からの射撃はなかった。沙霧は好機とみて、説得を開始した。

 

「ここまで上がらせてくれたことに感謝する。………諸君らも知っているかとは思うが、既に首謀者である権田直樹は天城高原料金所にて交戦の末、死亡している。つまり、首謀者はいない。だから諸君らには戦う理由などないはずだ。今すぐに原隊に復帰しろ!今ならまだ間に合う!」

 

 これに一人の兵士が拳銃を構えながら近づく。階級章を見ると、同じ大尉だった。

 

「ああ知っているよ、沙霧大尉。確かに首謀者は死んだ。だが、我々はあくまで奴と目的が同じだから行動しているに過ぎない!我々は、我々の目的が達されるまで抵抗を続ける!………今すぐ階段を下りてこの施設から出れば命だけは助けてやる!」

 

 銃口はぴったりと沙霧の額に向けられていた。しかし、沙霧は動揺することなく大尉の目を見つめていた。

 

「私のこの手は、昔は医師になるべく人を救うために鍛えられた手だった。だが今となっては、BETAや同胞たる人類を殺す血塗られた手となった。私はもう、同胞を殺したくはない!だから………銃を降ろしてくれ、大尉!」

「しかし、政府などの上層部はそれを強要し続けている!今日この瞬間から我々帝国臣民は変わらなければならん時が来ているというのだ!同じことを引き起こした貴様が何故分からん!?」

「分かっている、十分に理解している!だが、このやり方は間違っている!私も一度同じ道を選んだ者だ。だが、このやり方は違っていると多くの人間が私を引き留めてくれた!だから私はここにいるのだ!」

 

 沙霧は銃をつかみ、逆に自分の額にゴリゴリと押し当てる。撃てるものなら撃て、それが貴様らの選んだ道だというのならば。そう沙霧の眼は叫んでいた。自らが陥った血塗られた外道、そこに進まんとする愚者を止めるべく沙霧の必死の覚悟の行動だった。

 

 大尉は動揺していた。目の前にいる男は、自分の理念を理解したうえでここまで必死に止めている。自分の命を投げ出してまでだ。しかし、この男を排除してでも我々は進まなければならない。より良いと信じる帝国の未来のために。大尉も覚悟を決めた。銃のトリガーにかけた指に力を入れる。しかし、指が震えて引き金を引けなかった。

 

 撃ってしまえば、自分の真横にいる鎮圧部隊がなだれ込んでくるだろう。それを背後と正面にいる部下たちが応戦して血みどろの争いに発展する。果たしてそれは帝国のためになるのか?ここで争うことによるメリットは?どちらも無い。大尉はトリガーから指を放して、拳銃をマガジンを抜いて階段の方に捨てた。

 

 そして、両手を上げて部下に言い始めた。

 

「ここまでよく持ちこたえてくれた。残念ながら、我々の作戦は失敗に終わった。総員、武器を捨てて投降する準備をせよ!」

 

 それは降伏宣言だった。突入待機していた如月たちも、銃を降ろす。土嚢の裏にいた兵士たちも次々と銃を捨て投降の準備をし始める。だが、納得しないものももちろんいた。最後の最後まで銃を握り締めていた兵が一番奥にいた。大尉もそれを見つけて下ろすように指示する。しかし、反抗し始めた。

 

「大尉はそれでいいかもしれないですよ?ですけど………俺たちまで巻き込まんといてください!俺はたとえ一人でも戦い続ける!」

 

 その兵士は持っていたスナイパーライフルで沙霧の胸を狙った。そして、発砲する。乾いた音が敷地内を満たす。

 

 発砲に気づいた大尉が沙霧を庇って撃たれて倒れた。弾丸は貫通して沙霧にも命中したが、速度を限りなく殺された弾丸は沙霧にダメージを与えることはなかった。代わりに大尉の血が沙霧にかかった。そして撃った兵士に呼応するかのように再び彼らは銃を取り始める。もう戻ることができないと確信していてだ。

 

 それに気づいた鎮圧部隊は沙霧を守るべく、やむなく突入する。重装歩兵を先頭にして二手に分かれる。右は如月が、左は駒木が指示を飛ばす。敵も重機関銃に再び手を掛ける。それを見た沙霧は叫び始める。

 

「………やめろ。貴様ら、止めろ!」

「相手はまた銃を取った!もう、戻ることはかないませんよ隊長!」

 

 如月がついに重機関銃手に拳銃を発砲する。戦闘できないようにするために、手や足を撃っていた。駒木も同様だった。だが、相手は89式小銃で応射してくる。それに対して重装甲兵が前衛になる。

 

「突入、突入!ファランクス、用意!」

 

 重装甲兵がガンシールドを構えながら前進する。その隙間から別の歩兵が小銃を突き出す。その姿は古代ヨーロッパで取られていた古代に取られていた、ファランクスと呼ばれる陣形そのものだった。そして防塁を突破する。防塁を突破されたクーデター軍はなすすべもなく、必死に銃を撃って抵抗するも全くと言っていいほど無力だった。

 

 そして、シールドで突き飛ばされ、手足を銃で撃たれる。または、シールドバッシュによって気絶する者もいた。少しして完全に2階は鎮圧された。相手に負傷者こそいれども、死亡者は今のところ出ていなかった。しかし、沙霧の目の前で倒れていた大尉は、もう虫の息だった。

 

「大尉、大丈夫か!?」

「…………沙、霧大尉。……君なら…正しく帝国を導ける!…帝国の未来を、頼ん…だ、ぞ」

 

 そう言って大尉は倒れた。名前も知らない一兵士は、力を無くし永遠の眠りについていった。沙霧は戦術機のスピーカーとリンクして、広域放送を開始した。

 

「こちら沙霧大尉、現時刻0515をもって厚木基地の完全制圧を宣言する。待機中の全歩兵部隊に通達、基地機能の復元に当たれ。…以上だ!」

 

 

 5:00 仙台

 

 仙台ではクーデター部隊が最後の抵抗を続けていた。時は15分前にさかのぼる。

 

 

 4:45

 

 仙台では既に松島・三沢の迎撃部隊が追い付き包囲していた。彼らの要求であった停戦命令に従い、武装解除の準備をしていた。流石に数が多すぎたのだ。道中で数を減らすべきだったと後悔していた。だが、4:30に厚木基地から緊急通信が入った。

 

『我、未ダ交戦状況ニアリ。我々ハ戦イ続ケル』

 

 平文ではあったが、十六夜に乗っていた衛士たちには大いに刺さった。数で負けているからと、包囲されたからと早々に武装解除に応じてしまった己を恥じたのだ。すぐに戦闘態勢に移行するべく、機体に火を入れる。武装は解除しているものの、機体は動かせる状況にあった。

 

 管制ユニット内に居たままだったので、すぐに動かせた。

 

「我々の魂は、厚木基地の同胞と共にあらんことを!」

『応!』

 

 非武装とはいえ、機動戦を仕掛ければ余裕で圧倒出来た。数で勝っていた包囲部隊だったが、すぐに包囲陣形を乱される。陣形から少し離れた不知火を十六夜は襲った。右のマニピュレータで87式を奪い取り、その不知火の胸部を射撃する。同様の手口で十六夜はものの1分足らずで最低限の武装を確保した。

 

 彼らに呼応するかの如く、地上の歩兵部隊も抵抗し始めた。彼らは徒手空拳ではあったが、果敢に小銃を持った鎮圧部隊の歩兵相手に挑む。無謀ではあったが、彼らも引くに引けなかった。ほとんどは銃の餌食となる。だが、何とかたどり着いた歩兵が、拳や足で小銃持ちを攻撃する。

 

 ついに一人が銃を奪い取り、射撃を開始した。防衛線を突破された彼らはすぐに後退し、後ろの装甲車からの援軍を要請する。20㎜車載機関砲が歩兵を薙ぎ払う。圧倒的な火力に抵抗すらできず、地上の抵抗した部隊は全滅してしまった。

 

 十六夜もボロボロになっていた。性能差で圧倒しているものの、数的劣勢は覆せない。近接戦闘を得意としているのにもかかわらず、それを見越しての引き撃ちを徹底していた。そうなると、突撃砲の射線の数で対抗できないのだ。十六夜は徐々に追い込まれていき、ついに弾を撃ち尽くした。

 

 もはや打つ手なしだった。だが、最後にやれることはあった。機体のリミッターを解除し、跳躍ユニットを限界まで吹かす。油断してそうな1機を狙い体当たりする。そして、手元のS-11起動ボタンを勢いよく押す。自爆戦法だった。他の十六夜もそれに倣う。しかし、自爆に成功したのは1機もいなかった。

 

 どの機体も自爆直前に突撃砲により撃墜されてしまったからだ。数の暴力である。

 

 こうして仙台でもクーデターは鎮圧された。

 

 

 5:15

 

 各地で発生していたクーデターは鎮圧部隊により殲滅・掃討された。この時刻において再度停戦命令が発令された。実際には、仙台と帝都を完全包囲・制圧した3:10に停戦命令は発令されていた。だが、その連絡のほとんどは行き届いていなかった。それにより、この時刻まで戦闘は継続されていたのだ。

 

 作戦に参加した何人かの証言によれば、通信網がジャミングを受けており全く機能していないなどの現象が発生していたそうだ。何者かが裏で手を引いており、戦闘を長引かせていたのが明白となった。しかし、その何者かを突き止めることは誰にもできなかった。

 

 この後、政府が機能しなくなったことにより、臨時政府として殿下と軍が指揮を執ることになった。だが、榊が予め用意していたドクトリンに基づいた政治だった。そのため、トップが変わったものの、混乱は最小限に抑えられていた。

 

 この件での功績を称えられ、斑鳩は政府総監として就任し、トンカッチとみちるも大尉から中佐に昇進することとなった。2パターンとも異例のことだった。政府総監として斑鳩は大規模な人事異動を発令した。これにより、反乱の雰囲気がある者は一掃された。中佐に昇進した2人は、大隊規模も動かせるようになった。

 

 本来なら段階的に階級を上がりながら教育課程を踏むが、現場は指揮能力の高い人材をすぐに欲していた。そのための今回の異例の昇進だった。元々指揮能力は上層部に高く評価されており、いずれはこうなる予定だったそうだ。A-01は元々は香月の専属部隊だった。だが、これからは国連軍横浜基地第1特殊戦術機甲大隊(VF-01)として公的部隊としての活動になることが決定された。呼び方は様々だったが、『伊隅ヴァルキリーズ』の名が継続して使われることとなった。愛称としてA-01が使われることもある。

 

 だが、オルタネイティヴ計画第1戦術戦闘攻撃部隊(VFA-01)としての名は消されることとなった。というのも、武の行動の影響で、香月は既にオルタネイティブ第四計画のほとんどを完了しており、わざわざ独自での行動をとる必要性が無くなりつつあったからだ。

 

 さらに、今後は大規模反攻作戦が予定されているので、その準備でもあった。と言っても、A-01が完全に消えるわけではない。必要に応じて、第1中隊がVFA-01として動くことがある。特にオルタネイティブ計画にかかわる秘匿任務の時だ。第2中隊、第3中隊は大規模作戦時のみ招集される部隊だった。

 

 こうして、12・5事件は若干の異例事態はあったものの、収束したのだった。




歩兵戦がすごく好きなので、ついつい長く書く癖があります。
ごめんなさい。

これで本当に12・5事件編は終了です。
ホントのホントです。

今回から公式な部隊として彼らは動き始めます。
ただ本編でも言っているように、通常時はA-01として動きます。



今回の友情出演組です。(敬称略)

如月中尉(@KSRG_TSF94)
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