Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ! 作:tonkacchi
という但し書きだけ書いておきます
2001/12/12 17:00 長野県志賀高原
この日は、香月に申請していた休暇の日だった。恭子もちょうど休暇をとっていたので、合流した。速瀬はこの1日前に帰還してきた。残念ながら、もちの遺体は見つからなかったそうだ。だが、代わりにとあるものを持っていた。昔渡したお手製の御守りだそうだ。もちは戦術機にしっかりと持ちこんでいたそうだ。それが唯一見つかったものだそうだ。
何も見つからないと思っていたが、ちゃんともちが自分のことを大切に思ってくれていたと分かったので、彼女は踏ん切りがついたそうだ。
そんなメンタルガタガタヴァルキリーズの休暇先は長野県の志賀高原だった。先日言っていた場所が取れたのだ。
全員何か思うところはあったが、今回の休暇はそれらを整理するためのものでもある。もちろん、約束通り香月も連れて行くことになった。移動には普通の車を利用した。戦術機で移動しようと思ったが、場所が雪原ということもあり整備が面倒だったのでやめていた。仮に何かあっても、数機の撃震が格納庫にある。そのため、有事には備えられている。
この地は保養地ということもあり、スキー場が併設されていた。さらに、温泉も近くにある。旅館やログハウスもあり、普通のリゾート地としても問題はない。そのすべてが貸し切られている。ここで2日間の休暇が与えられた。
「さて、アンタたち?2日間も休暇を与えられたんだから、思いっきり楽しむわよ!」
帰るのは14日の朝だそうだ。何をしても自由だそうだ。だが、初日の今日はもはや風呂に入る以外の選択肢はないだろう。どうやら近くに大浴場があるらしい。そこに向かうことにした。荷物は近くにあったログハウスに全て預けた。
温泉にたどり着くと、そこには超大型の露天風呂が広がっていた。仕切り板は一切なく、遮るものは何もない。脱衣所のような場所も、岩陰が二つある程度だった。つまり、考えられることはただ一つだった。
『混浴じゃないか!?』
いったん男子と女子に分かれて服を脱ぎ始めた。現在の男女比は男3人、女9人の構成だった。霧雨とヤマメは相思相愛のイチャラブカップルなので特に支障はないだろうが、問題なのはトンカッチとジェームズだった。つい最近だと、ヤマメの胸を見て『胸でっか!』といった前科がある。
つまり、この馬鹿二人は他の女性陣に目移りする可能性があるということだ。それは、トンカッチたちも自覚していた。自分たちに愛すべき嫁がいるというのにもかかわらず、自分たちの性癖に刺さったのはストレートに表現してしまうという最悪なことも自覚していた。
トンカッチは、霧雨とジェームズを呼んで円陣を組んだ。
「いいかお前ら。絶対に他の女に目移りすんじゃねえぞ?いいか、絶対だ。目移りする=死だ!常に死が待っていると思え!」
「大丈夫だトンカッチ!俺は恭子しか見ねえからな!?」
「そうだ、それでいい!おれもみちるしか見ねえからな!?」
2人は勝手に盛り上がっており、霧雨はその圧に飲まれていた。円陣から離れようとするが、それをジェームズががっしりと掴む。
「おいおい何勝手に抜け出そうとしてんだ?お前も男だろ?ここでビシッと気持ちを一つにして集中するってもんだろ!?」
「そうだ、ジェームズの言うとおりだ。いくら自分の恋人がカワイイからって、他の女に目移りするのは男の
「あの、自分ヤマメ以外全く興味ないので大丈夫っすよ?じゃ、お先失礼します」
霧雨はそそくさと一人で先に入湯していった。その時の声の感じから、既に女性陣は全員入湯済みのようだ。
「畜生抜け駆けしやがった!…………おいジェームズ、覚悟はできてるか?」
「何を今さら…………俺はできてる!」
『Let's Goooooooooooooooo!』
そうしてついに覚悟を決めた男二人は、天国であり地獄である露天風呂にダイナミックエントリーした。堂々と脱衣所から走ってくる様と地響きは、もはやアレクサンドロス大王のような勇ましささえ感じた。アメリカで女装させられた時とは違い、鍛えられて磨き上げられたボディが、湯けむりから姿を現した。そして察しのいい女性陣が口をそろえていった。
『危ないから走るな!』
その忠告を意に介さず、2人は歩みを止めなかった。
「ジェームズ!このまま行けば、いい感じに女性陣を視界に捉えずにダイブ可能だ!」
「よし分かった!いくぞトンカッチぃ!」
二人は思い切り足に力を入れる。だが、これが致命的失策。かかとに力を入れたがために、思いっきり後ろにこけてしまった。
『アバッ!』
こけたタイミングはコンマ1秒の誤差もなかった。思いっきり頭をぶつけたので、しばらく立つことができなかった。
「まったく、世話の焼ける男だな…」
「やれやれといった次第ですわね…」
倒れた馬鹿二人のために、救助隊が立ち上がった。外に置いておいたタオルを取り、体を隠しながら起こしに行った。そんなことを全く知らない馬鹿二人は、慌てふためくことしかできなかった。
「お、おいジェムジェム?早く起きるんだ!起きねえと、まずいっ!」
「何だジェムジェムって!?俺のこと言ってんのかテメエ!」
「今そんなこと言ってる場合じゃねえって!顔見れねえからわかんねえけどよぉ、二人くらいこっちに近づいてるんだよ!」
「What!?」
しかし、体へのダメージは案外重かったようで、なかなか起き上がれずにいた。仮にこれがみちると恭子でなかった場合、何が起きるか分かったものではない。二人は神に祈りながら、自分の嫁が近づいていることを願い続けた。
「ほら、早く起きなさい!」
「ジェームズさん、何をなさっているの!全くもう!」
何とか顔を見ようと、声のする方に頭を向けた。そこにいたのは、手を伸ばしていた自分の嫁さんたちだった。しかし、タオルの下には何も着ておらず、肌色の大地が若干広がっていた。
『Oh……
思わず馬鹿二人は感嘆の声を漏らしてしまった。
「は、はぁ!?ちょっと何言ってるの!?恥ずかしいじゃない、馬鹿!」
「ここまでジェームズさんが阿呆だったなんて…私どうしようかしら」
こんな馬鹿を起こすためにわざわざ恥ずかしい思いをしながらここまで来たのを、嫁さんたちは後悔した。さっさと起こそうと手をつかもうとした。しかし、ここでトンカッチたちにとっては奇跡のようなことが起きた。冬山に強風が吹き荒れたのだ。それが、みちるたちのバスタオルを吹き飛ばしてしまった。何が起きたのか理解できずに棒立ちしてしまっていたが、事の重大さを遅ればせながら彼女たちは気づいた。
今、自分たちは裸になっているということを。
「………あら?バスタオルが…ない!?」
「あわわわわわわわわわわわっわ!?ジェームズさん見ないでっ!」
すぐに二人はトンカッチたちの目を手で隠す。しかし、二人は混乱していた。自分の手で目を隠したのが悪手だった。手なので若干隙間があり、見ることは容易だった。さらに、片手で目を隠させると、もう片方の手で何とか体を隠すしかない。急いで視界外に逃れようとするも、トンカッチたちは横に倒れている。実質全周囲見渡すことができる。
「ととととと、とにかくさっさと目をつぶりながら立ち上がって風呂に入りなさい、トンカッチ!」
「いや、起きれないって」
「知らない知らない!さっさと起きやがれください!」
「だから、起きれないって言ってるだろ!」
それを風呂に入っていた他のメンバーが微笑ましく眺めていた。
「宗像、あれ見なさいよ。イチャイチャ楽しんでて良さそうよね~」
「速瀬中尉、わざわざそんな言い方しなくてもいいのでは?」
「何?私は単純にそう思っただけよ。…別に
「そうですか…失礼しました」
霧雨はその会話を聞いて、何のことか分からなかった。気になったので聞こうとしたが、それをヤマメが止めた。
「うへへ~、丙ちゃん捕まえたっ!」
がっちりホールドして動かないようにしていた。ヤマメもまた知らなかったが、先任の反応から嫌な予感を感じ取ったのだ。いつも通りに霧雨に接しながら、それを気取らせないようにヤマメはしたのだ。とはいえ、いつもこの調子なのでバレることはなかった。堂々と風呂でイチャイチャし始める。
「まったくアンタたちは呑気なものね。露天風呂と言えばを忘れてるじゃないの!?」
遅れながら香月がやってきたのだ。それも一升瓶を片手にだ。その後ろには、柏木と茜がトボトボ歩いてきた。
「副司令!?風呂場で酒はまずいですよ!それと、柏木と茜!貴様らあれだけ副司令を止めろと言ったでしょ!?」
若干速瀬はキレていた。香月に酒を入れてしまうと大変なことになってしまうということを知っているからだ。
「速瀬中尉、必死に止めたんですよ!けど、副司令の酒への渇望が強すぎて…………」
「必死に止めようとはしたんですけどね~。無理でした、へへへ!」
「へへへ、じゃないわ!」
「はいはい、速瀬うるさい!とりあえずこれでも飲んで落ち着きなさい?」
そう言って香月は一升瓶を近づけてきた。その姿振る舞いは中年のオヤジそのものだった。この酒を飲めば戻ることはできない。それは分かってはいたが、せっかくの休暇なのだ。羽目を外したくもなる。おまけにわざわざ勧められた酒だ。好意から来ているものを、断るわけにはいかない。
だが、自分も酒癖が悪いのは分かっていた。何より、まだもめている上司4人のように素っ裸でそこらじゅうを歩き回るような痴態は晒したくない。速瀬はずっと迷い続けていた。それを打破するように、風間が申告した。
「では、副司令。私から先にいただいても?」
「あら、風間から行くとは意外ねぇ?はい、好きなだけ飲みなさい。どうせ車のトランクにまだあるんだし………」
『ええ…………』
香月は、さらっと爆弾発言をしていった。その間に、風間は少し飲んだ。感想としては、飲みやすく、味もかなり良いそうだ。香月曰く、度数もそこまで高くないものを選んでいるそうだ。だが、風間にはクリティカルヒットした。
「ふわぁぁぁぁ…………」
「風間?おいどうした風間!」
感想を述べてから数秒と経たず、ノックアウトしてしまったのだ。すぐに宗像が風呂から引き揚げて介抱し始めた。すかさず宗像はアルコール度数を聞く。
「これ?……24度って書いてあるわね?もしかして、高かったかしら?」
『高すぎます!』
通常、日本酒は15~20度程度だ。これを十分に上回る度数を、風呂で飲むなどあまりにも危険だ。全員が一気に香月から離れた。余りにも危険すぎる。次呑んだ奴は風間と同じに会うことが明白だったからだ。しかし、宗像は逆に興味をひかれた。ここまで卒倒するほどの酒はどのようなものだろうと気になったのだ。
「ここは私が…………」
そして、一升瓶受け取る。風間の二の舞にならないように、風呂から出る。もちろんバスタオルは身にまとわせておいた。しっかりと結んで、強風対策もばっちりだった。万全の状態を期して、ついに飲み始めた。最初は一口、味わうように飲む。味は確かにいい。そして、風間が倒れるほどのレベルではないと確信した。しかし、宗像は用心深かった。
「では、私はこれくらいにさせていただきます」
このまま調子に乗って飲めば、今度こそ倒れるだろう。すぐに、風呂に入りなおす。風間も、だいぶ復帰してきた。顔は真っ赤だったため、足湯程度にするように申告した。
「
完全にアウトだった。暴走寸前の風間を抑えながら、再び入湯した。一方で、トンカッチたちはまだもめていた。
「私の裸を見るなぁぁぁ!」
「だから見てねえよ!目つぶってるだろうが!早く俺を引き起こせって!?」
みちるは未だにトンカッチを目を手で押さえつけたままだった。完全にパニックに陥ってる。だが、恭子は覚悟を決めたようだ。
「………ジェームズさんになら、別に見せてもいいかしら」
恭子は自分でも何をしようとしているのか、若干分からなかった。だが、こうするしかないと確信した。目を隠していた手をどかして、ジェームズを引っ張り上げた。ジェームズは、その精神に応えてしっかりと目をギンギンに開いていた。
「すまないな恭子、ちゃんと目閉じてるから安心しろ?」
「ふふっ、嘘をつくのがお下手な人なんですから」
若干恭子は楽しそうにしていた。普段はガチガチのところで働いているのだ。たまにはこういったのもアリなのではと考えているのだろう。それを見たトンカッチは、みちるの方を直視した。みちるも諦めがつき、仕方なく体を起こしてあげた。
「へへへ、すまんな」
「まったく、今回だけだぞ?次同じことしても助けないからね?」
そう言って完全に体を起こし切った後、若干ふらついたからだを支えるように回り込んだ。後頭部に目立った外傷が無いのも確認できた。ようやく全員が風呂に入った。トンカッチは、こそこそとジェームスのそばに近寄った。
「おい、あれどうなってるんだ?」
「ん?霧雨のことか?いや~、さすがだなアイツ。全く他の女に見向きもしてねえ。俺も見習いたいもんだが―――」
「それじゃねえよ!いや、それもすげえけどよ。ほら、風間見てみろよ。顔真っ赤だぜ?それと、その横の一升瓶。もしかしてだけどよ…………」
「ああ、言わんとすることは分かるぞトンカッチ。…戦略的撤退の準備でも―――」
「あらぁ?どこへ行こうというのかしら?トンカッチ中佐、ジェームズ少佐?」
『うげっ、副司令じゃん』
どうやら犯人は副司令のようだ。トンカッチは逃げきれないことを察した。しかし、トンカッチは妙案を思いついた。ここで一気に飲み干せば終わるのではないかと。
「副司令、それでは一発失礼させて頂きますぜ?」
「はいは~い、どんどん飲んじゃって」
少々下品だったが、ラッパ飲みした。普段から酒は嗜んでいる。所詮日本酒だ。あっても15度程度だろうと高をくくっていた。先に全てを知っていた者は、トンカッチのあまりの無謀さに絶句していた。そして、一気に体中をアルコールが駆け巡り、トンカッチは倒れてしまった。
トンカッチが再び目を覚ますと、何かしらの部屋に入っていた。どうやら寝ている状態のようだ。そして、何かが枕になっていた。
「あら、起きた?」
みちるが膝枕をしてくれていたようだ。だから、なぜか良い匂いがすると感じたのだ。何より柔らかかった。トンカッチはみちるに、あの後どうなったかを聞いた。
倒れた後、すぐに温泉から引き揚げられて、露天風呂から撤収したそうだ。風間と違って、復帰不可と判断されたためだった。着替えの補助はジェームズが代わりにやってくれたらしい。アイツにはどこかで借りを返しておきたいところだ。その後は、抱えられながら旅館まで引き連れられてきたということだ。
この部屋は和室で一般的な旅館のものと同じだったが、露天風呂もあった。時計を見ると、既に19:00になっていた。もう飯時だろう。今日は各自で食べるように言われていた。内線で料理を出してもらうようお願いした。少しすると、料理が運ばれてきた。刺身と、すき焼きのようなもののセットだった。昨今の食糧事情から鑑みると、合成食材だろう。
だが口にすると、天然ものであることが分かった。久しぶりにこのようなものを食べたので、美味しさのあまりすぐに食べきってしまった。満足して少し休憩する。ふと外を眺めると、雪が降っていた。月も出ており、幻想的な冬の夜空を演出していた。みちるは意外な提案をしてきた。
「トンカッチ、もう一度入りなおさないか?ちょうど部屋に露天風呂があるんだ。ほら、さっき全然入れなかったし………」
「…………もちろん、YESだ」
二人は改めて入りなおすことにした。今度は特に体を隠さずに入ってきた。
「おいおい、隠さなくていいのか?さっきはあれだけ恥ずかしそうにしていたってのに」
「あれは、ほら。他の奴もいたでしょ?その視線が気になっただけよ。別に私の裸なんて何回も見られてるものだし」
確かにそうなのだが、言語化されると、さすがのトンカッチも恥ずかしくなってしまった。少し会話に詰まってしまったが、すぐに軌道修正する。いろいろ互いの昔話や、思い出について話し合った。気づけば、時計が22:00になっていた。これ以上は、のぼせてしまうので風呂から出た。
しばらく他愛もない会話を続けていたが、晩酌をし始めると、一気にヒートアップしていった。最初は手をつなぐ程度だったが、徐々に過激になっていく。しまいには、みちるがトンカッチをベッドに押し倒した。
「………ちょっと酒が入り過ぎてるんじゃないか?」
「そう思う?残念だけど私は酔ってないわよ」
「じゃあ、本気?」
「じゃなきゃ押し倒したりなんてしないでしょ?」
「…これ以上は何も言わなくてもよさそうだな」
トンカッチは部屋の電気を落とし、みちると体を重ねあった。
今回の友情出演組です。(敬称略)
ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)
霧雨アロナクス壱型丙(@Ke78684Hasunuma)