Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ! 作:tonkacchi
2001/12/13 4:00
本来では二日目の予定だったが、朝っぱらから電話をトンカッチは受けた。まだ寝起きで夜は
「ふぁい?トンカッチですが何か~?」
「トンカッチ中佐ですか?こちらは横浜基地作戦司令部です。香月副司令、伊隅中佐並びにトンカッチ中佐に出頭命令が発令されました。今すぐ来てください」
「ええ~、マジで言っちゃってんの!?ふああ~、寝みい……。んで、いつまでに行けばええんか~?」
「こちらが迎えのヘリを出しますので大丈夫です。だいたい8:00に到着する予定です。出来れば食事だけは済ましておくことをお勧めはしますけど…」
「はいはい、わかりましたよ!…………というか、何で俺に電話してきたの。他でもいいじゃんね?」
「それは…………何となくといいますか、トンカッチ中佐って不眠症のイメージが強いものでして―――」
「そんな訳無いだろ!」
トンカッチは受話器を叩きつけるように置いた。せっかくの休暇だというのに、用件不明で出頭命令が発令されたのだ。まだ後1日も残っているというのにだ。今日はスキーに行くことになっていたが、それもお釈迦になった。とりあえずみちるを叩き起こそうとした。スヤスヤと熟睡している姿は可愛かった。だが、よく見ると目元が腫れていた。さらに、泣いた後も残っていた。
やはり、まりもの死は彼女に深い傷をつけてしまったのだろう。今すぐに起こそうと思ったが、こんな顔をされては起こす気にもなれなかった。彼女の額に軽くキスをして、トンカッチは部屋を後にした。少し離れた部屋にいる香月を叩き起こすためだった。みちるは戻ってきたときに起こせばいいだろう。ドアをノックする。反応は無かった。だが、部屋の鍵がかかっていなかった。一応聞いてみる。
「副司令、トンカッチです。急ぎの連絡があるのですが?」
やはり反応は無かった。部屋に入ると言っても反応は無かったので、不法侵入することにした。部屋の中は旅館と思えないほど散らかっていたが、そのどれもが数式の書かれたメモだった。机には酒瓶が転がってたものの、そのすべてがきれいに飲み干されていた。彼女もまた、目が腫れていた。この場合は徹夜に近いものからくるものだろうと感じていたが、寝言ですべてはっきりと分かった。
「…………まりも…ごめんなさい」
トンカッチはメモ書きとタイマーをかけた目覚まし時計を残し、布団を肩にかけてから部屋を後にした。
部屋のドアを静かに閉め、トンカッチは外に出ようと思った。館内は非常に暖かったが、外は極寒だ。すぐに外に出る格好に着替え、小説と煙草を持ち、ロングコートを羽織って外に出た。自販機から暖かいコーヒーを購入する。近くに見晴らしのいい丘とベンチがあったので、そこまで登っていった。ベンチの周りに街灯はあるが、他は夜なので何も見えない。昼間では雪景色を堪能できるが、今見えるのは下にある街並みの街灯程度だった。
コーヒーを一気に流し込み、ポケットにしまっていた煙草に火をつける。滅多に煙草は吸わない主義だったが、休暇の時くらいは吸いたくなるものだ。厳密に言えば、かっこつけたくなったのだ。しばらく一人の空間を心地よく享受していたが、下から物音がした。
「…………誰だ?」
「霧雨です、中佐」
上がってきたのは霧雨だった。彼もまたロングコートを着ていた。やはり男というのはロングコートが好きな生き物のようだ。さらに、片手に本を持っていた。どうやら目的は一緒のようだ。とりあえずベンチの空いているスペースを譲った。
二人はしばらく自分の本を読んでいたが、トンカッチが煙草を差し出そうとした。霧雨は、それをはっきりと断った。どうやら吸ってるのがバレたら、ヤマメに始末(?)されるらしい。トンカッチもそれを考えていなかった。みちるは喫煙していることを知ったらどう思うだろうか。
「いや、伊隅中佐にバレたらまずくないっすか?多分ぼこぼこにされますよ」
「いやぁ、あのルンルンみちるんに限ってそんなことは無いね!……無いよね?」
「知りませんよ!てか何です、そのルンルンみちるんって!?」
「適当に考えたあだ名。なんかゴロがめちゃくちゃよかったから…………。この話止めようぜ?」
それから二人は、しばらく雑談を続けた。自分の過去や彼女についての話、戦闘経験などを話していた。そして、気づけば夜明けになっていた。霧雨は持っていた小説をトンカッチに差し出した。題名は『帝国興亡記』というものだった。内容は架空小説ではあったが、現在の我々人類と共通するものがあった。
初版が1960年に刊行され、今もなお増版されているらしい。読んだことは無かったが、せっかくなのでいただくことにした。代わりに、トンカッチも自らの小説を手渡した。題名は『西部戦線異状なし』。過去にあった世界大戦の話を日本帝国の側からの視点をもとにして作られたものだった。トンカッチのお気に入りで、初版が1932年で、現存するのは第1版と第2班の計5000冊しかない。
これはトンカッチの父の卓也の持っていたものだった。昔読んだときにえらく気に入ったので、以来暇さえあれば読み返しているほどだった。これを渡そうとした。だが、霧雨は断った。
「これは別の人に渡してあげてください。もっと、大事な人にね」
そう言って、霧雨は丘を下って行った。トンカッチも煙草の火を消し、出発の準備をするべく下った。
部屋に戻ると、みちるが起きていた。まだ寝起きのようで、ふにゃふにゃしていた。普段見られないので、軽くほっぺをムニムニ揉んだ。それでようやく起きたようだ。若干不機嫌そうな顔だった。
「…………何すんのよ。まだ起きる時間じゃないでしょ?」
「いや、起きる時間になっちまった。はい、これ」
トンカッチは、電話で聞いた内容をまとめたメモを渡した。無論、みちるも見たときは不機嫌そうな表情を浮かべた。だが、我々は軍人だった。命令は絶対だった。すぐに荷物をまとめ始め、着替えを済ませた。さすがはみちるといったところだ。やると決めたときは物凄く早いのだ。
準備を済ませた二人は、朝食を食べにレストランに向かう。バイキング形式だったが、体が重くならない程度に済ませた。食べ終わって、再び部屋に戻り時計を見た。まだ7時で時間はある。暇つぶしがてら香月を起こしに行くことにした。
ノックをしたがやはり返事はない。ドアのカギはかけられていたので、電話を使って起こすことにした。ようやく反応があった。
「なによアンタたち。メモは読んでおいたからあっち行ってなさい。着替えてるんだから」
すぐにトンカッチは扉から離れた。下手したら覗き魔になるところだったからだ。変な疑いはかけられたくない。だが、先ほど勝手に侵入しているので、気にしなくてもいいのではないかとも感じた。部屋から香月が出てきた。朝食はとらないらしい。どうにも胃が受け付けないらしい。それもそのはず、酒ばっか飲んでいたらそうなるだろう。グロッキーになっていないだけましだ。
ヘリの音がし始めたので外に向かう。軍属の輸送ヘリがやってきていた。かなりの低高度を飛んでいた。そしてヘリポートに着地する。中から司令部要員の一人が降りてきた。
「トンカッチ中佐ですね!?乗れるのでしたらお早く!」
乗ろうとする前に全員の部屋にメモを残しておいた。
「あとは楽しく遊んで帰ってこい、お前ら。…さてと、先に変えるとしますかな!」
3人はヘリに乗り込み、横浜基地へと戻った。
安心してください!もう日常なんて経験できないほどの厳しい訓練と戦争が待ってますから!()
今回の友情出演組です(敬称略)
霧雨アロナクス壱型丙(@Ke78684Hasunuma)