Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ! 作:tonkacchi
まあ、いろいろな意見を得られましたよ。(心無い発言もあったけどね)その回答の1つがこの回で出ます。
そいつが活躍する瞬間?…まだだよ()
2001/12/21 新発田基地
作戦開始より少し前の21日、ヴァルキリーズは近隣基地の新発田基地に到着した。この日までにヴァルキリーズは血のにじむような訓練の日々だった。追加で入ってきた207訓練小隊のメンバーは、つい最近まで訓練兵だったとは思えないほどの活躍だった。訓練の内容のほとんどが、凄乃皇との連携を想定した訓練だった。基本戦闘訓練では十分な結果を残していたからだ。対人訓練など、一度やってみたら後は知れている。
その傍ら、トンカッチは霧雨たちに偵察任務の訓練もしていた。徐々に問題点が露呈してきていた。だが、それをすぐにフィードバックして改善していった。いくら作戦が近いとはいえ、この気合いの入りようには驚かされた。恐らく、この二人なら強行偵察は無事に完遂して帰還するだろう。そう確信していた。
新発田基地に到着してからは最終調整にウェイトを置いた。新発田基地には作戦参加部隊が大量に集まっており、戦術機も大量に置かれていた。基地の敷地外に置かれている機体もあった。PXも大混雑していた。列が90分待ちという異例の事態に、近隣の一般の食堂も解放され始めた。それでも回りきっていなかったが。
それに比べて、幹部食堂の方はスカスカだった。上級将校や佐官がほとんどいなかったのだ。A-01には幹部食堂の方を割り当てられていたが、それでもスカスカだった。周りの階級章を見ても、中佐がいいところだった。やはり、最前線での上位階級指揮官が足りなくなっているという話は本当のようだ。帝国軍の基地だが、珍しく天然ものの食材を使った食事がふるまわれていた。それは、一般隊員のところでも同じだった。この作戦を失敗すれば帝国の未来は一気に暗くなる。ならば、貴重だからと言って食材を腐らすわけにはいかない。
しばらく料理を堪能していると、外が若干騒がしくなっていた。何かで盛り上がっているようだった。先に食事を済ませたトンカッチが見に行く。人だかりができており、その中央が明るく光っていた。トンカッチは近くにいた少尉を捕まえる。
「おい、少尉。これはいったい何が起きているんだ?」
「ちゅ、中佐殿!?…はっ、レクリエーションであります!」
「レクリエーションでこんなに盛り上がるアホがあるか!?おい、少しどいてくれよ?」
そう言ってトンカッチは人垣をかき分けて先頭に躍り出た。そこでは、ライブが開かれていた。全員軍装をしていたが、手には武器ではなく楽器を持っていた。曲は最近のものなのだろう。ずいぶん盛り上がっているようだ。呑気なものだ。もう少しで死ぬかもしれない作戦があるというのに、ふざけている暇があるとは。こんなことをする暇があれば、作戦計画書を読み込むなり、シミュレーターで訓練することもできるだろう。最近のヴァルキリーズを見てきたトンカッチは怒りを覚えた。
だが、明日死ぬかもしれない世界で、楽しみの一つも見いだせないまま死んでいくのは果たして幸福なのだろうか。そう考えると、これも彼らなりの考えなのだろう。トンカッチは冷静に考えて、おかしいのは自分だと気づいた。戦争が狂わせたわけではない。単純に自分が焦っているのだ。それ以上に、今度は失敗できないのだ。
自分がここにいるのは似つかわしくない。そう考えて、トンカッチはこの場を去ろうとした。だが、それを演奏者の一人が止める。
「中佐も一曲どうです!?」
彼は、トンカッチの気持ちを知ってか知らずか話しかけてきた。断ろうとしたが、周りも彼の意見に乗ることを期待していた。どうやら逃げ場はないようだ。仕方なくこの場のノリに身を任せることにした。
しばらくして、他の隊員たちが食事を終えると、外から懐かしい音楽が聞こえてきた。『Take Me Home, Country Roads』、アメリカの曲ではあるが、10年ほど前に日本でも流行った曲だ。たまにトンカッチも口ずさむほどだった。この曲を知らない者はいないだろう。
トンカッチはこの曲をソロで歌っていた。一人ギターを手にし、ランプの灯が明るく照らしていた。周りを他の兵士たちが囲む。歌い終わると、自然と聴衆は大喝采を挙げていた。この日の盛り上がりは最高に達していた。しばらくして、彼らは次の日のために解散していった。楽しみは終わった。次は命を懸ける仕事をする番なのだ。
12/23 9:00
ついに作戦の第一段階である、強行偵察作戦が開始されようとしていた。上陸まではロケットブースターを利用して近づき、そこから任務が開始される。帰還の際には、機体を捨てて洋上に待機しているところを回収するプランが主軸となった。帰れるなら帰ってきた方がいいのは確かではあるが。
発進箇所は、もちろん新発田基地からだった。別部隊は、他の基地から同様のアプローチで合流する予定だ。霧雨たちは滑走路に待機してある彩雲改に乗り込む。最終調整にはトンカッチが付き合った。機体の整備状況は完全ではあったが、微調整まではできない。その補助だ。
「中佐、ここの反応値ここまで引き上げて大丈夫なんですか?」
「ああ、お前なら何とかなる。訓練中で、機体の性能を軽く追い越していた。だが、あくまでもリミッター有りだ。彩雲の限界性能を引き出して見せろ!」
「了解!…あ、ヤマメの彩雲にもお願いします!」
「あっちはみちるに任せた。アイツ、ああ見えて機械得意なんだよな。俺てっきり機械音痴だと思ってたんだけどよ…」
「そういうこと言ってると、また消し炭にされますよ…」
「…確かにな。じゃ、後は頑張れよ!」
トンカッチは調整を終え、機体から離れた。その後、司令部に戻った。前段作戦本部はここなのだ。そこで作戦開始の宣言を、香月が行う。香月も前線に出ていたのだ。理由は、00ユニットや直接指示しなければならない状況のためだそうだ。トンカッチたちも、腐っても佐官クラスなので司令部にいる必要があったのだ。
部屋に入ると、この基地の最高幹部クラスが勢ぞろいだった。さらに、モニターには海軍などの将校も映し出されていた。皆、神妙な面持ちだった。霧雨から発進準備が完了した報告が入る。全員が時計の準備をする。
「よし、霧雨。カウントゼロと同時に発進よ。いいわね?」
「了解です、香月副司令!」
作戦開始時刻は9時半ちょうどだ。しばらくの沈黙の後、ついに作戦開始時刻に近づく。
「神槍作戦開始時刻まで、10、9、8…………3、2、1、作戦開始!」
「霧雨丙。彩雲改、出ます!」
「黒谷ヤマメ。彩雲改、出撃する!」
2機の彩雲改が佐渡島に飛び去って行った。彼らの作戦成功を祈るばかりだった。情報はリアルタイムで送信されている。だが、ハイヴに近づけば近づくほど、情報は更新されづらくなる。彼らが無事に調査を終えて更新可能範囲まで帰還してきてほしいものだ。トンカッチたちは格納庫に向かった。
格納庫に向かうと、村雨がやけにデブに見えた。暗くて見えにくいだけだろうと思い、電気をつける。すると、本当にデブになっていた。増加装甲のようなものが全身に貼られており、腰にはミサイル射出機のようなものまでつけられている。頭部には重機関銃も取り付けられている。
さらに、特徴的だった背中の兵装担架が4つから6つに増やされていた。背中に4つ、肩に2つ取り付けられていた。跳躍ユニットも本来なら2つのところを、なぜか5つにされていた。5つ目の跳躍ユニットは固定式のものらしい。さらに、背中の空いているスペースに謎の他パーツ装着部品が多数取り付けられていた。何をつける気なのだろうか。近くにいた整備班長を問い詰める。
「おい、誰のオーダーでこんなことになってるんだ?少なくとも俺はこんな注文はしてねえぞ!」
「え!?香月副司令が中佐の要望書だって言って出してきたのを受領したのですが………」
あの女狐はまた何か変なことをやらせたがっているようだ。デッドウェイトのオンパレードともいえるフルアーマー形態だ。五十鈴の時もそうだったが、フルアーマーは戦術機としての価値を無くしている状態なのだ。五十鈴は、第2世代戦術機の陽炎を利用しているからマシだった。
だが、今回は第3世代戦術機かつ陽炎より高機動戦を得意とする村雨・弐型に装備させているのだ。まるで意味が分からない。そもそも五十鈴は、A-01の戦術機の火力不足を補う際に使用される予定だったものだ。今回は火力は十二分すぎる。単独火力より機動性能を優先すべきだったはずだ。
トンカッチは何が何だか全く分からなかった。だが、整備班長は続けて言った。
「しかし中佐、これなかなか面白い設計してますよね~。
「何?高速直進機動だと?確かに貴様そう言ったな!?」
トンカッチは整備班長の持っていたパソコンを取り上げる。データを確認するため、三面図を見る。そこには狂気の設計がされていた。追加武装は91年式203mm巡洋艦砲転用型榴弾砲を背中に2門、腰と肩に特01式自律誘導弾発射機、特01式腕部固定式36㎜小型突撃砲を両腕に装備していた。この特○○式は、おそらく一度限りのもので、量産や試作はされていない専用のものだろう。
だが、この重量過多の代物をどうやって動かすのか。その答えは無線から聞こえてきた。香月からだった。
「トンカッチ、聞こえているわね?忙しいから無線で失礼するわ。トンカッチはその強化された村雨に乗って、作戦の第3段階である高速機動戦術機部隊の指揮を執りなさい。そこにはないけど、当日になったら夜襲急行が取り付けられるわ。…残念だけど拒否権はないわ」
「別に俺は構わないです。ただ、みちるにもやらせるんですか?」
「ええ。私は反対したんだけどね、総合司令部はそれを良しとしなかったのよ。ただし、アンタたち2人は全ての武装撃ち切りをもって第1中隊に合流しなさい。そこまでで危険と判断した場合は、離脱しても構わないわ。…私にできるのはここまでよ」
「…………副司令の厚意に感謝します」
そういって無線は切れた。恐らく彼女は港に向かうのだろう。作戦旗艦の最上に乗るらしい。何も伝えられずに乗せられるよりかはマシだろう。このことをトンカッチはみちるに伝えに行った。彼女もまた、村雨の姿に驚いていた。だが、状況を先に知らされていた分驚きは少なかった。
「先発部隊か…。まあ、その間の指揮はジェームズ少佐がうまくやってくれるでしょ。私たちは軍隊なんだから、上の命令には従わなきゃね、軍規違反の常連さん?」
「もう昔のことだろ…。あの時は悪かったって。…たまに夢に出てくるくらいなんだから勘弁してくれよ」
「分かればよろしい」
とても深く釘を刺された。トンカッチは、強化形態の村雨を再びチェックした。増加装甲はAL装甲と呼ばれるものだった。レーザー照射に対して、初撃を耐光線級皮膜で受け止める。皮膜がはがれ始めたタイミングで、装甲を急速冷凍する。これでレーザーを防御する。これが五層になっているのだ。コンピュータ制御により、そのすべてが自動で制御されている。
信頼性は低いが、無いよりかはマシだ。直線機動が基本となるため、横への回避は非常に難しい。普通の装甲としても働く。高速機動をしていると、知らない間に機体に戦車級が張り付いているものだ。それを剥がすのには、もってこいだ。とにかく慣れておくために、シミュレーターにデータを転送しておいた。少しだけでも慣れておかなければ。
そんなことをやっている間にも、偵察作戦は着々と進行していた。
9:45 佐渡島近海
霧雨たちは佐渡島に着々と近づきつつあった。海岸には光線級の存在を確認しておらず、偵察部隊が狙われることはなさそうだった。道中で他部隊と合流もできた。現在は6機で編隊飛行中だった。ブースターの燃焼状況も良好だったが、指定距離に達しためブースターを切り離す。同時に索敵装置を起動する。センサーマストが稼動を開始する。
「このセンサーマスト、めちゃくちゃ古い奴じゃんかよ…。最新のものは棒のヤツだけってことか?」
「まあそうボヤくんじゃねえよ、
「了解した、アイズ3。偵察任務はアンタたちの方が得意だもんな。緊急時の時の対応はアンタらに任せた」
「あいよ!」
レーダーに映ったのは、無数のBETAだった。光線級は確認できていない。警報もなっていないことが、それを証明していた。そして、佐渡島に侵入した。ここからは別行動になる。広域レーダーには、他の方面からアプローチを開始している機体もあった。
「アイズチーム、散開して偵察任務を全うしろ。危険と判断した場合は戦線離脱もして構わない。データの回収が最優先事項だ。生きて帰るぞ!」
『了解!』
各機がバラバラの方向に進路を変えた。無論、アイズ2であるヤマメも同様だった。霧雨は計器を見ながら、周辺の警戒を強めた。ここまで静かだと、逆に怖いものだ。1分に一回のペースでデータは更新されている。だが、徐々に通信が怪しくなっていった。どうやら、敵陣深くまで入り込んだらしい。マップでもわかる。ハイヴに対して、かなり接近していた。
周囲の安全確認をし、現状の位置を確保した。すぐに環境調査を開始する。この間、彩雲改は全く動けない。
「パイルアンカー打ち込み完了!地面の状況は…よさそうだな、固く仕上がっている。車両もぬかるみにとらわれ無さそうだな。大気も生存可能クラスだ。案外問題なさげ?」
この間は暇なので、広域レーダーを確認して待つ。並行して、ディスクに現物化しておく。味方のマーカーは、全て健在だった。霧雨のアイズチームの進捗率は、ほぼ100%だった。別チームのチェーンチームは少し手間取っているようだ。本来なら通信は困難だが、彩雲改の通信能力は伊達ではない。重金属雲下でも、通信自体は可能になっている。
「こちらアイズ1、チェーンチームの誰でもいい。そっちは大丈夫そうか?」
「こ…ら、チェーン2!現在、BETAと接敵!誰か…護を、援護をしてく―――」
ノイズ交じりだったが、通信は切断された。チェーンチームは運悪く接敵してしまったのだ。だが、霧雨は決して助けに行こうとはしなかった。任務の完遂が絶対なのだ。彼らのデータは常にリンクされている。霧雨にも届いていた。だが、司令部には送信出来ていない。司令部との交信が途絶えているのが、その最たる証拠だろう。やはり、通信状況に関してはコンディションが悪いと言わざるを得ない。
とにかく、任務が最優先だ。これは幾度となく戦ってきた経験からなるものだった。だから、霧雨はアイズ3を呼んだ。
「どうしたアイズ1。もう帰還するしか俺たちにはないぞ!?…あいつらは運が悪かったとしか―」
「俺もそうするつもりだ。だから、この機体のデータを持ち帰ってくれ。データはディスクに置き換えてある。もともと俺のメインは環境調査だったからな。…頼めるか?」
「…………チェーンチームを頼む!」
「了解!」
霧雨は、レーダーマストなどの索敵装置のほとんどをパージした。残った兵装は、短刀2本と突撃砲が1つのみだった。レーダーが強化されている分、敵の所在は把握しやすい。振動計が反応しないあたり、地下からコンニチハとはいかないようだ。しばらく飛行を続けると、チェーンチームが見えてきた。
回避機動を取りながら、反撃を試み始めていた。だが、既に6機中4機を失っていた。チェーンチームの機体は撃震だった。彩雲改のベースのベースとなった機体だ。最新モデルということもあり、戦闘自体は彩雲改より優位に立てるはずだ。だが、苦戦を強いられていた。
もう短刀しか残っていなかった。敵は戦車級が主力だった。短刀では分が悪い。すぐに突撃砲を乱射する。
「おいチェーンチーム!俺がひきつけてやるから、お前らはさっさと退避しろ!戦闘より生存を優先しろ!」
「了解、援護感謝する!チェーン6、撤収準備!」
「アイサー!」
彼らは撤収を開始した。しかし、それを高出力のレーザーが焼き払った。すぐに確認する。最大望遠で確認する。そこには、光線級と思われるものがギリギリ見えた。照合した結果は、超光線級だった。1体ではあったが、脅威に変わりはない
。この情報を何とかして伝えなければならない。
超光線級は最優先ターゲットになる。だが、その情報を知らずに戦闘をしていれば、被害は甚大なものになってしまう。この情報も持ち帰らなければならない。だが、ここから逃げれるとも思えなかった。超光線級はクールタイムこそ長かったが、威力と射程が馬鹿にならない。奴から逃げることはできない。
「何とかしたいが…、レーダーに感有り?…………ヤマメか!?」
「丙ちゃん!?良かった、まだ大丈夫そうね!早く離脱するわよ!?」
「超光線級を確認した!ここからは逃げきれねえよ!?」
「相互援助しながらの後退ならやれる!中佐に教えてもらったでしょ?」
「…………やってみる価値はあるな!」
彩雲改の脚部から飛翔体を発射させた。クールタイムの都合上で迎撃されなかったが、すぐに炸裂した。重金属を大量に含んだ、ALスモークだった。焼け石に水程度だが、やらないよりは良い。帰還進路と、ALスモークの展開位置を一直線上にする。片方がひたすら直線に飛ぶように集中する。もう片方がスモークを発射する。
トンカッチは78中隊でこれを教わった。もっぱら二機連携限定だが。うまく飛行を続けていた。だが、すぐに警報が鳴り響く。
「光線級警報?ヤマメ、危ない!」
直線飛行をしていたヤマメの側面に、初期照射が始まった。ヤマメは死を直感した。だが、それを霧雨が無理やり割り込んで受け止めた。ギリギリ遮蔽物に入り込んだおかげで、死ぬことは無かった。だが、もう機体は飛ぶことができなかった。さらに、機体各所から火災が発生していた。機体の影響で、霧雨にもダメージが入った。ヤマメも無理やり回避させられたので、かなりのダメージを肉体に受けた。
「緊急脱出は…………できそうにないか。…血も止まんねえや」
「丙ちゃん!?早く脱出して!私の機体に乗り込めば帰れるから!…諦めないで!」
だが、徐々にBETAが集まってきていた。ここでグダグダやっている暇はない。
「ヤマメ、ごめん」
霧雨は、ヤマメの機体を指揮官権限でロックした。管制権を霧雨が取得する。すぐに自律制御に切り替え、帰還進路を取らせる。さらに、ALスモークを適正位置に放出するようにセットした。
「丙ちゃん?ねえ何したの!ねえ、ねえってば!…機体が勝手に!?まさか、丙ちゃんを置いていくなんてできない!管制権を戻してよ!」
「ヤマメ、これは戦争なんだぜ?…こういうことだって起きるに決まってるだろ?それにさ、愛するもののために死にに行くってさ、なんだかカッコよくねえか?」
「そんなバカなこと言ってないで、早く脱出を――」
「今から戻っても間に合わないよ。血が止まんないんだ、もう助からない。…俺たちは軍人だろ?だから、早く行ってくれ。…………行けぇ!」
「…………了解!」
ヤマメは泣きそうになるのを必死にこらえた。そして、霧雨は自律制御をONにした。ヤマメの機体は、帰還進路を取り始め、オーバーロード寸前の出力で離脱していった。途中、スモークの展開されるのを見届けた。そして、霧雨は短刀を構えた。最後の武器だ。火災は広がっている。機体は真っ赤に燃えていた。だが、まだ動く。S-11の安全ロックも作動していた。誘爆はしない。
「ここで死ぬのは惜しいが……来やがれBETAども!俺が相手をしてやるってんだよ!」
短刀を振り回す。飛びついてくる戦車級が優先対象だ。装甲が燃えて無くなった分、機体の重量が軽い。気分は第3世代戦術機だった。
「Fooooooooooooo!これだよこれ!俺の求めていた戦い方はこれなんだよ!テメエら宇宙人はなぁ、この俺様の手によって滅ぼされるってんだよ!」
鎮静剤の効果で鈍くなるのを、興奮剤で無理やりたたき起こす。どんどん火の手は広がっていく。BETAに火は通用しないらしい。だから、こんなに恐れもせず寄ってくるのだ。だが、霧雨にとってはお構いなしだった。
「来いよ、もっと来いよBETAども!」
短刀がついに耐え切れず折れてしまう。だが、残った刃の部分を握りしめて突き刺して戦う。あるものは全て使って戦う。パネルを操作する。まだ跳躍ユニットは使えるようだ。もう武器はない。囲まれている。超光線級はチャージを開始し始めた。最後の武装を使うことにした。あるものは全て使うのだ。
「…ごめんな、ヤマメ」
再びパネルを操作する。
「リミッター全解除、消火装置終了、S-11のロックも解除。これで綺麗サッパリにしちまおうぜぇ!」
一気に加速し、超光線級に突撃を開始する。初期照射が開始されるが、気にせず突っ込む。そして、起爆スイッチを思いっきり押し込んだ。
「…………俺は幸せだったぜ、ヤマメ」
S-11の爆発は、超光線級とその周りのBETAを一気に吹き飛ばした。
9:55 新発田基地司令部
ここでは慌ただしくなっていた。先ほどから霧雨たち偵察部隊との連絡が途絶しているのだ。先発のアイズチームは霧雨とヤマメ以外が帰還してきた。チェーンチームは一機も確認できなかった。だが、アイズチームと通信ができなかった。恐らく、通信装置が破損したのだろう。少しして、ヤマメの機体を補足した。しかし、機体制御が自律制御に変更されていた。
「アイズ2、こちらは新発田CPだ。状況を説明しろ。自律制御下でも通信は可能だ。どうしたアイズ2。…アイズ2?」
「…………任務は完了しました。ですが…霧雨少尉は、丙ちゃんは…!」
「…………了解した。一度基地に着陸せよ。状況はそれから聞かせてもらう。よくやった」
ヤマメの機体からも、霧雨の爆発は確認できていたのだ。そして、ヤマメは機体から降りた後、トンカッチとみちるに真っ先に報告をしたが、体のダメージが蓄積していた。すぐに担架で運ばれていった。
「霧雨が………死んだのね」
「ああ…。あれだけ生きて帰って来いと言ったはずだろうに、あの馬鹿野郎!………まだ作戦は始まってねえんだ、なのに…畜生が」
トンカッチは、やり場のない怒りに震えていた。だが、霧雨の得た情報がこの後に大いに役立つことは、彼らは知る由もなかった。
今回の友情出演組です(敬称略)
ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)
霧雨アロナクス壱型丙(@Ke78684Hasunuma