Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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書き忘れ補足
斑鳩は政府総監に就任したので、階級が少佐から大佐に昇格しています。
どこかの赤い彗星と一緒ですね()


第55話 反旗を翻す者たち

 2001/12/25 4:15 赤泊周辺

 

 ヴァルキリーズは赤泊まで侵攻した。道中で襲撃にあったが、損害はなかった。補給コンテナも大量にかき集めておいたので、継続して戦闘が可能だった。しかし、気がかりだったのはトンカッチたちの所在だった。通信が繋がらないのだ。バイタルモニターでは問題がなく更新され続けていた。無事であることに変わりはないのだが、場所が分からない以上どうしようもない。

 

「おい、誰でもいいからトンカッチたちを呼べるか?」

「さっきから戦闘の合間にもやってますが、ダメです!送信はできますが、受信を受け付けていない模様!」

「あの馬鹿野郎…撃ち漏らしでは飽き足らず通信途絶とはな!?待てよ…………まさか、あのOSまた暴走してるってことは無いよな?」

 

 そう思いながら、補給を開始した。燃料も弾もなくなっていたのだ。到着予想時刻まで、残り15分を切っていた。Mk.1重突撃砲を両手で持つ。背中にも突撃砲を所持させ、長刀も1本装備した。自律機の調子はかなり良く、この機体がいなければ被弾していた場面もあるほどだった。

 

 実は、A-01は包囲されていたのだ。支援砲撃が他場所より優先されて行われているが、それでも対応が間に合っていない。よく言われている『BETAはコンピュータと人間に吸い付く』というのも、案外信憑性が高いものだ。現に包囲されているのだ。恐らくテンペストに吸い付いているのだろう。

 

 周りに不要になったコンテナを敷設しておく。狙撃でこれを誘爆させる。地雷代わりにして、BETAの遅滞を試みるのだ。

 

「少佐、接近中のBETA第1波がポイントに到達しました!」

「よ~し、よくおびき寄せれたな榊!御剣、そっちはどうだ?」

「はっ、現状2個大隊が食いついています!誘導完了です!」

 

 元207小隊出身の彼女たちは、非常に優秀だった。実戦経験に関しては、先任のジェームズたちと違って浅い。そこは気になるが、今のところ安定して動けている。彼女たちは優秀な兵士になるだろう。そう確信するほどだった。

 

「総員退避完了!」

「珠瀬、狙撃準備!」

「了解です!」

「…………撃て!」

 

 珠瀬が支援突撃砲を、コンテナに撃ち込んでいく。フルオートにもかかわらず、正確に砲弾が着弾していく。そして、コンテナに誘爆した。誘引されていたBETAは木っ端みじんに吹き飛んだ。この爆発でかなりの数を減らすことに成功した。だが、まだBETAは大量にいた。人と違って、奴らに恐怖心などというものはない。目の前で仲間が爆散しても、気にすることなく前進を続ける。

 

「畜生、まだ来るのかよ!全機、突撃準備だ!幸いにも光線級は確認されていない。思う存分暴れ放題だ!」

『了解!』

 

 遮蔽物から身を乗り出し、一気に速度を上げて対峙する。突撃級が前衛を務めており、その後ろに戦車級が大量にいた。先ほどの爆発で突撃級の数が減っていたからか、かなり楽に戦闘をすることができた。噛みつかれるのだけ気を付ければいいのだ。自律機には、若干無茶な戦闘機動を取らせて囮にする。それに食いついたBETAを駆逐していけばいい。

 

 だが、そこまでうまくいかないのが戦争というものだった。

 

「レーザー警報!?………武、初期照射されているぞ!回避急げ!」

「了解!……自動乱数回避解除、手動回避!」

 

 武は初期照射を外すために、回避機動を手動で行った。乱数回避より無茶苦茶な動きだったが、誰も真似できなそうな動きで回避に成功した。そして、すぐにカウンタースナイプで光線級を撃破する。

 

「少佐、光線級排除確認!」

「お前正気か?自動から手動に切り替えて回避とか、馬鹿のやることだぜ!?」

 

 だが、武は実際にそれで回避したのだ。恐らく、自動のままだったら死んでいただろう。武の機動は見たことないものだったが、どこかトンカッチに似ているものもあった。多分、トンカッチが教えたのだろう。

 

「………まるでトンカッチを見てるみたいだな」

 

 そう感心していると、どこからか暗号通信が入った。送り主不明の謎の通信だ。その通信内容を読み終わったジェームズは、ある決断をした。

 

「………速瀬、秘匿回線に切り替えてくれ!」

「え、私?了解です」

 

 すぐに秘匿回線に切り替わった。この通信を聞いているのは、ジェームズと速瀬以外いなかった。

 

「速瀬、今から言うことは口外するな。さっき暗号通信が入ってな、少し行かなければならなくなった。だから、トンカッチたちが来るまでの間の指揮を任せたい。任されてくれるか?」

「私が中隊長に、ですか。………了解しました。伊隅家が来るまで、持ちこたえて見せますよ!…それで、内容は何だったんです?」

「ああ、それなんだが……政府総監、斑鳩崇継大佐の逮捕だ」

 

 

 同時刻 旧上横山

 

 斑鳩率いる斯衛軍第16大隊と、恭子が率いる第3大隊は旧上横山を侵攻中だった。恭子は、同部隊所属の篁唯依に秘匿回線をつなげた。

 

「篁中尉、聞こえていて?」

「はい、恭子様。…例の作戦ですね?現在戦況は安定しています。どさくさに紛れて逮捕するには今しかないかと。今を逃せば、大佐は逃げ切りに成功する恐れがあります」

「そうね。決行部隊は私たちの第3大隊と、第19独立警護小隊の月詠中尉が協力してくれるわ。…これだけの戦力がいれば、斑鳩大佐は確保できる」

 

 最悪の場合の対抗策も用意してある。プランは確実なはずだ。そして恭子は、FCSを書き換えた。その直後、斑鳩をロックオンした。斑鳩の武御雷に警告音が鳴り響く。

 

「ロックオン警報?…崇宰大尉からか。遊んでいるなら、今すぐにやめておきたまえ。今は戦闘中なのだぞ?」

「いいえ、遊びではありませんわ、斑鳩大佐。いいえ、違いますわね。国賊、斑鳩崇継!」

 

 そう言うと、唯依たちが銃口を第16大隊に向ける。

 

「わたくし崇宰恭子は、国家反逆罪等の疑いで斯衛軍第16大隊大隊長兼政府総監の斑鳩崇継大佐を逮捕、拘束させていただきます!今すぐに機体を停止させ、降りなさい!」

 

 だが、誤算が生じたのに気がついた。他の第3大隊機が一向に銃を向けていなかったのだ。

 

「さすがは鬼姫と謳われるだけはあるな。ただ…詰めが甘かったな!全機、崇宰恭子大尉以下反乱分子は軍隊の規律を乱す行為をした!これを鎮圧せよ!………抵抗する場合は、()()しても構わん!」

 

 今度は斑鳩からロックオンをされた。さらに、彼だけでなく味方のはずの第3大隊機からもロックオンがされた。

 

「君がずっと私のことを嗅ぎまわっていたのは分かっていたよ。鎧衣課長だったか?彼は優秀だったね。私の全てを知られてしまったようだ。全く、有名になるとプライバシーが無くなるというのは本当らしい…」

 

 徐々に包囲され始めていた。動けば即射撃され、蜂の巣になるだろう。

 

「さて、恭子。この圧倒的に不利な状況で、君はどうする?今すぐにロックオンを解除すれば、悪いようにはしない。私だって君とは戦いたくはない。さあ、銃を下ろしてくれ。…………下ろせと言っている!」

 

 1発だけ、恭子の武御雷に発砲した。命中はしなかったが、警告であることは誰から見ても明白だった。それを受けて、唯依たちは銃口を下げ始めた。だが、恭子だけは銃口を斑鳩機にピッタリ合わせていた。

 

「1999年7月16日と2000年5月15日のクーデター時の扇動並びに他国介入の誘発、2001年11月12日の新潟防衛線での国連軍所属機体の無断使用、2001年12月5日のクーデター事件の首謀者、これだけ余罪があって全てが公表されれば無事では済みませんでしょうね?」

「その事実は揉み消してしまえば終わりだ。現に君は部下に銃を向けられているではないか?信頼していたものから裏切られるのはどんな気持ちだ?さぞかし悔しいだろうなぁ!?自分が立っていた『優位』という名の足場は、今まさに崩れていくんだ!実に面白いよ、恭子!非常に滑稽だよ!かのチャップリンですら笑ってしまうようなコメディーだよ!」

 

 彼らの問答の最中、唯依は包囲を解くために長刀に手を伸ばした。だが、狙撃されてはじかれた。狙撃したのは、真壁介六郎だった。

 

「篁中尉、余計な真似はしないでもらおうか!…次は当てる!」

 

 唯依は武装を解いた。月詠たちも同様だった。もはやこれまでだと思っていた。だが、恭子だけは一向に諦めていなかった。ずっとロックオンを解除していないのだ。

 

「恭子様、これ以上は危険です!…もはやこれまでかと」

 

 だが、一向にロックオンを外さない。何なら、長刀に手を伸ばしていた。

 

「いい、唯依?私たちは戦士でもあり、お姫様でもあるの。お姫様を守るには、騎士(ナイト)がいなきゃね!」

「まさか…!いや、()はこのことを知らないはずでは!?」

「ふふふ…私、そっち系の情報網は強いのよ?」

 

 斑鳩は突撃砲の狙いを胸部に変更した。先ほどまでは腕部だったが、ここまでコケにされては気が済まない。

 

「さっきからうるさいな、恭子。…早く武装を解くんだ、今すぐに!これは政府総監としての命令だ!でなければ…処理させてもらう!」

 

 斑鳩は全機に発砲許可を出した。

 

「君と戦えたのは光栄だったよ、恭子。しかし、さようならだ!」

 

 斑鳩が恭子に発砲した。36㎜ではなく、120mmで仕留めにかかった。確実に始末するためだった。着弾し、大きな砂煙が上がる。しかし、爆発が起こらなかった。斑鳩は、砂煙に36㎜を乱射する。しかし、着弾の手ごたえが全くなかった。そして、通信が入る。

 

「おい、そこの青い奴。確か斑鳩とか言ったな?…テメエ、誰の嫁に手出してんだこのクソ野郎がぁ!死んでも詫びろ、平伏しろ、地獄で苦しめ!」

 

 砂煙が晴れて、視認できるようになった。着弾した地点にはテンペストがいた。道中で拾った92式追加装甲で、しっかりと恭子をガードしていた。さらに、真壁の武御雷を別の機体が襲撃した。

 

「おいゴラァ!唯依に手を出していいのは、俺だけなんだよぉ!?死ねやゴラァ!」

 

 黒色の不知火に似た何かが参戦した。長刀で襲い掛かる。それに呼応するように、唯依たちも襲撃をかける。数的劣勢は覆っていなかった。だが、それを練度でカバーした。徐々に斑鳩たちを押し込んでいく。そして、ついに隙が現れた。ほんの一瞬のことだったが、斑鳩までの道が切り開かれたのだ。それは、唯依たちが作り上げた道だった。

 

「恭子様、道は作れました!後はお願い致します!」

「了解!ジェームズさん、行きますよ!」

「ああ、分かってる!…斑鳩、覚悟!」

 

 一気に加速をさせる。それに気づいた真壁が、肉壁として塞ぐ。だが、それをF-5Eが2機がかりのタックルで押し飛ばした。

 

「くそっ!自律機風情が!…大佐、2機来ます!」

「分かっている!…さあ来たまえ、私を殺して見せよ!」

 

 斑鳩は突撃砲を捨てて、二刀流に切り替えた。斑鳩にとっては1対2の状況、近接戦になれば二刀流が最適だろう。

 

「相手は武御雷、恭子と同型だが俺たちなら奴を殺せる!」

「油断禁物ですよ!?あと、殺さないでくださいね!逮捕が目的ですからね!?」

「えっ、そうなの?難しい注文するねぇ~…攻撃、来る!」

 

 横に一閃される。これを紙一重でかわす。ジェームズが右、恭子が左から襲い掛かる。それを長刀で受け止められた。

 

「この私を2人なら仕留められると思っていたのか!?残念だが、政府総監を名乗る以上、それなりの腕は持っていなければならないのだよ!」

 

 合計のパワーは圧倒的だったにもかかわらず、弾き飛ばされてしまった。ジェームズの想像以上に斑鳩は強かった。だが、ジェームズも黙ってみているわけにはいかない。目の前にいるのは恭子を殺そうとした相手だ。自分の嫁を傷つけられかけて、黙っている夫などいるわけがない。

 

「恭子、すまないが下がってていてくれ。後ろの連中は苦戦してるみたいだからよ、そっちの援護に回ってくれないか?…大丈夫、殺しはしねえよ」

「…………わかりました、任せます。…ご武運を」

「そっちもな!」

 

 ジェームズは長刀を捨てた。そして、短刀を取り出す。さらに、兵装担架から銃を取り出す。

 

「やはり、俺はこの武装構成が一番好きなのよね!」

 

 左手に短刀を逆手持ちさせ、右手にショットガンであるM1873prototypeを持たせる。120㎜砲は持ち合わせておらず、弾丸も対BETA用砲弾の粘着榴散弾だった。だが、接近して撃てば戦術機も一撃だ。斑鳩も長刀を一刀流に切り替えた。構えは上段だった。それは、二の太刀要らずの示現流を意味していた。

 

「斑鳩、テメエの機体真っ青だけどよぉ、具合でも悪いんじゃねえのか!?さっさと医者にでも行ってこい、クソ野郎!」

「恭子の婚約者とか言ったな?実に面白い…行くぞ!」

 

 斑鳩は武御雷を急加速させた。対するジェームズはテンペストに跳躍待機(ジャンプチャージ)をさせた。何度も示現流とは戦っている。恭子もその使い手の一人だからだ。そして、斑鳩は長刀を振り下ろした。

 

「一の太刀を疑わず、二の太刀は要らずの示現流を、自分の身で味わうといい!」

 

 フルパワーで振り下ろされた長刀は、ジェームズを捉えたかのようだった。だが、待機を解除して一気に横飛びする。長刀は地面にめり込みかけた。それを機体パワーでギリギリ抑え込む。そして、切り返すように横薙ぎする。燕返しだ。それを短刀で受け止める。短刀をヌルっと回し、長刀を受け流す。その勢いそのままで短刀を右腕に刺す。M1873をスピンコックで装填する。

 

「帝国の二の太刀要らず、英国の零距離射撃ってな!」

 

 ジェームズは、お構いなしに零距離でショットガンを撃ち込む。零距離からの散弾は、武御雷をズタボロにした。二度と起き上がれなくなるように、武御雷のありとあらゆる部位に撃ち込む。そして、胸部のみ何もしなかった。

 

「こちらVFA-01所属、ジェームズ少佐だ。テメエらの親玉は、こうなっちまったけど抵抗は続けるか!?」

 

 ジェームズは、ボロボロになった武御雷の頭部を引きちぎって見せつけた。同時に、足元に転がっていた胸部ユニットを踏みつける。すると、斑鳩派は次々と武装解除し始めた。

 

 よく見ると、恭子たちは敵を撃破しておらず、足止めと武装の無力化に努めていた。本来ならこの戦力はBETAに充てられるはずなのだ。元々の予定では、斑鳩を拘束するだけで済むはずだったのだ。それがこうなってしまった。恭子はそれを悔いた。こんなタイミングでやるべきではなかった、と。だが、起こしてしまったものは仕方ない。

 

 後続の部隊に斑鳩の拘束を任せた。鎧衣に要請していた、情報省直轄部隊だった。彼らなら信頼して任せられる。それ以外の真壁以下の斑鳩派は戦闘復帰させるように指示した。今は一大決戦なのだ。少しでも戦力は多い方がいい。だが、恭子たちが戦闘するであろう区域とは全く違うエリアに配置させた。これで憂いは減るだろう。

 

「さて、指揮系統と部隊がバラバラになってしまいましたね…」

「おいおい、まさかそれは予想してなかったとか無いよな?」

「ジェームズさん…正解です」

「…………仕方ねえ、全機俺の所属部隊に臨時編入されてくれ。拒否権は無い。あと、そこの不知火もどき。アンタも来い。一応、名前とか階級は教えてくれ」

「ああ、了解した。俺は、篁亞魏斗中尉だ。所属は…一応、斯衛ってところだ。よろしく頼む、ジェームズ少佐」

 

 ジェームズは、全く予期しない出来事に胃をキリキリ言わせていた。

 

「トンカッチ、頼むから速瀬たちのところに戻っててくれよ?じゃねえと、俺がパンクしちまうって…………ん?あれは、まさか!」

 

 ジェームズは付近にとある部隊を見つけた。

 

 

 4:20 赤泊周辺

 

 ジェームズ離脱後、A-01本隊は襲撃を受けていた。真野湾と両津港で発生した事象と同様だった。

 

「速瀬中尉、これ以上は捌けませんよ!」

「宗像、文句言うな!黙って戦え!」

「こちら彩峰、残弾僅少につき近接戦闘に移ります!」

「分かった!私と御剣、彩峰とついでに白銀。私たちは長刀による近接戦闘を開始する!風間と珠瀬、鎧衣は重火砲とかで支援射撃、宗像と柏木、茜、榊は現状の位置を最終防衛線として固めろ!中佐たちが戻ってくるまで耐え抜きなさい!」

『了解!』

 

 速瀬は、自分が無茶を言っているのは分かっていた。補給コンテナの内、既に8割は使い切っていた。あと補給できるのは1回程度だった。そもそも、補給すらできないほどに肉薄されていた。このままだと、海岸に追いやられて海にダイブする羽目になる。それは、凄乃皇を危険にさらす可能性につながる。最悪、自分が死んででも凄乃皇は守らなければならない。

 

「…もち、私たちを見守っていてね」

 

 覚悟を決め、突撃を敢行する。小型種が大半だったので、長刀で排除するのは容易かった。時折現れる突撃級が危険だったが、うまくやり過ごして柔らかいケツに長刀を刺しこむ。掃討に成功したが、連戦に次ぐ連戦で体力消耗が動きに現れ始めていた。それに追い打ちをかけるように、要塞級が出現した。

 

「ちっ、これはだいぶ冗談キツイわね!?」

「速瀬中尉、要塞級の相手は俺に任せてください!陽動を俺がかけるんですよ!その間に中尉達ががら空きのBETAを殲滅してくれればいいんですよ!」

 

 並の衛士なら絶対に任せていない。だが、目の前の志願兵は天才衛士の白銀武だった。今までに何度もその変態的テクニックは見せつけられてきた。

 

「いい、アンタが孤立しても助けないからね?」

「はい、承知の上です!」

「……わかったわ、行きなさい白銀!思う存分暴れてこい!」

「了解!」

 

 速瀬は、自分がみちるのような指揮官にはなれないことを確信した。彼女のようにうまく指揮が取れていれば、このような事態は招いていないのだ。だが、今は最善のことをするしかない。武が陽動を開始した。BETAはそれに引き寄せられていた。

 

「俺は、もう誰も死なせはしない!これ以上、誰も傷付けさせはしない!俺を殺してみろ、俺を殺しに来いBETAども!」

 

 敵中にて長刀二本で奮戦する。BETAは恐ろしいまでに食いついていた。その隙に、背後ががら空きになったBETAを駆逐する。だが、さすがの白銀も苦しくなっていった。もう要塞級の衝角を相手にするので精一杯になっていた。

 

「速瀬中尉、私に武の援護をさせてください!」

 

 御剣がそう進言するが、却下した。あの男は一人でやって見せると言ったのだ。それを信じるほかない。焦らず急いで的確にBETAを駆逐していく。ようやく殲滅し終わり、武も包囲から解除された。だが、地中から新たな音源が発生した。

 

「こちら柏木、音響センサーでBETAの移動音を検知!あいつら、地上に出る気だ!予測地点は…ここ!?」

「全機急速退避!逃げろ!」

 

 全員が立っていた場所から退避する。その直後、突撃級が大量にその場所から出現した。もう弾薬は残っていない。推進剤もカツカツだった。さらに、凄乃皇の到着予想時刻5分前になっていた。全員が諦めかけていた。だが、その時36㎜の雨が降り注いだ。出現と同時に駆逐されていく。次第に、出現した穴が墓標に変わっていった。砲撃してきたのは、帝国軍の不知火甲型だった。

 

「こちらは帝国軍第1守備連隊第1大隊の沙霧大尉だ!ジェームズ少佐からの救援依頼で、如月と駒木を引き連れてきた!現状はどうなっているか!?」

 

 ジェームズがあの時に見つけた部隊は、第1大隊だったのだ。彼らはちょうど整備補給中で、戦線から一時離脱していた。そのため、ジェームズは窮地に立たされているであろうA-01の救援を、沙霧に頼み込んだのだ。HQに連絡すると、30分程度なら構わないと返答された。そのため、彼らは急行してきたのだ。ありがたいことに、補給コンテナも近くに運んできてくれていた。

 

「こちらはA-01臨時指揮官の速瀬中尉です。先ほどの支援、感謝します!このまま、こっちの隊に一時編入という形になりますか?」

「ああ、そうなるだろう。階級で言えば私の方が上になる。だが、この部隊は速瀬中尉、君が一番わかっているはずだ。そのまま指揮を執ってくれ!」

「了解!さて、聞いたわね?あの精鋭部隊が私たちと一緒に戦ってくれるそうよ?彼らにヴァルキリーズの矜持、見せつけてやんなさい!」

『了解!』

 

 速瀬は、沙霧たち3人に軽い説明だけしておいた。そして、彼らは大体の作戦内容を理解した。時計は4時半、凄乃皇到着時刻を示していた。海岸を見ると、そこには凄乃皇・弐型が飛行しているのがはっきりと見えた。




ネームドキャラのオンパレード第2回でした
ここから凄乃皇・弐型が大暴れ?するかもしれない作戦後半に向かっていきます。


今回の友情出演組です。(敬称略)

もち(@mochi02913)
ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)
如月中尉(@KSRG_TSF94)
篁亞魏斗(@Raven00F)
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