Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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今回から最終章になります
もう物語も終盤へと向かっています。


終章 Last hope
第59話 光線


 12/28 8:00 横浜基地

 

 トンカッチは自室の整理をしていた。というのも、トンカッチは国連軍から帝国軍に戻ることになった。それも偽名を使ってのことだった。これはトンカッチからの希望だった。伊隅家にいった後、トンカッチはこれ以上A-01にいることはできないと考えた。誰もがトンカッチのせいではないと言うが、その同情の空気に耐えかねたのだ。また、戦場でフラッシュバックでもしてしまえば、また他の隊員を殺すことになるかもしれない。それを避けるための願いだった。

 

 これを香月に伝えた。多少嫌味は言われたが、認めてくれた。転属先は、帝国軍第21戦術機甲部隊になる。この部隊は教導団で、富士教導団とは別の教導団だった。ここの部隊で、衛士を訓練する立場として活動しようと決めたのだ。偽名は、大苗代隼人を名乗ることにした。階級はそのまま中佐として、同部隊隊長として動くことになる。碧眼を隠すため、サングラスは絶対につけていた。

 

 荷物をまとめ、部屋を出る。恰好も国連軍C型軍装から、帝国軍の軍装に変わっていた。だが、扉の前にはA-01の隊員がそろって待っていた。全員今からでもとびかかりそうな勢いだった。

 

「すまない、道を開けてもらえないか?」

「開けるわけねえだろ。トンカッチ、話は聞いている。それがお前の選択なんだな?」

「…………トンカッチという人間について私は知らない。私は、帝国軍の大苗代隼人中佐だ。少佐、道を開けろ」

 

 だが、ジェームズたちは断固として道を開けなかった。

 

「みんな言いたいことがあるが、俺が代わりに言ってやる。お前はクソ野郎だ、どっかで勝手にくたばっちまえ!」

「…………言いたいことはそれだけだな?では、失礼」

 

 トンカッチは半ば強引に、彼らのガードを通り過ぎて行った。そして、正門前に待機していた車に乗り込む。

 

「申し訳ない、遅れてしまった。車を出してくれ」

 

 そう言うと、車は静かに横浜を離れて行った。向かう先は、習志野基地だった。

 

 

 10:00 習志野基地

 

 横浜から車で1時間ほどの場所に習志野基地はあった。BETAの被害はほとんどない、安全地帯といっても差し支えない場所だった。教導団として、戦術機のカラーリングがアグレッサー塗装がされている。ここのアグレッサーのカラーリングは、洋上迷彩だった。帝国軍では採用されていないカラーリングだからだ。

 

 滑走路には戦術機が何機か直立しており、不知火系統の機体がほとんどだった。だが、一つだけ少々不思議な形をしていた。しばらく観察していると、奥から帝国軍の将校が近づいてきた。名前は(ぜろ)といい、階級は大尉だそうだ。第21機甲部隊の副隊長を務めており、前任の部隊長が後方送りになってからの中継ぎ隊長でもある。そんな彼曰く、その機体は最新鋭機の不知火・弐型だそうだ。神槍作戦の時のユウヤの乗機も同じ名前だったが、それとは見た目が異なっていた。米国との共同開発の結果生み出されたもので、量産試作機がここに配備されているそうだ。

 

 不知火・弐型はアグレッサーカラーではなかったが、その理由はトンカッチの着任祝いだそうだ。この後、アグレッサーカラーに変更される予定だそうだ。アグレッサーの不知火・弐型にトンカッチは乗ることことになるのだ。

 

「さて大尉、さっそくだが引継ぎを始めようと思うがいいか?」

「了解しました」

 

 書類などの軽い手続きを済ませて、PXに向かった。話せる相手などいなく、他の兵が向ける視線が少しきついものがあった。基地施設を説明されて、一段落ついてから宿舎に向かった。荷物は運ばれており、すぐに展開し始めた。だが、かなり処理してしまい、持ってきたものは少なかった。

 

 その中に手紙があった。神槍作戦開始前に渡された手紙だ。帰還してからのお楽しみだと言っていた。赤文字で『開封厳禁:二人で読むこと!』と書いてあった。どうせ見ていないのだからと開封しようとしたが、気が引けたので引き出しにしまった。少し気疲れしてしまい、居眠りしてしまった。

 

 

 17:00

 

 かなり長い昼寝から目を覚ますと、時計は17:00になっていた。着任のあいさつは17:00からだった。完全に遅刻だった。急いでブリーフィングルームに向かう。5分ほど遅れて入ると、中には全員が着席して待機していた。

 

「隊員一同、起立!」

 

 大尉の掛け声で全員が勢いよく立ちあがる。

 

「中佐殿に対し、敬礼!」

 

 一糸乱れぬ行動は壮観だった。帝国軍はこういう儀式みたいなことに関しての腕前は最強だ。どの国よりも勝っていると誇れる。彼らもまた、その一人だった。トンカッチも敬礼を返す。思わず、国連軍の形式で返そうとしたが、慌てて帝国軍式に戻す。顔合わせなのだから、もう少しフランクでもいいのではとは思った。

 

 軽い挨拶と自己紹介を済ませて、トンカッチはしゃべることがなくなった。

 

「………何か質問等はあるか?」

 

 すると、かなりの部下たちが挙手した。そのうちの一人を指名する。

 

「中佐殿は以前はどの部隊に所属されていらしたのでしょうか」

 

 トンカッチは何も考えていなかった。勢い任せの選択だったことを深く後悔した。大苗代隼人としての設定を全く考えていなかったのだ。香月が軽い設定メモを渡してくれていたが、部屋に置いてしまっていた。どうしようもなくなり、逆質問をしてしまった。

 

「答えても構わんが、せっかくだからクイズにしよう。私の所属部隊を当ててみろ。そうしたら、不知火・弐型を譲ってやる」

 

 自分でも何を言っているのか意味が分からない。だが、これで良さそうなものがあれば、それを利用してやろうと思った。

 

「第1守備連隊でしょうか!?」

「違うね」

「新発田基地所属とか?」

「一瞬だけ立ち寄った程度だね」

「まさか特戦隊!?」

 

 その名前が出てきたとき、思わず口に含んだ水を吹き出してしまった。あまりにも久しぶりのワードで、因縁深いものをこんなにもあっさりと言われると、さすがに面白いものがある。

 

「ゴホッゴホッ!……馬鹿野郎、笑っちまったじゃねえか!残念だが、違う。一応だが、そこの出身ではある」

 

 そう言うと、一気に期待のまなざしが向けられた。最近マスメディアでの扱いが変わっており、特殊部隊として名が知れるようになった。機密にかかわることは公表されていないが、それ以外はかなりオープンになっている。帝国軍の中でも優秀な兵士のみしか入ることの許されない部隊、憧れるのも無理はない。トンカッチはこのあたりで止めておいて、適当に厚木基地だと言っておこうと思ったその時、ついに正解を当てたものが出た。

 

「国連軍横浜基地第1特殊戦術機甲大隊、通称『伊隅ヴァルキリーズ』でしたかな、トンカッチ中佐殿?」

 

 それを言ったのは零だった。

 

「大尉、確かにその部隊は存在しているが私とは何も関係が――」

「帝国軍第78特戦隊に所属、国連軍に転属後は横浜基地にてA-01の一員として活動。先日の神槍作戦でもかなりのご活躍だったようで?」

 

 零の言っていることは全てあっていた。勘がいいだけでは済まないレベルだった。必死に隠そうと取り繕う。だが、その度に本当の情報を開示されていく。一通り言い終わると、何食わぬ顔でトンカッチを見つめた。

 

「さて、中佐殿。私からも質問があります。()()()のあなたが何故ここに?」

 

 どうやら逃げられないようだ。ここまで知っているのは零だけのようだ。トンカッチは仕方なく、サングラスを外した。

 

「…………ったく、ようやく逃げれたと思えばこれか。おめでとう零、お前の言ったことは全部正解だ。諸君、拍手したまえ!」

 

 もちろん拍手など起きるわけがなかった。日系人かつ元帝国軍の国連軍中佐が、正体を偽装して自分たちの部隊に隊長として急に現れたのだ。さっきまで向けられた羨望のまなざしは、汚物を見るような目に変わっていた。さっきのPXで受けた視線と一緒だった。トンカッチはその視線を逸らすように書類を見た。この時間になると、もう訓練している部隊はいない。滑走路も、近隣の演習場も使い放題だった。

 

 トンカッチは勢いよく目の前の机に飛び乗る。

 

「さて、ごっこ遊びは終わりだ。お前ら、今からゲームをしようぜ。ルールは簡単、俺が逃亡者でお前らが鬼だ。で、お前らは実弾を携行しろ。俺は…まあ短刀だけでちょうどいいハンデか?出撃は今から30分後だ。場所は隣の演習場、異論はあるか?…無いようだな。あ、そうだ。この戦闘で()()()()()が起きてもお前らに責任はないから、思い切りかかってこい」

 

 トンカッチはブリーフィングルームを出て行った。すぐに無線で、整備班に燃料と緊急整備を行うように命令した。強化装備に着替えて、弐型に乗り込む。OSは旧式のままで、シートもビニールで覆われたままだった。コーションマークも残ったままだった。本当に新品のようだ。

 

 操縦桿も若干固い。機体性能を急いで頭に叩き込む。今まで乗っていた村雨・弐型とは全く異なっており、帝国軍の衛士なら簡単に乗りこなせるような機体だった。ほぼ専用機同然の村雨はピーキーな独自の感覚だったが、弐型は不知火の操縦感そのままだったからだ。腕のナイフシースを展開し、短刀が入っていることを確認する。もちろん実戦用だ。

 

 燃料の補充が済み、滑走路に出る。空は暗くなっており、滑走路の誘導灯のみが光っていた。その暗闇に溶け込むように、不知火が待機していた。アグレッサー機の不知火は全て壱型丙で、機体性能では弐型が勝っている。だが、数的不利ではある。演習場の地形は全て記憶した。普通の市街地演習場だ。これなら上手くやれば勝つことはできる。零が近づいてきた。

 

「中佐、我々は実戦装備です。不慮の事故が起きても、恨まんといてくださいね」

 

 そういって彼らは先に出撃した。トンカッチもそれに続いて演習場に向かった。到着して早々、牽制の弾幕が張られた。歓迎パーティーの始まりだ。

 

「さて、相手は教導団だし生半可な戦術は通用しないな?ならば…うまく利用させてもらう!」

 

 地面に着地する瞬間が旧型OSでは危険になる。XM3ではこの隙を少なくすることができるが、旧型OSは一度機体を安定状態にしてから行動が可能になるようにプログラムされている。彼らはそれを狙っている。わざと機体を上昇させるような撃ち方をしてくる。回避しなければ即死だ。上昇せざるを得ない。そして、着地する。

 

「かかったな!全機、着地地点にありったけ劣化ウラン弾をぶち込んでやれ!」

 

 零の合図と同時に、一斉射撃が開始される。配置も完璧で、全方位から狙っていた。だが、トンカッチは着地をしなかった。

 

「引っ掛かったのはお前らなんだよ!」

 

 着地する直前に、跳躍ユニットを一瞬だけ吹かす。さらに、脚部で思いっきり地面を蹴る。安定状態プログラムに上書きするように行動を重ねる。そうすれば、上書きされたプログラムが優先される。こうやって隙を減らしている。そうして加速を得た弐型は、短刀を引き抜く。そして、目の前の機体のマニピュレータに突き刺す。その手から突撃砲が離れ、それを獲得する。

 

「まずは一つ!」

 

 後方から3機が追ってくる。前方からは2機だった。だが、最初に確認したときは8機だった。つまり、残りの2機が横合いから突っ込んでくる。その読み通り、右から2機が接近してきた。トンカッチは左に逃げ込んだ。しかし、左には誰もいなかった。

 

「………はめられたか!」

 

 左は開けた場所だった。さらに、交戦区域ギリギリの場所だった。トンカッチは知らず知らずのうちに誘導されていたのだ。だが、まだ機体性能の全てを生かし切れていない。このままやられるのも面白くない。せめてたくさん暴れさせてもらおう。

 

 機体を急速に反転させ、隊長機の零の不知火を狙う。無線傍受を回避するために、機体からの手信号で通信行っていたのがあだとなっていた。手信号をするためには、見やすい位置にいなければならない。つまり、部隊の真ん中にいるということだ。しかし、その行動はバレバレだった。

 

「所詮はお手本通りにしか動かせないのか、中佐ぁ!?」

 

 零はあえて真ん中に陣取っていた。そうすれば、トンカッチは指揮系統混乱のために狙ってくるだろうと。だから囮として自分が居れば、他の隊員が包囲して撃墜してくれるに違いないと。

 

 しかし、その予想は外れた。トンカッチはすぐに短刀を投げつける。狙いが胸部だったので、思わずガードしてしまった。それに気を取られ、目の前から消えていることに気づかなかった。

 

「零大尉、上方に逃げられました!」

 

 包囲をする前に、急上昇したのだ。上からの一方的な射撃を浴びせる。すぐに彼らは散開する。少しだけ反応の遅れた機体を狙う。位置エネルギーを利用した急加速で、速度を得る。たっぷりと速度の乗ったタックルが不知火を襲った。もちろん機能を停止する。しかし、弐型も機体のショックで一時停止してしまった。そのタイミングで、完全に包囲される。

 

「これで、チェックメイトですなぁ!」

 

 完全にロックオンされている。どうやら本当に殺す気のようだ。今度は逃げ場がない。このまま大人しく降参するか、最期まで抵抗するか、少し考えた。だが、結局抵抗してわずかばかりの希望にすがることにした。機体を起こし、突撃砲を捨てる。短刀を構え、突撃の構えを取る。だが、急に警報が鳴り始めた。

 

「……光線級警報?初期照射警報じゃない!?」

 

 その場にいた全機に警報が鳴り始めた。すると、一筋の光を遠方の夜空に見た。その光は空中で2つに分裂して屈折し、西方へと向かった。

 

「レーザーが…曲がっているというのか!?」

 

 しばらく照射したのち、ようやく光の柱が細くなり始めた。照射時間は45秒間だった。基地から緊急連絡が入る。

 

「現在演習中の第21戦術機甲部隊に通達、速やかに帰還し基地司令部に出頭せよ。これは基地司令からの命令である」

 

 無線封鎖はしていても、緊急連絡はどうしようもない。全機が武装のロックを外す。

 

()()()中佐、この続きはまた今度にいたしましょう。今は先ほどのレーザーについて調べる必要がある」

「そうだな。全機帰還するぞ!」

『了解!』

 

 

 17:55

 

 帰還してすぐに司令部に出頭する。司令部内は慌ただしく動いていた。

 

「零、お前あんなの見たことあるか?レーザーが曲がってたんだぜ?」

「自分は前線にはしばらく行っていないもので…。中佐こそ無いんです?」

「あんなやばい奴いたら、今頃ここにはいねえよ。とにかく、司令にあって色々聞かないとな」

 

 そう言い、トンカッチたちは出頭した。基地司令の顔はどこか青ざめており、汗が滝のように出ていた。

 

「大苗代中佐以下第21戦術機甲部隊、到着しました!」

「ああ…大苗代中佐の着任ご苦労と言いたいところだが、君たちは見ただろう?あのレーザー攻撃を」

 

 すると、メモ書きのようなものを2枚渡してきた。

 

「これは緊急連絡で回ってきたものだ…」

 

 1枚は佐渡島前線基地設営部から、もう1枚は横浜基地からだった。どちらも、致命的打撃を受けたとの報告だった。だが、同時に2か所の被害報告。それも致命的打撃。今この瞬間で、2か所同時刻に攻撃されたということは、レーザー攻撃を受けたということだ。

 

「まさか、横浜と佐渡島に先ほどのレーザーが降り注いだとでも!?」

「そのまさかだよ、中佐。ああ…こんなことが許されるのか!?」

 

 トンカッチはすぐに近くの電話を借りる。A-01に直接つながる番号にかける。なかなかかからない。

 

「中佐、その電話では繋がりにくい。少し奥に通信室がある。そこならマシな奴はある」

 

 零が案内する。通信室も大荒れだった。緊急無線に警報、状況や対処を求める情報であふれかえっている。そのうちの一つの通信機を借りる。

 

「すまない、少し外に出ていてくれないか?君たち通信要員の業務は我々が引き継ぐから、司令部に増員として向かってくれ」

 

 零が通信兵を外に出す。

 

「さて中佐、これで思う存分話ができるはずです。ここで起きたことについては、口外しないと約束しましょう。お前らも分かっているな!」

『了解しました!』

 

 トンカッチは再び番号を入力する。だが、ノイズばかりで全く聞こえない。すぐに調整を開始する。どうやら電話線まで切れてしまっているようだ。

 

「畜生、誰でもいいから出てくれ!」

 

 すると、通話越しに何かしらの音が聞こえた。ノイズばかりで全く聞こえなかったが、何を言っているかは聞き取れた。

 

「こちらは帝国軍習志野基地だ!誰でもいい、応答してくれ!」

「こちらは横浜基地ですが、何でこの番号を帝国軍の基地要員が知ってるんです?この番号は秘匿されているんですよ!」

「その声は涼宮の姉の方だな!俺だ、トンカ…大苗代だ!大苗代、分かるか!?」

「大苗代……まさか、トンカッチ中佐!?」

「よし、覚えていて良かったぜ!今そっちの状況を教えてくれ!これは帝国軍中佐としての願いだ!」

 

 そう言うと、遙は軽くまとめた情報を教えた。突如としてレーザー攻撃を敢行されたことにより、基地地上部が壊滅的被害を受けたそうだ。マスドライバーやロケット発射台は軽微だが、格納庫や弾薬庫に滑走路は全損らしい。この日、滑走路には神槍作戦帰りの戦術機などが大量に駐機しており、その全てが焼かれたのだ。収容しきれない兵士がたくさんおり、その兵士たちも同様に焼かれた。

 

「そうか、よく分かった。ありがとう。他のA-01の連中はどうなった!?」

「それが…ジェームズ少佐と速瀬中尉、宗像中尉、白銀少尉との連絡が取れていません!確か今日は地上格納庫で作業をしていて――」

「何だと!?…よりにもよって指揮をとれる人間ばかりか!」

 

 トンカッチが考えをまとめるのに時間はかからなかった。

 

「涼宮、よく聞くんだ。俺が今からそっちに向かう。進入管制をうまく説き伏せておいてくれよ!?」

 

 そう言って通信を閉じた。振り返ると、零が銃口を向けていた。

 

「大苗代中佐、それはいけませんなぁ?無断で出撃し、古巣に帰ろうというのですか?」

「零…そこをどけ!俺は――」

「彼らとの距離を離すべくここに来たのではありませんか!?…ならばこの度の攻撃は、ちょうど良い機会だと思いませんか?」

 

 嫌味たっぷりで零は言った。確かに零の言うことは正論だった。自分勝手な気持ちを優先し、逃げた。なのに戻って助けたいというのだ。おかしい話だ。だが、戻りたい。彼らの安否だけでも自分の目で確認したい。すると、零が口を開いた。

 

「……はぁ、だから副隊長って役回りは嫌なんだよな」

 

 零は銃口を下ろした。さらに無線を使って誰かと話す。

 

「…………そうだ、俺だ。……ああ、頼む。ん、今すぐにだ。恐らく10分後だ。ああ……分かった分かった、ツケにしておいてくれ」

 

 零は誰かとの無線を閉じた。

 

「大苗代、いやトンカッチ中佐。滑走路に弐型をスタンバイさせておきました。今から10分後に、3分間の停電が発生します。その間は誰も滑走路を確認することができない。その間にここから出撃してください。車では間に合うものも間に合いませんからな」

「しかし大尉、それでは君たちの立場が――」

「今さらそんなこと言っている場合か、中佐!……これは昔受けた恩返しだと思ってください。さあ、滑走路に!」

「…………感謝する!」

 

 トンカッチは通信室を出て行った。零はポケットから煙草を取り出した。

 

「大尉、禁煙したんじゃなかったんです?」

「馬鹿野郎、この後俺たちが吸えるような状況になると思うか?吸えるうちに吸っておけ。…お前らもいるか?」

 

 零は部下たちに一本ずつ煙草を渡す。そして、通信室を出ながら煙草に火をつけた。向かう先は電力室だった。

 

「全く、アンタの息子さんは大馬鹿野郎だな」

 

 そう零はぼやいた。

 

 

 10分後

 

 滑走路には弐型が駐機状態で待機していた。燃料は再補充されており、OSもXM3に書き換えが終わっていた。武装も完全装備されており、いつでも動かすことはできた。だが、滑走路は明るく照らされたままだった。ここで動けば、不審者として疑われること間違いなしだった。そのため、零が何かしらの対処をするまでは何もできない。彼を信じて待つしかない。すると、サーチライトや誘導灯がすべて消えた。滑走路から光が消えたのだ。

 

「中佐、今は強化装備の通信機で話しているので誰にも聞こえていないのでご安心を。現在、滑走路周辺の電力供給を遮断しました。先ほど言ったように、持たせても3分です。その間に、歩行で基地から出撃して下さい。跳躍ユニットを使うと、噴射炎で丸見えですからね」

「了解した、大尉!…重ね重ね感謝する!」

「荷物は後で横浜宛に渡しておきます。ご武運を!」

 

 零との通信はそこで切れた。すぐに弐型を起動する。センサー類の光もすべて落とした。ライトも使えないため真っ暗だったが、何とか基地の外に脱出した。脱出直後、滑走路が再び明るくなった。基地内ではサイレンが鳴り始め、サーチライトが辺り一帯を探し始めた。どうやら弐型とトンカッチを探しているようだ。しかし、トンカッチは振り返ることなく横浜へと向かった。




今回の友情出演組です。(敬称略)

ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)
零(@F104T1002)New!
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