Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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第62話 Operation Cherry Blossom

 2001/12/31 横浜基地

 

 この日までにたくさんの血が流れた。3重に展開された防衛線は、米軍協力の元で5重まで増強された。しかし、日を跨ぐごとに戦力は減っていき、最前線には第1世代戦術機が増え始めていた。全ての工場が総動員されて兵器を生産していた。国家総動員法まで発令される始末だった。一般市民は太平洋側に疎開を開始し、国家間での緊急退避も敢行され始めていた。

 

 第3防衛線は貫通しており、米軍主体の第4防衛線が必死に食い止めている。第5防衛線は予備の戦術機で編成された最後の部隊で、もはや防衛線にすらなっていない。横浜も例外でなかった。相次ぐ襲撃に、そろそろ限界が来ていた。基地被害は終息したものの、その分襲撃回数が増えていた。数はそこまで多くないものの、もって3日だった。備蓄弾薬が底をつきかけているのだ。

 

 地上施設の完全復旧には1年近くはかかる見込みで、地下施設も半年ほどは必要だった。何とかして凄乃皇シリーズは外に出せるように応急補修だけはされていた。作戦実行部隊として、世間にも公表されることにもなった。持っていける戦術機は帝国にはほとんどなかった。だが、他国からの供与などのおかげでギリギリ数はそろった。

 

 正式に決まった作戦は以下の通りだった。作戦開始時には、各地に点在するハイヴに陽動での襲撃が開始される。その間に強襲部隊のA-01が軌道上から降下し、ポイントSW115まで侵攻する。このポイントから進むルートが最も接敵率が低いのだ。そして、最重要目標の『あ号標的』を撃破・制圧し、各地へのBETAの指令機能を停止させる。作戦名は『桜花作戦』。これが大まかな作戦の内容だった。突入部隊たるA-01の戦力は心もとない。だが、これでやるしかないのだ。

 

 しかし、諸外国が協力してくれるのは想定外だった。というのも、政務総監である恭子の尽力のおかげだった。衛士として戦闘する傍ら、政務も取り仕切っていた。臨時政府の努力もあったが、ほとんどは恭子が行っている。この数日間は寝ていないそうだ。

 

 戦術機供与も彼女のおかげだった。アメリカからはYF-22Xが、EUからは制式採用型のテンペストαと専用自律機のMQ-1『プレデター』を、ソ連からはT-50『フェロン』が与えられた。条件は戦闘データの共有とのことだったが、生きて帰る保証がないこの作戦だというのに供与した点から察するに、彼らもこの作戦は成功してほしいのだろう。

 

 さらに、29日には日ソ米英軍事同盟が結ばれ、彼らは実質的な連合軍として動くことが可能となった。それも作用していた。どの機体も最新鋭または最新技術を盛り込んだ試験機だった。これをトンカッチたちA-01のメンバーが全性能を引き出せるように動かさなければならない。その供与された機体を合わせて、出撃できる戦術機はYF-22Xが1機、テンペストαも1機、MQ-1が2機、T-50を2機、不知火・弐型が1機、調達できた不知火が8機、彩雲が1機だった。また、秘匿されていた倉庫から将軍専用のType-00R『武御雷』が使用可能になった。今まで秘匿されていたのは、いろいろ政治的理由があるそうだ。

 

 武の元居た時空だと、桜花作戦と呼ばれる実質的な最終決戦があった。その時は、武御雷5機と凄乃皇・四型の計6機での戦闘だった。記憶の限りでは、最終目標の反応炉にいる『あ号標的』との接触までは成功しており、そこからの記憶が吹き飛んでいる。つまり、実際に接触までは行くことができる。今回の作戦でも、あ号標的は超重要目標として位置づけられている。大型反応炉とされていたが、武の話ではBETAの総司令官のようなものだということだ。それを破壊・制圧することにより、他のBETAへの指令は完全に止まる。

 

 急に貸し出された機体でフルで性能を引き出すことは難しかった。だが、やるしかないのだ。

 

 YF-22Xにはトンカッチが乗り、武御雷には御剣が、T-50には榊と彩峰が、不知火には茜、珠瀬、鎧衣の3人が搭乗することになる。不知火・弐型には柏木を、テンペストαには風間が乗った。自律機として、MQ-1を2機、ウェポンキャリアとして彩雲も持っていくことにした。ジェームズや速瀬たちも連れて行きたかったが、彼らは横浜襲撃の際の傷がまだ完全に癒えていないため、基地防衛の任に当たった。

 

 この突入部隊の9人に加えて、凄乃皇・四型に武と、臨時で任官した社霞少尉と00ユニットこと鑑純夏少尉がいた。この戦力をもってして、喀什ハイヴを攻略するのだ。トンカッチたちは、この日まで実戦訓練を行っていた。そして、時はきた。シャトルに全てを載せ、静止軌道上で待機している国連宇宙軍と合流するのだ。最後の確認をするため、ブリーフィングルームにA-01は招集させられた。

 

「よし、全員揃ったな?……作戦は、何回も確認しているから大丈夫だと思うが、不明点がある者は?…………いないな。完璧に頭に入っているようでよろしい!」

 

 彼らは一言も言葉を発さなかった。それほどの緊張しているのだ。

 

「…気持ちはわからんでも無いぜ?そりゃ、失敗すれば人類敗北に一歩進むわけだしな。ただ、ここでそんなにガッチガチに身構えてどうするよ?今は気楽にいこうぜ?別に俺たちは死ぬために行くわけじゃない、明日を生きるために行くんだ。それを間違えるな。いいな?」

『了解!』

「じゃあ、いつもの一発かましておくか!……総員復唱!」

 

『死力を尽くして任務にあたれ 生ある限り最善を尽くせ 決して犬死にするな』

 

「総員、シャトルに搭乗用意!」

『了解!』

 

 トンカッチたち強襲部隊はシャトルに乗り込むべく、シャトル発射場に向かった。トンカッチをジェームズが呼び止める。

 

「おいトンカッチ、これ持っていけ!」

 

 そう言い、布袋を渡してきた。

 

「何だぁこれ?金か?」

「馬鹿野郎、中見てから物を言えってんだ!」

 

 中には、ドッグタグがあった。それは、今までA-01に参加した者のドッグタグだった。横浜に残る者だけでなく、戦死した隊員の物もあった。中には血で汚れているものもあった。

 

「人によっては魂を縛り付ける呪いになるかもしれねえ。だが、お前なら違うだろ?」

「へっ、あんまり思いを託しすぎるんじゃねえよ!」

 

 速瀬と宗像からは写真をもらった。甲21号作戦開始前と、神槍作戦開始前のものだった。

 

「私たちはずっと見守っているってことですよ!中佐、頑張ってきてください!」

「だから、お前らなぁ?」

 

 正樹も近づいてきた。彼らはここでの防衛を継続することにしていたのだ。

 

「兄弟、こいつを持っていけ!」

 

 一枚の写真だった。それは、トンカッチが合う以前のみちるの写真だった。

 

「世界で俺しか持っていなかった希少な写真だ!絶対に持ち帰れよ!?」

「正樹お前……盗撮したんか?」

「バーカ、4姉妹全部取ったから公平だ。そのうちの1枚ってだけだ」

「お前、一回やよいさんにぶん殴られた方がいいぜ?」

 

 だが、さっきの布袋にしまった。そして、横浜待機組に対して、敬礼をした。

 

「…………横浜を、帝国を頼む!」

『了解!』

 

 今度こそ、トンカッチはシャトルに乗り込んだ。

 

 

 18:00 

 

 シャトルは横浜を飛び去った。この日が帝国最後の出撃となるのかもしれない。だが、誰もがそのシャトルに希望を託した。自分たちの明日のために。生き残るために。

 

「…………だから、そこまで思いを寄せすぎるなっての。こっちがプレッシャーで先につぶれちまうわ」

 

 シャトルはしばらく上昇したのち、静止軌道に待機している国連宇宙軍と合流した。彼らは爆撃艦隊と、突入支援艦隊に分かれていた。

 

「こちらは第3突入支援艦隊旗艦メネラウスだ。ようこそ横浜の諸君」

 

 第3艦隊がA-01の支援艦隊だった。これが支援武装などを大量に保有している。第1艦隊と第2艦隊が爆撃艦隊として先行突入する。1月1日の0300になると、陽動作戦が開始される。0500になれば爆撃艦隊も攻撃を開始する。それまでは周回待機だった。暇つぶしがてらに地球を見下ろす。

 

「初めて宇宙に来たもんだが、地球ってのは広いんだか狭いんだかわからんものだな?」

 

 できれば平和な時に見ておきたいものだった。だが、衛星写真などで見るものと違い、生で見ると感動するものがあった。しばらく眺めていたが、飽きが来ないものだった。よく見ると全部違って見えて、光の当たり方ひとつで景色も変わる。だが、このまま眺め続けていると夜更かしになってしまう。トンカッチたちは、しばらく仮眠をすることにした。

 

 

 2002/1/1 1:00 本土防衛戦線第4防衛線

 

 日付が変わり1時間経過した。各地では作戦が開始の合図が鳴った。陽動作戦が開始された。沿岸部のハイヴは艦砲射撃が加えられ、ハイヴ周辺のBETAとの交戦を開始し始めた。わずかに2個旅団程度の戦力しか持たない箇所でも同様だった。全員が、喀什攻略のための陽動だった。これ程にも人類が協力した動きを取るのは、後にも先にもないだろう。

 

 同時に帝国本土防衛戦線も佳境になっていた。横浜への襲撃がなくなった代わりに、新潟から上陸しているBETAが今までの4倍以上の戦力で押し寄せた。もう米軍主導の第4防衛線は限界だった。

 

「ラプターは何やってんだ!もっと機体を動かしてBETAを攪乱しろって言ってんだよ!」

「対戦術機に特化したコイツでBETAとの交戦は、アドバンテージそこまで取れねえよ!それよりも横浜はどうなってんだ!?」

「こちら横浜防衛部隊!現在横浜防衛の任を解かれ、第4防衛線の増強に当たる!」

 

 ジェームズたちは第4防衛線に合流していた。戦域にはひっきりなしに照明弾が上げられる。1月2日を迎えるまで、残り23時間。その日を超えるには47時間も必要だった。BETAはすでに川越まで接近していた。ここを超えられれば、帝都とほぼ隣接した第5防衛線に到達する。

 

「光線属種は殲滅してんだな!?」

「ああ、何とかな!」

 

 だが、そもそもの数が多すぎた。この日までに防衛で死亡した兵士の数は、数え始めたらきりがないほどだった。これならいっそ核の炎で焼いた方がいいまである。だが、それは何もかもを失うことになる。

 

「畜生、トンカッチがいないからってぇ!」

 

 試作兵器すらも動員されている。試製99型電磁投射砲という殲滅兵器を持ち出していた。圧倒的殲滅力をもってしても、BETAの勢いは止まらない。

 

「第1防衛連隊の連中、もうボロボロじゃねえか!さっさと後退しろ!」

「ここで下がれるかよ!くそったれ!」

 

 全員限界だった。だが、諦めなかった。最後まで戦い続けた。抗い続けた。

 

「トンカッチぃ!後は頼むぞ畜生が!」

 

 知らぬ間に時計は5時を指していた。

 

 

 5:00 軌道上

 

「こちら第1爆撃艦隊、SW115に向けて爆撃を開始する!第2艦隊も続け!」

 

 彼らが爆撃を完了すると同時に降下が開始される。誤爆を防ぐためだ。武が言っていた『エヴェンスクハイヴ付近からの攻撃』を防ぐために、エヴェンスクハイヴの陽動襲撃作戦は、攻略する勢いの兵力が投入されていた。それを喀什に回してほしかったが、それほどの戦力を輸送する手段はなかった。

 

 彼らの陽動のおかげで第1爆撃艦隊は無事に爆撃を成功した。だが、第2艦隊の攻撃シークエンスに入った際、先頭を飛行していた旗艦八丈がレーザー照射により爆散した。

 

「第2艦隊が攻撃を受けている!?」

「旗艦の八丈が撃沈!第2艦隊に対し、初期照射がされている!例のエヴェンスクハイヴ付近からだ!」

「あっちは米ソ連合軍が引き付けてるんじゃなかったのか?」

「知らねえよ!……だが、このままではレーザーで焼け死ぬことになる!」

 

 第3艦隊はまだ突入開始時刻ではなかった。本来ならもう一周程度周回してからの突入だった。それを繰り上げる必要性が出てきたのだ。今なら、第2艦隊が先発として盾になることになる。そうすれば、本陣の第3艦隊が無事に地上にたどり着ける。

 

「第2艦隊、何とかなりそうか!?」

「もう無理だ!だから、こっちが第3艦隊の盾になってやる!構わず降下開始しろ!」

「こちら第4艦隊旗艦グリーンアイランド!第3艦隊は突入を少し遅らせろ!こっちが先に突入して盾になる!」

 

 各艦隊が先行突入を開始する。主力の第3艦隊さえ生き残れば問題はないということだ。だが、レーザー照射をされた時点で生き残ることは難しい。それを知ったうえでの先行突入だった。

 

「………第2艦隊、全滅!離脱した第1艦隊はどうなった?」

「第1艦隊は……離脱していない!?第1艦隊は離脱せずに降下軌道に突入しています!」

 

 第1艦隊は第2艦隊の被害を確認した直後に、軌道を変更して突入軌道を取る格好になった。国連宇宙軍の全艦艇が第3艦隊のA-01を死守せんとしていた。次々と艦隊のHSST(再突入型駆逐艦)が撃墜されていく。だが、着実に高度は下がっていた。

 

「第1艦隊、もう守り切れん!……人類を頼んだぞ!」

 

 またHSSTが撃墜された。

 

「第1艦隊旗艦ソユーズ撃墜されました!第1艦隊も全滅です!」

「ここからは我々第4艦隊が守り切ってやる!絶対に撃墜されるなよ!?」

 

 絶え間なく鳴り響くレーザー警報に彼らは立ち向かっていた。第3艦隊のHSSTが狙われ始めた瞬間にポジションを変更し、その射線に割り込む。限界が来た瞬間に艦艇を誘爆しない位置に無理やり回避させる。

 

「くそっ、もう結構だ!これ以上被害を出させるんじゃない!この位置ならカーゴは無事に地表にたどり着けるはずだ!退避しろ!」

「何を言っている中佐!この高度では降下兵団でも死ぬレベルだぞ!?それにこっちは死ぬ覚悟で来ているんだ!気にせず突っ込めぇ!」

「…………すまない!」

 

 どんどんと撃墜される。しかし、地表がはっきりと見え始めた。レーザー照射も減りつつあった。だが、エヴェンスクハイヴからの攻撃で最終的には第1、2艦隊は全滅、第4艦隊も壊滅的被害を受けた。第3艦隊も被害は出ていたが、A-01に対しての被害はゼロだった。

 

「今度こそ大丈夫だ!護衛に感謝する!…A-01各機、彼らの挺身を絶対に忘れるなよ!?……降下開始!」

『了解!』

 

 カーゴがパージされ、A-01は空中に飛び出た。眼下に広がる大地は、砲撃と爆撃で穴だらけになっていた。地上部分に出ていたBETAはかなり駆逐されており、着陸には問題なかった。残敵を空中から狙撃して、確実な地点確保に努める。

 

「…………よし、着陸成功だ!他の連中も、無事そうだな?」

 

 A-01は無事に着陸することに成功した。補給物資の内、7割が燃えてしまったが、3割も残っていれば十分だった。コンテナを誘導し、物資を確認する。ほとんど装備をしていなかった彩雲には、重武装を持たせ放題だった。武装を多く持てば速度は落ちるが、そもそもの速度が速すぎるのだ。それが重量過多になったところで、速度が並の戦術機に落ち込む程度だ。問題ない。

 

 彩雲には持てるだけの突撃砲を持たせる。攻撃する必要はないので、脇に抱えさせているくらいだった。ALMランチャーは敢えて装備していない。というのも、凄乃皇・四型にもVLSが多数装備されており、そもそも凄乃皇・四型自体が多数の武装を保有しているのだ。荷電粒子砲1門、小型VLS40基、大型VLS12基、36㎜チェーンガン4基、57㎜旋回機関砲1基、転用型四六糎単装砲塔2基、2700㎜電磁投射砲2門の重武装だった。武の知っているものよりも重武装だそうだ。これも、主機強化により発生した余剰電力のおかげで動かすことができている。

 

 このおかげで、人の乗った戦術機はそこまで大量に装備を持っていかなくても問題はない。

 

「風間、MQ-1の調子はどうだ?」

「問題ありません。試作機とはいえ、なかなか良好な成果を示していますね。その彩雲もリンクさせましょうか?」

「頼む。こいつのパターンは回避を基本にしておいてくれ。ウェポンキャリアーとしての役目しかないからな」

 

 装備を完全に整え、ポイントSW115から突入しようとした。だが、その時に飛翔体をレーダーが補足した。すぐにロックオンする。カウンターロックされないあたり、人類側の装備ではないことは明白だった。カメラをズームすると、飛翔体が隕石のようなものだと分かった。発射箇所は、目の前の喀什ハイヴからだった。そして、レーザーがその隕石を破壊する。さらに、地面が軽く揺れた。

 

「喀什で地震なんて滅多にないはずだが?どうなっている!」

 

 すると、ハイヴから先ほどのレーザーよりも太いレーザーが空に向かっていった。それは、隕石が破壊された地点で屈折した。その曲がり方は、明らかにラザフォード場のものと同様だった。

 

「中佐、これは!?」

「横浜を襲ったレーザーと一緒だ……。BETAはここから高出力レーザーを照射して、地平線を超えた場所を狙い撃ちできるってことだ!…よし、だいたい場所は分かった!武、荷電粒子砲を1回ここでぶっ放せ!」

「今ですか!?しかし、ここで使えばML機関と純夏への負担が――」

「ここで撃てなければ、今すぐにでも対応はできる!だが、内部で同様のことが起きれば終わりなんだ!…お前の気持ちは分かっている。鑑少尉とは恋仲なんだろ?彼女に負担をかけたくないってのは俺も分かる。だが、ここは折れてくれ!」

 

 トンカッチは前に武に聞いていた話からそう推察していた。武の反応的には正解のようだ。

 

「…了解!」

 

 武はすぐにデータを取り込み、照準を合わせる。狙いはハイヴの地上モニュメントの裏側だ。そこに隠れるように奴はいる。佐渡島と同等の火力なら、余裕で破壊できる。貫通を狙うことは容易いはずだ。

 

「照準良し、環境補正も考慮してコンマ-3度に角度修正。射線上に友軍は無し。…荷電粒子砲、発射!」

 

 荷電粒子砲が放たれた。その火力は相も変わらず最強と言えるものだった。モニュメントを吹き飛ばし、その裏にいた照射元もろとも吹き飛ばす。ある種の開戦の合図だった。この砲撃により、他の箇所で戦う部隊が長距離高威力レーザー攻撃をくらうことは無くなったはずだ。

 

「よくやった武!…さて、挨拶も済ませたことだ。全機、突入開始!」

『了解!』

 

 彼らはハイヴに突入した。孤立無援の戦闘、今までにないタイプのハイヴ攻略戦だった。凄乃皇・四型が戦力の主軸になるが、それを防衛したまま、あ号標的との接触に移らなければならない。これ以上の負担はなるべくかけたくない。荷電粒子砲は最終手段とし、ここからは火薬式の攻撃手段で対応することを命令した。

 

「いいか?ここから先は地獄までの一本道だ!最終チェックだが、広間を3回経由し主広間に突入したのち、クソ野郎のあ号標的とご対面ってわけだ。ああ、クソっ!チェックする暇すら与えねえってのか!?」

 

 BETAが突入と同時に大量に襲い掛かってくる。トンカッチと御剣が前衛を、中間に凄乃皇、中間側面に榊と彩峰、珠瀬、鎧衣を、後衛に風間と柏木、茜を配備した。

 

「中佐!四六糎砲、弾種は拡散砲弾を使用します!全機、巻き込まれないでくれ!」

「ああ、景気よくやっちまってくれ!」

 

 ハイヴ内に四六糎の轟音が鳴り響く。前方に群がっていた2000のBETAを滅する。道は一気に切り開ける。

 

「御剣、ついてこい!一気に道を作りに行くぜぇ!」

「了解!」

 

 YF-22Xに4門持たされているAMWS-22でBETAを次々と撃破していく。追加に装備されていたグレネードランチャーが特に有効だった。ハイヴ内部のBETAは基本的には戦車級と要撃級、突撃級で構成されている。だが数が多すぎる。ただの広間だというのに、推定数は3万の数だった。

 

「2700㎜の破壊力があれば吹き飛ばせるか?」

「いいや、無理です!こいつは貫通力こそ強いが、破壊力は無い!」

「ならばS-11弾頭を使うか!?」

「そうさせてもらいます!」

 

 すぐに1発だけ広間に広がるBETAにロックオンし、射出した。S-11は広間一つ程度にはびこるBETAを殲滅することはできる。だが、S-11弾頭は限りがある。なるべく温存しておきたい。しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。着弾地点から速やかに退避する。爆発とともに、広間にいたBETAは全滅させることができた。

 

「広間を制圧した!全機、健在だな!」

 

 幸先よく彼らは進軍する。続く2つ目の広間も難なく制圧する。ここではMQ-1が大いに役立った。性能としては第2.5世代戦術機と同等だったが、人が入っていないからできる動きをして暴れていた。数は1万と先ほどよりは少なかった。凄乃皇の装備もほとんど損耗していない。

 

 続く第3の広間に入る。試射がてら2700㎜を撃つことにした。貫通力だけだと思われていたが、どうせ使えない兵装なら使えるうちに撃ちきっておけばいいのだ。

 

「目標、前方BETA群。2700㎜照準固定、ラザフォード場安定を確認。最終セーフティー解除…発射!」

 

 高速で放たれた砲弾が、前方に束なっていたBETAを吹き飛ばす。徹甲弾の区分ではあるが口径が大きすぎるが故、周りの物体も巻き込んで破壊していく。2発発射し、結果はBETA群を全滅させる火力だった。しかし、電力供給に問題が発生する。最初は冷却装置の故障だったが、装填装置に異常が出始めた。たったの1射だけで破損したのだ。使うことはまだできるが、揚弾には時間がかなりかかるようになった。

 

 この火力を失うことにより、最大火力は荷電粒子砲頼みになってしまうことになった。荷電粒子砲は再チャージ中で、再使用可能まで残り10分はあった。再チャージを待ってから主広間に突入することも考えたが、BETAはそこまで悠長には待ってくれない。広間での襲撃を受けたからか、BETAが後ろを塞ぐように追ってきていた。

 

「逃げ道は無いってことか…」

「安心しろ武。元からそのつもりだろ?」

 

 彼らは簡単な補給を済ませ、前進を再開した。




凄乃皇・四型について少々補足をば・・・


今回の凄乃皇・四型はフルスペックの武装めちゃくちゃ盛りではなく、電力をそこまで消費しないタイプの火薬を使用する砲を多めに装備しています。

別に主機換装して電力ダウンとかはないです。単純に火薬式の方が吹っ飛びそうだよねって思っただけです。

小型VLSが増えて大型VLSが減ったのは、どうせ電磁投射砲でぶっ壊せるんだから弾幕増やした方がいいのではと思ったからです。

36㎜チェーンガンがめちゃくちゃ少なく感じるのは気のせいです。これ以上武装制御を彼らができるとは思えません。負担を増やし過ぎないで上げてください。鼻血出して倒れちゃいます。

電磁投射砲はせめてもの情けです。



今回の友情出演組です。(敬称略)

ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)
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