Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ!   作:tonkacchi

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今回は速瀬好きの人は注意して読んでね!
死ぬことはないからそこは安心してどうぞ。


第7話 松本死守

 1999/6/8 10:15

 

 甲府CPは俺たちに松本への前進命令を下した。しかし、状況としては最悪だった。味方に発砲、命中させ戦闘能力を低下させた。さらに、作戦に反抗し、IFF(敵味方識別装置)FCS(火器管制システム)まで書き換えた。軍事裁判行きは確定ものだった。オマケに、それにより隊全体の士気は最低となった。

 

「…甲府CPからの要請通り前進する。速瀬、無茶するな。貴様は安全圏から援護してくれ。」

「…了解。」

「それと、トンカッチ。」

「…何だ。」

「お前の判断は現時点では正しいものだった。ただ、それは許されぬやり方だった。また、後で話そう。」

「……了解した。」

 

 部隊全体の空気がお通夜と同じだった。トップのふたりが仲違いを起こし、挙句の果てに発砲事件を起こす。今思えば、もっと良いやり方はあったはずだ。しかし、命令が出なかったら?今回はたまたま出ただけに過ぎない。だったら、こうでもしなければ行くことは叶わなかっただろう。こうした二つの思いがトンカッチの中を行ったり来たりしていた。

 

 

 10:25 松本

 

「…おい、2人ともまだ生きてるか?」

「ギリギリだね。けどブレード折れたし、長刀も使い物にならなくなったわ。」

「俺も突撃砲は弾切れだぜ。一応短刀使ってるけど、これ以上は無理だな。」

「俺、さっきから貫手で倒してるんだぜ!すげえだろ!」

「「マジかよ!?」」

 

 3人とも生きてはいたものの、満身創痍だった。彼らの連携攻撃は既に破綻しており、突撃してくるやつを対象を優先して倒す程度に留まっていた。そんな彼らに、突撃級が多数襲いかかる。

 

「おいおいおい!もち、ジェームズ、これ無理だろ!」

「そうだよジェームズ、もう無理!逃げよう!」

「黙れ非常食!」

「なんで俺だけ?」

「馬鹿野郎、ヱルム、もち!…自分の燃料見てみろよ!撤退も出来ねぇだろ!」

「…後10分はあるよ?」

「俺も。もしかして、ジェームズもう無いの?」

「あれれ?俺だけ少ない?」

「俺たちが引っ張ってくから離脱するぞ!」

「畜生、ジェームズ足引っ張んじゃねぇ!」

「もち!後方から突撃級!回避しろ!」

 

 ジェームズを牽引しようとしていたもちに突撃級が殺到する。もう回避は間に合わなかった。

 

「くそっ!ここで殺られるのかよ!?」

 

 そう毒づいた瞬間だった。どこからか砲撃が始まった。長距離ミサイルのようだった。それらは、突撃級のケツを目掛けて食いついた。そして、起爆。激しい爆風によりもちとジェームズは吹き飛ばされたが無事だった。

 

「ジェームズ、もち!大丈夫か!」

「俺たちは大丈夫だ!しかし、一体どこから…。」

「我々は米国海軍第103戦術歩行戦闘隊、ジョリーロジャース!秩序と自由(アメリカ)の名のもとに貴官らを救援する!」

 

 そう告げると彼らは、ランチャーポッドを投棄しさらに加速した。アメリカの戦闘スタイルは圧倒的火力の投射による面制圧を主としていた。しかし、状況はそれを許す暇を与えなかった。既にBETAは市内に深く進攻しており、面制圧をするには時間がかかりすぎてしまう。また、救援要請をしていた機体も満足に動けるような状況ではなかった。

 

「そこの三機!動けるか!?」

「こちらK-1。すまないが、厳しいな。誰でもいいから機体を補助してほしいところだな。」

「M-2、E-3共に補助の必要なし!」

「おい、ヱルム勝手に決めるなよ!まあ、いらないからいいんだけどさ!」

「了解した!ゴルフ5、6はK-1の補助に回れ!」

 

 的確な指示を飛ばしつつ突撃砲を斉射した。F-14E(トムキャット)は近接戦能力が低めの機体となっているが、撃震などの第1世代よりは活躍ができる。しかし、これほど交戦距離が近いとさすがに分が悪い。あんな言い方(作戦放棄)はしたものの、A-01部隊にはぜひ来てもらいものだった。

 

「ゴルフ1、俺の機体に戦車級が!畜生ぅ!」

「馬鹿野郎、焦って乱射するな!友軍誤射(フレンドリーファイア)になるぞ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!来るなぁぁぁぁ!」

 

 部下の機体も何機かBETAに食われ始めた。

 

「畜生畜生!A-01部隊のやつら本当に来ねえのかよ!」

「俺たちが勝手に来ただけだから期待してんじゃねえよ!くそっ!」

「馬鹿、孤立するんじゃない!」

「何を言っているんだ?全く聞こえ……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

「だから孤立すんなっつたろ!…ゴルフ4、突撃級によりKIA!」

 

 最初は威勢よく飛び出したものの、もはや戦線を支えるので精いっぱいだった。そう思うと、あの3人の活躍は異常なものだった。いったい何者なんだ?そう思案する前に目の前の敵に集中しなければならなかった。最初は20機いたジョリーロジャースは今は1機撃墜、4機損傷大、8機損傷小となっており、逆に救援してほしいぐらいだった。

 

「隊長、戦線はこれで保たせているんですよね!?…畜生、痛てぇ!」

「そうだ!俺たちが長くここにとどまることこそ、我々の主任務だ!今死んでしまっては、初代隊長に顔向けができん!」

「…なら、後は頼みますよ隊長!」

 

 損傷が拡大していたゴルフ7が敵中に全力噴射(フルブースト)で突っ込んでいった。

 

「まとめて地獄に連れてってやるってんだよ!」

「やめろ、ゴルフ7!引き返せ!」

 

 制止する声はもう届かなかった。ゴルフ7は勢いよく腕を振り下ろし、S-11作動スイッチを叩き押した。その瞬間、ゴルフ7の辺り一帯にいたBETAは小型種は殲滅され、大型種も被害を少なからず受けた。

 

「……ゴルフ7をKIAと認定。自爆をするくらいなら被害を食らわないよう立ち回れと、あれほど教えただろう!」

 

 また、貴重な部下を亡くしてしまった。しかし、一人ひとりそうやって悲しんでいるわけにはいかなかった。

 

 

 同時刻 松本2㎞手前

 

 A-01部隊は松本まで後2㎞まで迫った。その時トンカッチの機体に、警告音が鳴った。それは、戦術機からのレーダー照射警告だった。逆算されて出された機体は、速瀬の機体だった。

 

「……撃てよ、お前には撃つ権利がある。」

「ええ、私には撃つ権利がある。いつでも、あなたを、後ろからね。」

「馬鹿者!もうすぐ戦闘区域だぞ!遊んでいる暇があったら……。」

「大尉は黙って!……あなたは私たちを死地に追いやる、死神よ。死神は消えなきゃ、いや、消さなきゃダメなのよ!」

 

 未だにIFFは敵の表示をしていたままだった。速瀬機からのレーダー照射がロックオンに変わった。本気の可能性が高い。そこで、トンカッチは問いかけた。

 

「さっきと言うことが一部矛盾することを先に謝っておく。お前には撃つ度胸があるのか?それによる穴を埋めることはできるのか?貴様のレベルごときでみちるを補佐できるのか?」

 

 あまりにも無茶苦茶だった。自分は撃ったくせに、いざ撃たれるとなると諭そうとする始末だった。もちろん、それを受けて速瀬は激昂する。

 

「あんたって人は!そうやって仲間も殺したのか!」

「そうだ!俺が殺した!みんな殺したさ!それがどうした?俺はその犠牲の上に成り立っている!」

「この、クズ野郎!」

 

 速瀬がトリガーに指をかける。だが、どうしても引けなかった。あまりに、その引き金は重すぎた。それをトンカッチは煽る。この瞬間、トンカッチは気づいた。それは、自分の犯した罪を何かしらの対価で許してもらうことを求めていたということに。

 

「撃てよ、早く撃てよ!撃たないと戦闘区域に到着しちまうぞ!そこで撃てば、お前も俺と同じ穴の狢になっちまうんだぜ!?早くやれよ!」

「うるさいうるさいうるさい!喋るなぁぁぁぁぁぁ!」

 

 触発され、錯乱した速瀬は突撃砲をトンカッチに発砲してしまった。狙いこそ正確ではなかったものの発砲をしてしまったことには変わらなかった。弾は一発も命中しなかった。恐らく右腕の損傷による姿勢制御がうまくいっていないらしい。

 

「馬鹿者!なぜ撃った!」

「みんな、みんな死んじゃえばいいんだよ!死ねぇぇ!」

 

 速瀬は精神安定剤による悪酔い(バッドトリップ)に陥ってしまっていた。それにより、攻撃対象がトンカッチだけでなく他のA-01部隊にも向けられてしまった。

 

「ちっ、悪酔いか!……私はこの馬鹿二人を抑える。宗像、風間、貴様らがA-01の指揮を引き継げ!」

「「了解!」」

 

 予想外の出来事にトンカッチも驚いていた。自分が撃たれて終わるものだと思っていたらこんなことになるとは。そもそも、主目的は救援だったはずだ。どこで道を間違えてしまったのだろう。冷静になってきたトンカッチの頭にはそれらがよぎった。一応、速瀬は俺についてきているらしい。であれば、このまま一気に戦闘区域に入る。これしか方法はない。

 

「みちる、この不始末は俺が片付ける!だから、先に行かせてもらう!」

 

 不知火に水平噴射跳躍(ホライゾナルブースト)をさせた。急速に速瀬機との距離を離しながら戦闘区域に急行する。

 

「殺したいなら、追いかけてこい!いくらでも相手をしてやる!」

「ふざけるなぁぁぁ!絶対に追いついて殺してやる!」

 

 速瀬も水平噴射跳躍をする。速瀬の不知火は前方方向に対する出力を上げた専用カスタムだった。そのため、距離を着実に詰めつつあった。

 

 

 10:31 松本

 

 ようやくK-1の離脱をデータリンクにて確認できた。ジョリーロジャースはさらにその数を減らし、損傷無しの機体は7機しか残っていなかった。他の損傷していた機体は全員、BETAの餌となった。

「……もはや、これまでか?」

「何言ってるんです隊長!まだまだ、これからでs…うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 また一人死んでいった。さすがに、ここまで壊滅的被害を出していると精神的に危うくなってくる。これでも精神安定剤を投与されているのだ。なかったらと思うとぞっとする。改めてテェリーニ中佐は気を引き締めた。

 

「…そうだな。このままでは、死んでいったお前らに面目が立たん!全機、最後の踏ん張り時だ!耐え抜け!」

「了解!」

「了か、ん?隊長、レーダーに戦術機の反応あり!これはA-01です!ですが、2機が高速で突っ込んできます!」

 

 ようやく来てくれたか。しかし、2機とはいったい何故だ?あの隊はかなりの数を有していたはずだ。少しして、光学センサーでも補足した。そこには、突撃砲を乱射しながら追いかける片腕がない戦術機と、それから逃げる戦術機だった。状況が全く理解できなかった。さらに、逃げている機体はマーカーが(エネミー)表示になっていた。

 

「中佐、聞こえるか!?俺だ、トンカッチだ!」

「なんだと?なんで敵の表示になっている!」

「詳しくは後で説明できたらする!…後ろの奴の流れ弾に当たるなよ!」

 

 そう言いながら高速で目の前を通過(パス)していった。すぐ後に、追跡機(チェイサー)も通過していった。とりあえず部下に敵表示の当該機への攻撃禁止命令を出した。

 

「……何が起こっているんだ?」

 

 中佐は困惑していたが、それをかき消すように遅れてやってきたA-01部隊が来た。

 

「こちらは国連軍所属A-01部隊だ。遅れて申し訳ありません、中佐!」

「まったく、いつまで待たせる気だ!…現状は、救援要請機は撤退をし、それに成功したとのことだ。我々は作戦目標を変更しようと思う。後方に増援の関西方面軍と東北方面軍が接近しているらしい。よって、彼らが守備を固めるまでの時間稼ぎをしようと思う。どうだ?」

「わかりました。甲府CPからは前進命令が下されましたが、それ以降は出ていないので柔軟に対応可能です!」

「よし、全機作戦目標変更!これより時間稼ぎを始めるぞ!」

 

 薄くなりつつあった弾幕は、A-01部隊の増援により再び厚みを増した。これにより、面制圧が可能となりつつあった。

 

 

 同時刻 トンカッチと速瀬

 

「やっぱり食いついてくると思ったぜ!」

 

 そう言いながら、突撃砲の照準はBETAに向けられていた。適当にアイツと遊びつつ、BETAと戦闘をすれば主目的が果たされる。水月も進路上にいるからといった理由でBETAを殺戮していた。もはやそれは、衛士としての本能と習性のようなものだった。

 

「なんで当たらないのよ!」

「当てようとしていないからだろう!君が!」

 

 明らかに照準が狂っているとしか思えないほどに当たる気配がなかった。ほぼ、着弾地点がBETAになっていた。そして、速瀬機の突撃砲が弾切れをした。急いで長刀に持ち替え、さらに距離を詰める。

 

「これなら、殺せる!」

 

 彼女の行く手を阻むよう要撃級の群れが襲ってくる。

 

「邪魔なのよ!あんたたちは!」

 

 必死に片腕で切り刻むものの、いまいちキレが悪かった。どうやら、まだ損傷補助プログラムの書き換えが終わっていないらしい。

 

「ちっ、このままじゃ追いつくどころか殺される!?」

 

 さらに悪酔いから徐々に回復しつつあった。そのため、自分が何をしているかがようやくわかってきた。

 

「……私は、なんてことをしてしまったの?」

 

 一瞬機体を止めてしまった。それが命取りとなった。後方から突撃級に突撃された。緊急回避をするものの、軽く衝突してしまいバランスを崩した。ふらついた機体に要撃級が前腕を振り下ろし、残った左腕を破壊する。さらにふらついてしまい、終いには機体が仰向けに倒れてしまった。

 

「おいおいマジかよ!速瀬、脱出(イジェクト)しろ!」

「…トンカッチ!だめなの!さっきの攻撃でフレームが歪んで、作動しない!」

 

 そんな速瀬をあざ笑うかのように、要撃級が足を破壊する。もう立つことも、動くこともかなわない。さらに、戦車級が取りつき始める。奴らは真っ先に管制ユニットを(かじ)り始めた。緊急防護シャッターが下りてしまい、本格的に脱出が困難となった。S-11も破壊されてしまっているらしい。

 

 速瀬にできることは、死を待つのみとなった。

 

 

 

 




なんか水月、ごめんな。



今回の友情出演組

ヱルム・ビャーチェノワ(@EIM_Su37UB)
もち(@mochi02913)
ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)

出演許可を頂き、感謝しております。ありがとうございます。


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