Muv-Luv 本土戦線異状なし、進撃せよ! 作:tonkacchi
1999/6/8 10:32 松本
速瀬は電力の落ちた暗い管制ユニット内に閉じ込められていた。通信は使えるが、それを聞く余裕すらなかった。トンカッチは救援に行こうとしたものの、行く手をBETAが阻む。オープン回線でみちるが話しかけてくる。
「トンカッチ、私は迎えそうにない!速瀬を頼む!」
「わかっている!速瀬、もう少し待ってろ!すぐに助けに行くからな!」
二人がどうにか助けようとしていたのが通信越しで分かった。しかし、恐怖のほうが上回っていた。シャッターが軋む音が始まったのだ。つまり、外部装甲はもう無くなっているということだ。
「ね、ねぇ、何なのこの音。ギシギシってなってるんだけど、まさか、ね?助けに来てくれたんでしょ?」
欲しい時に限って通信は来ない。なぜかわからないが、通信機がいかれてしまったらしい。一瞬復旧した外部のカメラからの映像には、BETAがシャッターを破壊しようとしているのが高画質で映し出された。そして、また映像が途絶える。それは、恐怖を助長させた。
「……嫌だ、嫌よ。ついさっきまで隊のみんなや周りの人に迷惑かけて、トンカッチを殺しそうになって、それを謝れずに死ぬなんて!いや、そんなことじゃない。私はただ単に死にたくないだけなんだ。……死にたくない。死にたくない!誰か助けてよ!」
そう速瀬は絶叫し始めた。かなりのBETAが群がり始めている。とうとう時間が無くなってきたということだ。みちるもトンカッチも行こうとはしているが、BETAがその行く手を阻み続けていた。さらに、こちらからの通信が聞こえていないようだった。悲痛な叫びだけが聞こえる。ただ、防護シャッターがかなり保っているおかげか、まだ生きてはいた。……彼女にとっては生き地獄も同然だが。しかし、周りを囲んでいた小型種が下がり始めた。
「おい、みちる。小型種が下がってくぞ!見逃されたんじゃないか!?」
「本当か!?ひとまず安心だ…いや、もっとまずいぞ!要撃級が無理やりこじ開ける気だ!」
複数の要撃級が交互に前腕を振り下ろし続けた。戦車級から守っていたシャッターは、たった2セットでシャッターは破壊されてしまった。もう、速瀬とBETAを阻む壁は何もない。そして、再び戦車級が動き始める。それと同時にトンカッチとみちるはBETAの壁を抜けれた。しかし、あまりに距離が遠かった。見えるころには戦車級が管制ユニットの上に再び立っていた。
「おいおいおい、冗談だろおい!みちる、間に合わねえぞこれ!」
「黙って!そんなの、ダメ!絶対間に合わせる!待ってろ、速瀬!絶対に助けるからな!」
そんな二人の叫びが、ようやく復旧した通信機から聞こえる。しかし、目の前には大きく口を開けた戦車級がいた。どうやら、もう無理らしい。
「……………伊隅大尉、トンカッチ大尉。もうダメみたいです。…けど、私は二人と会えてよかったです。すみませんが、お先に逝かせてもらいます。」
最後の言葉を残し、死の覚悟を決めた。大尉たちが何か言っているらしいが、耳に入ってこなかった。そして、通信機をOFFにした。涙がとめでなく出てくる。そして、途端にとある友人の顔が脳裏に浮かぶ。
「走馬灯ってやつかしら。……ごめんね、涼宮。みんなを守れなかったよ。けど、私頑張れたよね?…………そっか、ありがとう。…悔しいけど先に待ってるわね。」
BETAに食われるくらいなら自分で死んだほうがまし、そう訓練校では教えられる。拳銃を取り出す。
「…………みんな、今までありがとう。」
涙を流しながらではあったが、恐らく笑顔を作れていただろう。拳銃は、弾を一発だけ残しながら目の前の戦車級に撃ち込んだ。もちろん、奴がそれで死ぬことはない。ついに、残り一発となった。覚悟を決めて引き金を引いたが、弾は出なかった。銃の
「…これが、私の罪に対する罰なのね。」
奴が大きく口を開いた。絶対に痛いだろうが一瞬だ、覚悟を決めたはずだ。それでも怖かった。ただひたすらに怖かった。そして、戦車級が速瀬を食い始めようとした。その時だった。
バシュッ
目の前の戦車級がはじけ飛び、少し遅れて銃声がした。それは、正確な狙撃であった。次々に周りのBETAを狙撃していく。そして、少し遅れてトンカッチとみちるが到着した。さすがに実戦経験が多いからか、安全確保も早かった。
「周辺確保しろ、みちる!おい、生きてるよな!返事できるか!?」
「速瀬、大丈夫か!生きてるか!?」
「…伊隅大尉、トンカッチ大尉。…はい、生きてます。私、いぎでまず!」
速瀬は安堵からか、咽び泣きながら報告した。
「よし、生きてるのわかったから、みちるの機体に乗れ!俺が支援するから、早く!」
「り、了解!」
急いで速瀬はみちる機に搭乗した。
「よく生きていたな、少し休め。」
みちるは速瀬に一連の出来事を責めずに、やさしく声をかけた。
3分前 諏訪
ジェームズたちはゴルフ5、6に補助されながら、とりあえず諏訪まで後退した。
「なぁ、ジェームズ。」
「言うな、ヱルム。言わんとすることは分かるが、今は補給だ。」
「……わかったよ。」
三人の間に沈黙が訪れる。その沈黙を破るように、ゴルフ5が話す。
「貴方たちは多大なる戦果を納められました。これにより、遅滞戦術はうまくいくはずです。ですから、少しだけ休んでください。」
「…………そうだな、そうさせてもらうよ。」
「では、我々は戦域に戻りますので。」
離れようとする
「あの、…俺をあそこに送ってください!」
「何をおっしゃってるんですか!あなたの機体は既にダメになっているじゃないですか!」
「……ゴルフ5、こいつの機体にはとあるものが入っている。そいつがあれば、多少なら役に立つ。」
「しかし!」
「失礼だが、君の機体も限界寸前じゃないか?」
「…何を言ってるんですか。」
「さっきから主機出力が妙に落ちている。地面に卸す必要はないのにだ。さらに、足が全く動いていない。後、残弾も無さそうだな。しきりに突撃砲を見ている。違うか?」
ジェームズは些細な動きや違いであっても見逃すことは絶対に無かった。それが、機体のネジ一本サイズであってもだ。
「そうですよ、限界です。一応、甲府までは帰還できるんですがね。」
「だからだ、もちを連れて戻ってくれないか?帰還用に俺たちが補給をして必ず戻る。」
「…ゴルフ6、二人を頼む。」
「任せろ!護衛は俺の得意分野だ!」
「では、もち少佐。乗ってください!」
「了解、感謝する!」
そう言いながら、もちはコックピットから大きい長方形の木箱を持ってF-14Eに乗り込んできた。その中身は、
「何をする気なんです?こいつは戦闘はできないってわかってますよね?」
「そう。だから、こいつを移動型狙撃地点として利用しようって魂胆だよ!」
そして、もちの乗ったF-14Eは現場へと戻った。
「…まったく、あれは俺の銃だってのに。この間貸した時、あそこに入れっぱなしだったのかよ。」
「まあいいんじゃないか、ジェームズ。それよりも、早く燃料だけでも補給しますヨ。」
「うるせぇ、言われなくてもわかってるよ!」
「ははっ、三人とも仲がいいみたいですな。」
「「「良くねえよ!」」」
2分後 松本付近
「よし、ここからなら狙い撃ちできる!」
再び、もちとゴルフ5は松本に戻ってきた。
「もう少し近づきましょうか?」
「いいや、ここで。…よし、さっき渡した装置、使い方は覚えてるね?」
「ええ、何とか。」
「じゃあ始めて!」
「了解!」
そして、装置のスイッチをONにする。その装置は超長距離狙撃用の補助装置だった。といっても、去年のエイプリルフールの日にしか売られていなかった特殊なものだった。これは、戦術機と狙撃銃とのリンクが可能になる装置だった。それにより、戦術機の
「やばそうなとこ、見つけれた?」
「そうですね、特には。…………あれは、戦術機!?」
急いでゴルフ5が拡大をする。
「少佐!戦術機が、いや衛士がBETAに食われそうになっています!」
そこには、国連軍の不知火が横たわっていた。そして、管制ユニットの中も丸見えとなっており、衛士が拳銃を撃って抵抗していた。
「最優先目標だろあれ!急いで補足しろ!」
「…誤差修正、風速考慮、良し。気圧並びに気温の調整、良し。諸元入力完了!」
息を吐きだしながら最後の調整を終えた。後は祈るのみだった。
「主よ、我に加護あらんことを。…………巻き込まれるなよ!」
その弾丸は、衛士の衛士の目の前の戦車級の頭部を吹き飛ばした。
30秒後
「よし、BETAはもう打ち止めか?」
「そうだな、多分これ以上は来ないだろう。しかし、こっちは速瀬をコックピットに入れているからな、少々動きが鈍くなっている。」
「大尉、私に構わずに!」
「まったく、貴様に倒れてもらうわけにはいかんのだ。安静にしていろ。」
その会話のすぐ後に、速瀬は寝てしまった。よほど、心労が祟ったのだろう。
「ふふ、本当に世話の焼ける奴だ。」
「にしては、喜んでるじゃないか。」
「…う、うるさいわね。そ、それより目の前のBETAを駆逐するぞ!」
「おうよ!」
その頃、宗像と風間の二人に任せた戦線は、だいぶ上がっていた。ジョリーロジャースとの共同面制圧により、BETAを松本北側市外まで追い込んでいた。
「大尉、こっちは順調ですよ!…速瀬とトンカッチ大尉は!?」
「俺は無事捕まえられたぞ。速瀬の機体がないのは、まぁ聞こえてたろ?」
「こっちは忙しすぎてそんなこと聞いている暇なかったですよ!まったく、あなたという人は。」
宗像はため息交じりにそう言った。風間はそれを聞いてニコニコしていた。他の部隊員も自然と笑みを浮かべていた。
「よし、これで全員揃ったな。A-01部隊、突撃開始!」
『了解!』
全員の士気は最大まで高まっていった。そして、面制圧が成功し、BETAは元来た道を戻るように敗走した。これは人類史でも大々的に語られる信越防衛戦と名付けられた。
余談ではあるが、戻っていく奴らに対し、再編成された第12師団が再び襲撃を仕掛けて殲滅に成功した。実際に上陸した戦力は知らされていた数よりはるかに多くの数であったが、再編された第12師団が奮戦したこともあり、長野方面には抜けることはなかった。また、関西・東北方面軍は奇跡的に、予想襲撃時刻より早く横浜周辺の最終防衛線に到達し、防衛線を固めることに成功していた。
こうして、横浜基地は少なくない犠牲を払いつつも、防衛に成功した。以下はその詳細資料である。
戦力 損害
帝国軍
帝国本土防衛軍第12師団 一時壊滅するも再編により復旧
帝国本土防衛軍第14師団 一部壊滅的被害
帝国陸軍関西方面軍第2師団 損害無
帝国陸軍東北方面軍第6師団 損害無
帝国陸軍松本駐屯部隊 3機以外全滅
米国海軍
米国海軍第103戦術歩行戦闘隊 壊滅的被害
国連軍
A-01部隊 損害無
増援部隊
Three idiots隊 損害無
BETA
戦車級4個師団 壊滅
要撃級1個旅団 壊滅
突撃級1個旅団 壊滅
要塞級1個中隊 壊滅
光線級1個大隊 壊滅
備考
増援部隊は予期しなかったものである。そのため、詳細確認を目的とし国連軍横浜基地に拘束処分とする。米国海軍第103戦術歩行戦闘隊が本来の作戦を放棄、そのため軍事裁判にて後日処罰を決定する。A-01部隊にて部隊内トラブルが発生。トンカッチ大尉と速瀬水月中尉が友軍へ発砲。詳細は後日の軍事裁判にて公表されるものに記載予定。
以上
水月、助かってよかったね(´;ω;`)
これにて信越防衛戦編は終わりとなります。次回以降は少し、平和となります。
友情出演組の三人には次の回まで出てもらいます。それ以降も、少し出てくる予定ではありますが、これまでほど大々的には書かないかも?
他の友情出演組もいますのでもしかしたら見たことがある人がいるかも?
今回の友情出演組
ヱルム・ビャーチェノワ(@EIM_Su37UB)
もち(@mochi02913)
ジェームズ・スミス(@Lt_smithFFR41mr)
出演許可を頂き、感謝しております。ありがとうございます。