VTuberって凄えよな、だってやりたいことなんでも出来るもん 作:木野了承
定例ミーティングについて
VTuber事務所「ぶいすとりーむ」の新期生、
(なんか、意外と順調だな。もっと苦戦したり苦労したりするもんかと思ってたけど)
予想以上の反響に、呆気なさを感じる。別に数字や人気に固執する気はないが、俺が以前まで活動していたチャンネル、「右ねじ」名義時代とどうしても比較してしまう。しかも別衣装や3Dモデルなど、いくらでも盛り上がる要素をまだまだ残しているあたり、VTuberとしての強みを否応にも感じる。ほんと、バーチャルって凄えな。
さて、本日の話であるが。マネージャーである七草さんによれば、定例ミーティングとのこと。今後は隔週で打ち合わせを行っていくこととなり、今日はそれの初回。ミーティングの概要説明と今後の予定確認がメインとなるらしい。現在千葉さんと共に、事務所の会議室で待機中である。
暇を持て余し、二人とも手持ち無沙汰の中、突然サンドイッチをもぐもぐと食べ始めた隣の千葉さん。本当に食べるの好きなんだな、この人は。ほっぺたにソースが付いている。あざとい、可愛い。うちで飼っていいですか、この生き物。あ、俺の家、賃貸だからダメだったわ。鳴かなければ大丈夫だけど、この人昨日ホラーゲーム配信で叫んでたしなぁ。
「お待たせ致しました」
千葉さんがサンドイッチを完食したちょうどその時、七草さんが会議室へとやって来た。きっちり仕立て上げられたスーツ、綺麗なクリーム色の長髪、凛とした立ち振る舞い。相変わらず眩しいお方である。
彼女は俺達の前の席に座ると、優しく微笑んだ。
「こうして三人で集まるのは、なんだか久しぶりな気がしますね」
確かに、と彼女の言葉に千葉さんが同意する。
「デビュー配信前は各々で打ち合わせでしたもんね。プライベートでは会ったりしてましたけど……」
「ふふっ。これからは定期的に、こうして対面でのミーティングを行っていくので、改めてよろしくお願いしますね」
はい、と俺達二人は応える。ここまでは前置き、ミーティングへと話は進んだ。
「さて、この定例会議についてですが。予定としては毎月第一、第三、第五土曜日に行っていきます。奇数週の土曜日に開かれると思っていただければ大丈夫です。時刻については今日と同じく、十四時からが基本です。ただ場合によっては日程や時間の変更もあると思いますから、その際は私から連絡致します」
「ふむふむ……」
「内容については業務連絡……特に研修やレッスンや案件、他のライバーとのコラボ配信、公式放送の出演等の予定確認は毎回共有します。打ち合わせとは別に、個別に密接しての連絡ややり取りも勿論行いますが、ここでの確認も欠かさぬようお願いします」
「分かりました」
「それが終わり次第、個人の配信における企画の確認を行います。実況したいゲーム、やりたい企画、話したい内容等……。大体でいいので、なるべくこの場でご報告ください」
事前に把握しておきたいので、と七草さんは語る。企業所属のVTuberには権利のしがらみがよく絡む。考えなしに配信すると著作権関係や配信ポリシー、コンプライアンス的観点等の問題で炎上しかねないから、妥当な対策だろう。ただゲームをするだけにしても、考えなければいけないことが意外に多い。注意して活動しないと。
ふと気になって、俺は質問する。
「あの、この定例ミーティングって、他のライバーの方もされてるんですか?」
「ええ。弊社では定期的にライバーの方と確認し合う場を設けています。過去の騒動や炎上からの反省、改善ですね」
お恥ずかしい話ですが、と付け足す七草さん。いやいや、と彼女の言葉を否定したくなる。ライバーも人間だ。間違いや確認漏れはあるだろうし、時には炎上や騒ぎも起こしたりする。その経験を踏まえて対策を講じているあたり、ぶいすとは信頼出来る事務所だと俺は思う。
では、と彼女は話を一旦締めた。
「以上がミーティングの内容になります。他に何か聞きたいことがあれば、私がお答えしますよ」
「ボクからは特には」
「俺も大丈夫です」
俺達の返答を確認し、頷く七草さん。彼女は次に、今後の予定について話した。
「それでは、早速議題に入るとしましょうか。と言ってもしばらくはコラボ配信、案件放送はありませんから、メインは個人チャンネルにおける配信の企画についてになりますね」
「企画かぁ……」
七草さんの言葉を、千葉さんが復唱する。うーん、と悩む様子を見せる。
「とりあえず最初はホラーゲームの配信をやってみたけど。それも終わっちゃったし、どうしようかな」
「いやー、ガチで良かったな、神宮寺のホラゲー実況。幽霊に対して『コイツ斬れないから嫌い!』って吐き捨てたのはめちゃくちゃ笑った。斬れるか斬れないかなんだ、判断基準」
「わ、見られてた……聞かれてた……」
照れくさそうに反応する千葉さん。そりゃ見るだろ、神宮寺誠の配信だぞ。
「そういう丹野くんはこの前、視聴者の質問に答えてたよね。マシュマロ、って言うんだよね、あのメッセージサービス」
「あ、アレですね! あまりに緊急脱出が望まれ過ぎて大変だったヤツ! 最終的には緊急脱出発動キャンセルとかし始めて……!」
「面白かったですよね! 急に回転止めて、『俺がいつもいつも緊急脱出すると思うなよ?』って言って……。丁度背面で止まったもんだから背中で語るメカとか言われてて!」
おかしかったなぁ、と笑う二人。何、この羞恥プレイ。ちょっと千葉さんに感想伝えたら倍返しされたんだが。顔が熱い。
「お二人とも、伸び伸び活動出来ていて何よりですっ。マネージャーとしては嬉しい限りですね」
くすっ、と笑みを向ける七草さん。こういうところが本当、ずるいんだよな、この人。伸び伸び活動出来ているのは貴方のおかげですからね。
「千葉さんは特に次の配信内容は決めていないとのことで……。丹野さんはどうですか? 何か案があったりとかは」
「いや、まだ具体的には」
やりたいことはあるものの、今すぐ形として出せるものは現状見当たらない。だからとりあえず場繋ぎ的にバリアでも実装するかと思っていたところだが、それについても内容を深く考えていなかった。
それでは、と七草さんは提案する。
「こちらはどうでしょうか」
彼女はそう言って、タブレット端末でとあるゲームの情報を提示した。俺と千葉さんの二人は言われるがまま画面を覗き込み、それを確認する。
「
千葉さんがタイトルを音読した。それを聞いた瞬間、俺は全てを理解する。
「もしかして、共有サーバーですか」
「はい、そうです」
一応七草さんに尋ねてみて、合っていることを確認する。まあVTuberと言えばこのゲーム、って感じだし、納得の物ではある。
彼女は改めて、提案した。
「お二人の世界を、このゲームを通して創造してみては如何でしょう」
頭痛と目眩と立ちくらみでダウンしている間にめちゃくちゃお気に入り数と評価が伸びててびっくりです。ありがとうございます、気ままに頑張ります。
まだ体調が万全ではないので、更新が遅れるかもしれません。ご了承ください。特に病気というわけでは無いそうなのでご心配なさらず。