VTuberって凄えよな、だってやりたいことなんでも出来るもん 作:木野了承
アスクラ配信中断事件の二日後。
配信タイトル。
【アンアースクラフト】みんな、俺に乗れ!【ぶいすとりーむ/えくすとりーむメカ】
「ウス! ご無沙汰ァ! えくすとりーむメカだッ! 今日こそアスクラやってくぞ!」
:毎度テンション高えな
:大丈夫なんか?
:また酔うぞ
「フッフッフッ。また酔うぞ、ですと? このメカが同じ轍を二度踏むとでもお思いで⁉︎ アーティフィシャルインテリジェンスですよ、こちとら!」
:やかましいな
:なんだその不敵な笑みは
:なんか最近一段と感情豊かになったな
:メカも成長するんだなぁ
なんか思っていた反応と違うが、まあ別によし。今回の俺は一味違うことを感じていただけたのであれば問題はない。
何はともあれ、今回の配信内容を説明する。
「さて、件の画面酔いについてだが。なぜ3Dゲームをプレイすると酔ってしまうのか。それはゲームによる情報・刺激と、俺自身の感覚にズレが生じてしまうからだ。画面を通して映像を処理してしまうから、俺の脳内がバグってしまう。つまり、視界に原因があると俺は考察した」
:なぜメカが画面酔いするかは置いといて……
:流石のロジック
:筋は通っている
:これは紛れもなくAI
「だったら、画面を見なければいい……!」
:は?
:なんで?
:どうしてそうなる
:画面見ないとゲーム出来ねえだろ
俺の結論に、チャット欄が騒つく。俺は視聴者の疑問を解決するように、続けて詳細を述べた。
「つまり俺は今日、視覚を物理的に塞ぎ、音のみを頼りにアスクラをプレイする。なのでアイマスクを用意しておきました。モデルにも付けます」
マウスを操作して、配信前にダウンロードしたフリー素材を表示する。アイマスクのイラスト。それをえくすとりーむメカの立ち絵の目元に重ねる。ちなみに現実の方でも手元にアイマスクを準備しております。いつでも装着出来る状態にある。
「今は違うけど、この先これを着けてる間は目が塞がれていると思ってくれ。みんなからは本当に俺の視界が塞がれているかどうか確認出来ないと思うけど、一応アイトラッカーを導入してあるからそれを指標にすればある程度見えているかいないかの判断が出来ると思う。コレを起動している間は視線がどこに向いてるか、画面に淡い光で表示されるぞ。この通りに、ね」
説明した後、ぐるりと目線を回す。モニターに貼り付けてある外付けの機材がそれに反応して、画面に青白い光で反映させている。配信画面にもしっかり出ているようで、視聴者のコメントから正常に動いているのを確認した。
:なるほど、確かに視線の動きがわかる
:これが動いてたり表示されたりしてなければ視界がちゃんと塞がれているってことだな
:まあその辺は信じますよ、メカを
:音はゲーム音だけなのか?
「音については……今日の配信タイトルを確認してみてくれ。そこに答えがある」
:みんな、俺に乗れ?
:どういうことよ
「どういうことか、というとね」
俺は配信ソフトの音声設定から、デスクトップ音声を有効にし、とあるアプリケーションの音声を反映させる。
すると。
『なんだなんだ?』
『何してんだ』
『あ、コメントが読み上げられている!』
「そう! みんなのコメントを読み上げソフトで音声として出力し、それを頼りにさせてもらうのだ! 故に、みんながいるから俺が動ける作戦! なんと今回は、みんなが俺を操縦することが出来るのだッ!」
高らかにそう告げるえくすとりーむメカ。はっはっはっ、と高笑いもしておく。割と楽しみにしてたんだな、この企画を。
(七草さんと相談したんだ。視聴者が俺を操縦してプレイするってのはどうか、って)
方法は文章読み上げソフト「棒読みくん」を利用しただけの、割と簡易的なものとなっている。それでも視聴者の声が実際に音声として聞こえるのは結構面白く、それがプレイに直結するとなればさらに面白い。流石に先駆者はそれなりにいるが、一周回って新鮮な感じもあるのが今回の企画。原点回帰というやつである。
「メカとは本来、整備する者や操縦する者を必要とする。俺はエクストリームなメカだから単体で解決出来ていたけど、このアスクラ配信みたいに助けが必要なときは人の手だって借りるさ」
『メカ設定をとことん活用するスタイル』
『これは間違いなくエクストリーム』
『ワクワクしてきた』
「というわけで、みんな、頼んだぜ! 俺を導いてくれよ、世界の果てまで!」
『任せとけ』
『これはやばい配信になる香りがします』
『新しいおもちゃを見つけちまった』
チャット欄も盛り上がる。アイトラッカーも読み上げソフトも正常に作動しているし、この調子なら円滑に配信を進めることが出来るであろう。環境についてはバッチリだ、右ねじ時代の経験が功を奏したな。
(一つ心配なのが、七草さんの言葉なんだよな……)
この企画を相談した、そのとき。彼女は案に賛同しつつも懸念を挙げていた。
「恐らく想像よりも混乱する羽目になると思いますが、丹野さんのやりたいこととはブレないと思いますので。何事も、挑戦ですっ」
きゅっ、と拳を絞めてそう告げた彼女の姿を思い出す。混乱すると言っていたが、一体何に混乱するというのか。俺は未だに分かっていなかった。
分からないものについて考えていても仕方ない。俺は早速、ゲーム実況を開始するのであった。
メカというかラジコン。