VTuberって凄えよな、だってやりたいことなんでも出来るもん   作:木野了承

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スパチャについて

 

 

 配信タイトル。

【収益化記念】どこまでも進化するメカは止まることを知らない【ぶいすとりーむ/えくすとりーむメカ】

 

「ウス。えくすとりーむメカです。なんと、とうとう、収益化申請が通りました〜! イェーイ! コレガ、ウレシイトイウ、キモチ……?」

 

:おめでとう ¥1000

:めでたいねぇ ¥3000

:毎度のこと感情を得ているな、このメカ

 

「スーパーチャットありがとう。おめでとう、めでたいねぇ……ありがとうございます。本当に、嬉しいですわ。まあAIなんで。インプットされました、嬉しいという感情が。これを機に」

 

 スーパーチャットを中心に、俺は反応を返していく。出だしからこの調子、今日は中々に愉快な配信になりそうだと、俺は確信した。

 さて、こうして始まった収益化記念配信であるが。ひとまずは今日の配信についての説明である。前持って話しておきたいことがいくつかある。一つずつ視聴者に向けて話していく。

 

「今日の配信なんだけど、とりあえずみんなに見せたいものがありまして……。まずですね、私のママであるレット殿から収益化記念プレゼントとして、新たなアニメーション機能をね、頂きました。その名も、ウィンカー機能です! 今まで両目同時だったのが任意操作で片目、しかも点滅するようになったぞ!」

 

 そう言って、俺はフェイストラッキングアプリを操作してアニメーションを反映させた。最初に右目を点滅させるモーション、しばらくして左目に切り替えて両方とも披露する。ちゃんと「カチッ、カチッ」というウィンカー音まで再現されている。今にでも曲がりそう。

 

「以前のアスクラ配信でカーナビ出てきたじゃん。それから着想を得た。元々目は光るから実装は割と容易だったとのことです」

 

:地味にワロタ

:ほんま、なんでもアリやな

:これで右折もバッチリ

:ウィンカー実装記念 ¥1000

 

「ウィンカー実装記念スパチャ、センキュー! でもな、まだあるんだな、これが。というかこっちが本番、ちょっと待っててね」

 

 今度は配信ソフトの方を弄って、事前に整えておいたその画面の非表示設定を解除する。不意に表示されたその枠に、視聴者は戸惑った。

 

:なんこれ

:二本の直線?

 

「これは何かと言いますとね〜!」

 

:メカ、収益化おめでとう! いつも楽しい配信ありがと〜! これはほんの気持ち! ¥10000

 

「あ、待ってえええぇぇぇ! 説明まだあああぁぁぁ!」

 

 機能について説明し切る前に、新たなスーパーチャットが送られて来てしまう。その瞬間、えくすとりーむメカの立ち絵の目元から、右から左へ一直線に、赤い背景の文書表示が流れていった。用意された枠に沿う形で、まるで発射されたかのようなその様子。これこそが今回の配信のネタ、目からビームの再現方法である。

 出鼻を挫かれ、説明の前に流れてしまったその光景。俺はちょっとだけ気分を落としながらも、気を取り直して説明を施す。

 

「はい、今みたいな感じで、スパチャを送ってくださるとビームとして俺の目から発射されます。チャット欄の表示設定をちょっと弄ってこの形にしてみました。改行しないで一行にして、丸々流れるようにしてます。どう? いい感じ?」

 

:どーれ、もう一回 ¥3000

:おー、確かに……?

:見えないことも、ない

 

 俺の問いに対して、視聴者から微妙な反応が返ってくる。俺自身も反映された結果を受け、違和感を覚える。

 

「うーん……? なんか、思ったほど見栄え良くないっすね。なんでだろ」

 

 スパチャを反映させる以上、配信で初めて披露することとなったので、調整が行き届いていない。この土壇場で、どうすればそれっぽく見えるか頭をひねる。視聴者のチャットも参考に、解決策を探った。

 

:正面向いてるのにビームは真横だから変なんじゃない?

:立ち絵を側面のやつにしたらいいんじゃないか

 

「うわっ、なるほど! 確かに正面から撃ってるのに、これじゃ向きが変か。頭良い〜、みんな。待ってくださーい、今、立ち絵の向きを左に変えまーす。せっかくだしウィンカー切っとくか」

 

:早速ウィンカー活用しててワロタ

:ちゃんと左に切ってて草

:多機能やな

 

 アニメーションを起動させ、切り替えるまでの待機画面として場を保たせる。その間に回転表示機能を配信ソフトに導入して、早速立ち絵の向きを切り替える。

 

「おらっ、どうだっ! あ、ウィンカー勝手に消えた……操作してないのに。どうでしょう、これで」

 

:よし、お試しで発射! ¥500

 

「うおおおぉぉぉっ! 一気にそれっぽい! あ、撃ってる、撃ってる! これは間違いなくビームでしょ!」

 

 立ち絵とビームの向きが揃ったことによって、再現度が一気に増す。まさしくえくすとりーむメカの目から(メカだけに)ビームが放たれているように見える。つい興奮する俺。チャットも盛り上がりを見せる。

 

:おお、これならビームっぽいわ

:放て、えくすとりーむメカ! ¥1000

:スパチャの額によってテキストの長さの上限が上がるから、高額スパチャほど長くビーム撃てるな ¥10000

 

「解説ありがとう、ついでに長めのビームを撃っています。なんかそう聞くと俺が高額スパチャ強請ってるみてえでアレだな」

 

:クルンテープマハーナコーンアモーンラッタナコーシンマヒンタラーユッタヤーマハーディロックポップノッパラットラーチャターニーブリーロムウドムラーチャニウェートマハーサターンアモーンピマーンアワターンサティットサッカタッティヤウィッサヌカムプラシット ¥50000

 

「うおおおっ! 超長えビームだ! うおおおっ! ……おい、五万かけてバンコクの正式名称送ってくるのヤバすぎるだろ!」

 

 いくらなんでも身銭を切り過ぎだ。俺が俺なら視聴者も視聴者である、ネタに振ることに関しては一切躊躇がない。このコミュニティ、無法過ぎる。

 

:3.1415926535897932384626433832795028841971693993751058209749445923 ¥10000

 

「絶対来ると思った! 絶対円周率来ると思った! お前ら、マジで無理すんなよ! あんまり悪ノリで高額スパチャ送ってくるなよ! 次はネイピア数送ってこい!」

 

:最終的に扇動しててワロタ

:まあπに次ぐ知名度の無理数ですし

:e ¥200

 

「ふっはっ! クッソ……! こんなので……!」

 

:ネイピア数だよな、ちゃんと

:ご所望のものじゃないですか

:何も間違ってない

:なにわろてんねん

 

「コイツら、マジで……!」

 

 笑いを堪えながらリアクションを返す。時折、コメント欄が洗練されたやり取りを返してきやがる。俺の視聴者、訓練され過ぎだろ。

 

:メカ、どこに向かって喋ってんの

 

「ふっ、はははっ、確かに! 俺、このままじゃ壁に向かって喋ってるじゃん! 壁に向かって独り言喋りながらビーム撃ってんのやばぁ!」

 

 もうめちゃくちゃである。自分で設定を反映させておきながら、このカオスっぷり。いつものことながら、実に楽しい時間だ。

 

:これ低額スパチャ送り続ければ涙になるな

:ほんまやん ¥200

:メカ泣かすか ¥200

:¥100

:メカ、泣かないで ¥200

:水平方向に涙を飛ばすメカ ¥200

:¥100

:収益化達成に感動して涙するメカ ¥200

 

「おぉいっ! 新しい遊び方を見つけるな! ビームだって言ってんだろっ!」

 

 想定外の楽しみ方をし始める視聴者達。絶え間なく目から青い短文が発射され続けている。こういうときの視聴者の団結力は本当に異常だ、恐怖すら覚える。なんで揃えられるんだよ。その意思統一加減、前のアスクラ配信で発揮してもらいたかった。

 大分狂った状況になったところで、配信を畳む準備をする。

 

「もおおおおおおっ! ……ゴゴゴゴゴッ! エマージェンシーモードッ!」

 

:あ、確変入った

:あー、立ち絵が回ってしまった……

:コイツ飛ぼうとしてやがるぞ

 

「じゃあもう最後に、スパチャ送ってくれた方の名前呼んで終わりにするからなっ! 回転しながら読んでやる……! 〇〇さん、ありがとう! ⬜︎⬜︎さん、ありがとう! △△さん、ありがとう!」

 

:スパチャ送り続けたらどうなんのかな ¥500

:回り続けるんじゃない? ¥500

:バターになっちゃう〜 ¥300

 

「もおおおおおおおおおおおっ!」

 

 視聴者の悪ノリに振り回されっぱなしの俺。結局ここから五分間ほどずっと、スパチャを送ってくれた視聴者の名前を呼び続ける羽目になった。その間ずっと左手で立ち絵の向きを回し続けていたので、最後の方は指が攣りそうになっていた。エマージェンシーモードに入った手前、止まるとさらに収拾がつかなくなりそうだったので頑張ってやり遂げた。今日も疲れたよ、本当に。

 でも、同じくらい楽しかった。やりたかったことも出来た上、別の楽しみ方を視聴者のおかげで発見出来た。知見と経験がどんどん増えていく。VTuberとしてだけでなく、人としても成長しているような、そんな感覚がする。

 こうして、収益化記念配信は大盛況で幕を閉じた。どれくらい盛り上がったのかはアナリティクスを見れば分かるが、なんとなく確認するのが怖かったので、俺は七草さんに全部お任せした。

 

「スーパーチャットの総額は────」

 

「バァ」

 

 聞かない方が良かった。いち大学生が得ていいような金額じゃなかった。今後はなるべく気にしないようにと、心に誓う俺なのであった。

 




学園アイドルマスターに情緒をやられている
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