VTuberって凄えよな、だってやりたいことなんでも出来るもん 作:木野了承
配信タイトル。
【まこメカレット/コラボ】バーチャル節分【ぶいすとりーむ/えくすとりーむメカ】
「あ、レットママー、神宮寺殿ー。配信始まりましたよー」
「うそ、早いよメカ。ボクまだインポート途中なんだけど」
「予定より準備に時間食っちゃったね。でもまあ、メカくんが場を繋いでくれるから大丈夫だよ」
「よーし、任せろ! ウス、えくすとりーむメカです。さて、突然ですが皆さん、二月の看板イベントと言えばなんでしょーか! ……うんうん! そうだね、節分だね! というわけで、豆まきします」
:物凄く雑な導入
:任せろとはなんだったのか
:これぞメカクオリティ
二月三日当日。明日は立春、暦の上では春になると言うことで。一応は季節の分かれ目ということになる。節分の日は今じゃ二月三日が一般的となっているが、厳密には立春・立夏・立秋・立冬、それらの前日を総じて節分と称するらしい。季「節」の「分」かれ目だから「節分」というわけである。
その中でも立春の前日である二月三日には今もなお慣例や風習が根付いており、豆まきもその一つ。「鬼は外、福は内」の歌は聞き覚えのある方も多いことだろう。今回はその豆まきをやってやろうという話である。
「バーチャル豆まきってことなんで、まあ仮想空間内で豆まくわけですけど。まあ自ずと豆もバーチャルになりますよね。仮想豆、バーチャルビーンズ、略してVB」
:もう、理解が追いつかねえ
:初の三人配信なのになんなんだこの状況
:バーチャル豆まきってなんだよ
「あ、データインポート終わったー。レットさん、よろしくお願いします」
「はいはーい。配信に反映させまーす」
:淡々と準備を進める二人よ
:もう慣れちゃったんだろうな、メカのノリに
:レット殿がいらっしゃるのは珍しい
「あ、今回の配信のメインはメカくんと神宮寺くんなので。私はただの賑やかしです」
:賑やかしワロタ
:仮にもママなのに
:いや、逆に保護者感が強まるかもしれない
今回の企画配信はいつもより少しだけ準備を必要としたので、ぶいすと事務所で俺と神宮寺とレットさんの三人で行うこととなった。配信上では言及されていないが、すぐそこには七草さん含めたスタッフさん方も待機・監督している。配信環境はいつもと大きく異なる状況であったが、俺はそれに緊張することなく、ワクワクした気持ちで臨んでいた。
引き続き、配信内容について説明をしていく。
「ただ豆まきと言っても、こう、空間内に豆を撒くみたいな表現は難しい上に画面映え的にどうなのって思ったんですよ。ただ豆投げて終わっても面白くないじゃないですか」
「節分に面白さ必要ないでしょ」
「だったらもう、豆を弾として撃つしかないっしょ。これぞ俺のビーンズウェポン」
「全く取り合ってくれない」
:視聴者を置いてけぼりにするスタイル
:俺らがメカに追いつけない
:手綱千切れちゃった
「というわけで、コチラ! Live2Dを利用した、豆まきシステムでございます! 神宮寺のもあるよ!」
「巻き込まれました、ボク」
:とばっちりで草
:白背景にメカと神宮寺の立ち絵?
:二人とも腕あるやん
「豆を撒くんだから、腕は必要だろ。ハンドトラッキング機能を利用したハンドル表現あったでしょ? アレを改良して作ったんだ。つっても右腕だけのトラックになりますけど」
「あ、ホントだ。右手動かすとモデルの手も動いてる」
「神宮寺くん、肘まで伸ばしてみて。その方が精密に反映出来るから」
「わかりました。……腕ピンとしてるからすっごい違和感」
「今、俺と神宮寺、二人並んで右手伸ばして振ってます。異様な光景過ぎる」
:想像したらワロタ
:右へならえ
:実際に見てみてえ
さて、色々と立て込んでしまったが、なんとか企画を始める手配が済んだ。ここからが本番である。
「よし、準備万端ということで、いくぞ! スイッチ、オンッ!」
神宮寺の準備が整ったことを確認した俺は、意気揚々とスタートボタンを押す。瞬間、メカと神宮寺の2Dモデルが再度読み込まれ、画面が切り替わる。
そして。
「は⁉︎ なんか腕から出てるんだけど! ナニコレ!」
「それ、豆です」
「はいぃ⁉︎」
再表示されたメカと神宮寺の2Dモデルから、小さい弾が発射され始めた。先程説明したモデルの右腕先端部分から、ピュピュピュッ、と連続的に。画面左側から右側に向けて放たれているそれは、よく見ればベージュ色をしている。見た目は確かに、豆である。
「はい、というわけでLive2Dを機体とした、豆シューティングで鬼退治していきますよ。WASDキーで移動です」
「ちょちょちょ、豆が止まんない! どうするのコレ!」
「豆は常に出続けます。発射をコントロールすることは出来ません」
「なんでだァ! ていうかなんでボクの腕から豆が出てんだァ!」
「節分なので」
:クッソワロタ
:理由になってねえ
:とうとう神宮寺まで魔改造されてしまったか
以前から、配信において2Dモデルや立ち絵を表示するだけ、というのは少し寂しい気がしていた。せっかく用意してもらったものなのだから、色々な楽しみ方があっても良いはず。そんな考えから生み出されたのが、今回のこのシューティングゲームなのである。
先程も言及した通り、操作するのは自分の2Dモデルである。トラッキング機能を維持したまま、キー操作で移動入力をすることが可能。フェイストラッキングアプリをファイルごとゲームに読み込んでいるので、処理は意外と単純なものとなっている。
「右腕をちゃんと動かさないと狙い定まらないからね。メカくん、腕下がってきてるよ」
「疲れちゃった」
:早過ぎる
:仮にもメカだろ
:体よわよわ
俺は元サッカー少年だぞ、腕の筋肉はあんまり使わないの。サッカーはもう辞めてるので、なんなら足の筋肉も使わないけどね。
レットさんの説明にもあったように、ハンドトラッキングによって豆の射出方向が決定される。襲い掛かる鬼に向けて放つには、現実で腕を振って調整する他ない。現実と仮想、双方が鍵となった企画となっている。
ゲームが進行していく。やがて、画面右側から沢山のエネミーが登場した。
「うわうわうわ、なんか来た、なんか来た! 鬼、鬼じゃん! え、なんかイラスト凝ってない⁉︎」
「今作の敵は全て、私、用具レットが担当いたしました」
「豆を当てろ、神宮寺! 追い払え、鬼は外ォォォ!」
「分かった! 鬼は外ぉっ!」
「あはははっ! 節分らしくなってきた!」
:神宮寺殿、もう順応しちゃった
:レット殿も楽しそうでなにより
:豆で鬼がどんどん消滅していく
:鬼は外! 鬼は外!
迫り来る鬼達を、俺と神宮寺で捌いていく。一番小さいサイズの敵である小鬼は豆一粒で倒せるが、それより一回り大きい通常の鬼は三粒必要となる。それらが弾幕のように迫り来るので、割とプレイに緊張感がある。敵に当たらないように避けるのは案外難しいものとなっていた。
「ちなみに、鬼に当たるとスタンして一定時間操作を受け付けなくなるぞ! スコアアタックのシューティングゲームだから、ハイスコアを狙うなら当たらない方がいいな!」
:節分でハイスコアなんて考えたことがねえよ
:普通にゲームの出来が良い
:2Dモデルを機体にする発想、面白い
「あれ、これ手を振った方が効率良くない? おりゃおりゃおりゃおりゃ!」
「あぶねあぶねあぶねあぶね! 当たる! 当たる! 手が当たる!」
「あ、ごめん、メカ……!」
「みなさんもプレイする際は周りに配慮してね。レットママとのお約束だぞ」
:神宮寺の腕が荒ぶってる
:手を振ることで全体に波状攻撃出来てるな
:良い攻略法を見つけたんじゃないか
チャット欄でも言われているように、神宮寺の攻撃法は一見すると隙が無いように見える。全体に満遍なく豆を放つことが出来ているし、鬼達は少量の豆で倒すことが出来るから殲滅力も高い。スコアも鰻登りで、このまま苦戦することなくクリアまで行けそうな雰囲気。
(さて、そう上手くいくかな)
俺はこの先起こることを想像して、ニヤリと笑うのであった。