VTuberって凄えよな、だってやりたいことなんでも出来るもん   作:木野了承

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同期について(2)

 

 

「ではまずは、自己紹介から始めましょう。最初は私から」

 

 そう言って七草さんは語り始めた。

 

「ご存知かと思いますが、改めまして。VTuber事務所ぶいすとりーむ採用担当を務めています、七草なつみです。今後は丹野さんと千葉さん、お二人のマネージメントも行っていく予定なので、よろしくお願いしますね」

 

 にこっと朗らかな笑顔を向ける彼女。俺はそんな彼女の報告を聞いて、つい口を挟んでしまった。

 

「え、俺らのマネージャーもやるんですか? 採用担当ってことはオーディションの企画とか管理とか、他の業務もあるんじゃ」

「ふふふ、大丈夫です! オーディション担当からは外されてますから!」

「それ大丈夫なのか……?」

 

 ドヤ顔で大丈夫と言い切る彼女に、俺は思わず心配の言葉を返す。弁明するように、彼女は続けた。

 

「あ、えっと。外されたってのは言葉の綾で、採用担当と言ってもいくつか部門があるんです。オーディション部門とか、スカウト部門とか。私はその、スカウト部門に所属しているから大丈夫ってことです。スカウト部門はオーディション部門と比べて業務内容が軽めなので、採用された方のマネジメントまでが業務に入ります」

「ああ、そういう……」

「まあ最初はオーディション部門を担当していたのですが、審査が私的過ぎるってことでスカウト部門に回されたんですけどね」

「結局外されてるじゃねえか!」

 

 ついついツッコんでしまった、失礼しました。この人もしや、いわゆる残念な美人ってヤツか? なんか段々とボロが出ている気がする。いや、初対面のときからなんか妙だなと思ってたけど。

 こほん、と咳をひとつして、彼女は仕切り直す。

 

「お二人のマネージャーとなったからには精一杯支援させて頂きますので、ご心配なさらず。日程調整から送迎、メンタルケアまで是非是非お任せください!」

 

 そう言って、胸に手を添える彼女。理想というか思想というか、ちょっとズレたところがあってもそこは社会人。仕事自体は信用出来るだろう。熱意は本物だったしな。

 彼女の挨拶を聞いて、千葉さんが拍手をしながら声を上げた。

 

「よろしくお願いしますっ! うぅ、良かった〜! 七草さんがマネージャーしてくれるなら、嬉しいことこの上ないです!」

 

 目を輝かせながら、そう告げる隣の同期。人畜無害ってこういう人のことを言うんかね。不安なんかどこか飛んでいっちゃったよ、この人見ると。

 千葉さんに感化されるように、俺も言葉を返す。

 

「正直俺も、七草さんが担当してくれるならやりやすいかもです。よろしくお願いします」

「ふふっ、はい! よろしくお願いされました」

 

 明るくそう返してくれる七草さん。ふふん、と自慢げな顔が愛らしい。ずるいよな、美人って。なんでも絵になる。

 では、と自己紹介を終えた七草さんが、次の人を指名した。

 

「今度は、千葉さん。お願いします」

「は、はいっ」

 

 大きく返事をした千葉さんは、ハキハキと話し始めた。

 

「先程もお伝えしましたが、千葉誠心と申します! 七草さんにお誘い頂いて、VTuberとして活動していくことを決めました! ボクは配信や動画投稿経験はないですけど、それでも精一杯頑張りますので何卒!」

 

 よろしくお願いします、と深々と頭を下げる千葉さん。補足するように、七草さんが口を挟む。

 

「千葉さんは役者として活躍していたんです。しかも時代劇を中心としてまして。演技や運動能力に惹かれて、スカウトした次第です」

「ほぇ〜、時代劇……。ディープな世界だ」

 

 俺らの言葉に千葉さんは、えへへと照れながらも謙遜する。

 

「と言っても大した役貰えなかったんだけどね。役者だけだとちょっと暮らしていくの厳しいなぁ、って思ってたところにちょうどお声がかかって。嬉しい限りです」

 

 へえ、と相槌を打つ俺。苦労してたんだなぁ。

 

「VTuberとして有名になったら、稼いだお金でいっぱいご飯食べたいと思ってます!」

(言ってることは可愛いけど、してきたであろう苦労を加味すると途端に重く感じるなぁ)

 

 よそう、この話題を深く掘り下げるのは。可愛い目標で留めておきたいもの。

 さて、と俺は重い腰を上げる。

 

「じゃあ最後は俺ですね。名前は丹野達人、タツジンと書いてタツヒトです。以前から右ねじ名義でYouTubeに動画投稿、配信活動をしていました。普段は大学生してます、よろしくお願いします」

 

 小さくお辞儀をして挨拶を締める。なんか無難だな、面白みに欠ける。まあ挨拶にユーモアとかいらないか。気にしない、気にしない。

 俺の挨拶を聞いて、千葉さんが「わ〜!」と声を上げた。

 

「そういうのって、配信界では前世って言うんだよね! いいなぁ、前世。羨ましい。ボク、YouTubeのチャンネルすら持ってなかったから……」

(前世が羨ましいって、変なの。無い方が余計な波風立たなくて良い気がするけど)

 

 最後の一言はさておき、羨ましがられて不思議に思う。思うにこの人、VTuberどころか配信というコンテンツにすら触れて来なかった人間なのだろう。今時珍しいな。

 

(まあ変に詳しい方じゃなくて良かった。こちらとしてもありがたい)

 

 熱烈にVTuberについて語られても困るし。お互い前提知識が0に近似なら話も合わせやすい。助かった〜、この人が同期で。もうこれで懸念はほとんど無くなったな。

 こうして一通り、自己紹介が終了した。ある程度お互いを知った上で、俺らは本題に入ることとなる。

 

「それでは、記念すべき最初のミーティングと行きましょうか。今回二人に集まってもらったのは他でもありません」

 

 神妙な口調で、七草さんが告げる。内容は、俺たちのプロデュース方針についてであった。

 

「お二人には、男性VTuberユニットとしてデビューしてもらおうと思っています。今までのぶいすとりーむとは異なる、新たな枠組みとして」

 

 ユニット、デビュー、新たな枠組み。耳に入ってきた言葉一つ一つが、俺に鮮烈な印象を与えた。彼女の口調も相まって、妙な責任感が俺を襲う。思わず息が詰まった。

 もしかすると、俺は思っているよりも大きな役目を負うことになるのかもしれない。

 

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