VTuberって凄えよな、だってやりたいことなんでも出来るもん   作:木野了承

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お久しぶりです。更新が滞ってしまい、大変申し訳ありませんでした。


神宮寺誠の3D配信について(2)

 

 時刻は午後六時五十九分。

 

「間も無く本番始まります!」

 

 スタッフさんのその声掛けで、辺りの雰囲気が一気に引き締まる。スタジオの一角、特設のスペースで配信待機状態にあった俺もそれに乗っかるように、意識をしっかりオンに切り替えた。

 グリーンバックステージに視線を向ける。そこにはキャプチャースーツを身に纏った千葉さんが、堂々とした表情でそのときを待っているのが確認出来た。緊張や不安が表に出ている様子は無く、明るい雰囲気が醸し出されている。それに、なんだか立ち振る舞いや姿勢からは凛々しさが感じられて、どこか普段とは違う印象を受ける。

 

(なんか、今日の千葉さんはカッコいいな)

 

 その風貌に、思わず見惚れてしまう。そんな俺の視線を感じ取ったのか、千葉さんは不意に俺の方に顔を向けた。目と目が合う。そしてすぐにニコッと笑って手を振ってきた。あれ、可愛い。さっきまでのかっこよさはどこに行ったのだろうか。そんなことを思いながら手を振り返す。

 

「五秒前! 四、三」

 

 そうこうしているうちにカウントダウンが始まった。慌てて意識を戻し、集中する。早くなる鼓動を落ち着かせるように、ふう、と大きく息を吐いた。

 

 ────さあ、始まるぞ。

 

 配信タイトル。

【神宮寺誠3Dお披露目】神宮寺誠、3Dで推して参る!【ぶいすとりーむ/神宮寺誠】

 

 待機画面から本配信へと画面が切り替わる。舞台は道場。壁には毛筆で書かれた「誠」の掛け軸が飾られている。普段の配信でも使われている素材であり、こういった細部に神宮寺誠の世界観が踏襲されている。分かる人には分かる、気の利いたファンサービスといったところか。ぶいすとりーむはオタク心がよく分かっている。

 配信が開始して数秒、視聴者に舞台設定が把握された頃。皆が待ち侘びた、彼の姿が映る。画面端からひょっこり顔を覗かせて、笑みを浮かべて登場する神宮寺。そのまま画面の外の視聴者に向けて手を振った後、全身が映るところまで歩き、一礼。その後すぐに、配信開始の口上を述べたのだった。

 

「やあやあ、御用改めであるッ! ぶいすとりーむ所属、少年剣士でお馴染み、神宮寺誠! ここに、見・参! みなさま、大変お待たせいたしました! 今日は3Dの身体で配信をお届け!」

 

 よろしく、と高らかに告げながら、クルッとその場で一回転して決めポーズを披露する神宮寺。纏った水色の羽織が彼の身体を追いかけるように翻る。衣服も身体の一部なのがこの世界の理。当たり前のように見える演出も、計算された仕組みから成るものである。

 彼は終始笑顔を見せながら、ステージ内で、否、道場内ではしゃぎ回る。

 

「どうかな、どうかな! ボクのカラダ! くぅ〜、肉体があるって最高だっ!」

 

:神宮寺3D、キターーーー!

:可愛いぃぃぃ

:おめでとう…… ¥5000

:表情眩し過ぎる

:おめでとう、神宮寺殿! ¥10000

:このときを待っていたんだ ¥10000

 

 開幕からチャットは賑わい、スパチャが飛び交う。ここに集まったのは神宮寺誠のファン達であり、皆、彼の晴れ舞台を待ち望んでいたことは言うまでもない。喜びも一入であろう、当然の盛り上がりだ。

 

「みんな、本当にありがとう! まずは誠凛隊のみんなに感謝を! ありがとう! 本当に、ありがとう! みんなのおかげで、ボクはこの場に立てました! ありがとう〜!」

 

 ひとしきりはしゃいだ彼は、今度は視聴者に向けて感謝を伝え始めた。何度も何度も、ありがとうと口にする。神宮寺誠の良さはここにある。彼の純粋な性格と、視聴者に対する篤実な言動は、混沌としたインターネットに染まった人間たちにとって、あまりにも温かい。

 

:泣くからやめて

:そういうとこマジでずるいよな

:これだからショタは……

:こんなに成長して……

 

「今日はみんなへの感謝も込めて、張り切って配信していくからね! 改めて、よろしく!」

 

 ぱちっとウインクを決めて、堂々とそう告げる神宮寺。画角意識も完璧で、カメラの位置をばっちり把握した上で動いている。流石、元役者。こういうところに前職の名残を感じる。

 

「さて、それじゃあ気を取り直して」

 

 神宮寺は姿勢を正し、凛とした表情を浮かべた。

 そして一言、精悍に述べる。

 

「神宮寺誠、3Dで推して参る!」

 

 

 

「まずは、今日の配信を手伝ってくれるゲストのご紹介を! ぶいすとが誇る機械仕掛けの配信者! えくすとりーむメカさんでーす!」

「ウス。ご紹介に預かりました、デウス・えくす・とりーむメカです。今日はサポートなんで。ヨロシクゥ!」

「名前変わっちゃった」

「あんたが機械仕掛けのうんたらとか言うから」

 

:メカやん!

:やっぱメカ出るのか

:もう見飽きたまである

:親の顔より見たメカ

:メカってデウス・エクス・マキナだったんだ

 

 神宮寺からの小粋な紹介を受け止め、挨拶を交わす。彼がちゃっかり台本にない文言を言い放って来たものの、割と上手く返すことが出来て自分でもビックリした。数々の配信をこなして、俺のアドリブ力も上がったということだろう。上々、幸先良いスタートである。

 挨拶の片手間、メカの立ち絵を配信画面上に表示させる。極力神宮寺の画角を邪魔しないように、画面端にそっと添える感じで。何はともあれ、こうして俺も配信に登場出来たことだ。自分の務めは全うしていこう。

 

「というわけで、改めまして。今回神宮寺誠の3Dお披露目ということでね。お手伝いとして、私、えくすとりーむメカが! 司会進行を担当させていただきます! よろしくお願いしまーす!」

「よろしくね、メカ!」

「はい、バッチリサポートしまーす」

 

:うーん、これは同期の鑑

:心強くはある

:ちょっとエモいな

 

「誠凛隊のしょく〜ん。俺は神宮寺の御身体を間近で見れちゃうんだぜ、ぐへへ。いいだろぉ」

 

:うーん、これは動悸の屈み

:心強くはない

:ちょっとキモいな

 

「ちょっとー。ボクの記念配信で不審なこと言わないでもらってもいいですかー?」

「神宮寺、お前は俺を熱くする……。お前はメカを狂わせる……。mecha(メッチャ) error(エラー)……」

「全然聞いてないや。進行頼む人、間違えたか?」

「今俺のこと人って言ったか……?」

「あー、これはミスったな……」

 

:ワロタ

:神宮寺殿、本当に頭抱えてて草

:このメカは、本当に

:いつも通りの二人で安心する

:神宮寺殿は所作の一つ一つが可愛いな、マジで

:表情から諦観が感じ取れる

:普段から表情豊かだけど、3Dになるとさらに拍車がかかるな

:間違えた。一人と一機

 

「冗談です。ここからは真面目にやっていきますんで、よろしくお願いします」

 

 態度と言動を改め、再度口上を述べる。今日の主役は神宮寺であり、俺はあくまでアクセントだ。気を張る必要はないであろう。

 そんなこんなで、神宮寺の3Dモデルお披露目配信スタートである。調子良く始めることが出来たことだし、今日は一番傍で、是非とも楽しませてもらうとしましょうか。

 




私の活動報告の方に、近況と今後についてのお話を投稿させていただきました。内容をかいつまんで話しますと、今現在作者の体調が悪いよ、ってことと、今後の更新はゆっくりになるけど完結まで書きますよ、ってことになります。興味がある方は目を通してもらって、そうでない方は無視してもらって構いません。何卒よろしくお願いします。
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