牙狼-GARO- 金色の光と神薙ぎの巫女 作:究極の闇に焼かれた男
第一話
五月某日…
神奈川県鎌倉府内の今は使われていない廃倉庫の一角にて、統牙は魔戒剣を手に一体の素体ホラーと対峙していた。
「ハッ!」
袈裟懸けに振るわれた魔戒剣の一太刀が素体ホラーの胸部を切り裂きながら宙空へと打ち上げ近くの壁に叩き付ける。
「これで決める。 ハアアアアアッ!!」
壁に叩き付けられた素体ホラーが呻き声を上げながら必死に立ち上がろうとすると、統牙はそれよりも速く地面を蹴って飛び上がり落下の勢いを乗せた振り下ろしを放ち素体ホラーの体を一刀両断する。
両断された素体ホラーは四散し邪気が封印されると、直ぐさま赤鞘に納刀した統牙は魔戒剣を魔法衣の内側へと仕舞う。
「ザルバ、他にホラーの気配は無いか?」
〈いや、さっき倒したホラーで最後のようだ〉
「なら良かった。 それにしても、此処にも遊牙の手掛かりは何一つ無いとは……」
〈あれから数週間も経っているのに見つけられないとは、相変わらず行方を眩ませるのが上手い男だ〉
「それに加えてホラーの出現頻度も異常なまでに多くなっている。 これは間違いなく何かが起こっている様だが、依然として手掛かり一つ掴めないのは余りにも異常だ」
〈統牙、ここは此処の番犬所に寄ってみる方がいいんじゃないか?〉
「確かに、神官なら何か情報を持っているかも知れないな。 そうと決まれば直ぐに向かうとしよう」
そう言うと統牙は廃工場を後にするのだった。
東の管轄の在る番犬所の一つ、そこに統牙は訪れていた。
番犬所の奥に進むと其処には白い衣服に身を包んだ初老の男が座高の高い椅子に腰を掛けながら統牙を見下ろしていた。
「ほぉ…お前が此処に訪れるとは珍しいな、黄金騎士牙狼。 それで今回は何の用だ?」
「そんなの答えなくても分かってるんだろ"ガルス"。 敢えて答えるのなら、ここ最近になってホラーの出現頻度が異常なまでに多くなっている。 それについて何か知っている情報がないか聞きに来た」
統牙の言葉に東の管轄の一つを請負う神官の一人【ガルス】は、少し考える素振りをしてから口元に笑みを浮かべながら答え始める。
「…今から20年ほど前に起きた、相模湾岸大災厄の事は当然知っているな?」
【相模湾岸大災厄】──今から20年前の九月、相模湾に突如として現れた大荒魂によって引き起こされた大事件の事で、現在の特別刀剣類管理局の局長を務める「折紙紫」が率いた特務隊の活躍により終結したとされているが、それは表向きの理由で実際は国家間で起きた何かしらが原因で起きたとも噂されている。
「相模湾岸大災厄? それなら知っているが……何か関係でも有るのか?」
「多くの死傷者を出した相模湾岸大災厄だが、その裏で実はもう一つ大きな事件が人知れず起きていたんだ」
「大きな事件だって?」
「その事件を引き起こしたのは使徒ホラー・ベルザリュートと呼ばれていてな、厄介な事にヤツには人界と魔界の境目を無くす特殊な力を行使する事が可能とされている。 そんなベルザリュートをお前の父が討滅し封印したのだが、つい最近確認された事だが何者かがヤツが封印されていた祠を破壊した事が判明した」
「何だって!?」
「恐らく最近ホラーが頻繁に現れるのはベルザリュートの力が関係しているやも知れん。 もしも伝承に残されている通りのホラーなら放って置くと厄介な事になるのは間違いないなろうな。 故に黄金騎士牙狼よ、お前にベルザリュートの討滅をしてもらうぞ」
「その使命、俺が必ず果たそう」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべるガルスに対し、統牙は真剣な表情をしながらハッキリと答えるのを聞いたガルスは不敵な笑みを浮かべたまま満足そうな表情をするのだった。
「───それともう一つ有るのだが。 牙狼よ、近い内に行われる御前試合でお前の幼馴染の女が折紙家の当主である折紙紫を衆目の前で暗殺するつもりらしいぞ」
「はぁ!?」
番犬所を去ろうとしていた統牙に、ガルスは思い出した様に口を開くと衝撃的な内容を告げてきた事に統牙は思わず叫ぶのだった。
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