追放されたので辺境で探偵始めることにした。   作:銀髪幼女

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思いつきです



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 「アイリス、お前を城塞都市リンネに追放する」

 

 屋敷の応接室に呼び出された私を待っていたのは、父のそんな言葉だった。

 兄弟姉妹、家族一同が集められ、皆、なにやら真剣な面持ちで俯いている。

 

「まったく愚かしい。なぜ追放されるかわかるか?」

「……いいえ、見当もつきません」

 

 私は、10歳の時に、信託により祝福に目覚めた。

 それからというもの、時々たまに、植物の声が聞こえるようになったのだ。それだけではない。動物の声も、あるいは人の心の声だって、聞こえてくるようになった。

 

 あまりに突然のことで、酷く困惑した。それ以上に、屋敷中から稀に聞こえてくる声が私の悪口を言っていることに、深く落ち込んだ。

 

 表では優しい従者たちも、皆一様に私や家族たちをひどく思っているのだと。

 

 元々活発な方ではなかったが、それからというもの、私の内向的な性格は祝福に助長されるようにますますひどくなっていった。

 

 そんな中、部屋に閉じこもり、長らく引きこもりがちになっていた私に良くしてくれたのが祖父だった。

 他の人と同じように表だけいいように取り繕って、裏では汚いことを考えているのだと思ったが、祖父だけは違ったのだ。

 

 祖父は、心から私を愛してくれていた。心配してくれていた。

 だからこそ、私も祖父だけは信頼することができた。

 

 祖父といる時だけ、私は、私を大きく変えてしまった祝福の呪いから解放されるのだ。

 

「お前が受けた神託の祝福は、独り言だったか。私たちはお前がそれに目覚めてからというもの、ずっとお前を邪魔だと思っていたんだ。何かある度に独り言ばかり話して、全く気持ちが悪いと」

 

 父がそういうと、集められた家族たちが一様にうなずき、従者も真顔で肯定を示している。

 その証拠に、彼らの心の声は父の言葉とほとんど変わらない内容を示していた。

 

「だが、私の父、つまりお前の祖父は、そんなお前をかわいそうだと思ってよく接してくれていた。私はそれすら気に食わなかったのだが、残念なことに、そんなおいぼれも三日前に死んだ」

 

 そう、死んだのだ。

 皆から気味悪がられていた私が未だにこの家に居続けていられたのは、前党首である祖父が私をかわいがってくれていたからだった。

 しかし、そんな祖父はもうこの世にいない。

 もうこの家に、私の味方などなどいないのだ。

 

「故に先日お前を除いた会議である方針を定めてな。これは、そうだな、アンナ、お前に告げてもらおうか」

「はい、お父様」

 

 そういうと、妹が円卓から立ち上がった。

 長い栗色の髪を丁寧にまとめた、いかにも貴族らしい見た目の少女だ。私とは違い、騎士の祝福に目覚めた優秀な。

 それに、少し前に上流貴族のザンダー家の長男との結婚が決まったという話も聞いたことがある。

 父からも母からも気に入られている、私とは正反対な妹だ。

 

「アイリスお姉様。先日の家族会議において、お父様を当主とした我が家の方針を決めました。あなたは、その存在自体が我が家における汚点です。常に独り言を言い、暗い顔をしては従者に対してすらおどおどと振舞う。礼儀作法なんてあった物じゃない。故に、あなたを城塞都市リンネへと追放することを決めたのです」

 

 つまり、当主であった祖父が死んだことで、この家を好きにできる権利を得た父が、家の面汚しだとして私を追放することを決めた、という話だ。

 当然、私にそれをどうにかする権利などない。決められたことにただ従うしかなければ、父の命令に背けるわけもない。

 

 それ以上に、私も早くこの家を出ていきたかった。しかし、貴族という身分が、それを許してくれなかったのだ。

 

「そういう事だ。アイリス。これは既に決定事項であり、さらに言えば私の独断で決めたことでもない。お前に拒否権はないが、一言だけ何かを言う機会を与えてやろう。何か言いたいことは?」

「……いえ、特にございません」

 

 私は俯いて、沈痛な表情を作った。

 もし数年前の私なら、この追放に絶望したのかもしれない。あるいは、祖父が死んでしまったことにも、立ち直れなかったのかもしれない。

 

 しかし今の私は、あの時ほど弱くはないのだ。

 明確に言えば、二日前の夜からの私は。

 

 何故ならこの能力は、動植物の声を聴くだけの使えない能力ではないからだ。

 

「……そうか。『引き下がってさえくれれば見せしめにも出来たのだが』ならば、今すぐこの部屋から出ていくがよい。追放は明日の夜。19刻に行う。部屋で待機しているように」

「はい、お父様」

 

 私は慇懃に頭を下げ、振り返り部屋を出た。

 礼儀作法などあった物じゃないというのは、単に礼儀作法を披露する機会を与えられなかっただけだ。

 

 祖父の指導の下、人並みの所作を身に着けることはできた。その点においても、私は祖父に感謝しているし、尊敬している。

 

 だからこそ、最後の日を前に、彼に伝えに行くのだ。

 今までの感謝と、これからの展望を。私の、全てを。

 

 ――なぜならば、()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

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