「じわじわ報復する、それがモットーであります」
「「「おぉー(パチパチパチ)」」」
日本地獄の紹介動画を視聴し終えての質疑応答は、それはもう子供達の勢いが凄かった。これには誇りを胸に仕事している獄卒もにっこり。八割くらい芥子ちゃんに集中して赤鬼が寂しそうなのは触れないでおくべきだろうか。
恐竜が来てたら男子の質問はそっちに集中してたんだろうが、その場合は赤鬼の立場がますます悲しい事になるんよね。ちな、こちらの赤鬼は賽の河原担当だったが石積み時代だった事もあり心を病んで休職した経験をお持ちだそうな。世知辛い。
今は立川側の天部がテコ入れしてジェンガに変わってるからなぁ。アナンダの功績は余りにも大きい。
「そろそろ時間なので〜次で最後の質問にしたいと思いま〜す」
「「「えー!」」」
「いやぁ、お気持ちは大変嬉しく思うんですが。亡者のためですから、しっかり罰を受けてもらわないといけませんので〜すよ」
そんなこんなで時間が……大幅に過ぎてんな。司会も全部任せてたが、こっちから注意するべきだったな。失敗、失敗。
「それでは質問を……せっかくなのでバールドさん、何かありませんか?」
あら指名されちゃったわ。いやしかしまとめ役に丸投げはある意味じゃ妙手なのかね。芥子ちゃん……恐ろしい子!
「そうですね、では我々のような別の神話勢力に属する者が日本で亡くなった場合の流れを教えて頂ければ」
「あれま。えーと私その辺りは不勉強でして……」
「では儂が引き継ぎましょう。基本的に死者の魂はその土地を管理する勢力が管理する事になっております。そこから所属勢力に連絡が行き、引き取りを希望される場合もありますが、基本的には現場で手続きされますな」
芥子ちゃんは現場叩き上げで一獄卒だから政治とは無縁だもんなぁ。少し意地悪だったかしらん。代わりに赤鬼が出番をもらえて嬉しそうなんでヨシ!
そんでこの世界における死者の扱いは所属ほぼ無関係で縄張りにしてる勢力が担当する。外から来て好き勝手して因果応報で殺された悪魔がいたら普通に日本地獄で裁かれて刑罰を受けるわけだな。
原作通り十年前の事件が駒王町で起きた場合、クレーリアは日本地獄で裁かれる事になる。レイナーレや取り巻きも同様で、多分裁判中に揉めてぶん殴られてそのまま地獄直行だろうな。アタシならダンまち時代を夢オチ含めて加算されるだろうし焦熱地獄辺りかね。いや、眷族が聖職者扱いなら余裕で大焦熱や阿鼻に落とされそう。でもその場合はこっちも神の眷族やってたから無効だろうか。んー、わがんね。
「自分達とは違うルールで裁かれるので、亡くなった方からすれば予想外の事が罪になる可能性もあります。皆さんも旅行中は普段以上に気を付けて、問題を起こさないようにしましょうね」
「ありがとうございます。そのためには旅行先の文化について事前に調べておき、現地では尊重する事が大切になりますね」
「左様ですな。ルキフグス殿はお若いのに聡明でいらっしゃる」
「恐縮です」
「それでは質問に答えて下さったお二方に拍手で感謝の気持を伝えましょう。はい、拍手」
「「「ありがとうございました!」」」
拍手って言ったはずなんだが、普通に口でもお礼を言ったな。教育の賜物と思えばいいんだろうが、命令違反を咎めるべきかビミョー悩ましいぞ。
「芥子ちゃ〜ん!」
「また会おうねー!」
「バイバーイ!」
「は〜い、さようならですよ〜みなさんもお元気で〜」
こうして地獄紹介が終わった。後はリリスの帰還待ちになるんだが、鬼灯様が案内して下さってる都合上、そう長居はできまい。とはいえ空き時間は空き時間。自由にさせると腕試しを挑むお馬鹿揃いなんで何かで気を逸らさんと。
「そういえば、補佐官殿から待ち時間ができる場合は閻魔大王様の裁判を見学していかれてはと提案がありましたぞ」
「おや、よろしいのですか?」
「サプライズというやつですな。あの方は気難しいようでこういったお茶目も忘れないので飽きません」
渡りに船とはこの事か。周りも興味津々なようだし、ここはお言葉に甘えるべきだろう。
「では、お言葉に甘えさせて頂きます。お手数をお掛けしますが、どうぞよろしくお願い致します」
「お任せ下さい。では、こちらに」
「はい。みんなー裁判の様子を見るぞー騒がないでしっかり後をついて来るように」
「「「ハーイ!」」」
てなわけで移動して、観覧用のキャットウォークから裁判の様子を眺める事に。
「えんまだいおーさま、おっきー」
「もうじゃはわるいかおしてるなー」
「ありゃそうとうあくじをかさねてきてますぜ」
どうやら鬼灯様がおらんでもサボらず真面目に仕事してる様子。補佐官の代理は……樒さんかな? THE・お母さんって感じの女性が勤めてる。
浄玻璃の鏡は……あれか。遠目にだが解析もできそうだな。試そう。
「オイ! 何だあのちっこい連中は!」
「だまらっしゃい! 誰が見学していようと裁きの内容に変わりなどない。もちろん、この場で騒ぎ立て罪を重ねた場合はその限りではないぞ!」
「そんな事はどうでもいい! あいつらを使えば研究の成功率が高まる……くそっ、死んだ今になってあんなとんでもない才能を大量に見付けるとは!」
何やら亡者が見学者の存在に文句を言ったが一蹴されておる。愉悦、愉悦。しかし悪人顔だな、生前はどんな……わーおフルコンプしてんのか、火車さんがお迎えせんのが不思議なくらい……って、あれ、悪魔の実験に関与して子供捨ててとか、もしかして黒歌白音姉妹の父親だったり? いや、研究中に爆死で姉妹はナベリ分家に置いてったんじゃなかったか。実験場所が日本だった……いやーそんな事あるぅ?
ナベリウス分家は挨拶のとき門前払いしてくれやがったな。よし、間に合うかは知らんが姉妹はこっそり連れ出そう。ゲームに参加してるようなら試合の隙に拠点侵入の妹誘拐から姉スカウトで終わりなんだが。引きこもってるなら電撃的に仕掛けて資料ごと証人として奪うのもありだな。
仮に間に合わん場合でも、はぐれ悪魔受け入れ明言のルキフグス領を頼る可能性だってあるしな。悪魔の駒を引っこ抜いて証拠の提示を求めれば文字通りに悪魔の証明で勝訴の無罪だし。仮に駒を使う瞬間を見たって証言する奴がいたら自白剤で情報抜き取るのに使えるからお得だな。息をするように嘘を吐く悪魔の証言なんざ当てにする馬鹿いねぇよって話。なお現魔王達。
しかしその意味じゃあの男からも証言を引き出したいところだな。何せ今正に浄玻璃の鏡で人工的な超越者の作製実験とか情報出てるんだもんよ。事情を察した子供達の何人かがこっちを見て小さく悲鳴を上げたんだが、もしかしてちょっとオリジナルな笑顔を浮かべちゃってたかしらん。
「あの、バールド殿?」
「私は冷静ですよ、至って、えぇ、それはもう」
『あいつ聖書の神を愚弄された天使と同じ事を口走ってるんだが』
「アルビオン、ちょっとだまってくれ」
いや実際、そんな怒ったりはしてないんだがな。ただ鏡から流れてくる言葉から察するに人工的な超越者へのアプローチが当てずっぽうで破綻してて奇跡起きても足りないくらい杜撰な資源の無駄遣いだったり、被験体を嘲る声がブーメランだったりして滑稽だとは思うけどな、うん、ホント。
「無能が」
そんな一言が自然と漏れた。
裁判受けてる男も一応は実験の一部を任される程度には能力を認められてたはずなんだが、宝物センサーがピクリとも働かんのよ。実験の成果あるいは人材の入手確率が0%だからか?
「な、だ、誰が無能だああああ!」
「これ、騒ぐな! えぇい黙らせろ!」
「取り消せぇっ! この素晴らしい研究を理解できないガキの「大人しくしろ!」ぶべらぁっ!?」
聞こえてたとか耳は良いんだな。他人の会話してるアイデア盗んでそう。つーか図星突かれて逆上したようにしか見えんが、無能めって言われながら殺された感じかね。
「裁判の妨害、失礼しました」
「あーうん、別に亡者が騒ぐのはよくある事だから」
「寛大な言葉に感謝を」
とりあえず失態だったわ。こんだけ素直に本心が漏れるとは、自分でもびっくり。なんでだろ。
つーか普通に実験が悪魔勢力の汚点なんで、自浄作用のためにも後で記録を売ってもらえないか交渉せんと。対価はどうするべきか。
結局、男は無事阿鼻地獄行きを言い渡されてた。閻魔大王が地獄の中身まで言及するのは鬼いさん時空の特色かね。
その後、何人か判決を言い渡したところで鬼灯様とリリスが合流した。そこから土産コーナーに案内され、各々で買い物。まぁ支払いは後でまとめてアタシに請求されるんだが。
内訳も記載されるんで趣味嗜好が判明しちゃうっていうね。
定番の木刀や変T、龍の意匠を持ったペーパーナイフ的なキーホルダーを買い漁る男子と、金魚草のぬいぐるみや文房具を選ぶ女子。地味に復活してるリリスのルージュ製品が置かれてるのウケるんだが。土産屋スペースに置く意味はどこにあるんだ。
あと朱乃は拷問器具をそんなに揃えてどうするつもりなんだ。いくらバラキエルがドMでも限界はあると思うぞ。悪魔の子もドン引きしてんじゃねぇかやめてやれよ。鬼灯様も筋が良いとか褒めてオススメ品を渡さないでくれませんか。
「それでは今日一日、お世話になりました」
「「「お世話になりました!」」」
「いえいえ、こちらとしても興味深い結果が得られたので満足です。今後ともよろしくお願いします」
「あはは……最善を尽くします」
いよいよお別れの時である。見送りに来て下さった鬼灯様に感謝の言葉を述べるも、返す言葉に胃を押さえる羽目になった。
いやね、鬼いさんの世界と言えば金魚草なんだよ。異論は認める。んで、悪魔の通訳能力で普通に会話できるんよ。おかげで冥界における金魚草の
ちな、クラフトチートの鑑定でも区分は正体不明で、説明文を見ても動物か植物か妖怪かはっきりしない。ダンまち含めて初の快挙だよ。ギャグ補正もあるんだろうが、正式な鑑定結果が正体不明なの凄くね?
とりあえず魂が宿ってるのは確か。木霊さんの例やダンまち世界における
確か寿命も百年以上生きるのは確認されてたよな。これまた動物植物妖怪どれでも通じるのが辛い。なんなんだコイツ。直接聞いても不敵に笑い返すだけだったし。ぐぬぬ。
とりあえず三十株ほど注文して、今は倉庫に突っ込んである。冥界進出自体は考えてたんで既定路線だし。同じく倉庫内にいるリリスとエイジャがとても微妙な表情をしているのが見える見える。
――ネキ、ネキよ……倉庫内でも眠らずにめっちゃこっち見てるっす
――ものすごい小声の早口で何か言ってるわね
――適当に布かなンか被せといて。暗くなったら寝る事を期待してくれ
――了解っす
そっかー倉庫内でも活動停止しないのかー。どういうことなの……順当に考えりゃ時空に干渉する能力をデフォで持ってるか。これはこれで新発見だろうからレポートに載せとかんと。
時間関係の能力ってアガレス家だっけか。でも中立だから頼んでも断られそう。いうて倉庫内の時流を調整して代用できるからそれでいいか。枯れるまでの時間が変わるか実験して、変わらなかったら干渉を弾いてるって事だな。任意なのか自動なのかはさておき。
――あ、大人しくなったっす
――上手い具合にシルエットも隠れてくれたわねぇ
――そいつァ何よりなこった
静かになってくれて良かったわ。帰りは行きと違って日本地獄で手続きしたら、そのままルキフグス領まで直に転移できる。フリーパスも発行してもらえたので次回以降は直接予約して直接飛べる。やったぜ。
「それではまた今度。次は呵責の様子を見学または体験できるように時間を多めに取って予約しますので」
「えぇ、お待ちしています」
「それではありがとうございました。さようなら」
「「「ありがとうございました! さようならー!」」」
こうして初の海外ならぬ界外旅行は大成功に終わった。
「アンタが当代のルキフグス? ふーん」
「殺しますか?」
「待って差し上げろ」
まぁ、帰って来たらちょっと話題に出した黒歌が妹込みで駆け込んで来てるってアクシデントが待ってたわけだが。リリがすごく表情の脱げ落ちた笑顔してるわ。いやこれはこれでキュートなんだが。小猫……はリアスの付けた名前だから白音か。白音が目に見えてガチビビりしてるし黒歌も尻尾丸めて股の間に挟んじゃってるぞ。
逆に前側突き出て主張しちゃってるせいでち◯こみてぇとかは言っちゃ駄目なんだろうな。十年も男子やってりゃ下ネタもそっちに寄るなぁ、はっはっは。
とりあえず『