聖書の神なら立川で鳩サブレ食ってるぞ   作:夜月工房

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21.来訪者の相手をしたよ!

「失礼します。バールド・ルキフグス参上しました」

「あ、うん。久しぶりだねバールド」

「……ふぅん?」

 

不法侵入者ではあるが一応は魔王って事なんで迎賓館に詰めておいたわけだが、まぁ挨拶からわかるように向こうはプライベート気分らしい。定期的な通信では余裕のない暮らしをしてるって知らせてるんだが、支援物資とか持って来た風もない。要は仕事の邪魔をしに来たわけだが、何考えてんだろ。

あとリアスは何気に初対面だけど、貴族らしい気品はうっすら纏ってるものの傲慢さがどっぷり出てるんで傍目にはボンボン……だと男か。まぁ肩書が本体にしか見えん。教育の傾向もあるんだろうが、ある意味で原作の片鱗が見えてるなぁコレ。

つーか仮にも次期当主の立場で他家の現当主にこの態度とか、教えはどうなってんだ、教えは!

ガキの内なら矯正できる可能性も残ってるが、それをするには隣の阿呆(シスコン)が邪魔だ。いやまぁこれの付属なんで意味の無い仮定だが。

とりあえずこんな教育内容からかけ離れた物体が血縁とかバレたら説得力が無くなるんで、(うち)の子供達には会わせられん。他にも歓迎のお歌とか言って聖歌を聞かせる可能性もあるんでその意味でも会わせるわけにはいかないっていうね。

 

「さて、魔王ルシファー様におかれましては本日どのようなご要件でいらっしゃったのでしょうか。お忍びで護衛も付けず出歩かれては部下が叱責と罰を受けるでしょうし、そろそろご自覚頂きたいのですが」

「ははは、そう堅くならなくていいよ。今回は魔王ルシファーとしてではなく、君の父サーゼクスとして来たのだからね」

「左様でございましたか。事前の確認もなく突然押しかけて仕事の邪魔をするのがサーゼクス殿の考える父親像と。ではグレイフィア様にはそのように伝えておきましょう。母子で語らう機会を頂き感謝致します」

 

まぁリアスを連れて来る以上はプライベートだわな。これで魔王として来たとか言われたら立場を自覚しろ規則を守れ次期当主を無許可で連れ回すな等々と指摘して政府にも厳重抗議の上でこの二名を無期限の出禁処分にするわ。こっちとしちゃそっちのが助かったってのは内緒。

つーかグレモリー家には既に連絡してもらったし、リリにはそっちを迎える準備をしてもらおう。仮にこのまま帰らず領内を案内する羽目になったとしてもグレイフィアがいるなら多少は大人しくなるはずだ。

とりあえず視線で合図したら通じたらしく、一礼して去って行った。目の前のと違ってできる妹を持ってアタシゃ幸せだよ。

 

「ちょ、ちょっと待とうか。グレイフィアは関係ないだろう?」

「魔王の女王として、サーゼクス様の妻として、無関係ではありますまい。よもや既に夫婦の間に愛は無いとでも?」

「そんな事は無い!」

 

即答したけど、なら連絡もなしにふらりと消えるのはやめろと。今回のアタシじゃねぇけど不測の事態があったときに所在不明とか手遅れになったらどう責任取るんだよ。ルキフグス領内は結界の影響で一般的な魔力による遠隔通信に阻害掛かってんだぞ。

まー人間換算で二十代三十代ならこれくらい無鉄砲ても当然っちゃ当然なのかね。魔王の仕事自体は激務だろうし、睡眠時間も少なそうだし、その上でストレス解消につい人肌を求めて夫婦で励み睡眠時間を削る事もあっただろう。ついでにシスコンで馬鹿が加速してそう。

あれ、そう考えたらもしかしてグレイフィアってそろそろミリキャスが宿ってたりするのか? やっべ人間向けの性知識はあるけど、悪魔の妊娠期間とか知らんわ。ブッダの息子ラーフラが六年だったと思ったし、悪魔ならそれ以上でも驚かんぞ。ごめん嘘、めっちゃ驚く。むしろビビる。逆に半年とか一ヶ月とかでもビビる。

けどサーゼクスの正体が滅びの魔力そのものみたいな話もあったから、精子や卵子に含まれる魔力量次第じゃ即席栽培は考えられるんだよな。ハーデスの実験でリリスからドンドコ生み出されて育てられてたし。

その意味じゃ受精卵が着床無しに急激な細胞分裂を繰り返しながらそのまま体外へ排出されてから人型を形成していくようなトンデモ過程してたらどうすんべ。いやまぁ普通に人間と変わらん設定だとは思うが。

ファイブなスターの物語に出てるカイエンは精子が強すぎて卵子を破壊しちゃうって設定あったよな。それに近い話が悪魔にもあるんかね。男性側が強ければ破壊してしまい女性側が強ければ阻まれる的な。まぁ今はどうでもいいか。いやでも少しは当て擦りしておくか。

 

「それでしたら弟か妹をよろしくお願いします」

「……んおぅ!?」

 

よくわからん悲鳴を上げて後ろに引っくり返ったぞこの魔王。いやまぁ今は父親か。別に弟妹が欲しいとねだる子供なんぞありふれた話だろうに。アタシのせいで子育て失敗的な雰囲気があって子作り拒否されてるとか無いよな? どっちかってーとグレイフィアの場合は自尊心からシスコンを振り向かせようと積極的になってそうだし。

しかし原作だと息子より妹を猫可愛がりしてる節があったよな。ヒロイン上げの一貫なんかもしれんが、妻との間に生まれて半分しか自分の要素を継がない実子よりは、同じ両親から生まれて自分と同じ要素のみで構成された兄弟姉妹の方が親近感を抱きやすいとかあるんかね。グレモリーの特性発動条件を自然と満たしてる感じで。

同じシスコンの自傷、じゃなかった自称魔法少女をサンプルにしたいところだが行き遅げふんけふん、まぁ普通に考えて強くて我儘で痛々しいとかスリーアウトだし貰い手が無いよね。しかも主人公のハーレムに入る感じもなくトライヘキサ討伐戦に参加したんだったか。討伐戦……ソシャゲなら一日持たないだろうに、気長だよなぁ人外達。

 

「それで父上は結局どのような用事で我が領まで? 恥を晒すようですが食うに困らなくはなって来たものの、労働力として受け入れているはぐれ悪魔達は『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を生み出した現魔王派も自分達を認めない旧魔王派も等しく恨んでおります。現魔王が来ているともなれば最悪は武装蜂起までありますし、そこは報告書にまとめているはずですが?」

「えっ」

「あァ?」

「ひっ!?」

「チッ、失礼」

 

えっ、って言ったぞ。えっ、って。ちな、悲鳴上げたのはリアスな。

これは判子押すだけの機械になってたか専用の装置に任せて見てないかのどっちかだろうな。内容に関しては部下を信頼していると言い訳できなくもないし突っ込んでも逃げられるだけで徒労に終わるのが何とも嫌らしい。なんだかんだ上層部と付き合って老獪さを身に着けつつあるって事だろうか。

しかし上司として報告内容を把握していないのはかなりマイナスだな。何しろはぐれ悪魔ってのは、貴族にとって不甲斐なさの証だ。政治的な汚点とも言える。それを大々的に集めてるルキフグス領は、ぶっちゃけその場限りの同盟結んででも秘密裏に処理してしまいたい場所の最有力候補。

しかしここで純血悪魔である事と現ルシファーの息子という立場、そして無能の烙印が機能する。

純血に関してはそこまででも無いが、親子に関してはサーゼクスのグレモリー性から下手に手を出すと滅びの魔力を躊躇わず振るう感情で動く系超越者が報復に動く恐れがある。普通に怖いわな。

そして無能扱いだが、なんか情報の集まる場であってもそれを領主が活かせず外にも漏れないだろうと信じられているんだそうな。それならゴミ箱として機能させるのもありかって認識になりつつあるらしい。特に誘導した記憶は無いんだが。謎だ。

まぁ事実として領内に入ったはぐれ悪魔は以降その姿が領外で確認されなくなったわけだし、賞金首の場合は討伐証明を政府に提出している場合も多い。その上で三下っぽく秘密をバラされたくなかったら〜なんて強請って来る事も無い。

それはそれで何を考えてるかわからずに怯えるわけだが、そこは貴族や悪魔としてのプライドが許さないから、あいつは無能だからなって自分を納得させる心理効果もあるんだろう。侮って油断してくれるなら大歓迎だ。

ついでにゼグラム・バアルが放置でいいと口にしたらしい。これに関しては良くわからんが、おかげでちょっかいはそれなりに減った。派遣した手駒が軒並み行方不明になるせいで情報が大して入って来ないのもあるんだろうな。貴重な純血悪魔が月平均で十名も消えれば損切りするか……よくこれだけやられておいて無能扱いできるなとは首を傾げるが。

ちな、工作員は軒並み捕縛されるが、半分くらいほ強制労働させられてる内に馴染んでそのまま住んでる。土いじりってセラピー効果あるよね。

残り半分の更に半分は、許可した以外の領に関する情報を口外禁止する契約を結んで返した。他の仕事はできるから無駄に殺してくれるなよって伝言付きで。何人生き延びるかは知らんが、数名は殺されそうだって亡命してきたし、他の数名は縁繋ぎに向こうで励めって送り返されて来た。まぁ中には自分の弱味は握られてないが付き合いで人員を送った貴族もいるわけで、商売(こうえき)の話を持たせて来た旧魔王派(アドラメレク)なんかもいたし、割と悪魔のスタンスも十人十色だなって。

そして最後の余った連中は貴重なデータの礎になった。クラフトチートって神滅具(ロンギヌス)の聖杯よりヤベーっぽい。まぁ発言者は神器(セイクリッド・ギア)無効化体質のリゼヴィムだが。

 

「あ、あなたね! さっきからおにいさまにたいしてれいぎがなってないのではなくて!?」

「リーアたん……!」

「貴女の兄という立場に敬意を払う価値などありません。それをさせる価値とは彼が魔王ルシファーである事と私の父である事です。そして礼儀に関してはなるほどご指摘の通り。汗顔の至りですが、生憎と五歳から独立して領地経営を始めてましたので、その辺りの教育は足りていないのですよ……叔母さんとは違って」

「だれがオバサンよ!?」

「父の妹なのですから叔母さんは叔母さんでしょう。父上からも堅くならないて良いと許しは出ておりますし年齢はこちらが上なので敬称を少し柔らかめにしたのですがお気に召しませんでしたか叔母さん」

「ば、ば、バカにしてぇ〜!」

 

うーん、こうしてると年相応ではあるんだろうな。外見と声は可愛いもんだ。ツッコミ力は足りていないが反応そのものは大きめで気兼ねなく遊べる玩具ではある。

でも数々の二次創作でアンチ・ヘイトを生み出してきた領地経営の手腕やダブスタっぷりが好感度の初期値をマイナス方面に補正掛けてるんよ。現在はまだやらかしてないし謂れのない話ではあるから曇りなき眼で公平に判断するべきなんだが……いや、兄に連れられる形であっても連絡なし不法侵入かましてたわ。ついでに器物破損罪。

 

「そもそも本来であればこうして言葉を交わす場所は地下牢である事をお忘れなく。というより顔の知られている魔王でなければ領主の血縁だろうと扱いは部外者。行為そのものは複数を跨ぐ犯罪に該当するため処刑台直行でした。あくまでも領経営は悪魔陣営を発展させる事が本義な以上、魔王もグレモリー公爵家唯一の後継者候補も処刑するわけにはいきませんし、強制労働で拘束するわけにもいきませんから減刑に減刑を重ねて解放しますがね。事前連絡一つで今回のような事態は避けられたものを、礼を失した結果が前科持ちです」

「「うっ……!」」

 

リリ達が確認した限りだと、まず二名は転移を弾かれて結界の外に到着した。この時点で不法侵入を試みてるんでアウト。というか結界は領地の境界ではなく少し内側に張ってあるんで不法侵入が成立しちゃってる。

そこからサーゼクスが転移避けのみだと思ったのか余裕の表情で歩いて進み、結界に顔面を強打。患部を手で押さえながらしゃがみ込む兄の姿にリアスがカッと来て、結界に滅びの魔力を撃ち込むも弾かれて、まぁそれが原因で領全体がすわ敵襲かって厳戒態勢に入った。ツーアウトな。

集まって来たのが人形兵で自動音声を流してるのを、普通に下級悪魔が自分の意志で喋ってると思ったらしく、リアスは抗議するもガン無視されてボロクソ言われたのにもキレて攻撃したそうな。こうして暴行罪が上積みされたリアスはめでたくルキフグス領内の方に照らし合わせて死刑確定な重罪人認定されたわけだ。宣告を耳にしてショックを受けたのか、そこで攻撃は止まったらしいが……手遅れよな。それを見て殺害じゃないから弁償すれば大丈夫と慰めながら、中の人がいない事を証明するために滅びの魔力で穴ぼこにしやがった魔王も規定上死罪確定したのは最早ギャグなんよ。

まぁスリーアウトどころかツーアウトからのダブルプレー。もうね、溜め息の一つや二つ出るわ。

 

「悪魔としては前科を箔が付いたと見てくれるやもしれませんし、ルキフグス領では冤罪である事が確認された者や反省し再起を目指す者も受け入れていますので前科持ち自体は珍しくありません。が……だからこそ、領内で罪を犯した者への当たりは強い。ましてや明確な害意を伴う敵対行為に対しては」

「「はい……申し訳ありません」」

 

善人ではあるし、謝罪も反省もできるんだ。学習するかは微妙だし応用も怪しいが。そういうとこやぞ。

つーか情愛が深いって要は感情的って事で、相性としては最悪なんよねグレモリー。せめて建前を用意してから動いて欲しい。

 

「下調べ無しでおいでになられたようですので覚えておいて頂きたい。我が領のモットーは目には死を、歯には死をです」

「なにそれこわい」

「遵法を徹底させたいのであれば罰は重くするべきです。デメリットが勝つのであれば早々事に及ぶ者は現れませんからね。お二方とて、捕縛されてそのまま処刑台に送られると知っていたら今回のような真似はしなかったとのではありませんか?」

「それは……そうだけど」

 

ぶっちゃけここまでしてもバレなきゃ大丈夫理論でやらかす馬鹿は出る。マイノリティの結束は固いんでやらかした奴は敵認定されて普通に告げ口されるし、劣化再現された浄玻璃の鏡モドキで調査されるから検挙率は高いが。

中には悪魔なんだから悪事を働いて何が悪いと開き直る者もいるが、同意を返しながら同じ悪魔を裁く傲慢も悪だから受け入れて死ねって笑顔で告げてやると顔色を変えるんだよね。不思議。

いうて処刑って言っても内容としては耐久実験でもあるから必要悪だし、無意味に殺してるわけでもない。間接的で将来の話になるが沢山の命を救うなら減刑も狙えるっしょ。

 

「だが、それでは民が萎縮して伸び伸び暮らせないんじゃないのかい?」

「少なくとも当たり前な顔で不法侵入したり結界や早期警戒装置の破壊に及ぶ民が出るよりはマシです」

「ごめんなさい」

 

破っていい法なんてそもそも制定しねぇだろって話なのよ。どんだけ頑張っても抜け道があるわけだし、それなら最低限守らせる部分だけ決めて、代わりに罪を重くして、後はどう騙すか騙されないか頭を使った弱肉強食してもらう。強さの種類も複数あるから陳情やら被害届けやらが届いたら介入するがな。泣き寝入りする場合はそのままなんで告げ口は推奨されてる。浄玻璃の鏡モドキで嘘はバレるから、遠回しな未来への貢献を希望する者も大歓迎だ。

まー処刑台送りとは言ったが背後関係とか洗うんで即日では無いし、調査の結果として勝てない相手に逆らっても殺されて終わりなんで渋々やったって感じなら誘導、命令した奴に大部分を被せるとか多少なりとも便宜を図る事もある。

今回であればサーゼクスは処刑したら超越者が消えて悪魔界に激震と混乱なんで放流するしかないし、リアスはグレモリーの後継ぎ問題が絡むんでデメリットが大きくこちらも放流安定。まぁそのまま無罪放免は示しがつかんので領内に指名手配犯として看板立てとくがな!

 

「領主様、グレイフィア様がお越しです」

「お通ししてくれ」

「かしこまりました。それでは、どうぞ」

 

ちょうどいいタイミングでノックが響き、先を促せばグレイフィアの到着を知らせる言葉。グレイフィアには連絡をしただけではあるが、罪人の解放には身元引受人が必要なため事実上の呼び出しとなる。

まぁ、端的に言って、グレイフィアは……キレていた。

 

「遺言を聞こうかしら?」

「待ってくれグレイフィア、これには理由(わけ)が」

「下らない理由を言い訳にしたらどうなるかわかってるわよね?」

「お待ち下さい母上。せめて弟か妹を仕込ませてからにして頂きたい」

「貴方は貴方で何を言ってるのよ……」

 

うん、なんで犯罪者を庇う事になってるんだろうな。そんな感じのやり取りがこの後もしばらく続いて、最終的に馬鹿二名は特に見学とかをする事もなく頭の上がらない相手(グレイフィア)に連行されてった。

まぁ、グレイフィアから正式な予約を取ってからまた来ると宣言されてしまったが。馬鹿二人も来るかは不明だが、とりあえず見学希望者向けのダミー領域から中級者向けの観光地を見せておこうと思いました。

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