クレーリア御一行様を迎え肉親を叱った日から数日。領内の様子や面子でちょっとした騒ぎはあったものの、歓迎会が終わる頃には大体解決してた。
グレイフィアの予告していた領内見学の予約は、サーゼクスとリアスのみならずグレモリー当主と奥様、何故か現魔王のレヴィアタンと
忙しいからって挨拶だけで済ませようかなーとも思ったが、流石に案内役への負担が大きい。何せセラフォルーとソーナは初対面なので、原作との違いを確認しなければならない。貴族の付き合いって事で我慢しよう。
まぁ魔王のスケジュール調整があるから時期は来年の夏まて持ち越しされてるわけだが……逆にそれだけ期間が空くとリアスがソーナに愚痴と悪評を吐き出して、そこからセラフォルーへ不安な気持ちを告げ、こちらへ脅迫が届かないかが非常に心配である。ついでに心外である。嫌なら来るなの一言で済ませたい。つーか嫌じゃなくても来るな。仕事しろ。
さておき、グレモリー当主夫妻が参加するなら見学用のダミー領域の質を気持ち上方向に充実させておく必要があるだろう。余りにみすぼらしいとお節介を焼いて来る可能性が高いし、それが人材だとひたすらめんどい。
さりとて未だに身内判定されてそうなんで、自慢話の体でポンポンネタバレかます事態が想定される以上、充実させすぎるわけにもいかないっていうね。グレモリー領にある管理が行き届いていない僻地を真似ればいいか……あれ、記憶にある景色がダミー領域よりショボいわ。どうすんべ。
まぁそんな面倒事以外では大きな問題もなく、内政も安定してる。言ってみれば、束の間の平穏を享受していた。
「猪が出たぞー!」
「陣形を整えろ! 個々に当たっても
「防衛部隊、所定の位置に付きました!」
「よーしやるぞ野郎共、戦争が怖くて!!」
「「「赤イキツネガ食エルカー!!」」」
『ブルルオォォン!』
「「「グワーッ!」」」
……平穏を享受していた!
「まぁ俺達にとっては狩りの獲物でしかないが」
『それでもこの辺りで見かける冥界猪はサイズが大きい。一人で安定して狩れるなら実力的には上級悪魔並だろう』
「初めて対峙したときは全員で当たっても死を覚悟したが……慣れるものだな」
まぁ、子供達にとっては油断こそできないが比較的余裕を持って立ち向かえる相手となっている。強気な発言をしているヴァーリであってもタイマンならば苦戦は免れないし、たまに冥界猪の取り巻きとして冥界
しみじみと語る曹操の言う初回は、裏京都旅行よりも前の出来事だ。比較的年上な死神や
オラリオならランクアップ祭になったであろうあの戦いが、子供達の潜り抜けた最初の死線になる。もしかしてイエスはその経験を見抜き苦行扱いして励む後輩達に幸あれと祝福した面もあったのだろうか。いや、普通に種族の垣根を越えて仲良しな様子に隣人愛を見たんだろうとは思うが。
最初は方向転換を狙って触れようとしたのに猪が木やら竹やらを薙ぎ倒してエリア外まで走っていくせいで無理だったっていうね。戻ってくる時は悠々と歩いてくるのに敵を察知したら即座に突進モードへ移行するんでもう大変。ワールドで初めて大蟻塚に行った時に寄り道して出会うディアブロスくらいの難易度だったと思う。
ちな、アタシは邪魔が入らんように戦闘領域の確保と周囲の警戒、
「西区にも出たぞー! 瓜坊付きだ!」
「行くか」
「あぁ。
いうて猪の襲撃自体は頻繁に起きている日常の一部に過ぎない。
と、いうのも、聖なるオーラが外に漏れないよう閉じ込める系の結界とそれを変換する聖剣モドキが影響しているらしく、ルキフグス領は生命力やら無色な魔力やらに満ちているのが特徴だ。それを生み出す子供達の価値が天井知らずなんよ。
最近じゃ仙術とまでいかずとも闘気を扱い始めたからなぁ。お株を奪われたサイラオーグ(名前覚えた)の未来は大丈夫だろうか。バアル家には林檎の苗を売ってもらった恩があるんで眠りの病やら魔力無しやらをダイジョーブ博士するくらいの便宜は図るぞ。
まー偉大な祖先持ちあるあるで現当主はゼグラムにお伺いを立ててからじゃねぇと動けないっぽくて保留されてるが。まぁサイラオーグとは腹違いの弟が生まれたらしいんでそっちの成長次第か。
そんな子供達とは別に、リリスやリゼヴィムから漏れ出てる魔力とかも土地を肥沃にする一因になってるっぽい。この辺は悪魔が悪霊って解釈に異教の精霊は悪霊っつー認識が合体して、悪魔に自然へ影響を与える精霊的な力が宿ったのだろう。あるいは貶められた異教の神でも環境への影響は出せそうよな。強者が周囲を異界化させるのは定番。
おかげで田畑や牧場のような消費が伴う場所から遠い、僻地の中の僻地と言える土地が謎の
実際、目の前で野良ドラゴンしかも邪竜寄りが生えて来たのを見てしまったら否定もできんわな。まぁソイツはダンまち時代に見て覚えた
なお、その現場を目撃した面々はその日の夕飯をキャンセルする程度には精神的なダメージを受けた模様。ちゃうねん。ただでさえ高い再生力が領内の、なんつーの、マガツヒ的なサムシングで強化されてたのが悪いんだ。邪龍故の闘争心やしぶとさも作用したし。
そりゃ、唐突な素材取り放題が始まってついついテンション上げてはしゃいだアタシにもちょっとくらいの責任はあるだろうが……でも眼球とか心臓とか骨爪鱗に血肉と毛とか大量に手に入って魔道具が充実したし人形兵の強化にも繋がったから後悔も反省もしてねぇぞ。定期巡回で新しく発見される度に出向いて繰り返してるし。仲間になってからは代謝で自然と剥がれた鱗や爪、たまにの献血やトリミングだけにしてるからへーきへーき。
寝返り邪龍といえばアーシアだが、この世界そしてこの段階でもアーシアに治療された数体が浄化されて比較的穏やかな性格の一般ドラゴンになってる。強さは据え置きどころかむしろ強化されてるが。これにはドラゴンの未来を憂い悪魔化を受け入れたタンニーンもニッコリ……の、はず。無から発生してる部分の説明が難しい事だけは難点か。それでも、鑑定、嘘吐かない。こいつら、ドラゴン。
とはいえ、ヴァディスやフラミーもしくは
そもそもタンニーンの庇護するドラゴン達にファードラ系列って存在してるんかな。恐竜なら羽毛ありで近そうなんだが。
つーか異世界から出現してるわけじゃねぇだろうなコレ。倉庫内に湧くのとどっちがマシなんだろ。
一応、単なる調教済ドラゴン達が暴れたくなった時に備えて無双前提の雑魚や一騎討ち用の強敵を常時一定数揃えてるし、定期的に腕試しの機会を設けてはいる。利用というか挑戦の回数最多がヴァーリな事実からはそっと目を逸らしておこう。いやまぁ白龍皇でありながら生まれたてのドラゴンより弱い自分を許せないんだろうが。年齢一桁なのに意識高すぎんか。
ヴァーリパッパことラゼヴァンは完全に隠居というか転向に成功して農業部門のトップにして果実系の第一人者なのに。彼がプロデュースした葡萄と林檎の品種を使った赤ワインとシードル、そしてアップルパイは、クラフトチートで色々と先取りしているルキフグス領にあってイベントの景品にできる価値が認められてるくらいだ。
ルシファーとしてはどうなのかと思わなくもないが、リゼヴィムも二次創作の活躍を見るに戦闘よりは研究のが適してる感じあったしなぁ。この世界じゃ生ハムと悪巧みしつつひたすら
ヴァーリも戦闘特化に見えて麺類への情熱は並外れてるし。他の世界はどうか知らんが、この世界だと貴族教育の一環で音を立てない的な食事のマナーも仕込んでる中、ラーメンうどん蕎麦の類は啜って食うのがマナーって事で新鮮味があったようでハマってた。他にもハマる子供達は続出してた。そしてヴァーリは至高の一杯を求めてラーメンスープの開発に取り組み出した。並行して麺に最適な小麦の品種改良を父に相談する様子は感慨深かったよね。
「ヘイ大将。来ましたー」
「おぉ、領主殿。お忙しい中わざわざ」
で、そんなラゼヴァンから重大な案件の報告を受けたので詳細を尋ねるためにやって来ました。腰が低いぞルシファー直系。
「それで、例のブツは……」
「はい、こちらです」
言いながら、すぐ近くにあった布を取り払うラゼヴァン。すると隠されていたそれはゆっくりと目を開き、周囲を確認すると改めてカッと見開いた。
「オギャアァァァァァ!」
「うーむ、元気はあるが悲しみ不足な」
はい、こちら日本地獄の土産屋から厳選とスカウトを経て購入して来た金魚草……の第二世代。つまり土地が変わっても無事に根付いて繁殖できた。この事実だけでも学会に発表できる内容だ。
まぁ、悪魔にも堕天使にも金魚草とかいうマイナーな特定外来生物の持ち込みと繁殖を考える先人がいなかっただけではあるが。でも割と好きそうな面子が多いんよね、現存してる悪魔。
「冥界と地獄は同じ死後の世界扱いなのでいけるかと思ったのですがね……恐れながら、ルキフグス領は怨念が足りないかと」
「怨念……言われてみればそうとしか考えられない要素っすね。まァ、それは今後の課題って事で。比較のために何体か邪龍の発生スポットに行って貰いましょう」
ラゼヴァンの指摘は盲点だった。確かに亡者の怨念で溢れている地獄のおどろおどろしい空気に影響を受けている可能性は高いか。
ルキフグス領は冥界にありながら生命力に満ちているし、領民も基本的に前向きで希望を持ちながら暮らしている……強いて言えば種族が雑多すぎて純血を保つ繁殖の問題はあるが、気にする余裕はない事になってるのでスルー。それに伸び伸び健やかに成長する子供達の放つ気は、鬱屈さを払拭する効果を見せている。
金魚草としても嘆き悲しむ要素は……どうなんだろうな。言葉は通じるんで問題や不満点はないか尋ねちゃいるんだが、大丈夫とか平気とかって返って来る。
そんでも日本地獄原産って考えると顔で笑って心で泣く民族の特性を持って気持ちを押し殺してそうなんよね……ぐぬぬ、真偽を見抜く能力が足りない。
かといって安易に魂繋げるのは、こう、なんか怖い。未知を未知のままにするよりも怖いってどういう事だよ。
「わかりました。経過観察は監視カメラでよろしいでしょうか」
「そうですね。そこそこの確度で予測できるようにはなりましたが危険地帯には変わりありませンし、何事も
「よろしくお願いします」
そんなわけで第一世代と第二世代からそれぞれ数体なのか数株なのかが微妙な金魚草に移住してもらった。命の危険がある事は伝えたのだが、生命の存在意義である種の繁栄に対する情熱は凄まじく、生存圏拡大のチャンスを前に立候補が後を絶たなかった。たくましいなー。
そういや前世で見掛けたたくましいなwもカテゴリとしては動植物だったりするんだろうか。いやまぁアホ毛というかサイドテールが独立したなら動物か。でもなんとなく光合成してそうなイメージあるんよ。そんで近縁種とかが使い魔の森辺りで繁殖してそうで怖いんだわこの世界……微妙に飼いたい気持ちがあるのは否定しない。
「オギャアァァァァァ!」
「……いいですね」
「はい。予想が当たりましたな」
そうした流れで邪龍発生スポットに移り住んだ金魚草達だが、邪龍の生まれるリソースである負の感情を吸収したのか、無事に慟哭と呼んで差し支えの無い感情を凝縮した泣き声を上げるようになった。学会で発表する事が増えた瞬間である。
余談だが、負の感情を吸収しているとの推測がされた理由は、邪龍の発生間隔が明確に今までよりも長くなったからである。
それでも発生しないわけではなかったのだが、おかげで巡回タイミングのズレにより衝撃映像を捉える羽目になった。
「うっわ、マジかよ」
「地獄の原種もこうなのでしょうか」
「いや、普通に餌と肥料と水たまに酒で満足してるはず、なンですが……野生と飼育、環境の違いかなァ?」
再生された監視カメラの映像では、金魚草が無からポンと生まれた邪龍と見つめ合い、泣き声を上げ、それがきっかけで戦闘に入るも根を器用に動かして直立と移動を始め、邪龍を取り囲み一斉に泣いてひるませた隙を突き手足の届かない場所に飛び乗り根を張って、邪龍から負の感情エネルギーと思われるものを栄養ごと吸い取り、浄化しつつも干からびさせる一部始終が捉えられていた。なんなのこの生物。
邪龍の発生って厄ネタが映ってる以上は学会に発表するのは憚られるんで、報告がてら鬼灯様にだけ映像を渡しておこう。貴重な資料には違いないし。
つーか、コイツらにはのんびりまったりと育って欲しいわけで、戦闘力とか求めてないんだがなぁ。数が増えたら金魚部分の味の違いとかも確認しておかんとならんし、反逆されるのはちょっと……そういや自己改造してねぇわ、しよ。