非常に今更な話ではあるが、悪魔には人間に召喚され願いを叶える代わりに対価を得る契約のお仕事がある。原作でやってたチラシを通した召喚のアレだ。
ただしアレは人間界の縄張りがあってこその手段であり、冥界に暮らし地上に縄張りを持たない――もっとも、自己顕示欲の強さから滅多にいない――悪魔の場合は、自然と悪魔崇拝者の個人なり団体なりの儀式に応じて召喚される形となる。
まぁ、こんな話をしたからにはバールド・ルキフグスが召喚されたのだろうと賢明な皆々様にはお見通しの事だろう。正解だ。
「で、願い事は?」
「決まっている、力試しだ」
まぁ、問題が一つあって……いや、問題なんだろうか。原作を考えたらむしろ真っ当かもしれん。そんな悩みを持ち続ける昨今、皆様いかがお過ごしでベイベー。
「今日こそ俺が、このヴァーリ・ルシファーが領主を倒しその座を頂く!」
「はいはい、それじゃ契約書にサインな。内容は模擬戦、対価は……地域限定のカップ麺だそうだ」
「くっ、貴重な地上の品が……」
はい、
いうて領地って要は縄張りなわけだし、そこに住んでる人が召喚して契約する流れは正規なんよね。冥界で完結してる点が異質なだけで。
あとヴァーリの場合は混血なんで、成果にカウントされない可能性もある。原作だとイッセーがアザゼルに繰り返し呼び出されていた事にリアスがキレてたはずだ。アレはまた違う話か、そもそも契約できてなかったし。
まぁこれに関しては少なくとも混血悪魔だろうと堕天使総督よりは間違いなく人間寄りだし、女装して上目遣いでもすれば
あと前世っぽいのとガチ前世が女だから女装に躊躇いとかねぇのも強みか。いや、それはそれで女装癖の変態扱いされるのか? ギャスパーって上位互換がいるから大した事ないやろ(慢心)。
あと原作を見る限りチラシの記入は願いを叶えた後にアンケートの形で評価してもらうものだし、契約に関してもその際に決めるものだ。先に署名させるやり方はチラシ側でエラー吐きそうなもんだが、あるいは原作時間軸までに改版されていくのかもな。
「さて、それじゃ始めるか」
「行くぞアルビオン、カップラーメンの仇を取る!」
『えぇい、理由には物申したいが白龍皇が負け通しなのは我慢ならん。やるぞヴァーリ!』
「
『
鎧を纏い準備を完了させると、開戦の合図とばかりに巨大な魔力弾を撃ち出して来るヴァーリ。その陰に隠れながら接近してくるのが見えているので、こちらは鞭状にした魔力を振るって魔力弾ごとヴァーリの切断を狙う。
いやね、最近は悪魔向けアピールに悪魔らしい戦い方って事で魔力と体術をメインに組んでるんよ。
つーか房中術と自然成長だけかと思いきや、よくよく考えたら夢から夢へもフィードバックされるようになったんでスペックが完全に最上級の中位くらいに食い込んでる気がする。リゼヴィムとリリスのお墨付きだもんよ。
魔力鞭の扱い自体はダマ鞭をイメージすればいいんで慣れたもんだが、物が魔力そのものなんで最悪は腕や手首の動きを無視して思考コントロールできる。鞭の数を増やし先端を回転刃にして射撃も可能にすれば「ふはは怖かろう」もできるわけだ。
でもどうせなら浪漫を求めて鞭じゃなく糸にした方がいいだろうか?
ちな、例えば体が真っ二つはダンまち世界だと
『ヴァーリ!』
「問題ない!」
『
魔力鞭がヴァーリの魔力弾を切り裂くも、直後に響いた声で
しかし避けずに半減するのは予想外だった。負担はそれなりなはずだが、殻を破った感があるな。
おかげで勢いそのまま最短で距離を詰められて鞭の間合いじゃなくなっちまった。
「食らえっ!」
だが残念な事に勢い任せで直線的な、体当たりにも近いパンチ。手を添えて腕を反らしてやるだけで、体ごと明後日の方向に飛んでいく。
「まだだ!」
「ほォ」
と、そこで神器の翼から噴出する余剰魔力を使って器用に軌道を修正、そのままライダーキックじみた挙動で急降下してきた。勢いを殺しきれず訓練場の障壁に激突すると思ってたが、子供の成長は早いもんだ。
「だが直線的だって言ってンだろが」
「へぶぅ!?」
体を避けるだけでも地面に激突するだろうが、念には念を入れ相手の腕を掴み、ヴァーリが地面にボディプレスするような形に誘導する。
勢い自体は弱まったが、受け身を取れずに全身強打は痛かろうて。鎧があっても衝撃は内部にまで届いたはずだ。
「色々と応用できそうな戦い方には感心だ。一昔前までなら一撃もらってそのままペースを握られたかもな」
『今通じないのは悔しい限りだがな』
間違いなく歴代最強の白龍皇が……と嘆くアルビオンだが、こっちはこっちで超越者なんて枠を作られるイレギュラーと現魔王の一角に匹敵しそうな最強の女悪魔候補の合の子なんだぞ。才能自体は悪魔の上限近いんだよなぁ、おそらくは。むしろ片方が上限突破してるわけだし。
あとは単純に年齢差がな。まだまだ数年が大きいお年頃なのである。
「で? 一本勝負で満足したかよ?」
「そんなつれない事を言わないでくれ。まだまだやれるさ」
よろよろと立ち上がるヴァーリだが、その目は死んでいない。
こうして見ると混血に由来する再生能力の低さが響いてるな。悪魔には手軽な回復の術がないのも辛い点だ。
いやまぁ、この世界自体に即効性のある回復手段が少ないわけだが。フェニックスの涙を除いたら
アーシアも能力を徐々に……メキメキと伸ばしちゃいるが、
なんて考えてたらヴァーリが構えを取りながら、ゆっくりと息を整えていた。
少々時間を与えすぎたか。今下手に攻めたらカウンターが待ってるな。とりあえず相変わらずやる気に満ちてるのは高評価だ。
ま、もう少し焚き付けておくがな!
「それでこそだ、ヴァーリ。私に勝てたンなら、今日の昼飯は旭川風醤油ラーメンをご馳走してやろうじゃねーの」
その瞬間、ヴァーリの目が見開かれ、魔力が溢れ出した。うーん、チョロい。
「聞いたかアルビオンっ! 今なら『覇』の理にも手が届きそうだ!!」
『頼むから落ち着けヴァーリ! 麺類で「
そして始まるコント。気持ちは大変良く分かる。お労しやアルビオン上。長いな、アビ上でいいか。
つーか歴代の怨念とかイエスの祝福で消えてなかったか? あるいは怨念らしくしぶとさを発揮して戻ってきたんだろうか。
「時間稼ぎはもういいか? どっちにしろこっちから仕掛けるがな、っと」
細かな魔力弾を大量に撃ち出し、行動を制限する。
今のヴァーリはまだまだ成長途中で、体重は
つーかアタシの性悪具合は知られてるんで、見えにくい偽装が施された魔力弾が混じっている事は想像できるはずだ。まとめて吹き飛ばすしかないだろう。
「ちっ……!」
「ほォ、そうきたか」
だがそんな
まぁ、魔力を纏ってると言えばわかりやすいか。形状を円錐形にして傾斜で受け流すようにしている点に工夫が光る。
つーかこれ前にアタシが見せたやつだわ。ぐぬぬ、よくぞ覚えて再現できるまで仕上げた。
とはいえ、だ。相変わらず直線軌道なんだよなぁ。蛇行すると速度が落ちるし角度も変わって魔力弾の軌道と垂直に近くなれば流しきれんからしゃーないか。
「いや、ここでもう一手間するのがテメーよな」
「なっ……!?」
予想外は出される前の時点で潰すに限る。
突っ込んでくるヴァーリを待つのではなく、あえてこちらから距離を詰める。天才とはいえ慣れない魔力操作だ、纏う魔力は形状の維持に振ってる割合が多そうなんで安心して突っ込めるし、何かを仕掛けようとしてるならタイミングを外せるのは大きい。
いやまぁ育成を考えたら、プロレス的に引き出して受け止める戦い方ができりゃそれが最善なんだろうがな。でも痛いの嫌だし潰すんだわ。
意趣返しに同じく円錐形の魔力壁を作り出し、溝を掘り、回転させながら、足を突き出しライダーキックのポーズで突っ込む。
「ドリルは浪漫なンだよなァ!!」
『いかん、避けろヴァーリ!』
「う、うおおおおおおっ!?」
向こうは単純に体当たりだったんで、体を捻って軌道修正を試みる。
が、少し遅かった。お互いの突き出た魔力が角度は鋭角で済みながらも衝突し、凄まじい反発力となって弾かれる。
とはいえ、こちらは重力を味方につけた上から下へ、向こうは重力に逆らう下から上へ。つまりヴァーリは勢いを削がれたのでしばし対空し、アタシは地面に向かって着弾した。
そのままだと危うく地盤を貫通して地下都市まで抜けちまうんで、魔力を霧散させるじゃん?
自分を守るものがなくなるじゃん?
「アシクビヲクジキマシタワー」
と、いうわけだ。痛い。
「くっ、競り負けたはしたが、結果的にダメージは向こうの方が大きいようだな」
『結果的には、な。お前ならば勢いを半減しやり過ごす事もできたぞ』
「むっ……」
『まぁ、
向こうは向こうで熱血してるな。とりまいい感じに収まってるなら言う事はねぇか。
「それはそれとして隙だらけだ」
「『あ』」
悲しいけど、これって戦闘なのよね。
速さを追求した小型流線形魔力弾を六発連続で放ち、
ヴァーリは落下したが、すぐさま悪魔の翼を展開して態勢を立て直そうとする。だが、さっきの駄弁りよりも大きな隙をこちらが狙わないはずもなく。
「地面に直接は勘弁してやる」
「ぐああああっ!?」
『ヴァーリっ!?』
やった事は単純に思い切り回転をかけながら全力で蹴りつけただけだが、空中にアバドン家の『
ついでにレースゲームでありがちな加速パネルというか、加速領域も敷いてある。
ただでさえ回転して上下左右が目まぐるしく変わる中、景色や重力の向きまで変わり、更には時々急加速する。地味に辛い仕打ちだと愚行する次第。まぁ考えて実行してるのはアタシなんだが。
「しかし、なんだ。世の中にはショタの悲鳴からしか取れない栄養があるな」
いろんな距離や角度からフェードアウトしたりフェードインしたりなヴァーリの悲鳴を聞きながら、アタシは眼前で手を合わせて拝むのであった。
「うぅ、酷い目に遭った……視界がまだふらつくし、吐き気もする。気分が悪い……」
「まァ、滅多にできねェ経験だろ。いうて回転ってのは馬鹿にならンからな。三半規管は鍛えといて損はねェぞ」
『だからといっていきなりアレはどうなんだ』
最終的にヴァーリが意識を失い、アルビオンからギブアップ宣言が出されたので模擬戦は終了した。
なんだかんだ最後まで吐かなかったのは、普段から空飛べて三次元戦闘してる悪魔やドラゴンの強さなんかね。
「実戦で鎧着て地面に落とされてたら最悪は死ぬンだぞ、まだマシだ」
『む、ぅ……』
「アルビオン、いい。俺の未熟だ」
そんなヴァーリは見学してたアーシアに回復してもらいながら、殊勝な態度でアルビオンの抗議を止める。
ストイックなだけなんだが、どことなく器の大きさというか王の貫禄に見えなくもない。
「えっと、どうでしょう?」
「あぁ、すっかり治った。感謝する」
「良かった。後でラーメン作ってくださいね」
「約束しよう」
さっきメキメキ伸ばしてるって言ったが、アーシアの
これも多分イエスの祝福や鳩効果なんだろうなぁ。なんならこの世界だと
つーか三位一体フルコンプしてるんだよなぁ。乗算じゃなくべき乗で効果跳ねてそうなんだが。
元から傷の治るメカニズムを知らなくてもイメージで回復できるわけだし、
そんなわけで、最近アーシアは医学知識に手を出している最中だ。
狙いとしては
その上で現状を把握できれば経過についてもイメージしやすくなるんで、怪我や病気の知識も覚えようと頑張っている。将来は普通に医師免許取れるんじゃなかろうかってくらい熱心なんよね。子供の吸収力はすごい。
ちな、ラーメンを要求する辺りアーシアらしくないように思うかもしれんが、うちのアーシアは
そこに甘酸っぱい恋心の一つでもあれば青春なんだが、どっちかってーと姉弟な感じ。そしてアーシアは予約組。
医学知識を与えたおかげで房中術の際は非常に的確な判断と動作が期待できます(顔覆い)。
更には何故か鳩からもゴーサインが出てる謎。教えはどうなってんだ、教えは。
ちな、一応房中術も内容的には悪魔のお仕事扱いできる。年齢的にアウトなのと、夢魔や淫魔の領分を冒す事になりかねない上に、報告内容を両親が見る可能性が高いんで割とハードルが高い問題はあるが。
まーそれ以前に? 修行でこそあるがそれはそれとして関係を深め同意の上で気持ちを確かめ合いながら行為に及んでるんで? 仕事扱いする気にならんよね。つーかチラシの示す対価にイラついて燃やしそう。
いうて、もう少し地盤が固まったら両親やグレモリー当主夫妻にもその辺の話も報告せんとな。現時点でも隠されてるの知ったら不機嫌になるだろうから、逆にどんだけ遅らせても良い気がしてるが。
いっそ子供が生まれた後のが丸く収まりそうですらある。子は鎹というか、グレモリーの血なら孫やひ孫には弱かろう。なおグレイフィア。
悪魔の子供ができる率に関してはどうとでもなるから焦りもないが、だからこそ若い内に産んでおきたい女性陣への理解も納得もある。若い以前に幼い子は危険が高まるんで勘弁してもらうが。
つーかね、周りは悪魔が妊娠しにくいなら子供が欲しくなったら種族変更薬で人間になれば解決とか真顔で言ってくるんよ。そんで生まれた後で子供に改めて種族変更薬使えば良い、とも。
どこかに倫理観を落としてきた気もするが、それを指摘したらリリやエイジャからアタシの影響だって総ツッコミされたよね。解せぬ。