「随分とご機嫌ですね、お姉ちゃん」
「まァな。成功しても失敗してもあっちの風通しは良くなって、こっちとしちゃ現状より悪くなる事がねェ。そりゃ機嫌だって良くもなる」
「なるほど」
アーシア魔改造計画及び天岩戸作戦から数ヶ月が経過していた。途中で年も年度もまたぎ誕生日を過ぎて年齢も加算された現在、各神話勢力や聖書勢力内の協力者と
最近は各神話体系との交流も活発化してて、主な論点としては未発現を含む
こっちから
大きな成果なんだが、異教の神々や
まぁこっそり探し当てて確保してあったダンまち世界由来の
異世界の証明は危険もあるが、概念がある時点でいつかは誰かが辿り着くだろう。なら、人類の歴史を例に新天地を目指す場合は侵略目的の可能性が高いと警戒させておく。なお
反応としては聖書勢力じゃなくうちが主導してたら成し遂げてたってふんぞり返りが大半だったが、異世界の脅威と戦力化に関しての理解自体は得られた。
この感じだと逆に侵略してやろうって裏でこそこそする勢力もいるんだろうが、多分だけどそれって今更だと思うんだよ。あるとわかってから探すパターンは少数だろうし、元から異世界へのアプローチを持ってるわけじゃないならその方法に辿り着くまでに何十年は必要だろうし。原作前に実現できないならどうでもいい。
なんだかんだ信仰は力になる関係から人間と完全に縁切りした神話勢力ってないっぽいし、人類の脆弱性に思うところはあるのだろう。自衛するにも力が必要ってのは当たり前なんよ。なお
だが、だからこそ余計に無差別な侵略をしてくる
いうて鳩も責任は重いけど、この世界だと大戦犯は何もしてない
むしろエラーが出なかったら収支計算しないまま天使増やしまくってリソース不足で仲良く餓死みたいなアホやらかして、フリーになったシステムを巡り神話大戦が勃発したのかもしれん。この辺は鳩に尋ねてもはぐらかされるんだわ。
ま、幸いにも開発できた後遺症もなく安全に
少なくとも表向きには、ルキフグス領を単独勢力と認めなかったり完全に敵対する事を宣言していたりな神話勢力はいなくなった。滅ぼしたとかじゃないぞ、説得して納得してもらえたって事だ。
ついでに
だからこそ――原作よりも少し早いが――内輪揉めでしかない癖に全世界を巻き込む
特に教会の非人道的行為を見てすらいなさそうな引きこもりと、
原作ではコカビエルのやらかしをきっかけに状況整理がてらトップ会談からの和平を結ぼうとしたところにテロリストが襲撃しかも独自勢力を名乗っちゃったもんだから、逆にわかりやすい敵を前にして結束を固めちゃった感じはあった。
今回はそれを参考にして、いがみ合ってるご近所さん同士であっても手を取り合わなきゃ生き残れない状況を作り出して、なし崩しに和平へ雪崩込んでもらう見込みだ。
ちな、そのやり方を聞かされていたアザゼルは顔を青くして絶対に和平を成立させると意気込んでいた。ウケる。
「ですが、土壇場で各神話から裏切られたりしませんかね?」
こちらが浮足立ってるように見えたのか、リリがそんな心配事を口にする。
現実的に起きうる事態の中では確率が高そうな内容だが、一応の対策はしてある。そもそもの確率が非常に低い……はず。なんか着々とフラグ立ってる気がしなくもないな?
「別に神々が乗り込んでくる予定はねェし、提出物も事前に検閲するから防止できると信じたいところだな。仮に裏で結託されたら……まァ、金の卵を産むガチョウをシメたアホが次もやらかさンよう結託してない勢力総出で根絶やしにして敵討ちしてくれンだろ」
「うーん、後ろ向き。リリとしてはそこはかとなく不安です」
リリの懸念はもっともな話で、各勢力はルキフグス領を介して交流を持っている。各神話の上位陣が手を組めば聖書勢力のトップが集まる会場に
ただまぁ力押しなら別に天界と冥界に宣戦布告なり奇襲なりで真正面から各個撃破どころか三面作戦しても問題ないし、わざわざ会談襲撃なんて周囲に大義名分を与える弱味を握らせるやり方を選ぶ意味が薄いと思う。
消耗なしで主力に当たれる機会って言っても、勢力単位で見たら風前の灯でしかない聖書勢力の一部を討ち取る代わりに自分達が周りから囲まれて叩かれるとかアホらしい真似せんだろ。
他にも理由はある。
「鬼灯様や立川の二人が存在してる世界なら全体的に暴力性が薄まって武力行使を思い留まると思うンだがなー。原作の濃密すぎる事件の数々が起きてねェおかげもあってかハーデス様が和平に賛成どころかを急かすくらいだし」
何より大きいのが
そのおかげか結局この世界における眠りの病は脳卒中の魔力版でしかないしな。いや乱暴な説明だし割と深刻な事態に思えるが、悪魔ぼでーにとっては詰まりを解消したらあっさり目覚める程度でしかないのはうちの
この世界は、もし
ところでアレは瘴気が酸性だから中和してるのか、それとも表面に浮き出た瘴気を研磨して剥がしてるのか。謎だ。
「つーか私は別に現場まで出向きはしねェからな」
「え?」
「何しろサーゼクスの息子って立場は否定できンからな、中立を宣言しても信じられるか微妙だろ。各神話からのメッセージや聖書勢力へ提示できるメリットの説明はアザゼルに代行してもらうさ。一応、質疑応答用に通信用の魔道具も渡しておくが」
ぶっちゃけリリの心配は会談襲撃に巻き込まれてアタシが死ぬパターンだろうしな。憂いは取り除いておこう。
アザゼルというか堕天使には
天界に見せる札はシステムの修復に関する技術のチラ見せ。
鳩の記憶頼りにシステムの中身を再現して解析に挑んだ結果、天使を生み出す機能の復活は目処が立ったんよ。
和平が成立したら転生天使が実装されるかもしれんが、それとは別に純血というか純正の天使は欲しいだろうからな。需要はあると信じたい。
ちな、内容的には全く関係ない機能の記述から変数引っ張ってきてるせいで複雑化してて、無差別ばら撒きってエラーが起きてる
見せる分はわざと期間ごとの天使誕生数を制限させておくが、そもそもミカエルのアクセス権限が弱くてどうにもならんっぽいから意味は薄いかもな。
逆に
悪魔勢力には眠りの病の治療に関する技術のチラ見せ。個人情報は伏せて
つーか魔力詰まりなんぞは現ベルゼブブのアジュカが本気どころか片手間で取り組めば解析して何とでもできそうなんだが。例の『
眠りの病は古い悪魔ほど発症しやすいから、現魔王の存在を認めないスタンスで完全敵対している旧魔王派はまだしも、血を保つ目的の大王派を懐柔するのには使えそうなんよね。
現魔王政権がいつまでも解決できない旧魔王派も、暴れてるところにリゼヴィムとリリスをお出しすれば憤死しそうなところあるし。つーかこの二人を放てば旧魔王派内部で新興宗教みたいなの立ち上げて尊い血を生贄に捧げる儀式とか流行させて滅ぼしそう。
「あぁ、リモートで必要に応じて参加する形なんですね?」
「まァそこはさすがに責任があるからな。が、しがらみだなんだで動けない情けなさを存分に発揮してようと仮にも魔王だ、所属する勢力の行先を決めるくらいメインは大人にやってもらわねェとなァ」
真面目な場面では真面目にするとは思うが、全部任せたら斜め上にかっ飛んでいきそうなところあるからなぁ。
アザゼルは多分サーゼクスへ
そういやそろそろミリキャス生まれてもおかしくないな。会談中に通信きたら聞いてみるのもいいかもな。
「……もし、そこで間違えたら?」
「ルキフグス領は悪魔勢力から本格的に独立して、混乱期の冥界で領地を拡大しつつ各神話の死後の世界と提携して人員を確保、どうにかこうにか運営していくかな」
これは予め各神話体系に宣言している事でもある。現時点でも既に半独立を保ってるに等しいし、だからこそ各神話も話を聞く態勢になってくれた面がある。
「超越者の後ろ盾がなくなるのは怖いですが、そうならないために和平が結ばれるよう根回しを重点的に行うわけですね」
「そゆこと。天使の過激派や堕天使の末端に多そうな勘違い連中と後は旧魔王派なんかの武力蜂起はどうやったって起きるだろうがな。それに関してはいい機会だから積極的に介入して素材を確保するつもり」
冥界の悪魔領に属する以上は、そして現ルシファーである魔王サーゼクスの息子って立場がある以上は、バールド・ルキフグスの背後にその影を見る者は少なくない……むしろほぼ全員が意識はしているだろう。どこまで危険視するかはさておき。
仮にそんなサーゼクスが打倒された場合、その庇護を失ったバールド個人にどれだけの価値――尊重する必要性を感じるかについては、勢力というよりも個人の差が大きいだろう。
直にやり取りした事のない連中からすれば単なる子供にしか見えんだろうし、やり取りしたからこそ単なる子供でしかないと確信した老獪な連中も多そうなのは頭が痛い問題ではある。
前者は所詮は子供と侮り力で屈服させようとするか、懐柔しようとするか、あるいは提供した技術等も悪魔陣営あってのものと考えて無力な子供に用はないと縁切りするもあり得るか。ただまぁ先走るような連中は少数派だから多数派に囲まれてボコされると思うんで気にしなくてもいい。
懐柔の場合は上手く利用しようと考えて表向きは友好的な態度で搾取するだろうから、今と大して変わらん生活を送れそう。技術の発達速度で打っ千切る限りにおいては放置安定と思ってくれないものか。
ただまぁ複数勢力で協調路線を取ってパイの切り分けみたいな介入されたら割と詰みなんよね。そのときは割り切って原作時点の『
ゲリラ戦に移行する際は狙う勢力を絞って、狙われない勢力との仲を悪化させて、ぶつかり合わせ弱ったら横から殴りつける。そうやって敵性人外勢力を綺麗にした後で、改めて冥界開拓を再開しよう。
それとは無関係に暴走しそうな三すくみの恥は問答無用で刈り取るが吉よな。