「誰だっ! って……子供?」
「はて、鏡はどこだったかな」
『ゴジッポ・ヒャッポ!』
そこにいたのは猫頭の人間って感じの見た目をした悪魔だった。少年少女サイズな上にローブっぽく布を纏ってるせいで猫なのか虎なのか獅子なのか、あるいは豹や別のネコ科なのか判別ができん。ついでに性別もわからん。でも尻尾が膨れて逆立ってるのはキュート。
模様がないから豹やチーターではなさそうだ。72柱の悪魔として考えるならライオンヘッドが多数いるな。女や子供ならたてがみがなくても不自然ではない。とりま身分が高かったら無礼を働いた弱みができるし、やや目上想定で接しておくか。
「それで、名前をお尋ねしても?」
「……俺達を追って来たわけじゃないんだな?」
おうリリが質問してんだろうが質問に質問を返してねーで答えろや、殺すぞ。思った時点で済ませてなきゃ駄目らしいがまだ五歳なんで駄目駄目なままでも許してアモーレ。
アモーレって愛だから口にしたら悪魔はダメージ受けるんかな? いや、それはラハール殿下くらいのもんか。事実グレモリー家は情愛が深い設定だし、悪魔違いだぁな。
……近い将来この世界にやって来たりしないだろうか。ちょっとゴードンとかカーチスいないか確認しとかんと。ディスガイアも頭文字はDなんだよ、交じる可能性は十分あるんだわ。
いや、待てよ、つまりヴァルバトーゼ閣下に謁見する機会が得られるかもって事!? 鰯用意しなきゃ。冥界に海がない以上は濃いめの塩湖を生み出して還流させて再現する事になるんだろうな。どうせなら鮪や鰻の養殖とかもやってみたくもある。生態知らんし勉強から始めなきゃならんが。
しかし、そうか。HSDDのDD部分は確かというか恐らくドラゴンとデビル……つまりこうだ。ハイスクールドラゴンボール×ディスガイア。あかん、死ねる。逆に何かの間違いで主人公が両方の世界を生き延びた異世界帰りならこの上なく頼もしいんだが。
ドラゴンボールなんて戦闘力インフレの本家やぞ。概念バトルに突っ込んでも素の暴力で立ち向かえる連中やぞ。チャオズの超能力と一緒で頓知みてぇな概念系の能力なんざ常識を吹き飛ばすような強い奴らには効かねぇんだよ。
むしろ概念バトルでも破壊神が破壊したり全王様が消えちゃえで終わりやん。知名度と歴史に加えて原作者が故人となりある種の聖域と化した補正を考えたら、世界を好き勝手できる上位存在連中で比較してもより広く大きな可能性を内包したほぼ最上位の存在になるだろうし。ZEROとゲッペラーの前に心折れた闇の帝王みたいになるわ。
その意味じゃダイナミックなあの作品群も相当に強固な聖域だよなぁ。まぁこの世界に繋がる事はない。と、思いたい。なお虚無戦記。
まぁ、この世界だとドラグ・ソボールとかダンガムだから回避されるんだろうが。個人的にこれ系のパチられ方はややこしい事この上なくて好きじゃない。今回みたいに元ネタが有名なら打ち消せるが、似た要素を持つ作品は触れた順番によって別作品のパクリ呼ばわりされて面倒な話になるのはオタクあるあるだろうに。多様性の時代に合ってるのかねぇのかわからんわ。
いや待て、そういやHSDDの一巻って刊行されたのいつだ? 物心ついた頃には書店に並んでたのは確認してたけど手に取った事は無かったんよな、リアルバウトな方のハイスクールと混ざってる程度には興味無かった。一昔前の日本じゃリスペクトやオマージュに寛容だった事はフリントロック及びフリントとマッド・フォレストの関係からもわかるし。なお訴えるのが面倒だからスルーした可能性。ちちびんたリカとかいうパワーワードの出典パロディウスなんて名前からして隠す気がねぇんだぞ。あれは自産自消だったが……豚天使の武装シルバーホークでマンボウはアレだし。
まぁ権利関係は実際に面倒な話だし、面倒は可能な限り避けたいものでもある。それでも戦わないと付け込まれるだろうが、戦費がなけりゃ回収以前の問題だしな。二次創作自体がグレーよりのブラックで権利者から止めろ言われたら止めなきゃあかん行為だし。その場合は忖度なくファンアートすら禁止とかになって広まらず人気も出せない可能性もあるから難しいのよね。その意味じゃ乱立するラノベや漫画はなんで作者が宣伝を頑張らなきゃないんだよ作品書かせろよ。つーかそれで両立できるなら出版社なんぞ通さずに同人活動しつつ税理士とか雇う方が稼げるっての。
で、何の話だったっけ?
「そうですね。こちらの方がつい最近ルキフグスの名を継いだバールド様です」
「……フーガ・マルバスだ、です。こっちは妹のルオ・マルバス」
そうだったそうだった、はぐれ悪魔の身元確認な。
って純血貴族やないかーい!
なんで『
それを考慮したら戦乱が遠のいたせいで実績積める場が
まぁどちらにせよ純血悪魔に『
しかしマルバスってレメゲトン――ゴエティアで五番目に上げられる悪魔なんだが。偉大な順か有名な順か好みの順かは知らんが、上から五番目だぞ、七十二の内の。断絶したとかなったら激震走らんか?
つーかバアル、アガレスと共にルキフグス――ルキフゲ・ロフォカレの部下扱いされてるんじゃなかったか。バアルは大王派、アガレスは中立で上手く立ち回ってるのにマルバスは存在を聞かないな。この分だと没落自体はして久しいかも。
しかしルキフグスの配下扱いがこの世界でも通じるなら旧魔王派閥で宗家も分家も討たれた可能性は高いし、残された子供も上司なルキフグスのユーくん経由で実験やってる連中に売られたパターンもあるのか。そんでそこから逃げて……来られるもんかね、子供二人が?
しかもこうして新しくルキフグスを名乗り始めた不届き者に発見されたときた。偶然にしちゃデキすぎなんだが、いうてユーくんが支援するとも思えんのよな。とばっちりの言いがかりだが、こちとら神聖視する姉を汚した男の息子だぞ。殺しに来るならまだ理解できるんだが。
まぁそこは後だな。実は暗殺者ってのも視野に入れとくだけだ。とりま明確に格上ではないし、言葉遣いは気持ちフランクにしとくか。
「不勉強で申し訳ないが、マルバスというのは宗家かな? それとも分家?」
「分家だ、です。両親が事故でいなくなって、引き取られた先で変な実験に使われそうだったから……」
「なるほど」
変な実験って事はネビロス関係かね。おのれ少将ごときが。こっちは宰相やぞ。しかも両親が事故とか事実上の故意を略したやつだろそれ。黒おじさんめ、よもや
だからって東京受胎も勘弁な。多分秒でミルたんがコトワリに開眼して魔法少女の世界が生まれちまうぞ。
でも半悪魔になったと思ったらすぐ魔法少女にされる人修羅推定間薙シンとか、予定と違う流れに困惑する閣下とかは個人的な需要しかない。誰か書いて下さい。きっとピクシーも大満足に違いないから。
しかし違法っぽい実験の被検体となれば、問題は解決したも同然だな。表向きの戸籍を調べて……ちゃんと管理してるよな?
本人達の戸籍なんぞルキフグス領で捏造すれば問題ないが、家が断絶したなら領地は冥界悪魔政府の管轄になってるだろうし、それまでの台帳とかもあるはずよな。そもそもその領地で働いてた悪魔は引き続き新しい領主や代行の下で仕事するだろうし。暗殺されてるか取り込まれてるかしてる可能性高そうだが。実験してる側に漏れても面倒だし、資産の相続は諦めた方が良いか。
しかしこういうのがあるからなぁ。家庭教師は段階が達してない判定でもっと基礎的な部分だったし、実際に足りてない部分だから先を促すわけにもいかんかったのが痛い。
少ない機会でグレモリーのご当主様や魔王様に他家の情報をせがんでも、子供向けに概要とか昔話の面白エピソードばっかりで真面目な方面の最新情報は全く入って来なかったのも痛い。
そんなんでよく独立しようとしたなって意見にはごもっともと返すしかねぇわ。痛感してる。学習用の教材は持たされてるから後でじっくり読もう。ちょうど同程度と思われる仲間も増えたし、教え合い学び合いといこうじゃねーの。
『はぐれ悪魔としての届け出はねーでやんす。当然、手配されてねーんで賞金もなし』
「朗報だな。さて、君達にとっては朗報だな。ついでにこのまま逃亡生活を続けるか、ルキフグスの庇護下に入るか、選んでくれ」
「そう言って、どっちを選んでも
「そう言いたくなるのもわかる。だが、仮に君達を連中に突き出したところで、だ。感謝もしなければ報酬だって出さないだろうね。むしろ君達の存在を知った時点で自分達の計画まで知られたと思い込み、独立したばかりの弱小勢力であるこちらを消しに来る可能性の方が高い」
「それは……そう、かも」
あら、妹ちゃん初台詞。そして幼いながらにこれ系の流れに理解を示すとか有望株では。違法な人体実験で使い潰すとか間抜けに過ぎるぞ。価値観の違う相手だからしゃーないとはいえ。
「けど、それならそれであんたの部下になってもあいつらから守ってくれる保証はないだろ」
うーん、正論。見た目通りの子供だし、後ろ暗い実験する連中に対抗できる力があるとは思えんよなぁ。
「まぁ、そこは一つ裏技があってね。それを使えば向こうは君達を追う理由を失い、諦めるしかなくなるのさ」
「そんな都合のいい事があるわけ……」
「姉さん」
……姉だったのか。一人称が俺で、見た目はケモ度の高めな二足直立するにゃんこだし、少女と幼女の境目くらいの背恰好、更にはありがちなローブを身にまとっててわからんのよ。
「この人達は、信じてもいいと思う」
「ルーたん……」
おっとここでシスコン疑惑。やはりHSDDの登場人物だったか*1。シリアスぶっ飛んだけどまぁいいか。おかげで人じゃなく悪魔ですってツッコミを逃した。やるな、姉妹揃って。