「いやはや、今度こそ届くと思ったんだがな」
「実際紙一重だぞ。聖槍の
「そう言ってもらえると嬉しくはあるね」
それは普段と変わらない、曹操と悪魔のお仕事で模擬戦をした後の事だった。
「バールド、次は俺の番だ」
「あいよー」
続いてヴァーリが挑もうと拳を突き出してくるのを軽く流しながら契約書の内容を確認していると、前触れもなく強大な気配を放つ存在が現れた。
押さえる気がないのか、ルキフグス領の首都なら端と端にいても感知できそうな程の……なんか反射的にえづきそうな奇妙なオーラを纏っている。
「アルビオン、久しい」
『その気配……オーフィスか』
ソイツはヴァーリではなくアルビオンを指名し、そしてアルビオンも応える。
オーフィスかーそっかーマジかよ。でも二次創作あるあるだから驚きは少ないよね。ぶっちゃけどっかで来るとは思ってた。とりあえず生ハムはぶん殴る。
オーフィスと呼ばれ、強大さには似つかわしくもない軽い――あるいは他者を敵と認めるまでもない圧倒的な強さから出せる警戒心の薄い――調子で声を発したのは、老人だった。
そう、老人である。原作だと幼女の姿かつ痴女な格好だったはずだが、アザゼルの台詞で最後に見たときは老人の姿だったとか言ってたか。結局、幼女姿の原因ってなんだったのかね?
「――!
「夢幻と並び間違いなく世界最強と言われる、かの無限か!」
さておき、緊張が走ったのは確かなわけで。曹操もヴァーリも降って湧いた機会に昂ってやがる。えぇいこのバトルマニア共め。
『用件はなんだ? まさか世間話をしに来たわけでもあるまい』
「新しい白龍皇、見極めに来た」
『……それで?』
「混血なのは驚いた」
『そうか……それだけか?』
「?」
警戒しながらも対等な感じに会話をするアルビオンだったが、オーフィスは淡々と短く返す。
やや困惑しながらも問うアルビオンに対し、ついには意図がわからないとばかりに首を傾げる始末。リアクションが人間風なのはなんでなんだ。あるいは鳥か?
「どうやら世間話だったみてェだァな」
『おぉん……』
ここにシリアスブレイクは完了した。早い話、白龍皇の代替わりを確認しに来ただけらしい。まぁ、色んな意味で敵じゃない以上はわざわざ危険視したり敵意持ったりとかせんか。
どこから情報を得たのかは気になるが、第三者が介入すると機嫌を損ねそうでもある。動けん。
具現化せず宝玉越しに対応していたアルビオンだったが、おそらくorzに近いポーズで脱力しているんじゃなかろうか。これはもう当代の二天龍はどんな世界線でも不憫属性がセットなのかもしれんね。
「ドライグは気配がわからない。アルビオン、何かわかる?」
『まだ起きてないのだろう。私がこうしている以上、宿主は得ているはずだが』
まーそもそも日常生活の中で
「ドライグ、寝てる?」
『そういう事だ』
「そういえば……バールドは宿主候補を見に行ったんだろう? まだ発現していない年相応な一般家庭の人間だったとか」
「あれ、言ってたか?」
「俺にとっては宿命のライバルだ、忘れないさ」
参ったな、全く記憶にございません。仮に言ったとして、アルビオンが話題に出さない配慮を台無しにしたんじゃなかろうか。
つーなヴァーリって割と天然よな。戦闘が絡まんと頭の回転も鈍くなるというか、なんでも戦闘に関連させて考えてる感じ。今回もミスったんじゃなくライバルを早期覚醒させてバトルしたい欲の表れだったりしそう。
「ドライグ、どこ」
なんて事を考えてたらオーフィスが間近に迫ってきた。老人姿なのでとても心臓に悪い。いや別に幼女姿だとしても驚かなかったわけじゃないが。
つーかコイツの距離感どうなってんだ。経験則か? 世界で二番目に強い存在が迫ってくるのは普通に命の危機を感じるし誤魔化してもバレたら殺されそうだし、素直に喋っちまう場合が多かったとかはありそう。そもそも学習時は人間形態とか取ってなかった可能性も高いし。
そう考えると、学習能力や思考能力はそれなりにあるのか。何を考えてるのかって部分が不明瞭だから相手からすれば関わり合いになりたくない感は強いし気づけるか微妙なところだが。まさか単に静かな場所へ帰りたいどけとか思わんよなぁ。そのために必要な条件がグレートレッド撃退とかいうクソ難易度なのは絶望的すぎて笑うしかないが。
しかしオーフィスの性格を考えると強さが広まるきっかけって馬鹿が喧嘩売って返り討ちに遭ったからだよな。力加減とか概念すら知らない無垢な強者がとりあえず振るった力で巻き込み被害も大きかったのかねぇ。
ワンチャン、元の場所と比べてうるさすぎたから消し飛ばして静かになったとかやらかした可能性もあるが。そこからわらわら集まってきて面倒になったから逃げて静寂を求めさすらう系?
「あー、思い出したら連絡するから連絡先だけ教えてくれ」
とりあえず下手に紹介して駒王町が更地になっても困るし、ミルたんに影響されて魔法少女になられても困る。
つーかここで居場所を喋ったらヴァーリが突撃しかねない。知ってたらこっそり抜け出してるはずだしまだ知らんやろ。
「連絡先……?」
「赤龍帝の居場所を思い出してもテメーの居場所がわからねェと教えようがねェだろ」
「……おぉ」
連絡先を聞いたら首を傾げやがったぞコイツ。いや確かに文明とかけ離れた生活してそうだが。
そういや初代ルシファーも携帯電話やらノートPCやら不要なタイプだったか。でも向こうは用事があるなら会いに行けば良い系の陽キャなんだよなぁ。いや待て、こっちもアルビオンの気配を頼りに会いに来てたわ。
まじかよ引きこもりコミュ障なのに陽キャ区分なのかオーフィス。単に文明の利器を知らないだけだろうなとは思うが。携帯電話とかぶっ壊しそうよね。
「なら、我ここにいる」
「なンて?」
聞き間違いかな? オーフィスがとんでもない発言をしたような。
「お前が思い出すまでここにいる。これなら居場所がわかる」
「oh...」
『迂闊だったな。こうなったら梃子でも動かないぞ』
聞き間違いじゃなかったかー。原作開始まで何年だっけ?
「オーフィスほどの存在になると百年も千年も誤差なのでは?」
「いうてまァ、急かしてはくるンだろうな。しゃーない。このまま
曹操の疑問もある意味では正しいが、二天龍が
今回はその活動時期を狙ってやって来たのだから、矢のような催促がされる可能性は決して低くない。つまり結果を出さないままいるとへそを曲げて大きな被害を被る事になりかねないのだ。
幸いにもイッセーの両親は、あるがままを受け入れる度量のある人間だ。息子の状況や状態について真剣に話をすれば、死なないために死にそうな目に遭う事態も許容してくれるんでねーかな、知らんけど。
『ただの人間どころか才能なしと評価されておきながら強制的に訓練か……憐れだな』
「いいじゃないかアルビオン。俺としても歴代最強の白龍皇を目指してるんだ、その宿命の相手が雑魚では面白くない。その点、多少だろうとバールドが指導するなら仕上がりに期待ができる」
『まぁ、ヴァーリの成長を考えれば誤差だとは思うがな』
ヴァーリからのハードルが上がっちまったんだが? つい最近になって
ある意味、今イッセーがスタートを切れば原作に近い構図かもしれんのか。むしろ若さの分だけ成長ボーナスが……いや、奴の強みは煩悩だから逆に爆発力は低くなるのか。
そう考えればサーゼクス経由で情報を売るのもありか。
いや、ここは発想の転換だ。原作あんまり守る気ないからこその暴挙に出るぞ。
「……どうせなら『
「『「は?」』」
無口無表情に首を傾げるオーフィス以外の声が揃う。
「ぶっちゃけアルビオン、赤龍帝との決着とヴァーリがどこまで強くなるかのどっちが興味勝つよ?」
『……後者だな。後にも先にもルシファー混じりの所有者など現れんだろう』
「ならヴァーリは? 言っちゃ悪いが他人の決めた宿命だのライバルだのの浪漫と無限を下す強さとどっちが魅力的に映る?」
「どっちもだが?」
「えぇい強欲ドラゴン悪魔め」
二択を突きつけてどちらかしか選べないよう誘導してアルビオンの説得ができたから、この方向で進めようと考えていたら、ヴァーリは当たり前な顔で
ルキフグス領初等教育の勝利である。領主としては誇らしいね。ちくせう。
「まァ、赤龍帝ってのはドライグの事で、
「俺だって
「決まりだな。頼んだぞバールド」
諦めずに説得を続けたら、見事に曹操から論破された。そして
そんなわけでやって来ました駒王町。私、バールド・ルキフグスは早速ミルたんに捕捉されております。
助けて。
「おかげさまでミルたんも魔法少女の仲間入りができましたにょ」
「それはよかったです。おめでとうございます」
「ありがとうございますにょ」
恐ろしい事に、ミルたんはアタシの教えたやり方で見事に夢を叶えたらしい。周囲を取り囲む屈強な男達はミルたんが魔法少女になる過程で
「何か副作用ですとか問題は起きていませんか?」
「悪魔さんのくれた通信道具が壊れちゃったにょ」
なるほど、一度も連絡が来なかったのは
「あー、お持ちなら回収しますよ。魔法少女になる願いは叶った事ですし、自分で言うのもなんですが悪魔との連絡手段は持たない方が健全かと」
「そういう事ならお返しするにょ。これが身代わりになってくれなかったらミルたんは白面ちゃんに負けてたかもしれないにょ」
「……そうですか、お役に立てたのなら幸いです」
どこの白面だよ。真っ先に思い浮かぶのはちゃん付けするようなかわいいもんじゃねーぞ。あの二人組はどうした。くそっ、詳しく聞いてみたいが、聞いたら後悔する予感しかしない。
つーかミルたんは原作のオカルト案件とは深く関わってない一般人ではあるが、原作でも当たり前に異世界へ行き来してるっぽいんだよな。
あるいはこの世界に存在する秘境とかの可能性もあるが、悪魔とかいう北極から南極までどこにでもいそうな生命体が存在するからな。配管工や亀のような実力者なら隠れて過ごせるとは考えにくい。
でも河童のサラマンダー富田とかメタトロンが弟子入してた伊賀忍とか、在野の実力者は点在する世界でもあるんだよな。悪魔の眼が節穴な可能性は論じないようにしておくのが吉か。
「これですにょ」
「えぇ、念のためですが中身を改めさせて頂きます」
そんなわけでミルたんから
巾着袋に入っているらしいので開けて見ると、ものの見事に粉々……というか、砂? 何が起きてこうなったんだ、怖っ。
「……これでは修理も難しかったでしょうね。確かに返却して頂きました」
何が一番怖いって、鑑定結果が『壊れた通信機』なんだよ。いや判別できてる時点ですげぇんだよ。それは認める。でも壊れたってレベルじゃねーぞ。マジで何があったし。
「それではまたいつか。縁があれば会う事もあるでしょう」
「にょ」
こうして魔法少女ミルたん御一行様との圧迫感に満ちた邂逅が終わった。
回収した通信機はクラフトチートであっさり復元できたが、その前の調査でクラフトチート付属の鑑定が匙を投げる未知の物質が発見されてた。
おそらくは異世界由来なわけで、厄ネタではある。量が少なかったのでそのままでは加工も何もできなかったのが、不幸中の幸いかもしれんね。
「それで、ドライグは?」
「………………留守だった」
「そう……なら仕方ない」
うん、ミルたんショックが大きすぎて本題のイッセーを完全に忘れてたっていうね。いやー失敗、失敗。
『お前に人の心はないのか』
「バールドは悪魔だぞ?」
おっとアルビオンが誤魔化しを指摘しようとか思ってないか。無粋なヤツめ。こんなときは勢いに任せて打ち切るのが一番だな。
『いや、そういう問題では』
「待て、次回!」
これに限る。