今度こそ赤龍帝を覚醒させるべく、再び舞い降りた駒王町。
前回説明を忘れたが、クレーリアの件で土地の管理者はバアル家に戻ってる。常駐してるのは分家バアルらしいが、特に挨拶とかはする気がない。
ゼグラム程の器量を感じないのは当然として、当たり前な顔して賄賂を要求しそうだし、その割に融通してもらえるわけでもないし、まぁバラすメリットはないよねって。一応バレたデメリットはあるが、模範的なお貴族様にバレる可能性は極端に低い。エルムドア伯爵から源氏装備を盗む確率くらい。
ちな、クレーリアと眷属は
なお本物はルキフグス領でケーキ屋さんやってる。紫藤イリナのママさんといい、パンやらケーキやら焼くのが好きなんかねプロテスタントの妻は。ジャンヌも焼かれたしプロテスタントや妻に限らんか。
来月には八重垣との結婚式だからなぁ。三年か四年か同棲して大丈夫そうなのを確認してのゴーサイン。安心感あるよな。そんで早いもんだ。
話を戻して、潜入任務である。こんなとき役に立つのが種族変更薬で、一般人に扮しての潜入を試みる。
ぶっちゃけ前回ミルたんに捕まったときは悪魔のままだったって大ガバやらかしてたけど、問い合わせやクレームは来なかった。一応、念のためだ。ミルたんに偽装が通じるかのテストだなんて、そんなそんな。
「キャアアア!!」
「イヤッホー!」
「出たわね変態!」
「女の敵!」
「白、ピンク、白……紫! レアものだぜ!」
「もう嫌ぁぁぁぁ!」
えー、あちらに見えますのが今回の標的、未覚醒ではありますが当代の赤龍帝になります。ドライグもアルビオンも泣いていい。
つーか原作だとスカートめくりとかしてたか? おっぱいのイメージしかねぇわ。あ、その関係で裸もか。
「死ねえええ!」
「ぎゃああああ!? 何すんだ刃物は危ねーだろ!」
「問答無用!」
「切り落としたら少しは大人しくなるでしょ!」
「ひいいいい!?」
しかし異能生存体の近似値くらいには当たらんな。主人公補正ってやつか?
とりま、用事があるんで乳繰り合いは終わりにしてもらわんとな。
「嘘、いない!?」
「またしても……おのれ!」
「次は見かけた時点で仕留めるわよ」
標的を見失った女性陣は殺気立ったままで、言葉とは裏腹に犯人を捜し回っている。まぁ気持ちはわかる。
「何をやらかせばこンだけ嫌われンだよ」
このままだと色んな意味で危険だし、かといって空を飛んだり人外性能を見せて暴れられるのも困る。
しゃーない。一度イッセーを気絶させて運ぶか。倉庫に収納するのは未覚醒とはいえ赤龍帝だし弾かれそうよな。仮に収納できたとして気絶しなかった場合は倉庫内を歩き回って脅威に殺されかねないから試すに試せん。
そんなわけで一当てして
「と、いうわけでして」
「はぁ……」
「うちの子がそんな大それたものを……」
「信じられない話だとは思います。ですが関係者であっても認識阻害や記憶処理をされるので、知られないまま闇に葬られてしまうのです」
数時間後、夕飯に合わせて当人を含めた四者面談。
待ち時間が暇だったんで料理を手伝ったりしたが、主婦の手際ってすげーよな。計量なしの目分量なのにおおよそ味が整ってる。
そんで裏側の説明を軽くしたが、非日常過ぎて持て余しているようだった。要約するとイッセーの命が危険で済むんだが、その理由が
「……」
当のイッセーは呆然と自分の手を眺めていた。意外って言ったらアレだが、強い力に対する責任感やプレッシャーを感じてるんだろうか。
「ご両親の前で大変失礼な話ではありますが、お子様の素行は決して良いとは言えません。特に女性への配慮が欠けた言動は悪い意味で有名な話として誰もが口を揃えていました」
「ううっ、申し開きもない!」
「どうしてこうなってしまったのか……っ!」
この両親の人柄からすると叱るのも最低限だったのかねぇ。
更には体質や巡り合わせの問題で何度か失敗を経て、ようやく授かり無事に誕生してくれたのがこのイッセーらしい。そりゃもう親としては可愛くて仕方ない。一人目故に子育ての勝手が分からない事も相まって、伸び伸び育ってきた事だろう。核家族なのもデカいか。
時代的に祖父母と別居の理由が田舎に仕事がないだけじゃなく子宝に恵まれないから折り合いが悪くて……とかありそうだしな。今じゃ科学の進歩に伴う衛生観念とかの格差で祖父母に任せるのが割と心配な親ってのも少なくないだろうし。ほら、食事一つ取ってもふーふーで唾液混入やら自分の食べかけを分けるやら口つけた食器経由とかで与えたりやらで虫歯菌が常在菌になるって話があったりな。
そんなこんなを踏まえた上で、性癖を捻じ曲げた紙芝居屋の罪は果てしなく重いよねっていう。
とはいえ乳神やらの奇跡を起こせたのは性欲とこだわりがあってこそなわけで。実はあの紙芝居屋が聖書の神説ないかね?
「実を申しますと、彼の中に眠っているモノにはドラゴンの魂が封じられていまして。そしてドラゴンには敵や宝、異性といったものを惹きつける性質があり、組み合わせとしては非常に噛み合ってしまうわけですね。つまり問題が加速する可能性も十分に考えられるのです。
予め問題点を告げた上でこの説明を加えておく事により、両親の危機感を煽っておくのも忘れない。
さぁ解決法を尋ねてくるがいい。鍛える過程で人格強制も可能性あるよって言えば否とも言えまい。
「あの!」
「はい、何かな?」
「俺がそのドラゴンの力に目覚めたら、モテモテになれるって事ですか!?」
「イッセー、お前ってやつは……」
「こうなったら、何か起きる前にいっそこの手で……」
うーん、クソガキ。どうすんだこの軽い地獄絵図。
いやまぁ性欲の権化として重要な点だってのは確かなんだろうな。多情は性癖がズレたところで変化なし、と。
あるいは無意識に
「落ち着いてくださいご両親。そして質問の答えだが、そこまで無条件に好かれるようなものではないよ。一応、傾向としては好かれやすく嫌われにくくなる」
「じゃ、じゃあ!」
「それを考慮してなお、君は女性から白い目を向けられていた。はっきり言って、ありえないほどに嫌われている。このまま
「がはぁっ!?」
撃沈したな。つまり自覚はあったのか。なのに治せないってのは一種の病気なのでは?
いっそクラフトチートでどうにか……あ、禁止項目なのね。さすがに心変わりは適用外か。まぁチートに頼らない洗脳やら催眠術を試してみればいいだけか。
そもそも今回の主目的である
「あの、そっ、それでは息子は一体どうしたら」
「何か私達にも力になれる事があれば教えて下さい」
「父さん……母さん……」
突拍子もない話を笑い飛ばすでもなく、息子を救うためにできることはないかと尋ねてくる両親。これには今度こそイッセーも言葉に詰まる。
「何をおいてもまずは強くなり、自衛できるようになって頂く必要があります。このまま大人しく過ごすにしてもご子息の性格からすると難しいでしょうし」
「そう、ですね」
「けど、この子はご覧の通りスポーツ選手てすらない一般人です。強くと言われても……」
うむ、さもありなん。女子に追いかけ回される事はあっても殴り合う喧嘩とかに慣れてるわけじゃなさそうだしな。武道を学んだりもしてない性癖以外はプレーンな少年がこのイッセーだ。
原作でも自分の体を張った乗り換えイベントした事で加速するインフレにも置いていかれないつよつよスペックを手にして神々とも戦えるようになってるが、序盤の戦績は決していいとは言えない。
でもフェニックス戦で身体の一部をドラゴンに置換する代価のようでメリットにもなりそうな真似してるんだっけか。思えばアレって実はドラゴン化により異性を惹きつける体質を得たハーレム解禁イベントなのでは?
場面的にはメインヒロインの結婚式にその結婚ちょっと待ったと乱入して、魔王のお墨付きを得た上で
さておき、要はこのまま駒王町で鍛えるのは現実的とは言えない。修行の成果を見せびらかすだろうしな、スカートめくりとかの形で。
「その環境でしたら私の方で用意できます。これでも土地を持ってましてね、そこにはご子息と同年代、そして同じように
そこでルキフグス領の出番ですよ。いうてヴァーリを抑える必要を感じるから首都から少し離す方がいいのかも?
「うぅ、その、引っ越しは仕事が……」
「外部から操作できる人間そっくりな人形を用意できますので、移住先にいながら普段と近い環境で出勤から退勤までこなせますよ。前例もいます」
「そんな技術まで……」
急に辞めますってのは会社や取引先に迷惑がなぁ。円満に退職するなら最低でも引き継ぎの一ヶ月、どんなに短くても二週間は欲しい。
クレーリアとその眷属達が治験してくれたおかげで、生体型人形兵とVR技術の合わせ技は実用性がぐんと上がった。
肉体強度に関しては刺客悪魔の撃退以外にほとんど使わんかったし、日常で発生する規模の負荷くらいなら一般人並の肉体強度でも何ら問題なく運用できる。
まぁ頑丈さや最大馬力的には異世界トラックに撥ねられそうになっても片手で止めたりできちゃうんで、一般的な転生モノとは無縁になっちまうが。
そういやHSDDも広義の転生モノに含まれるんかね。どうでもいいが。
「それがあったら女湯を覗き放題……」
「このおバカ!」
「ぎゃふん!?」
遠隔操作の利点を理解して
これでは
まぁそんな事になったらアルビオンがガチギレしそうだし、領民の安全のためにも女性陣には会わせられなくなるが。
しっかし、かつては発言後に現実で言うやつ初めて見たと続けるのが格式美でもあった『ぎゃふん』もリアルに言うキャラ増えてきたなぁ、なんて。これも一種の流行は巡るってヤツなんだろうか。
「まずはその遠隔操作を利用して、休日にでも我が領を見学してみるのはいかがでしょうか。田畑や果樹園の広がる素朴な農村に近いので、面白みには欠けるかもしれませんがね」
「なるほど、それなら」
「スローライフも大変そうだけど憧れるわよねぇ」
どうやら反応は上々な様子。ぶっつけ本番で駒王町を散策させたら知り合い相手にやらかしかねんからな。
その点、こちらの提案なら人形の動く場所が見知らぬ土地なんで、知人に会って変な言い訳を考えたりは不要になる。ついでに旅の恥はかき捨て精神で思い切って動かせるんでねーかな。
ちなみにイッセーは母の愛に深く感銘を受けて
「もっとも、ご子息の
親御さんを説得するために、可能性の話をしておく。どれだけ低くても零じゃないからセーフ。
実際は原作通り高校二年生になっても人間のままじゃ未覚醒の可能性は高いが、聖書勢力の早期和平で不穏分子の暴走も考えられるからな。
堕天使の
「……イッセー、お前が決めなさい」
「あなた……!」
と、ここで親父さんからまさかのキラーパス。これにはお袋さんも驚きと共に咎めるような声を上げた。なお本人はまだ
「父さんや母さんはいつだってお前を守ってやりたいし、そのためなら命だって惜しくない。この後で私達でも何か力になれないか相談するつもりだ。けど父さん達の力が及ばなかったとき、お前を守る者がいなくなってしまったら、後はお前が自分の力でどうにかするしかないんだ。だからどうするかは自分で決めなさい」
「俺、俺は……」
十歳に突きつける悩みじゃないよなーと思いつつ、思想面は柔軟性のある若い内に仕込んでおきたいのもまた事実。もっと早くずっと過酷な環境ですくすく成長しているルキフグス領の子供達を考えたら遅いくらいではあるが。いうて煩悩塗れじゃないイッセーとか一般人が形になったようなもんで伸び悩むだろうしなぁ。かといって煩悩塗れになるとイエスや鳩の関係でうちとそこそこ相性悪いんだよなぁ。
あと単純にヴァーリが期待してる以上、生半可な強さじゃ満足しそうにないのがな。これは戦闘力もそうだが、負けても折れない心の強さも必要になると思って間違いないだろう。
ぶっちゃけ今の段階で
要は事前に相当鍛えておく必要があるわけだが、幸いにも才能なしを鍛えるのはダンまち世界の原作開始前にベルを育てた経験が役立つだろう。なおその経験を活かして育てた
「俺は……モテたい! 綺麗なお姉さんに囲まれて、甘やかされて、たまに打たれたい! そのためにも絶対に死ねない! だから俺は! 俺は強くなりたい!! お願いします、俺を鍛えてください!!」
そんなアタシの揺らぐ覚悟とは裏腹に、イッセーは覚悟を決めていた。
方向性は完全に性欲一直線だが、ものすごい熱量だ。人間の欲深さって悪魔に向いてるなーと思わなくもない。
そして後方腕組み理解者面の親父さんと、恥ずかしさから顔を覆うお袋さん。これどう反応するのが正解なん?
そうして無反応もまずいよなと考えている内に、自分で設けた時間制限が訪れてしまう。どうしてこうなった。
「お、おぅ」
どうにか絞り出した答えは、我ながら余りにも情けないものだった。
書き溜めがなくなって突貫作業。今後は毎日更新ムリポ。
あとなんでか11月が31日まであると思ってて23時33分に予約投稿すればいいかと思ってたら12月でアバった模様。