「さて、今年はいよいよ原作開始五年前。堕天の狗神――SLASH DOG――の時期ですよぅ」
「つまり面倒事だな? よし、帰れ」
律儀にアポを取って到来した生ハムが開口一番厄介事の開始時期だと告げてきた。
事前に防げなかったのか、防がん方が得なのか。死人が出る出ないで判断したいところだが、さて。
「まぁ、五大家から追われた人員が復讐というか意趣返しというかを目的に集まった虚蟬機関がとある
「悪魔以上のクズじゃねェか」
修学旅行のために豪華客船を貸し切りなんて真似はせんだろうし、相乗りしてる客やら船員やらは巻き込まれてるわけだろ。コスパ悪っ。
追放されて恨み持ってるにしても元五大家なら日本地獄の話くらい知ってて良いと思うんだが。あるいは反転してイザナミ信者になったからニッポンジンイチニチセンニンコロシマースとか掲げてんのかね。
「対象以外もウツセミなる独立具現型の人工
「あァ、堕天使で頑張って作ってる本家や
本家のランダム配布と違い能力と相性を考えた上で選べる辺りは本家より汎用性が高いものの、想いに応える機能の関係で魂へ紐付けしなきゃないから結局は専用装備になるんよな。
うちのナノマシン製と比較した場合は頻繁な更新が不要な点が勝ってるか。代わりにうちのは使用者の魂を写し取り願いを叶える形で能力を獲得するから半専用装備で、相性が良い相手とは使い回したりもできる。そして何より魂と直に接続してるわけじゃなく観測してるんで健康への影響が起きないし、
しかしアザゼルの研究だと擬似的な
そもそもサタナエルってどんなだっけ。ヨレヨレの白衣着てボサボサ頭のぐるぐるメガネだっけ? 別人? なら記憶にないな。
「なお結局は標的を確保できず敵対され、予想しない介入者や組織といったイレギュラーによって野望は打ち砕かれます」
「まァ修学旅行襲撃とか頭悪い事件起こす連中がスマートにやれるわけねェわな」
少数の学生に反撃されて壊滅する闇の巨大組織、あるあるだな。
いやまぁ組織の介入もあるなら堕天使やら五大家やら『
逆に言えばこの世界だと既に和平結んでるから、サタナエルを理由に聖書勢力でフルボッコできるんじゃね? 五大家は人間の集団だし人外としては頭下げれなくて無理か。
むしろトップの日本神話に許可取っちまえば下部組織とか現場対応で初手許可証どーんしちまえばえぇねん。鬼灯様なら正式な手続きをしてるからヨシ判定くれるだろ。報連相不足は向こうの責任だし。
「ちなみに虚蟬機関のメインターゲットになった四凶の
「アイツらかーい!」
「始まる前に終わりそうですよねぃ」
生ハムがケラケラ笑うのは、単純に四凶の
休日を利用してルキフグス領へ通う事を選んだ饕餮の七滝詩求子を除く三名は自主トレなんでそこまで期待はできんかもだが、代わりにルキフグス領から通わせてる希望者が数名いる。その内の一人が
「え、つーかトビー?」
「修学旅行の前日に風邪引いてダウンするから不参加だとか。四凶もそれぞれの理由から不参加で、後日騒ぎから離れるために転校するのが正史です」
しかもあの高校、引っ越しとかしてないなら
幼少期に世界を巡ってたらお宝センサーが弱々しいながらに反応を捉えたんで向かったものの、本人よりも先にお祖母さんに会った。そんでいつかは巻き込まれるだろうがそれまで少しでも長く平穏な日々を、と請われてしまえば魔力壁の
でもあのお祖母さん、人外に発見された時点で巻き込まれ始めてるとは思わんかったんだろうか。聞いたところでどうしようもないが。
「しかし一人暮らしで風邪は辛いですよねぃ」
「一人? お祖母さんがいンだろ」
「おや、ご存じない? 既に亡くなられてますよぅ」
「マジか」
まーそのお祖母さんが死んだ事を生ハムから聞かされたんだが。霊的な素養は十分に優秀そうだったし、人柄は厳しくも優しい感じだったし、天国行きの判決を受けた上で五官王辺りからスカウトされてないかね。
あとちょっと生きてる方の確認に出かける予定ができたんだ。これはついでに四凶の様子も確認して来るべきか?
いうて幼馴染がオズの魔法使いに出てくる臆病なライオンに適性あってどうたらこうたらがあるらしいんで、出落ちさせるとなんかしら不都合が出るかも、との事。ぶっちゃけ知らんがなって言いたい。成果を出すのが自力でなくていいなら黙ってうちに依頼しろって話だよ。別にオズだからってバルジ砲やリーブラ砲が飛んでくるわけじゃあるまいし。
「つーわけでちょっと出かけてくる」
「行動が早い」
「どうせその沙汰が下され萎え萎えでござるのキャッチフレーズでお馴染みサタナエルの居場所は割れてんだろ?」
「んー、というか各勢力の目を逸らすためにデコイを集める用でオーフィスちゃんを利用できないかと考えて上手い事『
おおっと大事な情報。二次創作じゃサタナエルなんて見かけなかったが、前世の未来になって明かされた系か?
しかし目の付け所は良いんだろうが、バタフライエフェクトのせいで残念すぎる計画に早変わりしてるような気がしなくもない。
「そのオーフィス、うちで二天龍の成長具合を確認しながら後方腕組み龍神面してンだが?」
「つまり
「各神話体系の
オーディンやヘカテーなんかがそれぞれ自前で作った術式の他にも意見を交わして作られた新しい体系の術式が組み込まれてるんで非常に頼もしいんよね。バックドア仕込まれてるんだろうなーとは思うが。
ついでに先日リゼヴィムとスニーキングミッションしてルーマニアから
「当のオーフィスちゃんも既に静寂よりもお菓子を求めてますしねぃ」
「胃袋無限の龍神はヤメロォ!」
「対価に開拓の手伝いしてモリモリ土地が拓けてるから結果的にはプラスなのでは?」
「まァ、単純作業も黙々とこなすし助かっちゃいるわ」
幼女形態だろうと元の体の大きさが基準になってるのか、いくら作ってもどんどん消えてくんだよなぁ。ピンクの悪魔を住まわせて平気なプププランドの住民を尊敬するわ。まぁこっちは空気を読んで自重したり、時間をかけて味わう事を覚えてたり、自分で作る側に挑戦したりもしてる。
手作りクッキーをもらったイッセーが泣き崩れてたのは青春してたな。他の面子にも配ってた事は気にしない方向で。アーシアや白音に渡した方がずっと手の込んだヤツだった事実には触れてやらんのが優しさってヤツだろう。
「ま、その内にサタナエルやそれの使い走りが侵入してきて、捕獲されて、事件は未遂で終わっていいンだな?」
「ご随意に。そちらの技術があれば天然だろうと人工だろうと
まー言っちゃ悪いが数だけなら年間総数の一桁%にも満たないだろうし、自然災害や病気のような避けられずありふれた死因のと比較しても数字は小さいからな。
いうて一度に日本地獄へ叩き込むと仕事がパンクしないか心配なんよ。鬼灯様の徹夜と連勤を増やすのは忍びないし、償いなら地獄での苛責よりも生前の行いでするべきだ。少なくとも法を破るはぐれ人外は少なくないんだし、ソイツらを区別できるよう性根を叩き直した上で運用すれば……そもそも五大家に価値を感じなくなればいいんだし、少しばかり洗のげふんげふん教育するだけでもいい気がしてきた。
「虚蟬機関とやらは乗っ取って改革してやりゃ使える気がするわ」
「おや、それは何より。先ほども言いましたが、扱いに関してはお任せしますの」
「りょ」
こうして人知れず『
つーか生ハムの話じゃ完結してないらしいから、不明点が多いんで最初から潰したかったらしい。本来ならそれなりの大物が狗神達の活躍で葬られ平和への道が舗装されてたんだろうが、その過程で味方サイドにも犠牲者が出そうだしな。
「つーかよ」
「はて?」
「
この生ハム、前世のネトゲキャラと同じ外見や能力をしてるらしいんだが、ゲームのシステム的に魂へ気軽に干渉するもんだから現実化するに伴ってそこそこ
「……えーとですね、私がやるとゾンダー化からの浄化ないし心の怪盗団みたいな事になりがちなので」
「なにそれこわい」
なんだろうな、一度引っ込めるとデバフをリセットできる的な感じで
「サタナエルさんの受け持ってた通称アビス・チーム、正式名称を『
「テメーの方でもバキバキにフラグ折ってやがンじゃねェか。本来なら敵対してる連中って事だろ?」
「えぇ、まぁ、そうなります」
うーむ、未然に犠牲を減らせるなら別にいいか。バタフライエフェクトで敵が補充されるとして、それはそれで別のタイミングで人知れず起きる犠牲をなくす未来に繋がるかもしれんし。
まー、アレだぁな。情けは必要ないだろうが、煽り大半でサタナエルにご愁傷様って言ってやりたいわ。