話し合いの結果、姉妹は揃ってルキフグス家に雇用される意思を見せた。領地での出来事なので政府へ報告する義務はないが、何かあったとき用の書類は作っておこう。
「と、いうわけでこちらの内容を確認の上でサインをお願いするよ。文字の読み書きは?」
「いやちょっと待て、じゃなかった、待って下さい」
「うん、納得してもらうのが重要だからね。読み終わるのを待とう」
ただでさえ実験台にされかけて人間不信というか悪魔不審になってるだろうしな。別に小さい文字で端っこにやべー文言が書かれてたり、炙り出しが必要な部分があったりはしないんで、安心して隅から隅まで目を皿にして読み込んで欲しい。
「では
『あ、それならもう終わってやす』
「ありゃー」
静かに活躍していた事を告げる変な言葉遣いのルビスは、ダンまち世界の穢れた精霊に関係する宝玉――中にモンスターへ寄生して将来的に
ついでにその副作用で記憶とか空っぽになってたところにアタシと魂の一部が繋がった結果、色々と前世の情報が雪崩込んで、第四の壁を突破してヘッズに進化した挙げ句ニンジャに憧れてカラテを磨き上げ魔力操作だけでジツと言い張る恐らくは先天性の魔法まで開発したアホの子に育った。
HSDDの世界だと魔力は悪魔固有の超限定的な現実改変能力というか、イメージで現象を起こす能力だ。魔法は魔力を再現しようとした人間が発明した技術で、現象を起こすための法則を記した術式、法式を介して実現させる力。こちらはリアルタイムで式を演算する能力――魔法力や法力と呼ばれるものが必要になる。
ダンまちの魔法は個人の経験由来で基本的に他人が使えない点では魔力に近いが、効果が固定されて固有の詠唱が必要な事を考えれば魔法に分類される。ルビスの言い張るジツは……詠唱不要でイメージから作り上げてるし、コレ区分的に魔力になるのか。まぁいいや、元精霊の面目躍如って事で一つ。
で、その自称ジツが一度は粉微塵になった経験を持つ魂を分割して憑依させ対象を操作するマガリ・ジツ。恐らく間借りの意なんだろう。地味にダンまち世界では操作中の
そんなわけで主にアタシの作った
効果範囲も伸びて最低でも二万km先まで届くのは小鳥型人形兵で確認済みだし。なお素体が粗製だったせいで警戒した人外連中から撃ち落とされた模様。辿られたらアウトなのでは?
TSUBAME並の物を造るべきだったが、悔しい事に素材も技術も追い付いてねぇんだわ。次元潜航とかできるようになったらR戦闘機にも近づくんだがなぁ。アーサーの剣とか絶霧を解析したいところだ。あるいは現段階だとそれらも前の持ち主とかだったりするんかね。
既存の
長々と回想したが、要はその甲斐あって今も索敵から地形調査、食料と安全の確保まで並行してやってくれてるわけだ。実際便利。
「いや、そうじゃなくて!」
「?」
「いや、さっきのは何だよ!? そこの木に触ったと思ったら一瞬で家具とか紙になって、しかも紙はそのままこの書類になったよな!? 文字だぞ!? 束だぞ!? こんなん普通に作ったらどれだけ時間がかかるんだよ!?」
うーん、勢いのあるいいツッコミだ。得難い人材だってのがよくわかる。慣れるんじゃねぇぞ。
しかし魔力や
要は戦い方に幅がなくてソシャゲ的なんよね。選択肢を増やしたせいで悩みが生まれて負けるパターンもあるが、個人的には引き出しが狭けりゃ対策も取られやすくて危険だと思うんだが。いやまぁ仮に魔力的な雷を相手に絶縁体や高電導率で科学的な対策しても魔力だからの一言で貫通されそうではある。他にも気合や根性で突破されたりな。フィクションの根性論はマジで数値化したら狂ってるとしか言えん効果があるから怖い。
そう考えるとダンまちの
諦めなきゃ立ち上がるし、心は折れないから諦めないし、神の視点がなきゃ唐突にしか思えない理不尽パワーアップを遂げて逆転勝ちを決める。神の視点を持って物語としてみれば最後に愛は勝つ的な感じでスッキリするだろうが、他人の隠してる事情なんぞ知らんまま各々の主義主張でぶつかり合う現実として見れば物事を真面目に考えてる奴ほど馬鹿を見る報われない世界なんよ。もっとも、それらすらも数値化し法則を見出そうと試みるからこその科学なわけだが。
まー、手札の少なさに関して言えば、単に悪魔が才能に胡座搔いてるだけっぽい。少なくともアタシは魔力を炎氷電気その他に変換して使うし。変換効率は驚きの100%超えなエネルギー保存則に喧嘩売ってる夢の素材だぞ魔力。魔力量の単位とか知らんが。変換もクラフトチート任せなんでそこの影響もあるかも知れんが。
その意味じゃ能力封印系が怖いものの、転生特典みたいなチートを封じられるなら魔力自体も封印されてるだろうから心配するだけ無駄でもある。でも後でデータはまとめておこう。
あと悪魔って要は価値観からして化石なわけだし、科学的な知識に関しても古いままなんかもね。経験則しか知らんで公式や数値では考えれない的な。あるいは小難しい理屈を知らんからこそ重力使いがブラックホールをなんか重いんでしょくらいのふんわりイメージで敵単体だけに働く力として実現しちまう可能性。つまり悪魔なりに限られた手札の中で考えてる……って事? ブッダの髪が圧縮されすぎてブラックホールを産むのとどっちが現実的なんだろうか。
まぁそこら辺はどうでもいいわ。結果が伴わなけりゃ意味はねぇし。負けて死んだらそこまでだし。なお死後の世界が実在する世界な模様。悪魔は
「まぁ、その辺の説明は後にしよう。今の君達にとって重要な事は雇用条件の確認、そうだろう?」
「えぇ……いや、でも、うーん」
「姉さん。これなんて意味なの?」
「うん? あぁ、これは……」
おっとナイスフォロー。姉のシスコンを利用する強かさ、妹ちゃんの評価がどんどん上がっていくな。うんうん、妹とは守りたくなる程にか弱く見えるのに実際は逞しく強かな生き物なのだ。ソースはリリ。
まー、書類は相手が少女なんでなるべく易しい言葉遣いを心掛けたが、それでもややこしい条件とか難しい内容はあるからな。姉の年齢でも把握するのは厳しいかもしれん。
ルキフグスの領民としてだけじゃなく、将来的に家を興す場合も考えて貴族としての教育も合わせてしておくから負担も大きめだし。
「あー、すみません。読んでもわからない部分があるんですが」
「そうか。なら、わかってもらえるまで説明しよう。リリ、頼む」
「かしこまりました。それでは質問をどうぞ」
「あ、はい」
この調子だと、サインをするまでにはもうちょい時間が掛かりそうだな。その間に仮設住宅を作っておこう。ちょうど森の中だし、地下を掘り進めて秘密基地みたいにすんべ。表向きの館は荒野に立てておけばいいか。そんじゃクラフトチートこと
「そうして完成したのがこちらです」
「何という事でしょう。単なる石ころ混じりな土の塊でしかなかった場所が、匠の技術で駅地下を思わせる空間に大変身」
『具体的には仙◯駅っす』
所要時間は約三時間。エスカレーターは動力の都合があるんで階段に置き換えたが、2020年頃の風景を再現できたはずだ。なんか七夕祭りの飾り付けがされてるけど、そこは無視して貰おう。
テナントの品物はチートで作った間に合わせ、店員は
「いやちょっと待てーい!」
「落ち着きなさい。貴族たるもの余裕を失ってはいけないよ」
「え、あ、はい。って無理言わないで下さいよ……」
いや、そんなんいうてしっかり落ち着いとるやん君。
「待たせてしまった事は謝ろう。作業に夢中で時間を守らないのは失態だった」
「気にするのそこぉ?」
何言ってんだ時間厳守は社会人、いや貴族的にも大事だぞ。目上の者を待たせるとかどんな嫌味や仕返しが待ってるかわかったもんじゃない。
逆に上の側は待たせてなんぼみたいな習慣も地方によっちゃあるらしいって聞いたが、そんな実利の無いもんは守る気にならん。寿命が万年あろうが時間は待っちゃくれねぇんだわ。でもナーロッパでありがちな移動が馬車でスプリングもなくてで尻が痛いなら、待たせる時間で相手を休ませる配慮とかの理由もありなんかね? 知らんけど。
「無事に契約は結ばれたのだし、色々と明かしていこうか。まず君達姉妹のサインした書類を作ったのも、こうして地下を開発して建物に変えたのも、私個人の能力だよ。家とは無関係な、ね」
「はぁ……」
「面白みの無い答えで済まないね。ちなみにこれを、こう」
手の平を差し出して魔力を込めると、その上に個装された箱入りの萩◯調が生み出される。製品名部分にはモドキって加えてるし、製造会社の部分もちゃんと変えてるからセーフ。
いやまぁ日本で販売したら間違いなく訴えられるし負けるんだが。後で東北ミヤギの鉢植えでも作っておくべきだろうか。
「わぁ……」
「ふむ、これは素直に感動してくれた妹ちゃんにあげよう。と言っても、味は本物には及ばないがね」
箱から取り出して見せると、それが食べ物だと理解したらしい妹ちゃんが目を輝かせた。知らない人から貰ったら叱られるが、契約した相手なんで姉ちゃんは叱らんでやって欲しい。
「うまうま」
「それは良かった」
つーかいい加減この喋り方に疲れたんだが。崩していいかな? いいよね?
「お姉ちゃん、めっ、です」
「アッ、ハイ」
察したらしいリリに先回りされちまってその理解と愛に内心テンションを上げながら恐縮しちまったが、お姉ちゃん呼びはマズいんだわ。いや、どうせならバレるまで騙し通すのも……そういう趣味だと納得されたら恥ずかし死ぬぞ。
立場的にも倉庫内から見てた景色がグレモリー家とサーゼクス及びグレイフィアだから参考にならんのはわかるが、一応は主君と執事長みたいな関係だしもう少し、こう、手心というか。
「こほん、とりあえずここは現状を雛形として改装、拡張していく方針だ。だがこれは別荘のようなもの。ちゃんとした領主館や街並みは荒野を開拓していくので、普段はそちらで暮らしてもらう事になる」
『領民の募集はどうするっすか?』
「所属を問わず現状に不満を持ってる相手をスカウトして来るのが早いだろうね。並行して、はぐれ悪魔から『
「はぁ!?」
うむ、予想通りの反応だ。まぁ、知識があるなら『
他にもダンまち世界では魂を引っこ抜いて転生権を掌握する魔法を覚えて使ってたから、チート能力との合わせ技で
世の中には
堕天使涙目? 知るか。でも手の数を考えたら技術の開発は継続してもらわんと困るから、部分的に協力するのはありかも。
にしても
「さて、分家だろうと家名のある貴族に駒を使う馬鹿への配慮など不要だ。早速摘出してしまおうと思うのだが?」
眷属が死ぬと『
戦車の駒でキャスリングと言い張って瞬間移動できるなら、持ち主の手元に戻る事も考えられるか。その場合は死亡したと判断して追跡を諦めるだろうから好都合。手元に残るなら解析に回した後で別勢力に横流しできるんで夢が広がる。どっちに転んでもおいしいわけだよ。チート万歳。
さぁ、答えを聞かせてもらおうか。はいかYESの二択だが第三の選択肢を生み出しても問題ないぞ。