聖書の神なら立川で鳩サブレ食ってるぞ   作:夜月工房

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47.追加の人足集めするよ!

「お待たせしました。お陰様で無事に隠神刑部殿から協力を取り付けられました」

「おー良かったねー!」

「だからお前は……あ、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 

領民with桃太郎ブラザーズの気配を探ったところ、意外な事にその居場所は例の狐カフェ。事情を話して店内で合流させてもらったが、そこには意外なような意外でもないような光景が。

 

「しかしこう言ってはなンですが、珍しい場所にいますね?」

「あぁ、単なる暴力とは別の強さを見せつけられてな」

「ほォ?」

「感心する事でもないさ。口車に乗せられただけだからね」

 

こちらの疑問に横から答えたのはヴァーリだったが、すぐさま曹操が補足する。そして指差す先には、簀巻きにされてアイスクリームみたいな三段たんこぶを頭の上に生やしている細目の男。帽子を貫通してるんだがどうなってんだソレ。いやまぁ三段になってる時点でどうなってんだって話だが。

 

「別に嘘は言ってねぇじゃろがよぉ」

 

檎、お前だったのか。店に連れてきてくれたのは。

で、その檎だが、いつの間にか取り出してくわえていた煙管をふかす。余裕あるなぁと感心するが、よく考えなくても妲己を相手にのらりくらりできるようなヤツじゃんねコイツ。

 

「狐用フードとかあるし、餌でシロさんを釣ったとかか?」

「ち、違うよ? オレ騙されなかったもん」

「ルリオに止められなかったら引っかかってたよな……」

「しかも結果的にこうして店に来てるしな」

 

どうやら予想は外れたらしい。て事は、だ。ホイホイされたのは領民(うちの)側か。修行が足りんと叱るべきかは詳細を聞いてからになるが。

 

「だが使い魔は確保できた。後悔はしてない」

「テメーかよ」

 

どうやら乗せられたのはヴァーリらしい。台詞からするに、悪魔として使い魔を持って一人前的な話でもされたんかね。とりあえず腕を組んで仁王立ちしているし、後悔どころか反省もしてないように見えるんだが。処す? 処す?

そんでそんなヴァーリの傍らに侍ってる狐……耳を生やしたそこそこイケメンなチャラ系の男。

 

「トルティーヤです!」

「何をどう評価して採用になったンだ」

 

これで後悔してないとか嘘やろ? ヴァーリ化かされてね?

 

「そいつは単なる店員だ、領主。使い魔は別にいる」

「アッ、ハイ」

 

どうやら使い魔は源氏名トルティーヤじゃないらしい。いやまぁ冷静に考えたらそうだろうなって話だが、同じくらいヴァーリだしなぁって諦めがですね。つーかなんでコイツ人化してるんだ、紛らわしい。

 

「しかし、それなら使い魔ってのは?」

「私よ」

 

確認してみれば、タイミングよく名乗り声が。席を外してたのか、あるいは待機してたんだろうか。

そうして振り向けば、そこには豪華な着物に身を包んだ妙齢の女性。その隣ではリリスが笑顔で小さく手を振ってた。

 

「妲己様じゃないですか。なンでまたそうハジケた真似を」

「別に弾けてなんかいないわよ」

 

外見的には怪しさすら漂う絶世の美人なんだが、こちらの問いに心外だと頬を膨らます。キャラ崩壊して見えるのはヴァーリの使い魔になったからか? いや使い魔契約って別にそういうもんじゃねぇな。

 

「だってその子、リリスの孫なんでしょ? それに貴方の治める領って最近地獄(こっち)でも噂になってるし、気軽に移動できる手段が欲しかったのよね」

「使い魔召喚を交通手段(ファストトラベル)扱いすなや」

 

しかも団体で移動する気だぞ。ヴァーリの魔力なら余裕だろうし、その辺は契約に盛り込んであるだろうが。

しかし友逹(リリス)の縁者だからってのは納得できるようなできないような。他にも何かしらの取引が絡んでると見るべきか。まぁ領を荒らすような真似をする相手ではなし、プライベートの領域だから深く突っ込まんでもえぇか。

 

――商品開発するなら直接お茶会しながらが一番だものね。環境を変えたら新しいアイデアが浮かぶかもしれないでしょ?

――返して自制に使った時間と覚悟

 

とか思ってたらリリスがあっさり念話でネタバラシしてきた。そしてまさかの移動手段メインときた。それでいいのか九尾の狐。

つーかリリスと妲己の関係って気安く見えてバチバチに互いの利益を享受するべく出し抜こうとする駆け引きとかが飛び交ってそうなんだが。空間歪んだりしてそうで怖いんだが。

これで美女二人に挟まれるべく白澤がイッセー辺りの使い魔になったらいろんな意味で大変な事になりそうだぁな。まぁ使い魔って扱い的には誰かに下るわけだし、鬼灯様に扱き下ろされる未来しか見えないから提案も承諾もせんか。いや、スケベのためなら例え宿敵やら怨敵やらだろうと男性に罵倒されたくらいじゃ痛くも痒くもなさそうでもあるな。うーむ、わがんね。

 

「まァ、使い魔召喚なら各種の手続きをすっ飛ばせるのは確かですし、伝説になっている九尾の狐なら使い魔になったところで名声が下がる事もなさそうですね」

「ふふ、むしろそこで侮ってきたお馬鹿さんをパクリと、ね?」

「なるほど」

 

それも狙いに含まれるのだと、妲己は扇子で口元を隠しながら目を細めた。思想的には実践してるしわかりみしかない。狐な以上は化かしてナンボだし、名より実を取るのは好感触ですわぁ。

しかしそうなると妲己を紹介した檎の処遇っつーかはどうなるんだ。上司を使い魔に推薦した不届き者なのか、望みを察して顔繋ぎした功労者なのか。命がある時点で後者側だとは思うが。

つーか檎のギリギリを見極める能力というか要領の良さは感心するし羨ましいが、だからこそ限界までは動かずそれまで怠惰を貪る様は妬ましい。むしろクソ度胸が過ぎる。小心者の凡人なアタシには怖くて真似できんわ。

 

「あー、行き来してる面子を考えたら今更だし、当事者が納得してるならいいか。今後ともよろしくお願いします」

「ふふ、こちらこそよろしくねぇ」

 

他神話体系のお偉方がしてる最低限の手続きとなっている滞在日時の通達すら飛ばして来訪しそうな部分は個人的に引っかかるが、現実的にはオーフィスって自由に行き来できる前例が存在するし、そこまで目くじらを立てるもんでもないかね。

まーなんだかんだ妲己からリリス経由で知らせてきそうではあるからえぇか。使い魔契約の壁があるから悪しき前例にもならんだろうし。

 

「そういえばバールドは使い魔を持っていないのか?」

「あァ? あー」

 

ここで使い魔を得たばかりのヴァーリが疑問を投げてくる。さすがにまだ使い魔の一体も持ってないのかとマウントを取りに来たわけじゃないよな。

つーかヴァーリが知らないだけか。曹操やゲオルクは知ってるんだが。

 

「そういや言ってねェか。雇用契約の内容に使い魔として扱われる旨が明記されてっから、領民のほぼ全員が使い魔だぞ」

「は?」

 

そんなわけで事実を伝えたら、尋ねた側(ヴァーリ)は目を点にした。即座にドッキリ大成功のプラカードを探したりしない辺り、まだ修行が足りんな。ドッキリじゃないから探しても無駄骨だが。

 

「契約内容をよく読ンでねェのもいれば、しっかり読ンだ上で了承したのもいる。反感を示した場合でも追加の説明をしたら大抵は乗り気になったな」

「悪魔か」

「悪魔だ」

 

何しろ初期は領民の大半がはぐれ悪魔、つまり庇護を求めて来たわけだ。領民ってだけでも十分に匿えるとは思ってたが、理由としては弱いっちゃー弱いし、補強のために手っ取り早い方法として使い魔契約を結んで繋がりを強めといたんよね。ぶっちゃけ意味はなかったが。流刑地(ごみばこ)扱いで放置されるとは嬉しい誤算だったわ。

 

「別に使い魔っても扱いが悪くなるわけじゃねェし、ノルマとかも設けてねェ。外部向けの牽制に過ぎンよ」

「そういうものか」

「当時は今よりずっと力がなかったしな。ねェなりに頭使って考えた結果だ」

 

なお武力で攻められた場合は鳩を召喚して目撃者を出さないよう殲滅する予定だった。その後を考えると頭が痛くなる対処法ではあったが、背に腹は代えられないと割り切るしかなかったよね。幸い、そんな事態を迎えずに済んだのはご承知の通り。

 

「あァ、そうだ。妲己様は地上の裏側がどうなってるかご存じで?」

「人間が同士討ちして防衛力が低下したから無法地帯になりかけてるって話だったかしら?」

 

商売の邪魔になりそうで嫌よねー、と続ける妲己だったが、だからといって協力するつもりはなさそうだ。まぁ地上が荒れても衆合地獄の店に影響は出るもんじゃねぇか。

でもってここで突っ込むと大火傷しそうな気もするんよね。狸をダシにしても対抗するより流して終わりそうだし。どーすんべ。

 

「そういえば、その件で日本地獄と日本神話から治安維持の依頼がきたのよね。攻めてきた妖怪を退治したのもほとんどこの子達だったし。確か鬼と狸だったかしら?」

「そうだな。そのまま日本地獄に引き渡して沙汰も出たそうなンで、この後に冷やかそうと考えてる」

 

と、ここでリリスが話題を提供。うーん、ちょっと露骨だけど動きがあるだけでも助かるわ。褒美に……タピオカでも解禁するか? いやまだSNSは発展途上だったわ。しかも見た目カエルの卵とか妖怪や悪魔と合わせてもインパクト薄いし。逆に炭水化物主体なカロリー爆弾な部分は気にならんだろうが、話題性に欠けるならどちらにせよ放置安定な。

 

「ふーん……なら昔馴染みがちょっかいかけても困るし、こっちから言っておくわね」

 

妲己の反応はあっさりしたものだったが、何かを考え込むような仕草を見せた後で知り合いに一声掛けると協力的な言葉をもらえた。

 

「よろしいので?」

「放置して地獄で強制労働させられてる姿を見物するのも楽しそうだけど、どうせならどちらにも恩を売る形にしておいた方が得だもの」

「助かります」

 

ふむ、こちらとしては余計な労力を割かなくても済むようになるし、昔馴染みとやらは鎮圧され強制労働させられずに済む。

いやでも言い方の程度によるが自分の強さに自信ニキネキからすれば挑発になるような? 割に合わないくらいならまだしも、勝ち目ないぞって言われたら逆上して暴れそう……その場合はその場合で失敗して強制労働させられる昔馴染みの姿や、企みが成功して治安がボロボロになった地上の様子を笑えるのか。どう転んでも得があるとは羨ましい立場だぁな。

 

「あー、地上の件で主犯に狸がいたンで先にそちらへ声をかけて了承頂いてまして」

「私は別に気にしないわよ。私を下に見てるわけじゃないんでしょう?」

「それはもう。今回は弱みを突く予定でしたからね。ついでに言えば鬼灯様が先回りして下さってました」

「ふふ、後継が失敗したから指名者の責任問題ってわけね。まぁ、他にも理由はあってね」

 

念のために妖怪狸への協力を取りつけてある事を知らせたところ、反応は至極あっさりしたものだった。追加で用意しといた主犯の関係者って弱みがある事による成功率の高さって言い訳(せつめい)もしたが、やはり余裕すら感じる態度。

そんな反応を聞きながら内心で首を傾げていたら、察していたのか妲己は極めて優雅な調子で閉じていた扇子を広げ、口元を隠す。

 

「西の総大将は狐だもの。身内で固まって引きこもってる狸に先んじてる以上は変に張り合うつもりはないわ」

 

そして極めて優雅に微笑みながら述べた。

……戦う前から勝ってる宣言しかも内容は後継の立場って、地味に意識してんじゃねーか。あるいは信楽太夫との変化勝負を引きずってたりするんだろうか。なんだかんだ勝負の後に約束してた化粧とかに関する指導指南は履行されたそうだし、当事者同士の仲はそう悪くないそうだが。なお隠神刑部(おや)。だからか。

 

「ところで罰を受けてる狸と鬼を見に行くんでしょう? 時間は大丈夫かしら?」

「おン? あァ、もうこンな時間か」

 

リリスの言葉に時計を見れば、自由時間の終わりまで余裕のない時刻。移動時間を短縮するにも高速移動系や瞬間移動系は迷惑になるからできんのよな。つまり割ける時間はほとんどない。

 

「土産選びの時間のが大事だし、後で映像や写真を送ってもらうくらいでいいかもな」

「あら、優先度低いのねぇ。鬼さん達も不憫」

「会ったところで大して得る(もン)もねェしな。なら自分で選べて物も思い出も得られる土産のが価値は上だろ」

「……そういうものか?」

「人それぞれだろう。俺はわからなくもない」

 

そんなわけで、狐カフェから退出する。なお支払いの際にリリスが妲己を指名した事になってて、そこそこの額を支払わされた事を記載しておく。まぁ妲己の一声って協力への対価と考えたら安いもんか。

リリス自身は化粧品コスメで稼いでるはずなんだが、一応は妲己相手に領主の度量を見せる必要もあったし……いいカモ扱いを免れない気もするが、よくよく考えればリリスが単独で遊びに行った際は接待扱いで申請されて経費で落としてたんで最初からカモ扱いされてそうだわ。

あと地味にルリオと曹操が仲良くなってる不思議。まとめ役というか苦労人というか、貧乏くじ仲間?

 

ちな、二代目隠神刑部の店は衆合地獄にあるものの、温羅は最近になって色々と制限された上で地上勤務を命じられたのだとか。いつぞやの鬼灯様もしていた、ボールを投げつけられる鬼のぬいぐるみ的なアトラクションの中身をさせられてるんだそうな。ウケる……と続けたいが、鬼灯様が経験している由緒あるバイト内容と考えれば笑い飛ばすのも気が引けるっていうね。ぐぬぬ。

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