「定期報告のお時間ですよぼぼぼぼぼぼ」
「何が定期だ、不審者が。毎回ちゃンと事前連絡を入れろや」
日本地獄旅行を済ませて領に戻ってきたら、さほど時間を置かずに生ハムが突撃してきた。アポなしだったんでコブラツイストをキメながら先を促せば、にゅるりと半液体のような動きで関節技から抜け出しやがった。キモい。なんか粘液とか付着してねぇだろうな?
「いやー、まぁ知らせておいた方が良さげかなーという事態が起きまして」
「良いニュースと悪いニュースだとどっち寄りよ?」
「一応はグッドニュースかと」
「一応か〜」
いかん、これは爆弾の予感だぞ。しかし何事だろうな。一応とはいえこちらに都合の良い内容っぽくもあるが。トライヘキサ復活ただしテイム済とかか?
「まぁ要約しますと野生の転生者が発見されました」
「野生の転生者」
なんとなくパワーワードに聞こえるが、神様転生とか転生特典とか原作の存在を考えたら大半の転生者は箱庭なりフラスコなりの中に投入された感があるし、野生と呼べるか微妙。そう考えると割と的外れでもないのかね。
「実はまるまるうまうまというわけでして」
「それを言うンなら斯々然々だろォがよ」
要約すると、HSDDに鬼いさんや立川が混じっている事が確認されているこの世界に新たな
混入していたのは『ありふれた職業で世界最強』というラノベで、イジメを受けてる主人公の学級が丸ごと異世界に召喚されて、悪意から殺されかけ死ぬ思いで環境に適応していった主人公が力や仲間を得て時には犠牲を払いながらも最終的にはラスボスの神っぽいのを倒し無事に帰還する話なんだそうな。特典をもらうタイプの異世界転移ならそれ以前はアタシの宝物センサーに反応しねぇわけだ。
ちな、転生者は原作主人公の妹ポジなので原作の特典を与えられる召喚について関われなかった模様。それ以前から生ハムに発見され
「まぁ、リゼヴィムさんにリリスさん、鈴木さん及び三上さんの悟ツインズには異世界を堪能して頂けましたので結果的には万々歳かと」
「何してンだあの人ら」
うちの悪魔共だけじゃなく他の
いやでも自然が残ってる時代で高校生活を送るモモンガさん概念は普通に推せるぞ。リムルさんや他の何人かとシェアハウスしてるって話だしリアル生活充実してそう。面子を聞いてどんな伏魔殿だよとツッコミ入れるのを我慢したアタシ偉い。
リムルさんはリムルさんで分身体を色んな世界に派遣してるらしいから参加してても違和感ないっつーか拉致された異世界だけじゃなくこの世界の特産物も集めてる気がする。人工
「ちなみに原作崩壊したなら主人公とかの強さはどうなったよ?」
「むしろ原作以上に強化されちゃってますねぃ。とりあえず最弱でも最上級悪魔並で、一部は魔王級。主人公格は超越者かと」
「地球の勢力図を気軽にバランス・ブレイクしてンじゃねーよ」
なんでも転移イベント直後にオリチャー発動して、召喚した世界そのものをこちらの転生者で繋がってる異世界の連盟として糾弾しつつ、犯罪者ならぬ犯罪世界として反撃する旨を伝えると共にラスボスの神っぽいのを本気出したリムルさんとモモンガさんで捕縛、公開尋問、連盟の法に照らし合わせ罪を決め罰を執行。なんと召喚から一時間弱で本編を完結させてしまったらしい。
その代わりと言っちゃアレだが、被召喚者への被害が軽微ではあったんでラスボスと使徒とかいう使い魔っぽいのはまとめて更生って温情溢れる処置の最中だそうな。なお現地人の感情は無視されるものとする。更生後なら自ら償いを申し出るんじゃねーの、知らんけど。
更にはそこからラスボスの気分で被差別種族にされてた獣人族をリムルさんが、現人神的な扱いをされてる実際はラスボスの下僕に従って人類と敵対していた魔人族をモモンガさんが、魔人族との戦争で最前線を構築していた人類の帝国をリゼヴィムと生ハムが支配し、そして原作主人公勢を召喚した人類の王国は別勢力への移動を希望しなかった召喚者を
いやその戦争を通して心身共に鍛えられたのは間違いなさそうなんだが。生ハムがいると時間経過とか関係なく無限に生き返れるし。裏を返せば死んでも救いは訪れず安息は得られないモモンガさん涙目案件でもあるわけで。
「いや、元々人間と魔人族は戦争してましたので。私達がした事なんて、ちょっと頭を潰すなり替えるなり洗脳するなりして乗っ取っただけですよぅ。で、被差別種族だった
「あー、まァその辺の詳しい話は別にいいや。予想されるこっちの世界への影響は?」
「現状だと後ろ盾を持たない在野の実力者が増えた事に気づいた各勢力が暗躍する可能性が一つ。それと帰還者の仲は良好と言えず、人格も割と残念なのが多いため問題を起こして排除され、連鎖的に抗争が起きる可能性が一つ。あぁ、
「安心要素が欠片もねェよ」
モモンガさんとリムルさんなら実力の隠蔽余裕だろうが、他の異世界帰り目的で赴いた馬鹿な悪魔が居合わせた二人を口封じ的な感じに無礼を働いちゃって種族丸ごとアウト判定を受けてそのまま族滅まっしぐらになりそうなんだが。ルキフグス領と関係者は除外してくれんもんか。タンニーンの領地とかはドラゴンの生息地なわけで男の子なら期待しちゃうだろ。そんでこの世界のドラゴンって支配されるのは嫌なタイプだから友好的な関係を築くのがベターなわけだし。うちの領地はうちの領で首都近郊限定とはいえ野生のドラゴンがポップするし。
「まぁ、こちらは半ば終わった話ですからこの辺で」
「こちらは?」
「はい、別の転生者もいますので」
「……頭が痛ェな」
異世界転移モノって良くも悪くも転移先との常識の擦り合わせでこっちからするとズレた感じになりがちだからなぁ。いやまぁこの世界に暮らしてて前触れもなしに
とりあえず、そんな悩むアタシを見て嬉しくてしょうがないって感じに笑みを浮かべる生ハムを殴りたくて仕方ねぇ。
「ふむ。ではまた今度にしますか?」
「続けてくれ。先延ばしたせいで対応が遅れて問題発生とか洒落にならねェ」
「では、そのように」
そうして紹介されたのは、十数人のピンからキリまで玉石混淆な面子。年齢的に中高生が多いんで宝物センサーどうしたと思ったが、あるいはHSDDに関係してないと働かない可能性もあるな。誘致できた領民に関しては他作品に関係ありそうな能力持ちとかおらんかったし。
どこぞのアウトな使い魔マスターの話はやめるんだ、アレは断じて転生者じゃねぇ。
「ちなみにこちらの方々は基本的にいるだけ参戦の本編には関わらない方々です」
「断言する理由は?」
「自分達の趣味に全振りして忙しいからですねぃ。ゲームやアニメ、食品等々のコンテンツを再現したり消費したり」
「あー、そうな。
そんなわけないだろと言いたかったが納得しかない理由だった。むしろアタシもそっちに参加してぇ。下手に周囲からの価値を高めた結果がコレだよ!
「しかしそうなると協力してもらうのも難しいか」
「んー、そうでもないですね。人工
「ほォ……いや、作る暇ねェからやっぱパスで」
「どっちも片手間で量産してる人が何を言ってやがりますか」
「アタシは悪魔だ」
能力的には頼りになりそうだが、性格的に頼れるとは限らんからなぁ。かといって、やらなきゃやらないで何か問題を起こしそうでもあるのが頭痛いよね。どーすんべ。
つーか開拓できる土地も旧魔王派の領地にかなり近くなってきたから、そもそもあんまり出番がなさそう。それこそが狙いだったりするんだろうか。ずるいぞ、アタシも余った時間でゲームやりたい。
ディスガイアやクラフトソード物語は満足したが、ガチャフォースのボーグ集めが途中なんだ。なんならガチャフォースは前世でマイペースにとはいえ十年かけてもコンプできてなかったし、倉庫内の
土地に関しては一応は現魔王派の管轄になってる手つかずの地域も侵食してるが、こっちもそろそろ気づかれるだろうと思いながらの日々。割とチキンレースな気分でやってるものの、見逃されてる可能性もあるんよね。ある程度の形になったタイミングで接収すれば得しかないわけだし。
「ひとまず転生者に関してはコレくらいですねぃ」
「まだあンのかよ」
「はい、念願叶って異世界でハジケたリゼヴィムさんが『向こう戻ったらトライヘキサの封印解こうぜ』とか誘っちゃいまして、そしたらドロップアイテムが気になるとモモンガさんがめっちゃ乗り気になっちゃいましたとさ」
「ゲーム脳やめーや」
「リムルさんも封印術に興味津々なので付き合うと明言してます」
「鳩に聞いた方が早くね?」
やっぱりあったかトライヘキサ案件。オーフィスが来た辺りからリゼヴィムが動いてたっぽいからなぁ。止めなかったのは勝手に封印解くまではしませんって契約させてたからなんだが、今回みたいな決定事項になってる詰みの状態に持ってかれたら意味ねェわな。反省、反省。
しかしモモンガさんとリムルさんの助力が得られるならその場で封殺できるか。本来なら場所さえ確認したら弱体化転生させる予定だったが、あるかも不明なドロップアイテム目当てなら弱体化させちゃきっとまずいよな。
「まーなんだかんだ原作だとトライヘキサと戦闘して死亡したネームドキャラって確かいないんですよねぃ」
「マジで?」
「もちろんそれなりの立場にあった方々を含め多数の死者が出た描写はありましたし、各勢力の施設が壊滅させられたりしてもいます。が、それもトライヘキサ単体ではなく邪龍軍団やら偽赤龍帝軍団やらの軍勢が絡んでますので」
「あァ、そういうのな」
圧倒的な実力ならネームドでなくとも古株とか幹部とかが死んだとか重態だとか言っときゃ伝わるしな。わざわざ読者や作者が思い入れのある、感動的な場面を作れる数の限られたキャラを退場させる必要はないか。
そもそもトライヘキサ自体、ポッと出のレイドボスな気配がしてるからなぁ。でなきゃ各神話体系が事前準備の一つや二つ取ってて、それこそネームドが足止めのために命を賭すクライマックスな場面が挟まれるだろ。単に情報の隠蔽が上手くて一部だけには前々から開示されてるパターンかも知れんが。ダンまちというかソード・オラトリアでいうロキ派と穢れた精霊勢力みたいな。
「まァ話はわかった。次の目標は
「いえ、
「そこでこっちに振るかー」
手っ取り早いし確実な方法ではあるが、かつては状況もあって封印しかできなかった相手だしなぁ。戦力不足や暗躍あるいは戦乱の可能性を危険視して沈黙する気もするわ。
一応は三大勢力が形だけでも和平して、他神話体系と繋がりを持ってて、知らせてねぇけど急に生えてきた野生の超越者並だの主神級だのの実力者がやる気満々で連携も問題なさそうではあるから説明次第か?
「つーわけで斯々然々」
「なるほど、まるまるうまうまという事か」
早速
「戦力的な不安はなく、元より世界の外に由来を持つ者たちによる討伐であれば勢力バランスへの影響も最低限で即座に戦乱が起きる可能性は限りなく低いか」
「まァ、多少のちょっかいはあるだろうがな」
元より実力者が見え隠れしちゃいるものの底が見えなくて下手に手を出せない、ってのがルキフグス領だ。ゼウスやオーディンみたいな主神が気軽に遊び来てるのも、あわよくばって偵察の要素が含まれてるだろうし。
そこに今回グレートレッド級と推定されるトライヘキサの討伐が知られた場合、自分とこの神話体系を滅ぼされる前に先手打って潰すって考えから攻めてくる可能性も高まる。なんなら多神話連合みたいなの組んできたりまである。あるいはルキフグス領なら仕方ないって感じで流してくれる可能性もそう低くはないはずなんだが。
「しかしだな、私としては彼の者にも救いがあって良いのではないかと思うのだ」
「ほォ?」
「ふむ」
と、ここで鳩から意外な台詞。倒せるか不明だの周囲への被害だのなら説得できる見積もりだったが、まさかの救済ときたか。
「それはつまり殺すなって話で合ってるか?」
「うむ。あれは滅びをもたらす以外の事を知らぬ哀れな獣よ。ただ倒すだけならば容易いとまでは言わずとも不可能ではなかった。だがその在り方に思うところがあり、故に慈悲を与え封印するに止めたのだ」
なんか神様みたいな事を言ってるんだが。偽物じゃね?
「契約者よ。何故そのように何事かを確かめるかのごとく我が玉体をベタベタと触る?」
「いや、どっかにチャックねェかなと」
「
何か締まらん感じだが、とりあえず本物で本心らしい。手触りは割と悪くなかったのが悔しい。あと体温高くてホッカホカだった。
さておき、必要に応じて使い魔の願いを聞き届けるのも主の役目ではある。ぶっちゃけ弱体化転生で無力化してしまえば叶えられるんだよ、多分。そうなると残る問題はドロップアイテム目当てなモモンガさんを説得できるかどうかだな。
あと不満を残さないよう途中まで戦闘狂達に戦わせるのもアリだが、個人的には初手即死ならぬ初手転生が一番楽なんよね。さてはて、どーすっかな。