聖書の神なら立川で鳩サブレ食ってるぞ   作:夜月工房

52 / 53
52.独立したよ!

リゼヴィムのやらかしにより状況:戦争中になっちまったわけだが、結論から言えば三日でルキフグス領が独立して終わった。

 

いやね、報告受けたその日の内に軍議的なのがあるからってリゼヴィムに連れられて出席したんよ。気は乗らなかったけど。したらね、旧魔王派が調子に乗ってルキフグス領の民を使い捨ての前線送りにしろと命令してきたわけ。かなり上から目線で。もうね、ちょっと()()()ときちゃったんだわ。

まぁ夜が明ける頃には命令してきた奴とその上司と同僚おまけにリゼヴィムが瀕死の状態で目の前に転がってたよね。実際は距離的にも責任取る立場的にも真っ先に被害を受けたのリゼヴィムなんだが。

ちな、終わった後で気づいたけど団長の最期を模したポーズで床に『止まるんじゃ』って血文字で書いてあった。途中なのか完成なのかわからんの反則だろ。思わず笑っちまったわ。まぁ転んでもただでは起き上がらない姿勢は頼もしかったと言えなくもない。なお起き上がれてない模様。

とりあえずその現場を写真に収めてグレイフィアに送付したら、少しして向こうから都合のいい事に和睦の申し出があったんで、罠を警戒しつつも乗っかり停戦に向けた条項を協議した。

さすがにリゼヴィムの生存って爆弾は危険視されたが、今回の写真と拾ってきた情報からある程度までの制御とライン超過時の鎮圧が可能だと判断されたそうな。ついでとばかりに制御に苦労する旧魔王派を押し付けてきて、ルキフグス領を悪魔勢力から独立した勢力だと認めた。

まー実のところ、一番の決め手は結論を出せずにぐだぐだしてる中へ乱入してきたリリスなんだが。

なんせこの世界における七十二柱の始祖だし、面識あったっぽい老齢悪魔達の反応はそりゃもう覿面ってやつよ。ソイツらからの戻ってきてくれ的な懇願は一蹴して、むしろルキフグス領の後見を宣言しちゃったせいで一波乱あったのはご愛嬌。そこで化粧品の新作をチラつかせて女性からの支持を取り付け男性陣を黙らせて解決したのはなんつーか、作風よな。

元より現政府にとって旧魔王派なんて一度は爆発してる上にいつまた爆発するかわからん不発弾でしかない連中だし、ルキフグス領だって把握している上では極貧領地だしメリットらしいメリットもないわけで。今回の話は渡りに船というか、そりゃもう上手に損切りできたと一部ではホクホク顔らしい。

ここから観光向け地域以外の情報を公開したらどうなるんだろうな。手のひらクルーして切り崩しに? こっそり侵入して反乱やら革命を目論む? とりあえず悪魔は対策なしに侵入したら――KO――(浄化)される率が高いし後者の心配は少ない。

一応、領内であれば消滅しない処置がされてるから安心っちゃ安心だが、代わりにコキュートス直行か日本地獄のどこかに落ちるかで下手すると死ぬより辛い目に遭うっていうね。

……面の皮が厚い事で悪名高い(ゆうめいな)悪魔が他神話領域でどんな騒動を起こしそうか考えると――予め補填に関して合議済とはいえ――面倒な気持ちがなくもないが。

 

さておき、悪魔勢力から切り捨てられた旧魔王派に関しては既に力でワカラセたものの、今までそしてこれからも縋る先となる悪魔至上主義を捨てられるとは思えない。リゼヴィムって希望が見えた以上は大人しくもしてないだろうし、どっかリゼヴィムに陳情できる場所を用意して、併合前のルキフグス領内には立ち入り禁止とかが妥当だろうか。

 

はて、ふと思ったけどネビロスって今回の集まりにいなかったよな。原作でも暗躍してるというか、黒幕の思惑とは無関係に自身の研究成果を確認してる感あるし、どっかに所属してるわけではないんかね。

単なる研究バカなのかもっと確信できる何かを得てから動くつもりなのかは知らんが、放置してたせいで何かしら手遅れになるのは好ましくない。いうてどう捜したもんか……意外と灯台下暗しで領内にいねぇかな、一般被差別悪魔に擬態してさ。

 

「その辺は何か情報ねェの?」

「え、あぁネビロスね。知ってる知ってる。軽く炙ってわさび醤油で頂くのが通好みなんでしょ」

「もし聞いてたら泣いちまうぞ少将」

 

一応、ルシファーに古くから仕える六家とかいう括りのご同輩なんだけどな。あれ、その意味じゃ捜索に一切の労力(コスト)を払ってないのは六家のトップ(ルキフグス)的にまずいんだろうか。まぁ誰にもツッコまれた事ねぇから別にいいか。

そもそも六家がルシファーの忠臣を自称するガチガチな旧魔王派な以上は現政府に寝返った――それもルシファーを僭称する者(サーゼクス)に仕えるなんて地雷原の上でタップダンスかましてる――グレイフィアの子なんざルキフグスとして認めんだろうし。少なくとも挨拶の手紙には無反応だった。

 

「いやー、なんか行方不明なのは知ってたけどさ。おじさんの優先順位としてはママンが一番だったし、変に探って俺の情報が漏れるのはゴメンだったわけよ。そもそもママンの負担とか気にせず好き勝手しそうだしな」

「あの子はそういうとこあるわよねぇ」

「ほへー」

 

はい、そんなわけで見事に空振りしました。代わりに変態寄りの研究者(マッド)っぽいって情報をゲット……予想が確信に変わっただけで発見時の交渉とかが有利になるようなもんでないのは残念な。

つーか、リリスの負担を考えそうにないタイプの自己中(マッド)ねぇ。確かに『番外の悪魔(エキストラ・デーモン)』なら別に七十二柱(チルドレン)ってわけじゃねーし、リリス相手でも服従はせんか。知らんけど。仮にも上司(ルシファー)の妻ではあるわけだし。まさか入嫁は範囲外ってか? うーむ、わがんね。

まぁ、今回(リゼヴィム)の呼び掛けに応じない時点でルシファーの忠臣って感じでもないわな。少なくともサタナキア家は代理だけど参加してたらしいし。まとめて沈めたから個の判別できてねぇけど。

あるいは初代以外は認めない系の過激派かもしれんが。その場合でも立川で初代ルシファーに尋ねるって手があるんよね。そこで行方不明のままなら忠臣(笑)呼ばわり待ったなしよな。果たしてそれがダメージになるかはさておき。

思えば立川側の原作にも七十二柱って普通に存在するし、ルシファーを慕うちょい悪集団のはずよな。こっちの初代七十二柱ってバアル大公ですら死亡偽装(しんじつ)を知らないっぽいんだが、なんか知ってて見ない振りしてる方が自然な気もするな?

むしろ大戦時に同じ真似(しぼうぎそう)してバカンスなり隠居なりってのも少なくない流れだろコレ。どうするよ立川でフットサルしてたりする取り巻き(モブ)の中に三代くらいまで渡って混じってたりして。

……うん、そっとしておこう。

 

「まァ知らねーモンは仕方ねェわな。切り替えて旧魔王派の領地も併合する手続きとかしておくか」

「それなら書類は作成済だぜ♪ 実際はガキんちょ達の授業で作らせたのを少し手直ししたヤツだけど」

「何やらせてンだテメー」

 

いや助かるが。草案レベルでも助かるのに完成済とな。児童労働に該当するかは判断に困る部分があるけど。

つーか、内容を確認したらめっちゃ整っててビビるんだが。人生一周目時点のアタシじゃ絶対に無理なレベルの仕上がり。原型になったのは悪魔生二周目と言っても良さげなマルバス姉(おじうえ)だろうか。それにしては悪魔らしさが足りんな。かつての同胞へ遠慮するとは思えんし、そうなると妹との合作でマイルドになったんかね。もしくは最年長かつ何事も卒なくこなす万能型に育ってる曹操作の可能性もあるか。

どちらにせよ、人材が育ってる分には悪いなんて事はない。マトモな運営を前提にした上で開拓地を広げるなら文官なんざ何人いても良いからな。なお目標達成までに子供達が成人を迎える可能性。

 

「とりま喫緊の案件はこれくれェか?」

「むしろ後やらなきゃダメな事ある?」

「あー、トライヘキサが無事に片付いて、旧魔王派も一応は大人しくなりそうで、ルキフグス領は無事独立。他神話勢力はこれ以上の肩入れしねェ方が良さげ。オーフィスとグレートレッドも友好的。と、なると、アレだ。天界の『システム』修正」

 

一応は許してもらったし、向こうとしても自然現象的な扱いしてもらってるとはいえ、桃太郎の悲劇を繰り返してはならない。

現状だと人間限定だから神仏の閻魔大王様や鬼神になってる鬼灯様は対象外なはずだが、『システム』のエラーを放置して万が一にも元人間まで対象が拡大されてみろ、そのお二方まで神器(セイクリッド・ギア)を宿して転生する可能性まで生まれちまうからな。色んな意味で地獄だぞ。

 

「へー、ついに手を出すんだ」

「天界のお土産って何があったかしら?」

「意外だな、てっきり同行希望かと思ったンだが」

 

『システム』の本物とか、天使だろうと見る機会すら早々ねぇだろうし。いやこの場合は天使だからこそないってのが正しいか。まぁそれはいいとして。

まさか聖書勢力の和平に向けた配慮なんてのをするようなタイプでもねぇだろうに、何を企んでるのやら。

 

「いやー、実質的な天界のトップってミカエルじゃん?」

「……? そうだな」

「おじさんさぁ、苦手なのよ、アイツ。マジで」

「へ、え?」

 

なんだなんだ、知らん情報が飛び出してきたぞ。アレか、過去に初代ルシファーが負けた件が関係して……うん?

 

「ふふ、叔父馬鹿ってやつなのよ」

「わ〜お、納得だわ」

 

リリスの言葉で大体は察した。コレ間違いなく立川時空の影響だな。隠すつもりのないお兄ちゃん大好きっ子なミカエルがその兄の子をどう扱うかって、そりゃ構いまくるだろ。なんなら戦争中でも隙あらば猫可愛がりするだろ。

割と悪魔としての在り方に関して真摯なリゼヴィムからすりゃ、敵意も悪意もなく身内判定してくる上に恐らくは毎回か辛うじてほぼが付くような頻度で物理的実力行使を伴って更正を促してくるとか、かなりの地雷だろ。

しかも鬼いさん時空も合わさってるなら思春期家族の日常みてーな雰囲気のやり取りにしかならんだろうし。防寒対策に腹巻きとか股引きとか大真面目な顔で強制気味に勧めてくるミカエルとそんなダセーもん着れるかって反抗す(ブチギレ)るリゼヴィム的な光景が目に浮かぶようだわ。いやそう考えると過去かつ裏世界の話とはいえその二作品とクロスオーバーしててよく死者多数の凄惨な戦争できてたな?

 

「ま、それなら同行の許可をもぎ取る労力がなくて済むなら助かるがな。さすがに短期間だ、留守中のオイタは勘弁してくれよ?」

「うひひ、任せてちょーよ」

「うーむ、この不安感よ」

 

そんなわけで、近々『システム』の修理をするべく天界へ向かう事になった。

なお、同時に提案した子供達による天界への社会科見学は断られた。まー向こうは悪魔しかいないと思って光力とか聖属性への耐性的な配慮もあっての不許可なんだろうが、アーシアやジャンヌを筆頭に楽しみにしてた子供達がハートに傷を負ったのはちょっと思う所もある。

とりま、するかどうかで悩んでた鳩召喚テロによる生存報告(嬉しい知らせ)は完全に流れたよね。因果応報なのか塞翁が馬なのかは議論が待たれる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。