聖書の神なら立川で鳩サブレ食ってるぞ   作:夜月工房

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9.大物がやって来たよ!

ヴァーリと曹操が神器(セイクリッド・ギア)――正確には二名共が神滅具(ロンギヌス)――に目覚めてから数日後。

基本性能は低いが拡張性を高めたんで使い手に最適化した亜種の禁手にばかり目覚める正体はナノマシンの集合体な試作型人工神器『無償で引ける渋い籤(ローリスク・ローリターン)』を完成させて治験していたら、何故か普通に体内で増殖、定着してしまう不具合を起こしてしまった。やっぱりナノマシンと言いつつ魔術や生物要素を突っ込んだのが悪かったか。環境に適応して進化する事で禁手(バランス・ブレイカー)の選択肢を増やしたかったんや。

ある意味で大成功したわけだが、おかげで他神話体系からすれば体内にわけのわからんものを埋め込まれた被害者が多数生まれてしまったわけで。そりゃもう頭を抱える羽目になったよね。冷静に剥離剤(リムーバー)を作ったので事無きを得たが。

本人達からすれば力を取り上げられたので不満そうだったのが印象的な。製品版の実装を待ってもらおう。

とりあえず論文に纏めて各神話に送付かね。ついでに治験がてら移住希望者の募集も記載しといた。

魂と混ざり込んでいる神器(セイクリッド・ギア)と競合せず共存できる都合上、人工『神器』とは呼べない気もするが……まぁ、余談部分にサラッと神器(セイクリッド・ギア)と『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を引っこ抜く目処が立ったってのもサラッと載せておこう。その関係で行方不明者の名前や時期、最後に目撃例のあった場所または向かったはずの目的地を記載した名簿とかあったら調査するからくれとも。

まぁ、神器(セイクリッド・ギア)の場合は人間に注目や執着してる神話がいるかって話もあるんで期待薄だが。それに神話勢力の人外勢も時間感覚がアレだからマトモな情報は出てこない気もするし。

 

 

 

そんなわけで今日も今日とて書類とにらめっこしていたら、執務室の扉が吹き飛んだ。

犯人であるリゼヴィムにより、来客用のガラステーブルの上にタッチダウンとでも言いたげな勢いで叩き付けられる、持ってきた何か。

 

「ヘイ領主、ママ一丁お待ち!」

「もっと大事に扱え、レディだぞ」

「ほほ、こりゃ一本取られた」

 

それは、悪魔と言うにはあまりにも醜すぎた。大きく、ぶ厚く、重く……はないと思われる。そして大雑把すぎた。それは正に、肉塊だった。

 

「そンじゃ始めるぞー。許可なく触れる事、冒涜の限りを尽くす事。お許し下さい、レディ」

 

はい、そんなわけで儀式失敗して異形になっちゃった悪魔の母修復RTAはーじまーるよー。

まぁやる事はクラフトチートを使うだけなんだが。戻れ〜戻れ〜、はい戻った! ここでタイマーストップです。記録は120秒ジャスト。恐らく世界で初の試みなので世界新記録です。

と、いうわけで完了。呆気ないと思われそうだが、魂が無事で休眠に近い状態だったんで抵抗はほぼなかったし、儀式とやらの影響を解析して分離させるだけで後は勝手に自己再生始めたよね。生物としての格が違うからこんなもんよ。これも一種のさすリリになるんだろうか。

ただまぁ、直した後に着せる服を用意してなかったのは失敗だったな。リゼヴィムを立ち会いさせてたから、涙ぐむアゴヒゲ親父が全裸の美女に抱き着いて思いの丈を吐き出す事案な光景が広がっておるわ。

とりあえずリゼヴィムの関心がこっち向いてないんで、今の内に倉庫から下着肌着にシックなドレスを出して、っと。

そもそもあれだな、ひとっ風呂浴びてもらうところからだ。リリとエイジャに頼もう。化粧品も出しとくけど……化粧品ブランドを立ち上げて仕切ってたプロの目線じゃ不合格だろうなぁ。こんなことなら女神を巻き込んで商品開発していくんだったか。

 

「ねぇ、お嬢さん。ちょっと聞いてもいいかしら?」

 

お、感動の再会は終わった感じかな。うむ、リゼヴィムが憑き物落ちた感じの浄化された笑顔でスヤってるのウケるんだけど。

つーか女児扱いか。フレイヤみてぇに魂でも察知してるのか、あるいは勘違いなのか。いや、女そのものを表す存在とも言える相手だぞ。性別を間違えるとは思えん。

 

「なんなりと、レディ」

「あら丁寧。若いのに感心ねぇ」

「恐縮です」

「それでね、えーと状況はなんとなく理解してたのだけど……」

 

ここで察して動くのと許可があるまで黙ってるの、正しいのはどっちなんだろうな。とりま子供扱いしてきたんだし、礼儀作法は見逃してもらえると嬉しい。

で、言葉をじっと待ってたらバツの悪そうな声で要求があった。

 

「体を隠す物はないかしら? バスタオルとか」

「こちらに」

「ありがとう」

 

こちらこそ気がききませんでごめんなさいねぇ。ついででテーブルの上にお茶と軽食も並べて置く。体そのものを健康体に作り変えてるから餓死寸前の人間みたいに栄養を急に入れたせいで死亡みたいな事にはならんと思う。

 

「どうやら長旅だったご様子。狭く見窄らしい場所なため恐れ多いのですが、お湯を準備しております」

「ありがとう。頂くわ。それでね」

「はい」

「無理しなくていいわよ? 今の私はただのリリス。それに、治療で手を尽くしてもらった中で色々と知っちゃったのよね。貴女や最初から周りにいる子達の事も」

 

おっとぉ? これは……ガバの気配じゃな?

 

「それは……大変申し訳なく」

「ふふ、別にいいのだけどね。世の中可能性がいっぱいなのは退屈しなくていいわ」

 

あかーん! 魂の一部繋がってるぅ! 【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】テメー何勝手してくれてんだ!?

協力者だけじゃなく理解者も必要? それはそう。いや、だからって、人選……。オリキャラなマルバス姉妹を差し置いてそれは酷くないか。いやまぁお家再興させて、姉妹は離れ離れにさせないと考えたら現地人として頑張ってもらわなあかんし、後回しか。

 

「フフ、ものすごい勢いで百面相してるわよ?」

「申し訳ありません。お見苦しい物をお見せしました」

「普段通りの態度でいいって言ってるのに、真面目ねぇ。それじゃあ、お風呂頂こうかしら。治療の過程で体を綺麗にしてもらってるのはわかってるけど、心の洗濯も必要よねぇ」

「はっ。僭越ながら案内は私が。その、未開拓の土地故に人が足りてませんので」

 

並の悪魔じゃ釣り合わんし、大人女性がそもそも少ないんよ。子守から外すわけにもいかんし。

まぁリリスの性格からしても多少の無礼は笑って流せるっぽいし、鬼いさん世界のレディ・リリスはコスメの商売人でもあったから世俗の事情に疎いお貴族様ってわけでもないっぽいのは助かるわ。豪遊や爆買いはするだろうが。

ちな、このやり取りの最中に人形兵を使って服を着てもらってる。事情を知られてるなら出し惜しみするのもアホらしい。

しかしある意味でダンまちフレイヤとイシュタルを足して強化したようなキャラだな。服を着てても余裕で魅了効果出てるだろこれ。イッセーに会わせたら愉快な事になっちまいそうだ。むしろヴァーリは大丈夫だろうか。女って概念の極地にいる存在が曾祖母ですとか嘘やろってならん?

つーか所作が一々上品なんだが。めっちゃ貴族だわ。鳩が作った時期に礼儀作法とかそんなもん存在してねぇだろうに。あるいは女として男を堕とすための美を追求していく内に仕草を開拓してったんかね。

その意味じゃ人間の貴族らしさは悪魔が教えを囁いて整えたまであるんじゃないか。

少なくとも鳩は唯一神である自分こそが体制だから人間貴族の礼儀作法なんぞ気にせんし、近いのは虫が飛び掛かってきたら叩き落として踏み潰すけど近くで鳴いてる分にはあんまり気にせん感じだろ。

男性用の礼儀作法は女性としてキュンとした動作を基準にしてブラッシュアップしてった結果みたいな感じで。現在の72柱だって成立時期は中世より前だろうし、その頃には爵位がどうとか軍団を持ってこうとかしてた事になってるんだもん……叩き台にされてそう。

礼儀作法はさておいて、そんな歩く魅力の権化にバスタオル一枚で出歩かれたらキッズの性癖壊れるんだわって話よな。むしろ正統派の性的な意味でも魅力的な女だってのを考えれば、性癖が壊れるんでなく凝固されちゃうって方が正しいのか? どうでもいいわ言い方なんぞ。

 

「気にしないわ。どうせなら一緒にお風呂入って背中を流してくれてもいいのよ?」

「……お戯れを」

「あら残念」

 

そんなこんなで無事に浴場まで案内し、待機してたリリとエイジャにバトンタッチ。なおリリスとの繋がりを忘れたまま念話でやり取りしてたら普通に混ざって来られて恥ずか死んだ。リリ達には叱られた。残当。アタシ、反省。

 

 

 

「と、言うわけで歴史上で数えても二番目に偉い本来ならこんな僻地にいちゃならんタイプの大御所、レディ・リリス様だ」

「よろしくねぇ。気軽にリリス先生って読んでくれると嬉しいわ」

「「「よろしくお願いします、リリス先生!」」」

 

子供は強いなー。純粋にキラキラした視線で慕う気持ちだけを向けてる。ヴァーリは曾祖母だって知らされてないのもあるんかね。その場合アルビオンは教えてないって事か。まぁ身内の問題だし本人いるなら本人の口から伝えるのが筋ではある。あぁ、悪魔とかドラゴンとかってツッコミは遠慮してくれ。

一方で成人済悪魔は白目剥いて泡吹いてるな。気持ちは分かる。むしろ数少ない他種族の大人も事態の重さに脳がバグってる最中だ。無事な大人は笑い転げてるリゼヴィムだけとかもうわかんねぇなこれ。

 

「はい、本人(?)の紹介通り、リリス先生は一緒に遊んだり歌ったりしてくれます。みんなは先生の言う事を聞いて良い子にしてられるかなー?」

「「「はーい!!」」」

「よーし、良い返事だ。明日の朝からご飯のおかずを一品増やすぞー」

「「「わーい!」」」

 

こんな調子で頼れるけど頼ったら色々と終わりそうな仲間が加わって、ルキフグス領は更なる発展の兆しを見せたのでありました。

 

 

 

で、更に一年が経過して、まぁ人工神器の開発と神器(セイクリッド・ギア)引っこ抜き技術に釣られたアザゼルと個人もしくは領地間での協力を取り付けた。

正直に言えば堕天使側から得られるものはそう多くなかったが、こっちの技術をマイナーチェンジして活用してもらうだけでも神器(セイクリッド・ギア)所有者の殺害される数が減るからな。巡り巡って日本地獄の、特に地蔵菩薩の負担が減るんだ。存分にやれ。まぁこっちは全体的に効果のヤバめな神器(セイクリッド・ギア)の持ち主を勧誘して真っ当に育ってもらってるが。

所有者から引っこ抜いて堕天使陣営に集まった神器(セイクリッド・ギア)は悪用されんようにアザゼルが管理を徹底してるようだが、研究の終わった種類は興味が薄れて疎かになってそうなんで生ハムにフォローを頼んでおいた。

問題が起きないかって部分では果てしなく不安だが、悪用されないかって部分では限りなく信頼できる相手ではあるんで、折檻の準備だけは常にしておこう。

あとコカビエルと子供達のガチ喧嘩は人気コンテンツになってた。戦争の引き金にできると理解していながらも絵面がひどすぎて全力を出せないコカビエルを、神滅具(ロンギヌス)所持者二人が中心になって遠慮なしにガンガン攻めるから割といい勝負になってた。

何気にコカビエルも育っていく子供達を気に入ってるっぽくて、そりゃツンデレ扱いされるわ。ところで天体運行だったか惑星を司ってた天使って元ネタはどこへ旅に出ちゃったんだろうな。

なおアタシとはガチのタイマンをするものの、向こうが力押し多めなせいで手玉に取られる模様。そんで毎回武器や戦い方を変えてるんだが、前もって同じ手段でボロ負けした事のある子供達の目から光が消えて非常に愉快。堕天使幹部でも負ける相手と戦法なんだから食らいついただけ凄いって自信持てばいいのに。

まぁ、あれだ。光の槍が当たっても無効化される事実を知られないように回避を頑張りました。それでも全戦全勝できてるからなー。幹部を年齢一桁の子供に倒されて神の子を見張るもの(グリゴリ)の名声は地の底よ!

いやまぁルキフグス領からの評判は生ハム効果で保ってる感はあるが。一番身近な交易相手だし、アレでアイツも子供の相手が上手いからなー。精神年齢も遠近両用で、子供目線にも大人目線にもなれる。演じた種類の多すぎる役者か何かみてーなもんなんかね。

ちな、武器を変える理由は初回にアタシの使った武器が鞭なせいでドM(バラキエル)がめっちゃ反応してたって事に由来する。リリスが見込みありって事で誘ってたけど妻子を理由に断ってるのはほっこりしたよね。

つーかその家族襲撃されるから護衛置くか引っ越すかしろ。ルキフグス領(うち)なら空気も無害で種族差別もないぞ。こうしてまた原作が破壊されるんやなって。

 

その意味じゃ、そろそろ半孤児院みたいな子供達の暮らす施設とは別に、ちゃんとした学校を建てた方が良いのかね。寮ありだけど通いもありな感じの。

教師役が確保できてないが、そもそも下級悪魔どころかはぐれ悪魔や別種族まで混じった複雑怪奇に見える集団の教育をそこらの上級悪魔向けの教員免許的な資格または能力持ち程度にどうにかできるわけないって言うね。

しかも上に立つなら実力見せろって蛮族系思考の神滅具(ロンギヌス)持ちが二人いて、片や混血とは言え初代ルシファーの系譜、片や聖書勢力への絶対的な権能を有しているも同然な聖槍持ちだからな。悪魔って、要は神の定めた正しさを証明するための必要悪なんで、信仰そのものはデフォで持ってる事になるんよね、メイビー。

まぁ遺志が聖霊に置き換わってるから効果は落ちてるっぽいが。鳩の改良でむしろ強まったなんて、いやいやまさかそんなそんな。

ところで要と悪って似てるから隣に並ぶとややこしいな?

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