派遣社員の異世界珍道中〜転生しても過酷な状況は変わらない!〜 作:デラチコフ
「疲れた・・・。」
一人の男が自動車に乗りながら愚痴を呟く。
彼は20時頃、会社から出たところだ。
彼の名は桐谷正信、24歳の派遣社員。この物語の主人公だ。
一般人に過ぎない彼がこの物語で英雄になると、誰が想像しただろうか。
「ん?あんなところに洞穴があるぞ?」
桐谷は会社から約6km移動した道路の脇に洞穴を発見した。
洞穴は暗い夜にも関わらず、その夜に負けない漆黒の闇になっていた。
彼の脳内はアパートに帰って食う風呂寝るのルーティーンよりも、一瞬にしてその洞穴の方に興味が切り替わった。
確かに不気味だった。しかし臆病な桐谷をそこまで好奇心に引き立てたのは
彼のその性欲に似たある種の本能なのだろうか。
「入ってみるか・・・。」
洞穴の近くの平野に車を止め、洞穴の中に突き進む。
中に入ると予想通り真っ暗な空間だ。
「こんな所通勤経路には無かったよな・・・。」
おかしい。普段の通勤経路にはこんな洞穴存在しなかったはずだ。
地元の住民も洞穴の存在を知らなかった。
しかも床はぬるぬるしており、桐谷は尻もちをついて転んだ。
軽い痛みを覚えながらも泥だらけになり奥へ奥へと突き進む。
もちろんスマホのライトを使って辺りを照らしながら。
桐谷はもう止まらなかった。
彼のその病的な好奇心は彼自身にも止められなかったのだ。
奥へ行くと一筋の光が見える。
「あそこが終着点か・・・」
洞穴の最深部は更に暗かったが、奥から光が差して見える。
「おかしいな・・・」
今はもう夜20時、夜のはずだ。
なのに、まるで昼間のように明るい光が一筋となって差し込んでいる。
不思議に思いながら、桐谷は光に向かって進んだ。
床は今までの平らな地面から、鍾乳石が突き出している危険な地形に
変わっていった。ポッケに明かりをつけたスマホを入れて足元に注意
しながら移動する。
ここで登山部だった桐谷の力が発揮された。
桐谷は昔虐められっ子で部員が一人しかいない登山部に入部していたのだ。
普通の人間が登りづらい場所をスイスイと登っていく。
2〜3時間かけてやっと光が差す場所にたどり着いた。
「ここは・・・異世界か!?」
まるで夏の北アルプスの平野のような光景が広がっている。
今は2月なのにまるで真夏のような気温だ。
彼はコートを脱いだ。とりあえず水分補給がしたい。
まずは水源を探すことにした。
辺りは草原のため、雑木林や河川のような場所は存在しない。
焼け付くような暑さと疲労が彼を苦しめた。
なにせ残業3時間も働いているのだ。それに洞窟を抜けるために
体力もかなり消耗している。
桐谷は力尽きて倒れた。
どうなる桐谷!?