暗麺麭男   作:ゆうれい

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#2  What do I do in my life

この《フード世界》には俺以外にも多くのヒーローが存在する。

食パンマン、カレーパンマン、メロンパンナ、ハンバーガーキッド、どんぶりトリオ、おむすびまん、そのどれもが、《ニンゲン》がやってきて4日以内に拘束、あるいは処刑されてしまっていた。

 

 ジャムおじさんが殺された日、つまり《ニンゲン》がやってきた日には、食パンマンとメロンパンナ。

 食パンマンは俺が倒れた後に、すぐに現場に駆けつけたらしいが、すぐに《ヤマダ》の操る『十字の形の高級鎖(クロム・ハーツ)』で縛り上げられ、《タナカ》の『悪食の巨斧(ジャイアント・クロタ)』により、殺されたらしい。まぁ、プライドが高く、ナルシストである彼にとっては、奴隷として身を落とすよりは、あの場で殺された方がまだ正解だったのかもしれない。

 続いて現れたのが、メロンパンナだがこいつに至っては酷く滑稽だった。

というのも、《ヤマダ》の持つ『異性への魅了(ニコポ・ナデポ)』のスキルによって《ヤマダ》に惚れちまったらしい。一週間たった今じゃ見事に《ヤマダ》の肉便器になっていた。

 全く、なにが「お慕いしてます。《ヤマダ》様。」だ。

ほんの少し前までは、何かあると、すぐ俺のとこに飛んできた来た癖に。

これだからビッチは・・・。まぁ、強い奴に従ってるという点では、俺もコイツの事、何も言えないけどな。

 

二日目は、カレーパンマンと、どんぶりトリオ。

こいつらは、別に特筆すべき所もなく捕まってた。

強いて言うなら、《ニンゲン》が占拠していた学校が、カレーパンマンの『カレービュー』によって、カレー臭くなったって事ぐらいか。もちろん、《ニンゲン》にはそんな攻撃、通用せずに『十字の形の高級鎖(クロム・ハーツ)』によって、カレーパンマンは、拘束されたんだが。

 

三日目、朝、目が覚めるとハンバーガーキッドは既に殺されていた。

何でも、《トム》がアメリカンハンバーガーには、あるまじき姿だと激怒し、出会い頭に射殺したらしい。ご愁傷様って奴だな。

 それにしても、今まで変な言葉を喋るだけで空気だと思っていた《トム》だが、それが間違いだということに気付けてよかったわ。出会い頭に射殺するとか、下手すると《ニンゲン》の中で一番イカれてるかもしれない。こいつには、なるべく関わらないようにと皆に言っとかないとな。何が原因でブチ切れるかなんて、わかったもんじゃない。

 

四日目、今まで、学校に拘束されていた俺らだったが、カレーパンマンの『カレービュー』でのカレー臭ささが未だに抜けないので、ジャムおじさんのパン工場に俺達奴隷である《フード世界》の住人と《ニンゲン》は拠点を移すことにしていた。もちろん、それを進言したのは俺だ。カレー臭いのも気に入らなかったんだが、それより、《ニンゲン》という絶対的強者がこの《フード世界》で何を為すのかが気になった。例えば、《ニンゲン》がこの世界で大量虐殺をするのが目的だとしたら、俺達を奴隷になんかしなくても、1週間ほどで殺しつくしてしまうだろう。だが、《ニンゲン》はそうせず、俺達を奴隷にした。という事は、何か目的を持っているに違いない。それに、今更、どうにかしようと思った所で殺されていった者たちは返ってこないんだ。

だから、俺はこの《ニンゲン》が何を為すかを見届けるまでは何としてでも生き続けなければならない。それが『暗麺麭男』としての、強い者(セイギ)の味方としての使命だと思うから。そう思うだろ?ジャムおじさん。

 ああ、おむすびマンだが、パン工場に向かう道中で《トム》に射殺された。やっぱりアイツの頭はイカれてる。

 

五日目、急遽、パン工場に爆音が鳴り響く。

俺達、奴隷は何事かと思い、パン工場の外に出てみると、赤い飛行船に乗ったドキンちゃんと《ニンゲン》が対峙していた。

 

「よくも!食パンマン様をー!!!」

 

飛行船を操る彼女の顔は怒りで歪み、いつもの様な小憎たらしくも愛らしい表情など皆無である。彼女は、いざ愛しき者の仇をとらんとばかりに飛行船の武装である光線銃を乱射してくる。

 

「ヒャハハハ!"課金魔法"『聖なるバリア(ミラーフォース)』」

 

《ヤマダ》が声と同時にパン工場の周りに透明な膜が現出した。

その透明な膜は、ドキンちゃんが飛行船から放った光線の弾幕を、その飛行船目掛け、そっくりそのまま反射する。

 

「な・・!?」

 

誰かが驚きの声をあげる。

かくいう、俺も撃墜され、ゆっくり空から落ちてくる赤い飛行船をただ呆然と見ていた。

ただでさえ、《ヤマダ》の『毒霧神殺剣(カビキラー)』での斬撃や『異性への魅了(ニコポ・ナデポ)』の力は強大なのにも関わらず、今度は光線を反射するバリアまで使用した。

 

(どこまで規格外なんだ。《ニンゲン》は・・・)

 

声には出さないが、ある程度戦える住人は確実にそう思ったであろう。

改めて、《ニンゲン》の持つ力を目の当たりにして戦慄する。

 

「ヒャハハハ!無駄に250円使っちまったぜ!」

「《ヤマダ》の旦那。よかったでヤンスか?今のバリア、『単発課金魔法(インスタント・マジック)』でしょ?」

「ヒャハハハ!いいって!いいって!俺の預金は五十三万だから!それに、この世界の奴等は雑魚すぎて使う機会なんざ、ほぼ無いだろうしな!」

 

そう言うと、《ヤマダ》は撃墜されたドキンちゃんの飛行船に近づいていった。

 

「ヒィッ!悪魔!」

 

ドキンちゃんの戦意は既に無くなっていた。

まぁ、あんな技を見せられたら、それもしょうがないだろう。

俺達でさえ、あんなもん初めて見たんだからな。

 

「こないでッ!こないでよ!」

 

薄く笑みを浮かべながら近づいてくる《ヤマダ》にドキンちゃんの顔には恐怖が浮かび、その緑色の瞳には涙が溜まっていた。

 

(ああ、これからドキンちゃんは処刑されてしまうんだ・・・)

 

彼らが住む居城の一部を壊したのだ。今までの《ニンゲン》の行動から、ドキンちゃんがしたことは許される筈がない。その現場を見ていた者達は皆そう思ったであろう。

しかし、皆の予想は外れ、《ヤマダ》はドキンちゃんのすぐ傍まで近づき、その頬に優しく口付けをした。

 

「"俺の雌になれ"『異性への魅了(ニコポ・ナデポ)』」

「《ヤマダ》様!?」

 

驚きの声をあげたのは、第一の肉奴隷であるメロンパンナ。

まぁ、アイツが《ヤマダ》に『異性への魅了(ニコポ・ナデポ)』のスキルを使われた時はボコボコに殴られた後だったからな。優しく口付けをされたドキンちゃんと比べたら、その時のシチュエーションって奴は天と地ほどの差があるだろう。そりゃ、メロンパンナからしたら不満だろう。

しかし、《ヤマダ》は、そんな第一肉奴隷のことなど、どこ吹く風であった。

 

「ヒャハハハ!今日からお前は俺の雌豚だ!いいな?」

「はい・・・・。《ヤマダ》様・・・!」

 

この日、ドキンちゃんの嬌声が夜遅くまでパン工場に木霊した。

 

7日目、

 

「ヒャハハハ!オラ!身を粉にして働け!!」

 

《ヤマダ》が『毒霧神殺剣(カビキラー)』を片手に、俺達に罵声を浴びせる。

 

《ニンゲン》が、この《フード世界》にやって来て一週間がたっていた。

現在、俺達は《ニンゲン》達が居城に決めたパン工場で『殺戮人形(トークン)』なるものの開発を奴隷としてさせらされている。

 

『殺戮人形(トークン)』とは《タナカ》の持つ『悪食の巨斧(ジャイアント・クロタ)』の特殊能力、殺した相手の持つ特殊能力を奪う効果により、ジャムおじさんから奪った《作成(メイク)》のスキルにより作られた人形のことだ。

まぁ、人形と言っても、子供が遊ぶような小さい人形などではなく、体が俺やカレーパンマンと言ったヒーローと同じベースで作られていて、頭の方もパンで出来ている。

しかし、性能の方は俺やカレーパンマン以上の力を持っていて、頭の部分のパンも目、鼻、口といったパーツは存在せず、まるでのっぺらぼうの様だ。

何でも蛇と一緒で、敵の温度を察知して攻撃をするんだとか。

正直、こんなもんが動きだしたらと思うと心底ゾッとする。

 

えっ?何で《タナカ》の『悪食の巨斧(ジャイアント・クロタ)』の《作成(メイク)》だけで『殺戮人形(トークン)』を作り出すことは可能なのに、俺達までやらされてるかって?

 

《タナカ》の『悪食の巨斧(ジャイアント・クロタ)』で奪ったスキルを使うのはたくさんのMPって奴を喰われるらしく、燃費が悪いそうだ。さすがは『悪食』と呼ばれるだけの斧の事はある。だから、俺達、奴隷が『殺戮人形(トークン)』の頭の部分、つまりパンの部分を作り、《タナカ》が体の部分を作り作業分担してるって訳だ。

 

まぁ、一見、簡単そうに聞こえるパン作りの奴隷だが、プレッシャーが半端ではない。

なんせ、後ろには《ヤマダ》が『毒霧神殺剣(カビキラー)』片手に見張ってるんだからな。

その証拠に、お腹が空いたからといって作っていたパンを食べてしまったカバオ君が半殺しにされたのだ。そのせいで誰もサボることなく、暴力に怯えながら作業を続けるのだった。

 

十四日目、

名犬チーズが《トム》に射殺された。

原因は、《トム》愛用の『軍用靴(バンデッド・ブーツ)』にマーキングされたかららしい。

さすがの名犬も犬は犬。お頭の方は足りなかったようだ。

それにしても、チーズとは長年の付き合いであった筈であるのに、不思議と悲しいとは感じなかった。それは、《ニンゲン》が此処にやってきて余りにも死が身近にあるからだろうか?

 

十五日目、

カバオ君がパン工場から脱走した。

《ニンゲン》に半殺しにされたのがトラウマになってたらしく、昨日の《トム》によるチーズ殺害でそれが爆発したらしい。

しかし、うまく逃げたとて所詮カバオ。《ニンゲン》から逃げられる筈もなく、2時間ほどであっさり捕まった。

その時、《ニンゲン》は見せしめの為にカバオを処刑しようとしたが、バタコさんが何とか彼等を静めて、カバオ君の罪は鞭打ち10回で済まされた。さすがは俺の姉の様な存在であるバタコさんだ。俺は、改めて彼女を尊敬した。

《ニンゲン》については、力への憧れという面があるが、尊敬ではない。どちらかと言えば畏怖の念の方が強い。ジャムおじさん亡き今、心の底から尊敬できるのは彼女一人でる。 バタコさんだけは死んで欲しくない。本心からそう思う。

 

二十五日目、

『殺戮人形(トークン)』を作り続けて、二週間ちょっと。

ついにその数は百体になっていた。

そして、それを記念に明日は作業を休みにして、《フード世界》の散策をするらしい。

未だ捕まっていない、バイキンマンやドクターヒヤリを探すのだろうか?

今日の夕飯はいつもの豚のエサのような飯ではなく、結構豪華だった。

カバオ君なんて、泣きながらその飯に頬張りついてたくらいだ。

今日はいつもより笑ったような気がした。

 

二十六日目

 

アンパンマン号に俺たち奴隷と、『殺戮人形(トークン)』を乗せ、パン工場から北に半日ほど行った所にある『暗がりの森』という森まで来ていた。

しかし、そこに着いた時には既に日は暮れ、空には月が昇っている。

今日の探索はここで終了か?そう思ってると、《ニンゲン》が俺達奴隷全員に集まる様に言った。

 

「ヒャハハハ!今からお前等に面白いもんを見せてやる。『生命の神水(もものてんねんすい)』!!」

 

《ヤマダ》は虚空から一本のペットボトルに入った水を取り出すと、それを少しずつ百体の『殺戮人形(トークン)』にかけはじめる。

 

すると、どうだろう。先ほどまでピクリともしなかった『殺戮人形(トークン)』がまるで、

長い眠りから覚めたかの様に、一体、また一体と起き始めたではないか。

俺達はその光景を息をするのも忘れ食い入る様に見つめる。

 

「ヒャハハハ!全員おきたか!それでは、これから『死の宴(デスゲーム)』を始める!ルールは簡単、四日間の『殺戮人形(トークン)』との殺し合いだ!ヒャハハハハ!!!」

 

《ヤマダ》が狂った様に嗤う。

月夜に浮かぶ彼の笑顔は猟奇的であり、それでいてとても嬉しそうだった。

 

 

 

 

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