約束のリアライズ   作:ひなせひろと

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第3章:見えてきたもの

 ダグラスへの帰り道。

「マキナは流れで来ただけなのに、仕事熱心な奴やな」

「そうですねー」

「……」

 それに比べてエドガーは、とは言わない事にした。みんな心の中で思っているだろうと伝わっているだろうから。

 エドガーはそんな居心地の悪さを感じつつも、口にしてはいない以上変に被害者意識を出しながら指摘するわけにはいかなかった。

 ベリアルも言われてるぞ、嫌なら性格を直せよと表情で伝え無言で歩いている。

 

 

 

「あ、み、皆さん!帰って来たんですか!皆さんにも伝えなくては!バレンが、アレスハデス監獄所を脱獄したバレンが、他大陸に逃げようとダグラスに向かってきています!我々見張り兵が必死に抵抗していますが、抑えきれていません!早急に協力をお願いします!私は何とかバレンよりも早くダグラスに来れて、こうして皆さんに報告しているのですが……も、もう目で確認できる距離にいます!おそらくあと数分後です!」

 

 

 

「なんだと!?」

 

 突如、新しい仕事が舞い込んできた。

 皆兵士の方を向く。だったらマキナはどうなっているんだとシグマは思った。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ! 昨日の今日すぎます!僕達は偽金疑惑を追いかけていただけで……!」

「こっちは緊急事態です!早く来てください!(早口)」

 シグマの物言いを、見張り兵は余裕がなさそうに返した。そしておそらく監獄所担当だろう、見張り兵士はそのまま走ってダグラスに戻ってしまった。

 自分達を探していたのだろう。ご苦労な事だ。

 早く来ないとまずいらしいので、シグマ達は自分達が得た情報をさっさとマキナに言い終え、この問題にとりかかろうと途中から走ってダグラスに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達!ようやく帰って来たか!」

 

 マキナは少し疲れた様子で走って入り口付近まで移動してきた。隣にいるアイカはまだ自分の出番じゃないと余裕そうにしている。

「それで?そっちはどうだったんだ?いや、それよりもこっちが先か(早口)」

 ずっとダグラスにいたマキナは、シグマ達がいなくなった後の事を話し始めた。

 

 

 

「ダグラスの住人が行方不明!?」

 

 

 

「ああ。兵と住民に確認したから確かな情報だ。眠っている間にいつのまにか、だったらしい。犯罪者達に意識が行っていて、数日経ってようやく気付いたものも多いようだ」

 

「ちょっと待ってくれ、僕達は僕達で偽金の犯行の会議をしている所を見て——」

 

 シグマはそれも大事だけど、とマキナに仕事の結果を伝えた。

「進展があったか。そっちも今のうちに話してくれ」

 

 お互いの情報共有を迅速に終えなければならないと、皆なるべく早くマキナに伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

「……言っていたんだな?エジーナ人のゼルガだと」

 

「はい」

「あいつ……エジーナ人だったのか……」

 素性を明かさない謎の研究者の出身地がようやくわかり妙に納得するマキナ。

「こうしちゃいられない!捜査に意味があったじゃない!マキナ、ゼルガの研究所はどこ!?さっさと行くわよ!おそらくそいつがあたし達の敵!」

 行って帰ってくるだけなので、大火事事件でもないダグラスの偽金騒動には協力せず、シグマ達のー種組が返ってくるのを待っていたアリアは立ち上がりながら叫ぶ。

「待て!ええと、脱獄してきたというバレンの事はどうした!無視するのか!(早口)」

「?ええ……あたしはそのつもりだけど」

 

「……」

 

 アリアが当然の反応をして、マキナはそういやこいつも同胞だったと思った。

 そもそもレバニアルがどういう目的で行動しているのか聞いていなかった。

 

「——それより、いい加減レバニアルの事も聞かせてくれないか。後は奴に聞くだけなんだ、後の悩みは今のうちに少なくしておきたい」

 

「お嬢様……」

「ええ」

 ファルペがアリアに最終確認し、アリアがマキナの前に立つ。アリアが代表して自分達の事をマキナに告げた。

 

「あたしはアリア・コリエーヌ。コリエーヌ家の一人娘だけど……知ってる?」

 

「コリエーヌ家、だと?……行方不明だと聞いてるが?」

 西のカレア家、東のコリエーヌ家とは、よく言われたものである。

「表向きはそう。でもあれから十数年経ってる。ほら、あたしの体見て?何されたかわかるでしょ?」

 アリアが胸に手を当ててアピールしているのを見て、マキナは改めて彼女の全体をまじまじと見る。そして、何度目かというため息をついた。

「はぁ………幼児化、か……」

 昔は巨人化とセットで、奇妙な現象としてたびたび起きた事だ。大抵は誰かの悪戯で、体が縮んだ事以外、寿命も減らないので、そのままの状態を保ち続けた人も多くいる。しかし、アリアはシグマみたいに、ただの幼児化では終わらなかった。家族が皆殺しされたから。

「今の話を聞くだけでも、どうやらベアトリウスは気になるけど結果的に放置状態になっている事がいくつかあるようディスね」

「……コリエーヌ家の事件や大火事事件が起きた時は私も幼い未成年だったから詳しい事は知らない。だが、記録を見る限りはそうだ。きちんと解決しておきたいという気持ちより、面倒だからという気持ちが強く、 徹底調査をしないまま放置されている。私が騎士になってから、その処理を同期のアイカ達とやっていたが……。見ての通り途中で辞めてしまってな、結果的に私の負担が増えた」

「あんた、何もかも任されすぎよ」

「ああ……」

 今はベアトリウスの事全体よりも、目の前の事だ。マキナは頭を回転させて急いで判断を下した。

 

「こうしちゃいられない、さっさと人員を割り当てよう。シグマ達はこのままダグラスでバレンを迎え撃て。私はレバニアルを引き連れて首都近くにあるゼルガの研究所に行く。べリアル、手伝ってくれるな?」

 

 色々思う事はある。しかし今はただ対応に当たればいい。事が終わった後にゆっくり振り返ればいい事だとマキナは思いながら話を進める。

「ああ、この状況なら仕方ないだろう」

「よし……」

「突如舞い込んできた戦闘チャンスだ、わくわくするぜぇ~!」

 

「え、エドガーと一緒か……わ、わかりました!」

 色々情報が舞い込んできて各自イライラし始めているが、ここで一度深呼吸、落ち着かなくてはならない。別に対立するわけじゃないのだから。

 ただそれぞれが判断するだけ。今まで皆で一緒にやっていたから、対立しているかのように感じるだけだ。

 

「確かに、レバニアルの奴らはマキナについて行った方がええか。一応エドガーはここダグラス出身やし、理にかなっているな」

「そうね。でも次から次へ何なのよって感じよ」

「そうよねぇ。流石にすぐには信じられないわ。多数人を一気に消し去るなんてありえないもの……どんな魔法を使っているのかしら……」

「そ、そう思うと怖い、ですね……」

「大丈夫ですよ、マイニィちゃん」

 ちょっとした捜査帰って来たシグマ達の反応は当然ではある。しかし、これが大火事事件につながるかと言えば、そうじゃない。証拠もないし、これが日常的じゃないとしても犯人の目的は何なのか。わからないのだ。

 周囲では住民が既に行方不明の件で騒ぎ始めていた。

 

「(くっくっく、しかし向こうからやってくるなんてラッキーだ。アリアの幼児化の件と俺のサユリの件、このタイミングで一緒に終えさせてもらうぞ!)」

 

 ルーカスは、アリアがゼルガという人物が自分の敵であると決めつけているのを見て、自分もつられそうになり少し表面を手で隠してニヤニヤした。

「……まるで大火事事件みたいやな。やるだけやって犯人はいないわ、被害は多数だわで」

「じゃあ、僕達の大火事事件の犯人が!?」

 とっさにシグマが言う。癖のようなものだ。とにかく徹底的に調べ上げるつもりでいるし、そう言われているのだから。

「行方不明ってテロがやる事ディスか?テロリストなら人質に取るでしょう、わざわざ騒ぎ立てる必要がありまセンヨ」

「……」

 咄嗟に伺ったが、ディスカーが冷静な意見を述べた。

「大火事事件の事なら私が代表して倒す前に聞いてきてやろう。ただし、期待はするな」

「はい、ありがとうございます……」

 できない事は任せよう。いい加減それを学ぶべきだ。シグマは気持ちを切り替える。

 

 

 

「う~ん、まだ状況が呑み込めへん所があるな。でもこれだけは言える、休憩していたら誘拐事件起きてるってなんやねん、出来すぎやろ。こっちはただ1日休んでただけやで?」

「それはまぁ、わかる」

 マルクにこう言われて、マキナが冷静に頷く。

「これはおそらくだが、我々軍人の事を都合の良いスケープゴートとして利用しているのでは?我々軍人を目に敵にするように仕向けるのがゼルガの狙いだろう。そうすれば奴は狙われにくくなるからな。軍人じゃなく研究者だと言っているし」

 皆が言っていた事をベリアルがまとめ上げてくれる。

「まぁ確かに、きちんと仕事しているベアトリウスの軍人がいるって理解していれば、こんなの引っかからないもんな」

「そうだ。必然的に、そういう事を知っていない人間は騙される、という事だ」

「最初から騙せる奴だけ騙すという事か」

 マキナが納得する。

 

「とにかくこのダグラスの事はお前達に任せたぞ!レバニアル、今すぐ西にあるゼルガの研究所に行くぞ!」

 

 早急の事だ、話を短くしゃべって、マキナは友人のアイカとレバニアル達を連れて、急いで首都へ戻っていった。

 

「シグマ、じゃあね~」

「あ、はい!アイカさんどうもありがとうございました~!」

 忙しそうに手を振ったアイカになんとかシグマの手を振って応え、我に返る。

 

「……」

 

 さあ、こっちはこっちでこれからだ。場の空気がそう言っている。

 

 アリア達レバニアルは自分達の犯人がゼルガだと思っている。例えあれこれ否定されようが自分達だけでもゼルガがいるという西の研究所へ行っただろう。

 シグマはマキナが適当に分類したチーム分けを時間がないと受け入れ、もう数分後にやってくるという脱獄者バレンを迎え撃とうと覚悟し、剣を抜き、構えた。

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